忘却世界

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忘れ物がある

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突然だが、みんなは『忘却曲線』をご存知だろうか?

『忘却曲線』とはエビングハウスにより知らしめられたグラフであり、それは学習における時間と覚えている割合に関するデータである。

このグラフはしばしば耳にする。
そう、例えば貧血者が出たり妙に天井の鉄骨に挟まったバレーボールが気になり上を見てしまう体育館での校長のそれはもうなんともありがたいありがたいお話に出てくる奴である。

あのグラフによると人間は学習した内容の実に66%を1日後には忘れているそうだ。これは全くもって信用ならないと僕は思う。

世界で最も信用に値しないのは統計と政治家だと言われているが、後者は知らないが少なくとも前者に限りはその通りだとおもっている。

なぜなら、こう言ってはおしまいかもしれないが覚えている人にとっては1日だろうが1週間だろうが息絶えるその瞬間にだって忘れることはない。
そんな事が生きとし生きる人間全員が経験しているのだ。

決して忘れられないこと忘れてはならないこと。
あの曲線なんかでは語ることのできない例外というものが必ず存在するのだ。

なので僕は統計を信じない。
まあ、とは言っても僕だって今を生きる存在だから生活する上で統計を当てにすることはある。
しかし、ぜひとも僕がみんなに言いたいのは何事においても100%は存在しないのだ。
盲信してはならない。

とまあ少し語ってしまったが結局のところその例外というやつを僕は知らしめられた。 

一年前、そう僕が高校へ入学した時。あんなグラフではとても表せられない人物に僕は出会ったのだから。

僕の想像とは全くもって逆を行く。
グラフに対しての反例。

そいつは、いいや彼女は願った。
決して大切なことを二度と忘れないようにと。



そして願いは叶えられた。
故に彼女は苦しむ。それはあたかも呪いのように。 

さあ助けよう、救おう、彼女の真の願いを叶えにいこう。
それが僕の仕事であり、責務であり、存在意義だ。
彼女の暗雲を燦然世界に変えてやろう。
 
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