この度、18禁乙女ゲームの悪役になりました。が、役目は果たしません。〜心が読める様になりましたが、みんなが私を嫌いな様です〜

なーさん

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第32話

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後ろを振り返ると、トレーの上のお皿に何種類ものお菓子やケーキを乗せたウィルソン殿下が手を振っていた。

「ご、ごきげんよう、ウィルソン殿下。」

私は慌てて席から立ち、挨拶をするとウィルソン殿下は一つ頷いて何故か私たちと同じ席の私の真正面に座りだした。

「ここ、いいかな?」

「もちろんです!」

人好きのする笑みを浮かべながら聞かれて、思わず勢いよく返事してしまう。って言っても、殿下に言われて『ダメです』なんて誰も言えないと思うけど…。

「あれ?今日は、フィンセントは居ないの?」

座って、普通にして。と言われ、私もアランも再び席に着き、マナーにだけは先ほどよりも気を遣いながらケーキを一口食べると、ウィルソンも大きめにケーキをフォークで取り食べる。本当に甘いもの好きなんだなぁ。

「はい、これから一週間は文化祭の準備で忙しいみたいで…お兄様と一緒に生徒会室で色々とやることがあるみたいです。」

「あ~たしかに、アーノルドも忙しいって言ってたな。大変だねぇ~王太子は。」

他人事のように言うウィルソンだが、王太子では無くても第二王子のウィルソンも国に帰れば色々と大変なんじゃないの?とか思ったけれど優雅に苺タルトを頬張ってるのを見ると言えなかった。

(まぁ、この国に来てのびのびと楽しめてるって証拠よね。そういえば・・・もう、取っ替え引っ替えエッチしてるのかしら・・・。)

「あ、じゃあ一週間はリリアーナ嬢は暇なんだ?」

チラリとウィルソンを見ると、タイミングよく目が合った。それに内心ビクッとしつつ、平静を装いながら答える。

「そうですね、やる事はほとんど終わらせてますので。」

「おぉ~!さすがだね。そしたらさ、明日の放課後は俺に付き合ってくれないか?」

「え!?」
「え?」

私よりも先に反応したのはアランだった。
アランの声に、私もウィルソンもアランを見ると、アランは少し気不味そうに口をギュッと真一文字にしている。

「・・・なにか、問題かな?アラン殿。」

「え、あー・・・いや、フィンセント殿下が聞いたら嫉妬しそうだなって・・・」

「それは君も同じだろう?」

「お、俺は幼なじみで、同じクラスですし・・・」

「それに、フィンはそんなに心狭くないから大丈夫だと思うよ。ね?リリアーナ嬢?」

急に話を振られてしどろもどろになりながら必死に答える。

「え!?あー・・そうですね、そんなに懐狭い方では無い・・・かも?」

(いや、絶対怒りそうだけど!でも、隣国の王子に、自国の王子は心狭いんです!なんて言えないよね!?)

「ほらね?じゃあ、明日の放課後に教室まで迎えに行くから。」

ウィルソンはそう言うと、いつの間にあんなにあったお菓子を食べていたのか空っぽになったお皿をトレーに乗せて後ろ手に手を振りながら去っていった。

残されたアランと私は、気不味さが残って先ほどのように会話が弾まない。そんな雰囲気のまま、アランは何か考えているようで寮の玄関まで送ってくれてアランとは別れた。





「え?ウィルソン殿下に誘われたんですか?」

ユーリに今日あった事を話したら、聞き返された。

「そう。急になんでだろ?私、この国のこと愚か世界のことあまり知らないのに案内してとか言われたらどうしよう!?」

「ん~大丈夫ですよ~。デートに誘った時点で行き先とかプラン決めるのは殿方のする事でしょう?」

「え?デートじゃ無いでしょ?だって、婚約者がいるってしかも、王太子の婚約者って分かってて誘ってるんだよ?」

「いやいやいや、婚約者の不在のうちに誘う時点で逢引きでしょう!?それに、ここ最近、ウィルソン殿下は結構色々な噂があるようなのでその気がないなら気をつけてくださいね?」

ユーリの言葉に、取っ替え引っ替えだったウィルソンを思い出した。

(あぁ・・・この時点から取っ替え引っ替えだったんだ。あ、だからアランはあんなに渋ってたのかな?リリアーナが心配で?・・・本当に、リリアーナの事好きなんだなぁ。なんでもっと早く、分かりやすく伝えなかったのか・・・。まぁ、今更言ったって遅いけどさ。アランの気持ちはリリアーナにあって、でもリリアーナの中身は私で、それを言わずにずっと騙してるみたいになるのはなんか、やっぱり違うよね。嫌われたとしても、アランには知る権利があると思う。・・・よし、ちゃんとアランには伝えよう。じゃないと、アランも次にいけないだろうし、ね。)

私は、人知れずアランに告白することを決意した。

「お嬢様、お食事の時間です。食堂へ行きましょう。」

静かに仕事していたヘンリーが食堂へ行くように促してきた。私とユーリはヘンリーについて部屋を出る。

「あ、お嬢様!お嬢様の仮装パーティーの衣装が届いたようですので食事の後に一度着てもらってもいいですか?大丈夫だとは思うんですが、万が一手直しがありましたらわたしがしますので・・・。」

「もちろん!できたのね?楽しみだわ~。ふふふ」

「私、一足先に確認のために見たんですが、とても素晴らしい出来でした!早くあの衣装を着たお嬢様を見るのが楽しみですっ!」

ユーリと衣装の話をしていると、あっという間に食堂に着き席に座ると、ヘンリーはテキパキと今日の食事の用意をしてくれた。
おいしそうな食事が色々と並べられて、私はそこまで大食いではないので全部食べ切れるように小皿に取り分けてきてくれた。

「ヘンリー、ありがとう。」

一人で食べる食事はあまり好きではないけれど、侍従たちとは食べてはいけないみたいなので仕方なしに一人で食べ始める。
他の席では、友達同士で食べていたりしているけれど、私にはまだそこまで仲のいい友達がいないから仕方ない。

(いつか、気の置けない同性の友達ができるといいな・・・。)

マナーには気を付けて、食事を終えて部屋に帰ろうとした時、ちょうどタイミングよくフィンセントとアーノルドが帰ってくるのが見えた。

「ふぃ、フィンセント様!お兄様!」

私が二人に駆け寄ると、フィンセントもアーノルドも目に見えて嬉しそうに破顔した。

「リリアーナ。出迎えに来てくれたのかい?」

フィンセントは駆け寄った私を外だというのに、しかもアーノルドの前だというのにギュッと抱きしめてきた。

「へ?あー、いや、ちょうど食事を終えて部屋見戻るところだったんです。今終わったんですか?」

「あぁ、やっと今日の分は終わったよ。っても明日もまたやることが山積みだ。・・・殿下、リリアーナが困っていますのでそんなに外で引っ付くのはやめてください。」

アーノルドが私の匂いをこれでもかと嗅いでいるフィンセントを無理やり引き剥がしてくれた。

「今日は昼からずっと我慢してたんだぞ?充電くらいさせろ!」

「たった8時間弱離れてただけで・・・。はぁ。明日も朝早いんですからね。早く部屋に戻って食事して湯あみして寝てくださいよ!」

アーノルドが呆れたようにフィンセントに言って、私の頭を人撫でしてから「おやすみ」と柔らかく笑って去っていった。
アーノルドが去って、再びフィンセントが抱き着いてくる。

(・・・さすがに、玄関の目の前でこんなのずっとしてられない!)

「ふぃ、フィン?少し、座ってはなさない?」

「ん?そうだな。ここだとゆっくりできないしな。じゃあ、こっち。着いてきて。」

フィンもさすがにダメと思ったのか、玄関を出て少し歩いたところにあるベンチに腰掛けた。
ヘンリーとユーリには、玄関先で待っていてもらう様に言って、私とフィンセントの二人きりになった。

「あぁ~疲れた。書類仕事と、スピーチを考えてその練習と、衣装合わせとって本当に目まぐるしかったよ。」

「お疲れさま、フィン。」

今日あった事を話してくれて、忙しかったのがとてもよく分かった。

「で?今日は何してた?まっすぐ寮に帰ってきた?迷子になったりしなかった?」

不意に私の事を聞かれて、今日の事を考え巡らせる。

「今日は、アランと放課後に食堂に行ったよ。そこのね、ケーキとかお菓子が絶品で!なんでいままで行かなかったんだろうって後悔したよ~。もっと早くに知ってたら自分のご褒美にいっぱい行ったのに!」

「・・・へぇ。」

「今度、フィンも一緒に行こうね!甘いの苦手な人も食べられるお菓子も置いてあったから、フィンが行っても楽しめると思うしっ!」

「そうだな、落ち着いたら行こう。」

「あ、あとね、アランと話してたらウィルソン殿下が来てね、」

「ウィルソンが?」

「うん。ウィルソン殿下、甘いもの大好きなんだね。これでもかってくらい私以上にケーキがトレーに乗ってたよ~。しかもね、食べるのがとっても早いの!」

「甘い物好きだったんだな。あいつ。」

「フィンセントは?って聞かれたよ。生徒会の仕事が忙しいみたいって言ったら、アーノルドも同じ事言ってたって。あ、それでね、暇なら明日、一緒に遊ぼうって誘われたよ。」

「ふーん・・・え?誘われたの?」

「うん。」

「で、裕美は了承したのか?」

「うん。隣国の王子様だよ?私ごときが断れるわけないじゃない?っても、返事聞く前に颯爽と去っていったけど。」

「・・・アランのヤツ。何やってんだよ。」

「アランが王子様に歯向かえるわけないでしょう?あ、でも、フィンセントが嫉妬するかもしれないですよ?って少し凄んでた。」

「・・・・それでも、ウィルソンは引かなかったのか?」

「うん。そこまで懐狭い男じゃないだろって。」

「・・・はぁ。裕美、行ってもいいけど、絶対に人気のない所にはいかないようにな?なんなら、アランを連れていきな?」

「え?う、うん。アランの予定が合ったらいいと思うけど・・・明日は確か、アランは剣術の鍛錬の日じゃなかった?だから無理じゃない?」

「・・・・・・・はぁ。あ、裕美が行きたくないなら、俺からウィルソンに断っとくけど?」

「別に私暇だし、大丈夫だよ。」

「・・・・そうか。わかった。でも、本当に人気のない所にはいくなよ?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

私がお礼を言って握っているフィンセントの手を擦ると、フィンセントが抱き着いてきた。

(やっぱり、嫌だったかな?やっぱり、行かない方が良い?)

肩に埋めたフィンセントの頭を優しくなでると、首筋にチュウっとフィンセントが吸い付いてきた。
ゾワワっと腰にむず痒いような電流が走る。体をくねらせてフィンセントを離そうとするけれど、フィンセントは髪をかき分けた左手で首を固定して、右手は私の腰を離れない様に抱きしめている。

「ん、んん・・・。い、フィン?」

何度かうなじや耳を食まれて、だんだんと下に下がっていく。
着ているワンピースの首元をグイッとめくって、鎖骨にも痕をつけられた。

「ん、これで良し。」

満足そうに自分で付けた痕を指でなぞって、最後に唇を合わせてきた。

「よし、じゃないでしょう!?外だよ!?ここ!」

「はは。裕美、顔真っ赤。」

フィンセントに抗議するも、優しく頬を撫でて笑われてしまった。

「~~~~もう、知らない!」

そう言って私が立ち上がると、フィンセントも一緒に立ち上がった。そして、一度きつく抱きしめられる。

「・・ちゃんと話してくれてありがとう。」

「・・・・うん。」

フィンセントと別れて、自室に戻って仮装パーティーのフィッティングをしてからお風呂に入ってその日はすぐに眠りについた。
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