【完結】魔法道具の預かり銀行

六畳のえる

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第4章 魔女であること

4話 さようなら、カンテラ

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「よし、これで大丈夫だな」

 修理が完了したドアを目の前に、チャンプスがうんうんとうなずく。
 私とアッキは、そのドアに触り、懐かしさを覚えていた。


 元の世界と、この並行世界を繋ぐドア。修理にはジュラーネさんでも難しい、特殊な魔法が必要ということで、そのお金を稼ぐためにカンテラで働いていた。無事に目標額が貯まったので、すぐに修理が得意な魔女に依頼して、直すことができた。

 来たときの恰好になって、持ち物も確認した。後はこのドアをくぐるだけだ。


「アッキ、いざ帰るってなると……寂しくなるね」
「だな。俺も寂しいって思ってた」
「ったく……お前ら、そういうこと言うもんじゃねーぞ。オレも、しょんぼりしちまうじゃねーか!」

 そう言うと、チャンプスはくるっと私たちに背を向ける。尻尾がたれさがってるのを見たり、明らかに鳴き声とは違う、鼻をすするような音を聞いたりすると、私たちもしんみりしちゃう。

「アンタたち、よく一ヶ月半がんばったねえ」

 ジュラーネさんが、ゴツゴツした小さな丸い石を一つずつ、それぞれ手渡してくれる。

「これは、大したものじゃないけどお土産だよ。願いを叶える力があるわけじゃないけど、願いが叶うときに光るんだ。持って帰るといい」

 お土産をもらうと、お別れのときが近づいてると分かって、我慢してた涙がこぼれる。
 私もアッキも、ジュラーネさんの服が濡れるのも気にせず、同時にグッと抱きついた。

「ジュラーネさん、ありがとう。俺、ここで働けて良かった!」
「私も、カンテラで色んな魔女と会えて、もちろんジュラーネさんとも出会えて良かった! また会えたらいいな」
「ああ、またいつか、遊びにおいで。ずっとこの店をやってるさ」

 涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を、ジュラーネさんはハンカチで拭いてくれる。

 彼女のこの世界での功績は全然分からないけど、優しくて素敵な大魔女だって、私にはちゃんと分かる。

「じゃあまたね、ジュラーネさん、チャンプス!」
「おう、またな! 体気を付けろよ!」
「元気でいるんだよ。そうさね、どんな暮らししてるか、たまに魔法で見させてもらおうか」

 キシシッといういつもの笑顔を見ながら、私とアッキはノブに手をかけ、ドアをくぐった。




「わっ、戻ってきた!」
「時間……もあの日のままだな」

 一ヶ月半前、光を追いかけてたどり着いた、潰れた店に戻ってきた。アッキの腕時計には日付も出るけど、ちゃんと七月の終業式前になってる。

 カンテラの日々は、なかったことになってる。それでも、大切な記憶は消えない。


 私はアッキと、ずいぶん懐かしく感じる帰り道を歩きながら話した。

「ありのままでいるのって、大事なんだな。ショアンさんたちから教わった気がする」
「私も、正直になってみようかな。アッキもそうなろうよ、約束!」
「ん、約束な」

 この年で指切りなんて恥ずかしいけど、それでもしたかった。小指をからめて「うっそついたらはりせんぼんのーます!」と口に出してみる。ちょうど終わったタイミングで、別れ道の交差点に来た。

「じゃあまたね!」
「またな! リンコ、良い夏休みにしような!」

 手を振ってアッキとさよならして、帰り道を勢いよく走った。


「ただいま! お母さん、ただいま!」
「あら、どうしたの? 今日はずいぶん甘えてくるのね」
「うん、なんか今日はそういう気分なの」

 キッチンにいたお母さんに抱きつく。ずっと会ってなかったから、顔見た瞬間泣きそうになっちゃった。

「里琴、夏休み、したいことある?」

 特にないよ、と答えそうになって、首を振る。違う違う、正直にならなきゃ。好きなことを好きって言って仕事をしてた、魔女のみんなを思い出す。私も、素直に言うんだ!

「んっとね、できたら……」

 きっと、アッキも同じことを言ってる気がする。

「ワクワクすることしたい!」

 ポケットの中に入れてた、ジュラーネさんからのお土産の石が、ピカッと光る。

 何かが起こりそうな夏休みは、もうすぐそこ。


 〈魔法使いの預かり銀行 終わり〉
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