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伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる
しおりを挟む俺が竜の「花嫁」としてさらわれてきてから、一週間ほど経つ。竜のノクスはいまだに戸惑っているが、怒るでもなく追い出すでもなく俺のことを放っておいているから、おかしなものだと思う。俺があの竜なら、騙されたとわかった瞬間に俺のことを八つ裂きにしているだろう。
「食事だ」
崖の洞窟の中にて。ノクスは俺の前に、果物の乗った皿を置いた。
ありがとう、と礼を言って、素直にいただく。
俺を連れ去った時のノクスは黒色の竜だったが、住処と思われるこの洞窟に戻ってからは、外出の時以外、人の姿を保っている。
黒髪の長髪で、なかなかの美男子だった。口数は少なくておとなしいのが意外だ。
遠慮なく手づかみで果物を食べる俺を、ちょっと離れたところに座ってノクスが眺めている。
「何? 貴族のくせに、ずいぶん下品な食い方するなって思ってるのか?」
「いや……」
「言っただろ。俺、グーレディアン伯爵家の血を引いてるけど、貴族の教育は受けてないんだって」
そんな俺の説明に、ノクスは何を言うでもなく目をそらした。
こいつも、俺みたいな厄介者押しつけられて気の毒だ。餌付けなんてして、どういうつもりだろう。
さっさと――俺なんて、喰ってしまえばいいのに。
* * *
「グーレディアン伯爵家の者に間違いないな」
伯爵家の馬車を襲い、俺をさらった黒色の竜は、洞窟に降り立つと人の姿に化けてそう言った。
うつむいたまま、ふっふ、と笑い声をもらす俺に、「何がおかしい」と声をかけてくる。
俺は頭からかぶったショールをさっと投げ捨て、ドレス姿のまま腰に手をあてて笑みを見せる。
「残念だったが、俺はお前の花嫁にはなれねぇよ。男だからな!」
「な……、伯爵家の人間ではないのか?」
「いや、一応、そういうことにはなるけどさ……」
黒髪の美丈夫は困惑している。それもそうだろう。花嫁を連れて来たと思ったのに、実は男だったのだから。
俺はリアンだと名を名乗り、これまでのいきさつをかいつまんで説明した。
この地の守護竜だったはずの黒竜は、いつからかその役目を放棄した。竜に見放された土地は豊かでなくなり、長いこと農作物の不作や異常気象に悩まされている。
大昔、黒竜と交流があった伯爵家が再び守護するよう交渉した結果、竜は「伯爵家の者を私の花嫁に」と要求してきた。伯爵家には三人の娘がいたが、伯爵は当然、愛娘を竜に渡すのを拒んだ。
そこで代わりに選ばれたのが、伯爵の妾腹の子で、屋敷で下働きをしていた俺である。十六歳にしては小柄で、不本意ながら女子にも間違われる顔立ちだ。
娘は屋敷の奥に隠し、どうなっても構わない俺が女装させられ、何度か外出していたのだ。そこをまんまと騙された黒竜が襲ったわけだ。
伯爵の理屈としては、「勝手に選んでさらったのはそちらだし、『娘』を花嫁にとは言っていない」というところだろう。屁理屈が過ぎるし、全く相手を馬鹿にしている。
「……そういうわけで、お前は伯爵に騙されたの! 残念だったな!」
俺は別に面白くもないから、ビシッと黒竜を真顔で指さしてやった。
さて、怒り狂って暴れるかな、と覚悟したが、竜の奴はちょっとしょんぼりしたように「そうか」と言い、洞窟の奥に眠りに行ってしまったのである。
拍子抜けした俺は、洞窟の入り口近くに取り残されたまま、「そ……そうかって、何?!」と困惑のわめき声をあげるしかなかった。
* * *
「食事だ」
黒竜ノクスウィートことノクスは、今日も食べ物を俺の前に置いてくれる。竜は魔力を持つから魔術も扱えるらしく、火を使って鳥の肉を香ばしく焼いてくれている。
「俺のために、鳥を狩ってきてくれたのか?」
「果物ばかりでは、力がつかないだろう」
「あ、ありがとう……」
俺は目を白黒させた。青年の姿をしたノクスが首を傾げているので、俺は笑いながら驚いた理由を説明した。
「いやー、俺、そんな風に食べ物持ってきてもらったの、初めてだから。いっつも、野菜屑とか、残飯の骨しゃぶってて……」
それが当たり前の生活だったから今まで意識しないようにしてたけれど、地上を離れて改めて振り返ってみると、かなり惨めだ。
いつもみたいに笑い飛ばそうとしたけれど上手くいかなくて、顔がこわばる。
下を向いていると、ふと温かいものが頭に触れた。誰かが、俺の頭を撫でている。もしかしたら人生初めての「頭を撫でられる」という感触に硬直していたが、ゆっくりと顔をあげた。ここで俺を撫でる誰かといったら、一人しかいない。
ノクスはじっと俺を見下ろし、何度か頭を撫でると手を離した。
「すまない」
「なん……で、謝るんだよ」
「余計なことをした」
「別に、余計では……」
俺は赤面して、ごにょごにょと呟く。他人に撫でられるのはなんだか気持ちが良くて、ちょっと嬉しかったと素直に打ち明けるのは気恥ずかしい。
「あの、ところで、お前は食事をしないのか?」
「あまり食べなくても生きていける。ただ、果物や花なんかを、たまに食べるな」
「え……まさかの、草食?!」
大声を出すと、洞窟内に反響する。ノクスも驚いて目をまたたかせていた。
「草食なんて……話が違うだろ……!」
俺が頭を抱えてうなだれる理由を、ノクスは知る由もない。
俺はこいつに「喰われる」ために来たっていうのに。予定が狂った。どうりで俺を食べようとしないはずだ。
これからどうしたらいいだろう、と洞窟の隅に目をやると、初日に着てきたドレスが丸めて置いてあった。そんな格好じゃ過ごしにくいだろうから、とノクスが魔術で男ものの服を出してくれて、今はそれを身につけている。
あのドレスの中に忍ばせている「あるもの」を思い出し、俺はとても苦い気持ちになった。
* * *
「ノクス様は甘党ですよ」
俺の足下で、小さなネズミの骨がカタカタ音を立てながらそう言った。最初は仰天して悲鳴をあげたりもしたが、慣れてしまえば可愛いものだ。
こいつの名前はララ。ノクスの使い魔である。生前からノクスに仕えていたそうだが、死語も尚、骨となったままノクスのそばにいるという。
ノクスは外出中で、俺は洞窟でララと二人きりだ。たまにあいつが外に出ると、「男の花嫁を押しつけられた憂さ晴らしに伯爵家を襲いに行っているのか」とも思うのだが、そうではないらしい。
「そういえば、すぐそこの森に苺がなってたなぁ。あれもノクスは食べるのか?」
「少々酸味が強いので、ノクス様は召し上がりません」
洞窟は奥に進んで横道にそれると、外へと出られるようになっている。俺はそこから出て何度か森を散歩していた。ノクスからは特に歩き回るなと注意をされていないし、ララも好きなようにさせてくれる。
ノクスは何を考えているのやら。俺がどこへ行ってもどうでもいいってことなのか?
(まあ、そうだよな。俺は誰からも必要とされてないんだから……)
苦笑して、俺はララを誘うと一緒に森へと出かけていった。
◇
「なんだ? この匂いは」
ノクスは竜の姿で入り口に着地し、人の姿に変身して洞窟の中へと足を踏み入れる。彼が着ているのはいつも、飾りっ気のない素朴な麻の服だ。魔術で服を出せるのだから、便利なものである。着替えをする必要がないからか、俺は一度も人型ノクスの裸を見ていなかった。
「おー、ノクス。お帰り」
俺は鍋の中身をかき回していた木のへらをあげ、ノクスに笑顔を向けた。
「何をしている」
「料理だよ、料理」
ノクスは竜だから料理なんてしないのだが、俺のために調理器具や調味料をどこかから調達してきてくれるのでありがたい。
火種を閉じこめてある魔石を使い、俺は鍋を火にかけていた。屋敷では料理も手伝っていたので得意な方だ。
匙ですくったのは、赤くてドロドロしたもの。俺はそれを冷ますためにふーふー息を吹きかけて、ノクスの方に差し出してやった。
「ほら。あーん」
まごつきながらノクスが口を開け、その中に匙を入れる。
「甘い」
「だろー? 砂糖をたっぷり入れたからな。これは苺のジャムだよ」
もう一口、とねだる姿は、あの雄々しい姿の黒竜とはかけ離れていて、俺は笑いながらまたジャムを食べさせてやった。
ララによると、竜はどれだけ砂糖を摂取しても体に影響はないらしいから、いっぱい食べてもらいたい。自分の作ったもので喜んでもらえるのは、幸せなことだ。
「こんなに摘んできたのか、リアン。お前一人で?」
「ララにも手伝ってもらったよ。黒竜様は、食べる時はたくさん食べるだろうと思ったから。美味いか?」
「ああ。じゃむ、なんて初めて食べる」
「そうかそうか。もっと食えよ。甘いの好きなんだろ?」
そうすすめる俺の顔を見つめていたノクスだったが、懐から何か取り出して俺に渡してきた。パンだった。人里で手に入れてきたのだろうか。
「ちょうどいい。これとじゃむは合うのではないか? せっかくじゃむを作ったのだから、お前も食べろ」
「俺のために、これを?」
「竜は宝石を持っている。それを金に換えて買ったんだ。盗んではいない。安心しろ」
なんでもノクスは、俺が地上で食べたいろんなものが恋しいのではないかと気をつかってくれているようだ。こんな上等なパンなんて、今まで食べたことないんだけどな。
「どうしてそこまでしてくれるんだ?」
俺は、お前を騙した伯爵家の一味なのに。
ノクスには一度も暴力を振るわれていないし、暴言一つ吐かれていない。住処に俺を置いておく理由なんてなくて、世話をしてやる義理もないじゃないか。
すると、ノクスはふんわりと笑ってみせた。
「お前は、私の花嫁だからな」
――どきりと、心臓が高鳴った。
ノクスの笑顔が、あまりにも綺麗だったからかもしれない。
花嫁って、どういう意味だろう。俺は、偽物のはずだ。
笑顔と言葉の意味をどう捉えていいか混乱して、俺は顔を赤らめながらパンをかじった。リアン様、じゃむを塗らなければ、というララの言葉も耳に入らなかった。
* * *
洞窟の中は、夜になると少々冷える。ノクスは寝具など使わないのだが、俺のために藁を集めてきてくれている。
竜の姿で藁を両手に抱え、口にもいっぱいくわえてきた様子が面白くて俺は笑ったが、その気遣いが嬉しかった。
俺は、いらない子だったから。生まれてきただけで迷惑だと罵られた。生かしてもらっているだけでありがたいと思え、とことあるごとに周囲から言われ、気遣ってもらったことなんてなかった。
「……ノクス。一緒に寝てもいいか?」
俺は藁の寝床から起き上がり、掛け布を引きずって奥へ向かう。竜の姿になったノクスは、洞窟の奥で眠っているのだ。
「どうかしたのか。寒いか?」
「ううん……」
確かに肌寒いけれど、我慢できないほどでもない。どうかしたのかと問われても、はっきりした理由は答えられずに俺は黙り込んだ。
そんな俺をノクスも黙って眺めていたが、ふっと姿が揺らいだかと思うと、青年の格好に変化した。俺の手を引いて、藁の寝床へと導く。
「横になれ。添い寝してやる」
俺が竜型のノクスのそばに寝るとなると、固い地面の上で丸まって眠るしかない。人型のノクスの体は、竜の体より熱があるから、添い寝するならそちらの方がいいと思ったのだろう。また気遣ってくれたらしい。
誰かに甘えたい気分だった俺は、うん、と微かに頷いた。
ノクスと俺は向かい合う。
「人間は、こうして子供を寝かしつけるそうだな」
並んで横になると、ノクスは俺の体を優しくトントンと叩き始めた。
「俺、もう子供じゃないけど。十六だもん」
「竜は長生きだから、みんな子供みたいなものだ」
だったら、少しくらい甘えても許されるのかな。
ノクスの体温を感じる。俺はその温もりにしがみついた。初めて、誰かに温もりというものを与えてもらって幸せで、俺はうとうとしながら微笑む。
――ああ、ノクス。俺をこのまま殺してくれよ。このままの気持ちで、俺はいなくなってしまいたい。
もうどこにも帰る場所なんてないし、もちろん「使命」を果たす気もない。自分の人生はここが行き止まりで、せめてこの、優しい竜に全てを終わらせてもらいたかった。
(全部本当のことを話して、こいつを怒らせたらいいのかな?)
けれど、ノクスの怒るところなんて想像がつかなかった。伯爵一族は、黒竜は残忍で恐ろしい化け物だ、なんて脅してきたけれど。
あの屋敷にいた人々に比べたら、この竜の方が、比べものにならないくらい優しかった。
「私が怖くはないのか?」
耳元で、ノクスが囁く声がする。その声は、どこか悲しみを帯びていた。
「私は竜だぞ。お前とは違う生き物だ」
「怖くなんかないよ……。ノクスはノクスだ。俺は、ノクスが大好きだよ……」
黒く輝く、美しい姿の竜のノクスが好きだ。綺麗な顔立ちのお兄さんといった感じのノクスも好きだ。
だけど、一番好きなのは見た目じゃなくて、その優しさだった。清らかな魂を感じる。
むにゃむにゃと、俺は寝ぼけ眼でそんなことをいくつか口走った。
額に、柔らかい口づけが落とされる。
俺が安堵しているのと同じ分、安堵しているかのような吐息がかかる。
俺は幸福な気持ちのまま、彼の腕の中で眠りについた。
* * *
ノクスとララとの、地上を離れた洞窟での生活は楽しかった。俺は毎日散歩をして、食べられるものや花を集めた。
ノクスと俺が暮らしやすいように洞窟の中を整え、花を飾り、彼のために料理をする。そんな毎日がこれからも続くのではないかと思い始めたある日、ノクスが唐突に言った。
「いつ、人間達の元へ帰るつもりだ?」
「え?」
「お前は人間だ。さらってきてこんなことを言うのもなんだが、ここはお前の住むところではないだろう。お前は花嫁ではないのだし、戻るべきだ」
がつんと、殴られたような衝撃を受けた。
そうだ。ノクスは花嫁を求めていて、俺は花嫁じゃないから、ここに居続ける資格はない。騙した人間の一人であるのに、ノクスは俺の境遇を聞いて憐れんで、ちょっと置いてくれただけなんだ。
いつかは、出て行かなければならない。当たり前だ。何を自惚れていたんだろう。
――ひょっとして、ノクスは俺のことが気に入って、必要としてくれたんじゃないかって。どうして、そんなことを思ってしまったんだろう。馬鹿みたいだ。
「その気になったらいつでも送って……」
ノクスが言いかけた言葉を、俺は遮った。
「あ、いいよ。俺、丈夫な二本の足があるし、森を通って自力で人里まで下りていくよ」
立っているノクスを押しのけて、俺は隅に丸めてあったドレスを手にとった。持って来たものといえばこれくらいだ。別に要らないものだけど、置いていったらノクスだって困るだろう。
「今まで好意で俺の面倒を見てくれてたんだろ? ありがとな、ノクス。いいもんたくさん食わせてくれて、肉もついたし助かったよ」
にかっと歯を見せて笑うと、俺は森への出口へ向かって歩き始めた。
「リアン。何も今すぐとは言っていない。まだ行くあても……」
ノクスにつかまれた腕を振り払う。
「もう、いいって!」
驚いて目を見開くノクスの顔を見ると、胸に鋭い痛みを感じた。笑って別れたかったけれど、どうしても笑顔は作れなかった。
「悪かったよ、花嫁じゃなくて! 必要ないなら……気なんてつかわないで……すぐに崖から投げ落としてくれたらよかったのに!」
最低の恨み言を言って、俺は走り出した。
最悪だ。最悪すぎる。ノクスは何も悪くないのに。俺はやっぱりガキなんだ。だから、こんなことしか言えないんだ。
慣れた洞窟の道を走り抜け、森の中に出る。俺はドレスを抱えたまま、ひたすら走り続けた。
無心に足を動かしていたが、やがて疲れ切って立ち止まる。
木々に囲まれた獣道に佇んでうつむいていると、どこかから声が聞こえてきた。
「リアン様……、リアン様……」
俺のことを「リアン様」なんて呼ぶ奴は、世界で一人――いや、一匹しかいない。黒竜ノクスウィートの使い魔、骨ネズミのララが、骨をカタカタいわせながらまた俺を呼んだ。
「リアン様」
ララはちゃっかり俺の肩に乗っている。軽くて気がつかなかったが、洞窟にいた時からしがみついていたのだろう。
独りぼっちになりたかったのに、そうではないことに安心して、ため息をもらす。
「ララ。聞いていいかな……」
「どうぞ」
「どうしてあいつは、ノクスは、人間の花嫁を必要としたんだ?」
「……私が、おすすめしたのです」
いつもは明るいララの声が、心なしか暗い。ララはとぼとぼと俺の腕をつたい、ドレスを持つ手の甲のところまでたどり着くと俺を見上げた。
「昔に比べ、竜の数は減っています。力が枯渇すると、竜は消滅するのです。竜は人の姿になれるので、人間とつがうことが可能です。つがいである人間の生命エネルギーを得ると、竜の力は回復します。ですから……。それに、ノクス様のことを理解してくださる花嫁の方がやって来てくだされば、あの方ももう少し、考えを改めてくださるかと思いまして……」
守護竜ノクスウィートが、この地に加護を与えない。その理由は、偏屈で人嫌いな竜が人間に意地悪をしているからではないかと人が話しているのを聞いたが、実際はそうではないのかもしれない。ノクスはきっと、力が枯渇してきているのだ。
俺が、本物の花嫁になれたらいいのに。女じゃないのがもどかしかった。
いや、それ以前に、俺はノクスの花嫁になんて絶対になれない。だって……。
カシャン、と音を立てて、ドレスの中に入れていたものが足下に落ちた。
「それは……」
ララが下をのぞく。落ちているのは、年代物の鞘に入った短剣だ。グーレディアン伯爵家は、古くは魔術を扱う魔術師の家系だった。太古の魔術がこめられている特殊な短剣。俺はそれを持ち、黒竜にさらわれることを強制された。
「竜を殺せる短剣だ」
俺は吐き捨てるように言って、笑った。笑っているのに、両目から涙があふれてくる。涙は止まらず、ララに降りかかり、地面に染みを作っていく。
「俺は……伯爵に、竜を殺せって、命令されてたんだ……! 守護竜がいなくなれば、この地の魔力の流れを操る権利は伯爵家当主が手に入れることができるだろうからって」
加護を与えない守護竜ならいなくても構わない。守護竜が消えれば土地の魔力も減ってしまうが、権利が完全に人間の手に渡るので伯爵家としてはそちらを選択した方が都合が良いという話なのである。
ドレスを放り出し、忌まわしい短剣をのろのろと拾い上げた。
「どの道……、ノクスのそばにいる資格なんて、なかったんだ……」
「いいや、だからこそお前は私の花嫁なんだ」
ノクスの声が聞こえてぎくりとし、俺は弾かれたように顔を上げた。
ノクスは青年の姿のまま少し離れたところで立っていて、こちらに微笑みかけてくる。
「それで私を殺してくれ、リアン。私は消滅するために、花嫁をさらってきたのだから」
「……は?……」
言っている意味がわからない。俺は短剣を握ったまま呆然とし、肩まで戻ったララは沈黙している。
ノクスは語った。
竜は自ら命を絶つことができない、と。この地の領主はことあるごとに自分に協力を申し出てきたが、ノクスとしては応じられない内容もあった。
人間に疎んじられているのは以前から感じていて、だから自分を処分するように仕向けようと考え始めたそうだ。
伯爵家の者を差し出せと命じる。そうすれば、あちらは反発するだろうと思った。魔術の知識がある伯爵家の者なら、近づけば命を奪おうとするかもしれない。花嫁に選ばれた娘が自分をしとめるか。あるいは、娘を奪われた伯爵家の者達が殺しに来るか。
どちらでもいい。殺してもらえるのなら。
ノクスが花嫁を求めたのは、力を取り戻したいからではなかった。終わらせてくれるきっかけとして要求したようだ。
使い魔のララにとっては意外な話ではなかったようで、動揺はしていなかったがまだ沈黙し続けている。
考えを改めてもらいたい。それは、こういう意味だったのか。
「な、なんで……」
俺の手は震え始めていた。ノクスにとって、やはり俺は招かれざる存在だったのだろう。狙いは当たって、刺客として送り込まれたものの俺は腑抜けだから使命は果たそうとしなかった。置いておいても奪還しに伯爵家はやって来ない。
「なんでそうなるんだよ。もともと地上は竜のもので、人間達は後から来て住まわせてもらってるって伝説を聞いたぞ。お前はもっと強く出たっていいじゃないか。協力を求められたって、力でもって人間達を黙らせれば……」
ノクスは無言で服をめくり、こちらに素肌をさらしてみせた。竜の姿だった時にそれがあったか記憶にないが、白い肌にはくっきりと見えるものがある。
連なる鎖の形をした禍々しい痣が、まるで彼をとらえているかのように体中に浮かんでいた。
「大昔、油断して伯爵家の祖先の魔術師に呪いをかけられた。痛みを伴い、力の制限を受けている。しもべになれと命令されたが、私は拒み続けてきたんだ。守護竜としての力を発揮できないのは、そのせいだ」
加護を授けてやりたかったが、ノクスはそれができなかった。愚かな人間のせいだ。
人間は竜を言いなりにさせようとして、自ら加護を遠ざけたのだ。
ノクスは優しい竜だ。
人間を守ってやりたいけど、守らせてくれない。悩み続けて、絶望して、全て終わりにしたくなったのかもしれない。
俺のように。
「殺してくれ、リアン」
両手を広げて迎えようとするノクスに、俺はかぶりを振りながら後ずさった。ノクスにかける言葉がみつからない。悲しくて恐ろしくて、嗚咽をかみ殺すのに必死だった。
どうして、何でこんなに優しい竜を人間達は傷つけたんだ。
そんなおぞましいことをした伯爵家の血が、自分にも流れているだなんて反吐が出そうだった。
「嫌だ。そんなこと、言わないでくれ、ノクス」
初めて温もりをくれて、優しくしてくれて。そんなノクスを殺せるはずがない。いくら、それがノクスの望みであったとしてもだ。
俺は、身を翻して再び走り始めた。
陽は傾き、夜が訪れようとしている。
手に短剣を握ったまま、ノクスから逃げるしかなかった。
* * *
俺は、木の根本に腰を下ろして幹に寄りかかり、眠っていた。
走っているうちにどうしても伯爵が許せなくなり、いっそこの短剣で刺しに行ってやろうかと息巻いていたが、道に迷ってしまったのだ。そうこうしているうちに夜になり、身動きがとれなくなってしまう。
無力で無知な俺は、これからどうするのが最善なのかもわからず、途方に暮れるしかなかった。とりあえず、短剣は適当なところに穴を掘って埋めてきた。馬鹿な俺でも、あんなものはない方がいいってことくらいはわかる。
ノクスとララとの、短いけれど楽しかった生活を思い出した。俺の作った花冠をかぶせられ、笑っていたノクス。竜の歌を歌ってくれたノクス。
一度添い寝してからは、毎晩俺の隣で寝て、撫でてくれた。夢みたいな時間だった。
それなのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう。
泣き疲れて眠っていたところ、ざわざわとした人の声や足音などが聞こえてきて目が覚めた。
木の陰からのぞくと、たいまつを持った男達がどこかを目指して歩いていく。その中に俺の父親――伯爵の姿を見つけ、猛烈に嫌な予感がしてこっそり後を追いかけた。
男達がたどり着いたのは、崖上だった。
見慣れた黒髪の男が、こちらに背を向けて立っている。振り向いたノクスの双眸には諦めが滲んでいた。
「お前の『花嫁』はどうも任務をしくじったらしいな。役立たずめが」
俺の姿が見えないことに気づいた伯爵が、苛立ちの混じった笑みを浮かべる。
「あの子供は私がたっぷりと脅したから、私に手を出せなかったのだよ。どこか遠くに逃げてしまった。もうあの子をさがすな」
「言われなくても、あんなゴミにもう用はない。今宵、伯爵家当主である私が決着をつけてやろう。黒竜よ、我々の配下になる気はないのだな?」
「私は誇り高き竜。どんな呪いをかけられようが、人間には従わない」
伯爵が笑みを深めると、懐から古びた本を取りだした。
「酷く時間がかかったが、やっとお前に効く呪文が書かれた魔導書を発見した。力を独り占めしようとする、強欲で愚かな竜め。ここでくたばるがいい」
貴族とは思えない下品な言葉を吐いた伯爵は、本を片手に呪文を唱えた。
当初の目的では俺に竜を殺させようとしていたが、俺にその気がないのでその企みは達成されなかった。そして長年に渡りさがしていた、竜を害する知識を得て、伯爵直々にやって来たというところなのだろう。
ノクスの足下に陣のようなものが浮かび上がって消える。痛みでも感じたのか、ノクスは一瞬体を震わせ、その場でよろめいた。
「これでお前は大半の魔術が使えんぞ。竜の姿に戻ることもできん!」
その声と共に、伯爵が連れてきた男達が弓を矢につがえ、放った。何本かがノクスの体に刺さり、俺は悲鳴をあげそうになる。
――あいつ、避ける気がないんだ。
本当に、ここで死ぬつもりなんだ。
――そんなの、駄目だ。
強く両の拳を握りながら、どうしたらノクスを助けられるかを考える。伯爵や男達に飛びかかったところで、力でかなうはずがない。
ノクスの前に立ってあいつを守ろうとしたって、一緒に矢で射抜かれるのがオチだ。俺はどうなってもいいけど、ノクスも抵抗せずに殺されてしまう。
近づいて、あいつに声をかけようか?
死ぬなんてやめてくれ、生きてくれ、と。
いいや。ノクスは聞く耳を持たないだろう。あらゆることに疲れてしまって、希望も持たずに出した結論が「殺してもらうこと」だったのだろうから。
でも、それがノクスの望みだったとしても、俺は嫌だ。ノクスに死んでほしくない。
歯を食いしばった俺は、ある作戦に賭けることにした。
この選択は間違っているかもしれないし、やっぱりノクスにとって酷いことなのかもしれない。でも、これくらいの策しか思いつかない。
茂みから飛び出して、ノクスの方へと走っていく。
「ノクス!!」
俺の大声に、この場にいる者達が反応して目を向けた。伯爵やその一味は警戒を強め、ノクスは驚いた表情をしている。
俺は全速力で駆けた。後ろから、俺を狙った矢が飛んできたが振り向かない。
そして――ノクスの横を、俺は過ぎていく。てっきり自分の懐に飛び込んでくるだろうと思いこんでいたらしいノクスは、今度こそ仰天していた。
崖の端までたどり着き、そのまま、宙へと飛ぶ。俺は振り向きざまに微笑んで、ノクスに手を伸ばした。
「――俺を助けて。ノクス」
ノクスの足が動いた。俺を追いかけて、彼も崖から身を踊らせる。
ノクスの手が、俺の手を握った。
先ほどの魔術のせいで竜には戻れないらしいが、かろうじて背中から羽だけは生える。弱々しい羽ばたきで、俺を抱きしめたままどうにか飛行していた。
ノクスは俺の身に危険が及んだら、きっと助けてくれると思っていた。彼の優しさを利用したのだ。こうでもしないと、ノクスはあいつらから離れてくれないだろうから。
ノクスはなんとか羽を出したが、上手く飛べないでいるらしい。ふらふらと苦しそうに飛び、そんなノクスを狙ってまだ矢は襲いかかってくる。
俺はノクスに抱かれたまま、もどかしい思いで彼の顔を見上げた。
端整で、さほど愛想がない顔。けれど笑うとどこか愛らしくて、表情には優しさが滲み出る。
ノクスが好きだ。もっと好きになりたい。
まだ、一緒にいたいんだ。
(俺が、ノクスの花嫁になれたらいいのに)
ノクスに力を与えて、元気にしてやりたい。そのためなら、何でもできる。
「ノクス」
呼びかけると、ノクスが俺と視線を合わせた。愛おしさがこみ上げて、俺はノクスに顔を近づける。
――ノクスと俺の唇が重なった。
その瞬間、ノクスの体に光が迸る。体に巻きついていたかのような鎖が浮かび上がり、それがボロボロと崩れていった。
呆気にとられていると、ノクスの体が光に包まれて変化し始め、次にまばたきした時には、黒い竜の姿に戻っている。
黒竜ノクスウィートは、空で咆哮をあげた。
声が周囲一帯に伝わり、空気がびりびりと震える。
伯爵一味は少しの間怯んでいたが、何やらわめきながら攻撃を再開した。
空中にいくつも魔法陣が浮かび上がるが、ノクスは羽ばたきながら華麗にそれを避けていく。矢が向かってくると、口から炎を吐いてそれらを焼き尽くしてしまった。
「ノ、ノクス……!」
ひょっとして、力が戻ったのだろうか。
質問をしたいところだったが、ノクスに「しっかりつかまっていろ」と言われ、俺は喋るどころではなかった。
ノクスはさらに羽ばたいて飛翔し、さらなる高みへと、昇っていく。
地上の人影は、ぐんぐん離れて小さくなり、やがては見えなくなった。
* * *
「やっぱり、守護竜としての役目は引き受けたままなんだな? ノクスってお人好しすぎるよ。人間なんて、見捨てちゃえばいいのにさ」
そこは、見渡す限り白い雲が広がる世界。上に広がるのは青い空だけ。
つまり、雲の上だった。
ここまで一緒にくっついてきたララの説明によると、竜は本来、雲の上に住んでいるらしい。魔術でこうして歩けるようにしているそうだ。
黒い竜の姿で日光浴をしているノクスは、首を傾げた。
「地上も捨てたものではない。お前のような人間もいるからな。彼らのために、私の加護は必要だろう」
ノクスは住処の崖は離れたが、守護している土地にはとどまることに決めたそうだ。こうして天空から、地上を見守り続けるらしい。
あの時、俺が祈りながら口づけをしたから、呪いが解けたのだと聞いている。俺は一応魔術師の伯爵家の血を継いでいるから、そういうことも可能だったそうだ。
素質はあるから、訓練すれば多少の魔術も使えるかもしれないとノクスに言われたが、にわかには信じられなかった。
ノクスは人間に甘いにもほどがある。けれどそのおかげで俺は救われたし、ノクスもいなくならずに済んだ。俺としては人間達に思うところはいろいろあるけど、黙っておくことにしよう。
俺さえよければ、ノクスはいつまででもここにいていいと言ってくれた。つまり、俺はまたノクスと暮らせるのだ。嬉しくて、ついにやついてしまう。
「でもさあ、お前ももっといいお相手を見つけたかったら、遠慮しないでさがしてきてもいいんだぞ? 花嫁が必要なんだろ?」
すると、ノクスはきょとんとしていた。
「花嫁はお前だろう」
「いや、俺は男だから……」
俺の服のすそを、誰かがくいくいと引っ張っている。使い魔のララが、声を低めて俺に重大な事実を教えてくれた。
「竜は、どちらの性別でもつがいにできるのです、リアン様」
「え? つまり、俺……。俺も、ノクスの花嫁になれるってこと?」
カタカタと音を立て、ララが頷いてみせる。
意味を理解した俺は赤面しながらノクスを見つめた。ノクスは笑うと、例の青年の姿に変身して近づいてくる。
「私の花嫁になるのは嫌か?」
「い、嫌じゃない! お前の花嫁になりたいよ! けど、俺って何の取り柄もないし、可愛げもないから、ノクスの嫁になんてふさわしいかどうか……」
ノクスは俺の顎をすくいあげて、口づけをしてきた。唇は柔らかくて、胸が高鳴る。
「お前は可愛い。リアン」
直球の言葉に、俺はうろたえてしまう。
「あ、え、あ~……花嫁ってことは、俺はノクスに力をあげられるんだよな? 役に立てるなら嬉しいよ。それって、口づけでってこと?」
「そうだな。閨を共にすれば、さらに力がつく」
「ねっ……!」
それは、つまり。俺が、ノクスと。
まあ、そうだよな。夫婦になるってそういうものだものな。俺だってもう十六で、意味は察することができる。
気遣いのできる竜であるノクスは、「それは追々だな。いきなりお前に負担をかけたりはしない」と言ってくれた。
「まずは居心地の良い巣を作らなくてはならないだろう。私とお前の」
「俺と、ノクスの……」
愛の巣ってことか。
今まで誰にも必要とされてこなかった俺に、優しい家族ができるなんて夢みたいだ。お互い、殺してくれる相手を求めていたのに、こんなに幸福になれるなんて、嘘みたいだった。
「今日は少し、雲の上を散歩しようか。我が花嫁よ」
「……はい。俺の旦那様」
俺はにっこりして、ノクスの手をとった。ノクスの手は今日も変わらず温かい。俺の肩に乗ったララも、感激したように何度も頷いていた。
地上に、しとしとと喜びの雨が降る。
伯爵家のリアンが、黒竜ノクスウィートの花嫁になり、彼らの名前が忘れられてしまうほどの時間が経った後。
この地方では、孤独な男の子が竜の妻になって幸せに暮らしたというおとぎ話が語り継がれている。
小雨が降ると、竜と花嫁が雲の上で笑っているのだと、皆は空を見上げるのだった。
(終)
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