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第27話※

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「ん、はぁ‥‥、はぁ‥‥裕美‥‥。」

ぼやけた視界の中で、フィンセントが私の上に覆いかぶさっている。
二人の荒い息遣いだけが部屋に響き、窓にはもう、日が差し始めていた。

私はもう、腕の一本も動かすのも億劫なくらい疲れ果てている。そんな私の上にいたフィンセントが、汗を滴らせながら次第に私の胸に落ちてきて、肌と肌が触れ合った。

(あ‥‥れ?なんで、こんな事に‥‥?)

薄れゆく意識の中、フィンセントの腕の中でいくつものキスを受けながら私は目を閉じた。





ーーーー遡る事8時間前。


私たちは、ジョンさんとカレンさんの経営している酒場でご飯を食べていた。

「フィン~!なんでそんなにかっこいいの?」

「え?裕美は、俺のこと、かっこいいって思うのか?」

フィンセントが嬉しそうに言うが、決して褒めたわけではない。
・・・たしかに、嫌いな顔なわけないけど。

「んー‥‥顔はね。さすが、メイン攻略対象者だよ、ほんと~」

「攻略?なんだ?」

「でもさ、いっくら私が好きになっても、どーせ2年後は主人公に惚れるんだから好きになんかならないんだから!」

「?裕美、飲みすぎだぞ。ほら、水飲め!」

「んー‥‥私は、お貴族様なんて器じゃないんだよー。庶民なんだから、しょ、み、ん!!」

完全に酔っ払ったって自覚はある。
だって、もう頭の中の”声”もそんなに聞こえない。
フィンセントは、私よりもペースも早いし飲んでるお酒も強いはずなのになんであんなに涼しい顔をしているのか。

「‥‥優しいねぇ。」

水を手渡されて、心配そうに見つめるフィンセントに微笑む。

「っ!そ、そうか?」

「うん、フィンは優しかったんだねぇ~。この優しさを、リリアーナにもしてあげてたら‥‥。」

私がこっちに来ることなんかなかったのに。
そう言いたかったが、上手く口が回らなかった。

「するわけないだろ。」

「えぇ??なんでぇ???顔、同じだよ?」

一気に、フィンセントが眉を寄せて嫌そうな顔をした。

「確かに、顔は同じだけどそれだけだ。俺が優しくしたいとか、構いたいって思ったのは”裕美”だけだ。リリアーナじゃない。」

私なんて、リリアーナの顔があるから可愛くなれてるだけだし。
リリアーナがもう少し、人に優しくできる子だったら違ったはずなのに。

「‥‥納得いってない顔だな。」

呆れたように、フィンセントが言った。

「だって、フィンは‥‥私のこと、おもちゃとしか思ってないでしょ?いまは、物珍しさで構いたくなってるだけだよ。」

「それは、ない。」

きっぱりと言われた。
でも、実際、オモチャって言うの聞いたもん!‥‥なんて、言えないけど。

「なんで言い切れるの?これからの事なんて、わからないじゃない!」

「ん~‥‥だって、こんなに一緒にいて”楽しい”って思うのも、”愛おしい”って思うのも、裕美が初めてだから。この気持ちが変わることはない。よって、婚約は解消する気は無い!」

「そんなの困るよ~‥‥」

「なんでだ?俺の妻になれば、苦労なんてさせないぞ?」

「リリアーナはさ、王太子妃の教育を受けてたからいいけどさ、私は動きは真似できても、話すこととかかんがえかたなんて庶民そのものなんだから!なにより、フィンと結婚しても苦しいことばかりになるんだから‥‥!」

そう、主人公が他の攻略対象者とくっつくと、確かにリリアーナが王太子妃になることもあった。だけど、どれも全部愛されないと言う心労&鬱で自殺っていう結局幸せになれないで死んじゃうのだ。それを知っているから、気安くフィンセントに寄りかかれない。

「そんな未来、絶対にない。俺が、裕美を死なせる?愛さない?そんな事なるわけないだろう!」

言葉に出てたようだ。
フィンセントがガン切れしている。

「でも、主人公に‥‥っ!!「だから!!!何処の誰が来ようと、俺は裕美以外と生涯を共にする気は無い!」

ガシャン!!!

フィンセントが持っていたグラスを机に強く叩きつけた。
お店の中はシーーーンとして、みんなが私たちを見てきて、止めた方がいいか、どうした方がいいかと困惑しているのがわかった。

それでも、私は納得いかない。だってー‥‥

「‥‥わからないよ、私の何処をそんなに好きになったのか。」

あんなに”面白そう”ってだけで近づいてたくせに。
平気で、他の女の子と踊ったてくせに。
オモチャだって言いまくってたくせに。
本当の顔だって、知らないくせに。

「‥‥わからないなら、わからせてやる。」

フィンセントが立ち上がって、私の腕を掴んで歩き出した。
私は、引かれるまま後を追うしか出来ない。
お店を出て、足早に市場を抜け馬車に入れる。

「ふぃ、フィン!何処行くの?」

「来ればわかる。」

やっとの思いで出た言葉にフィンセントは、それ以上は何も言わずに、馬車を走らせた。





馬車でしばらく行くと、見た事ない、とってもメルヘンな可愛らしいコテージが立っていた。

「わぁ!可愛いっ!」

思わず、私は声を上げて感激してしまった。

「ここは、俺の持ち物の家なんだ。こじんまりしてるが、まあ、使い勝手も良くて気に入ってる。」

「へぇー‥‥で、ここで何するの?」

「ここは、明日まで俺と裕美しかいない。」

「‥‥え?それってーー・・「俺の本気を伝えるなら、ここ以上の場所はないだろう?」

「‥‥はっ!?」

フィンセントは、ニッコリと笑ったと思ったら、ヒョイッと私を抱き抱えて、サッサと中に入って行く。私は状況が掴めず唖然としてしまって、あっという間に寝室に連れられて大きなベッドの上に降ろされた。

「え?え?うそでしょ?なんで‥‥っ!」

頭が追いつかなくて、全てに対して疑問だらけで何から聞いたらいいかさえわからなくなる。

「裕美が俺のこと信じないからだ。裕美が悪い。」

子供のように拗ねたかと思ったら、いきなり口付けられた。
それは、とても性急で、この前の事を思い出させるような優しくて甘いキスだった。

「ん、んん‥‥っ、はぁ‥‥ふ‥‥」

「裕美、舌、出して。ほら。いい子。」

「ん‥‥ゃ‥‥ふぅ‥‥んんっ。」

頭を撫でて、耳を弄って、蕩けるようなキスをしたと思ったら。スルリといつの間にかフィンセントの手が下に降りてきて、胸元の紐を解かれた。

「んぅ‥‥!?」

「‥‥下町の服は、脱がしやすいな。」

露わになった胸をまじまじと見ながら、何かに関心している様子のフィンセントに、私は恥ずかし過ぎて自分の腕で胸元を隠す。必死に、フィンセントとの距離を開けようとするが、フィンセントがニヤリと笑ったと思ったら、次の瞬間には私の両腕を一つにまとめてベッドに縫い付けていた。

「やっ!やめて!フィンセント様、おねが‥‥「なんで?ここは、やめないでって言ってるぞ?」

隠すものがなくなった乳房を揉みしだきながら、楽しそうにフィンセントが右手で胸の先をピンっと弾く。

「んっ!」

「裕美はさ、自分の魅力を分かってなさすぎだ。」

クリクリと、押したりなぞったり、右手で胸を弄りながら、フィンセントは余裕の顔をして話し出した。

「ゃっ!‥‥ん。」

「今日だって、こんな可愛い格好して‥‥。俺がどれだけ我慢したと思ってるの?」

そう言いながら、優しく胸を撫でる。

「ふぅ‥‥んんっ‥‥。」

「どれだけの男が、見てたか分かってる?」

フィンセントが、わざと私の目の前に顔を近づけて視線を合わせて聞いてくる。

「そ‥‥れは、リリアーナだからぁ‥‥あっ!あんっ!」

予告もなしにいきなり乳房に吸い付かれて体が跳ねる。

……ピチャ‥‥、チュッ‥‥‥‥じゅ‥‥じゅる‥‥

「ひゃ‥‥あぁ‥やだぁ‥‥」

「だって、分かってないじゃないか。”リリアーナ”だからじゃない。”裕美”だから、みんな見てたんだ。」

「??」

何を言われてるのか分からなくて、必死に考える。でも、いっくら考えても分からないものは分からない。

「はぁ‥‥本当に、困った子だね、裕美は‥‥!」

ぢゅ‥‥っ

首筋を舐められ、鎖骨に吸い付かれる。
その間も、胸元の微弱な快楽がずっと与えられてどんどん思考が溶けていく。

(なに、を言ってるの?みんなが見てるのは‥‥リリアーナの綺麗な姿だからじゃない‥‥!)

私は、頭の中でしか反論することが出来なかったーー・・。




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