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第二十四話 吉備路ダンジョン群

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 食事会のあった次の日の日曜日、いつものように朝の鍛練を行ったがその後の予定がない。のんびりと過ごしても良いのだが、昨日もほとんど体を動かしていないのでうずうずして来る。この前チェックした岡山県のダンジョンで吉備路ダンジョン群というのを見つけたのでそこに行ってみようと思い立った。土日はダンジョンに入らない予定が狂いまくっているな。

 今日は両親もまだ起きていないので、書き置きをして出かけようと思ったところ、綾芽に見つかり一緒に行くと駄々をこねられた。まあ別に一緒に行っても良いんだけどね。綾芽もダンジョン装備はマジックポーチの中に入っているのですぐに用意は出来る。書き置きの内容を若干変更して家を後にした。

 吉備路ダンジョン群というのは、もともとあった吉備路サイクリングロード沿いに発生した四つのダンジョンをまとめて名付けられたものである。Fランクダンジョンが三つとEランクダンジョンが一つである。因みにサイクリングロードを更に進むと岡山ダンジョンにも繋がっている。

 最寄りの駅から二十五分程電車に乗り、駅からはレンタサイクルで移動する。いくつ完全攻略出来るか分からないが全力で頑張ってみる。

 まず最初のダンジョンに行く前に探索者センターで受付をしておく。ここのセンターが四つのダンジョンすべてを統括している。いつも通り更衣室でバトルスーツに着替えてから受付へ、武器の封印を解いてもらい着替えのバッグとケースを預ける。勿論綾芽と一緒にだ。

 まずは一番探索者センターに近いFランクダンジョンから攻略を始める。このダンジョンは近くにある日本で九番目に大きい古墳の名をとって作さくダンジョンと呼ばれている全六階層の洞窟型で、スライムばかり出てくるダンジョンだ。最後のボスはビッグスライムで、ボスの討伐報酬以外は一個20円の魔石だけなので人気が無いダンジョンだ。

 自転車は人目の無いところで収納した。スライムは弱いが上手く核を狙わないと討伐出来ない。お約束の武器を溶かすような性質はFランクダンジョンだけあって、ボス部屋のスライム以外は持っていない。ダンジョンに入る前にダンジョンカードを重ねパーティ登録をしてからダンジョンの中に転移する。

 綾芽と左右別れて効率的に討伐していくが、正確に核を壊さないといけないのでいい練習になる。人気が無いのでスライムの数は大量だ。次から次へとやっつけてあっという間にボス部屋前に到着、ここは長物を使っている綾芽に譲る。流石ボスだけあって突進以外にも酸を使った攻撃をしてきたが難無く撃破し、討伐後に少し大きめの鉄の宝箱が現れた。

「お兄ちゃん、私が開けていい?鉄の宝箱は初めてなんだ」
「勿論いいよ。罠は無いようだし安心して開けてくれ」

 今までは宝箱の背後からソロっと開けていたが、今日の探索からは【罠探知】スキルに反応しないということは罠がないということである。自信を持って綾芽に伝えることができた。宝箱の中には女性用のブーツが入っていた。

「多分マジックアイテムだよね。女性用だよね」
「鑑定して良いものなら綾芽が使うと良いよ」

 綾芽は派手にガッツポーズを決めている。まだ鑑定結果出てないからね。

 作ダンジョンの攻略は一時間半程で終わった。次に行ってみよう。

 自転車を10分漕いで次のダンジョンに到着した。ここは近くにある建物の名と階層の数から五重ダンジョンと呼ばれている全五階層のFランクダンジョンだ。草原型のダンジョンでミニトレントモドキが野菜や果物を投げつけて来る。ドロップアイテムも野菜や果物が特徴だ。ボス部屋はトレントモドキ、投げる速度が高速になるらしい。

 ダンジョンに入る前にお花が咲いている近くで弁当を食べる。弁当のストックを増やしていて良かったよ。綾芽はラッシュボアのステーキ弁当、僕はウルフの香草焼き弁当をチョイスして食べた。温かいんだよね、とても美味しかったよ。

 食後改めてダンジョンカードを重ねてパーティ登録をした後に五重ダンジョンの中へ転移する。一階層はミニトレントモドキがジャガ芋を時速140キロで投げて来る。

 この情報を見たときにピーンと来たんだ。野球のグローブがあれば簡単に攻略出来るんじゃね?中学生時代に使ってたグローブを持ち出してきて正解だ。Aランカーの動体視力なめんなよ。一匹で十個程投げて来るので、僕が受けては収納を繰り返し、タマ切れになったところを綾芽が討伐する。

 僕の収納は特殊で何故か収納したものは消えないんだ。岡山ダンジョンのゴブリンソードマンの剣を収納した時に、討伐後も消えずに残っていたんだ。中里さんが探索者協会に確認したところ、マジックバッグに収納した物は討伐後にはなくなってしまったらしい。

 ついでに討伐後に高確率でジャガ芋がドロップした。そしてキャッチして腕輪に収納した物はやっぱり討伐後にも消えずに収納から取り出すことができた。ダブルでおいしいというやつだな。

 二階層では玉葱、三階層はトマト、四階層で桃、五階層でパイナップルそしてボス部屋ではトレントモドキがスイカを時速160キロは出ているんじゃないかというスピードで投げてきた。

 トマトと桃はキャッチした時にかなりの数が潰れたり、傷んだりして勿体ないことをした。パイナップルはグローブの大きさをはみ出しそうだったがギリギリセーフだった。でもスイカはただ逃げたよ。あの大きさで結構なスピードで飛んで来ると恐怖を感じたからね。討伐後にはちゃんと美味しそうなスイカがドロップしたよ。

 ボス討伐の宝箱は今回も鉄、綾芽が嬉しそうに開ける。中には料理道具らしき物が入っていたので、これも鑑定行きだな。攻略時間は二時間程、ミニトレントモドキが投げ尽くした後に倒したので、思っていたよりも時間がかかった。

 時間的に次が今日最後のダンジョンになる。歩いてたったの五分、近くの古墳の名前と出てくる魔物からコウモリダンジョンと呼ばれている全八階層のFランクダンジョンで洞窟型だ。名前の通り出て来る魔物は噛み付きバット、ボスはビッグバットだ。飛行する魔物なので遠距離攻撃の無い僕達には少々厄介だ。近づいて来たところを的確にヒットさせなければならない。パーティ登録をしてダンジョンの中に転移する。

 いろいろと危惧していたが、所詮Fランクダンジョンだった。次々に倒してボス部屋に到着し、今回も綾芽に討伐を任せた。ボス部屋では綾芽が薙刀を振るい一瞬でビッグバットをやっつけてしまった。

 今回も鉄の宝箱で、中にはゴーグルのような物が入っていた。これも鑑定行き、結局Fランクダンジョン三つから全て鉄の宝箱が出て来た。【幸運】スキルは抜群に活躍してくれる。

 このダンジョンも攻略に二時間かかった。八階層もあったからしょうがない。これから探索者センターに戻って鑑定の時間を考えると、晩御飯の時間には間に合いそうにない。今ならまだ母さんは晩御飯の用意を始めていないかもしれない。

 電話をして、これから晩御飯を作ろうとしていて、まだ何も作っていないことを確認した。今日は遅くなりそうだから、綾芽と二人で外食をして帰ることを伝えた。

 これで大丈夫、鑑定をしてもらいに探索者センターに戻りましょう。
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