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第2章この度、学生になりました。
34*下町の買い物は楽しいのです。
しおりを挟む「じゃあ、これで買いたいものは全部ですか?」
「うん。」
刺繍糸数種類と、ノートを3冊。書きやすそうなペンを数本買いました。
あとは、コロッケを買いに行けば今日のミッションはクリアですっ!
「お嬢はほんと、物欲がないですよね~。」
「そうかな?結構、買ったと思うんだけど。」
「うーん。そんな事ないですよ、そんな量は微々たるものすぎます。それに、貴族だったら従者に買いに行かせるだけですよ?普通。」
「えー‥‥でもなぁ。それだとこんな可愛いのがあるとかってわからないじゃない?」
ね?と言って、私は今日買った、カエルの飾りのついたペンを出しました。
「‥‥それ、そんなに可愛いですかね?」
・・・ジンには、可愛くは見えないようです。残念。
「んー‥‥この、素朴な感じがとっても可愛いけどなぁ。」
私は、カエルの飾りを揺らしながらペンを見ました。うん。可愛いです。それに、ペン先が0.3mmのペンとかこの世界じゃ珍しいからか少しペンにしては高かったんですけどね。絶対、書きやすいです。もちろん、試し書きもしましたが、とても満足いく書きやすさでした。
「はぁ~お嬢の趣味は何年経ってもイマイチ理解できません。まぁ、だから一緒に買い物に来るのも、楽しいですけどね。」
そう言って、ジンは頬をかきながら笑ってくれました。
「私も、ジンと一緒の買い物が一番楽しいよ!」
そうやって、話しながら市場の中を歩いていると、あっという間に端っこまで来てしまいます。そこで、わたしはフッと、懐かしいあの場所を思い出しました。
「ねぇ、ちょっと、寄り道しても良い?」
「はい、良いですよ。」
ジンが快く了承してくれて、私たちは久々にあの場所へ向かいました。
・
・
・
懐かしい秘密基地に行くと、そこには先約がいました。
「‥‥あれ、チャコ。来たんだ。」
ジョーは、まさか私が来るとは思ってもなかったようで、すごく驚いています。
「あ‥‥うん。買い物してたら、懐かしくなって。ジョーは?」
「うーん。俺はまだ、たまに来てるよ。ここは、なんだか落ち着くから。」
「そうなんだ。‥‥うん、わかる。落ち着くよね。」
少しだけ気まずいですが、ジョーはいつも私が座っていた場所にハンカチを置いてくれておいでと手を振ってくれました。ジンは、空気を読んでか、後ろの方へ行って邪魔しないようにしてくれています。
「‥‥」
「‥‥」
二人でいるのも、久々に感じてしまいます。こんなに、他人行儀で話さなかったのは今までになさ過ぎてどうしたら良いか分からず、ジッと黙っているしかありませんでした。そんな沈黙を破ったのは、ジョーでした。
「‥‥ディナンと、うまく行ったんだってね。」
「あ‥‥‥‥う、うん。」
いきなり本題っ!!!
避けては通れないとは分かっていても、幼い時からずっと好きだと言ってくれて、尚且つ、兄弟のように育って来た私としては、とても気恥ずかしいし、なんていうか‥‥申し訳ない気持ちになってしまう話題です‥‥。
「よかったね。チャコ。」
「あ、ありがとう。」
「あぁ~でもこれで、ちょっとスッキリしたよ。」
急に明るい声で言われて、思わず下向いていた顔を上げて、ジョーの方を見てしまいました。
「っ!」
私の方を見て、ジョーは意地悪そうに笑っていました。
・・・そんな風に笑うジョーは、私は見たことがありません。
少しだけ驚いて、でも、嫌な笑いではなく、とてもカッコよくて、私は思わず見惚れてしまいました。
「だってさ、これからは堂々とディナンの邪魔できるし?チャコに内緒で色々裏回して良い子ちゃんしなくて良いし。そう思うと、まぁ暫くは、ディナンに任せても良いかなって思えるよ。」
「え?それって‥‥?」
「諦めるつもり、無いから。チャコのこと。」
「‥‥へ?」
「俺が、どれだけチャコのこと好きか知ってる?」
普通に言われて、少し考えましたが全然分かりません。
「うん。俺も、分からない。でも、無理なんだ。チャコが好きで、大好きで仕方ない。だから、俺の気の済むまでずっと好きでいるから。」
「覚悟して置いて」と手を取られたと思ったら、指先にキスされてしまいました。
その仕草がとても色っぽくて、いつの間にか大人に近づいていることを知らしめられた気分です。
「ハハハ。チャコ、顔真っ赤!」
「だ、だって!いつものジョーじゃないんだもんっ!!いつの間にそんな‥‥カッコよくなってるのよ‥‥」
「え?なんて?」
自覚している分、指摘されてとても恥ずかしくなってしまい、またさらに赤くなってしまったように感じました。幸い、最後の言葉は声が小さ過ぎて聞こえなかったようです。
でも、またジョーと普通に話せていることが何よりも嬉しいです。嬉しくて、頬が綻んでしまいます。
ジョーは、私にまた手を伸ばして頬をーーー・・・
「はーーーーい、ここまででーーーーす。」
触るよりも先に、ジンが大きい声を出しながらジョーと私の間に腕を伸ばしてヨッコラセと言いながら割り込んで来ました。
「おい、ジン。ちょっとは空気読め。」
ジョーが今まで聞いたことないくらいの刺々しい言い方でジンを攻めます。
「空気読んでの、これですけどねぇ?仲直りまでは、待ってあげたでしょう?」
ジンは、いつもの倍くらい黒い笑顔で対抗しています。
「‥‥ちっ」
あのジョーが!!!まさかの、舌打ち!!!??
可愛くて、素直なジョーしか知らなかった私は衝撃でしかありません。
でも、ジョーもジンも気にした様子がないところを見ると、このジョーを知らないのは私だけだったようです。・・・いいけど。
「お嬢、そろそろ帰らないとまた、怒られますよ?」
「そうね、帰ろうか。ジョーは?」
「んー‥‥俺は、もう少しだけここに居ようかな。」
「遅くなったら、グラムさんも心配するよ?」
「うん、わかってるよ。大丈夫、すぐ帰るから。ありがとう。」
少し、気になりましたが私は、あえて何も言わずにジョーと「また明日、学校でね」と言って別れました。
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