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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。

17*ディナンの誕生日会です。

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皆さん、こんにちは。ティナ・エヴァンスです。
只今、馬車に揺られ、お父様と王宮へ向かっています。
もうすぐ秋になろうと言う本日は、ディナンの誕生日なのです。
誕生日会をすると言う事で、お友達の私とジョーのがお呼ばれされました。

今日は、何人かの高貴貴族の方のお子様も呼ばれているらしいので、私は少し緊張しています。

だって、子供とはいえ貴族と関わるのなんて初めてに近いですし、ましてや王宮でパーティーなんて初めてです。ちょっとおめかしして、いつもよりも髪の毛を複雑に編み上げて、私のお誕生日にディナンからもらった髪飾りをつけて万全の状態で王宮へ出動です。

ジョーも一緒なのでそこはとても心強いです。
そんな事を思っているとピアス風にした連絡用の結晶石が光りました。ソッと石を触って魔力を込めるとジョーの声がします。

『チャコ、いまどこ?僕は今ついたんだけど‥‥』

『ジョー、私はもう見えているからあと少しで着くと思うよ。』

『そっか。そしたら、父上と玄関らへんで待ってるね』

『うん。ありがとうね』

軽いやりとりをして連絡を切ります。本当、電話みたい。メールはできないけどとても便利です。この結晶石を作ってから連絡できることが嬉しくて、よくディナンやジョーと夜中まで話してしまってセバスチャンに何度も怒られ20時以降はギター同様禁止にされてしまいました‥‥。初めて携帯を持った中学生並みにはしゃいでしまってお恥ずかしい限りです。。

ジョーと連絡を切ってから数分後馬車が王宮に着いたようです。
扉が開けられ、お父様が先に出て、私を抱き上げて下ろしてくれました。

「馬車でごめんな、次は車で来ような。」

コソッと少し申し訳なさそうにお父様が言いました。

「なんで謝るんですか?私、お馬さん大好きですよ?とても大きくてかっこいいではないですか!」

そう言ってお父様にギュッと抱きつくとお父様も私の事をギュウっと強く抱きしめてくれました。

「チャコ!」
「クロード!」

お父様と手を繋いで王宮の玄関に入ると、ジョーのお父様と、正装姿のジョーが笑いながら手を上げて呼んでくれました。親子で同じ仕草をしていて二人が似ているだけに笑ってしまいます。

お父様とジョーのお父様は学友で気の置けない仲らしく、ジョーが私と同じ年という事もあり記憶もない頃からとても可愛がってくれている方です。

「ジョー、待っててくれてありがとう。ハート団長様、お久しぶりでございます。」

お父様と挨拶していたジョーのお父様に挨拶をするとニッっと笑って挨拶を返してくれました。

「あぁ、チャコちゃんそんなに硬くならないで。いつものようにグラムさんって呼んでよ。今日もとっても可愛いね。少し見ない間にまた綺麗になったんじゃないか?」

「はい、グラムさん。綺麗だなんて‥‥嬉しいです。」

ジョーのお父様改め、グラムさんはジョーに似たとてもイケメンです。まだ、20代後半だからおじさんとは思えません。私のお父様もかっこいいですが、グラムさんは周りにはいない強面のイケメンなのです。多分、今まで出会っている人の中で一番好みの顔の人ですね。だって、このガッチリした筋肉、なのに太すぎず、細すぎず、子供に優しくて奥様思いで、働き者で、とても強くて‥‥良いところを上げたらきりがないです。騎士服もとても似合っていて格好良いです。

少し俯いて赤くなっているとジョーが隣に来て手を繋いで来ました。

「ジョー、お前も大変だなぁ~気を抜くと、あっという間に他の奴にチャコちゃんを、かっさらわれていきそうだ。はっはっはっ」

あぅ。豪快に笑うのも格好いい‥‥。

「本当に、気が気じゃないです。チャコは日々可愛くなって言っていますからね‥‥」

ジョーが手をギュッと握って肩を竦めました。

「あら、ジョーも格好よくなっているじゃない?さっき通った子もジョーの事見てほっぺた赤くしてたよ?」

「他の子なんてどうでも良いんだよ!チャコに格好いいって思われたいだけだもん。」

ジョーが少し不貞腐れたように言うのがとても可愛くてニヨニヨしてしまいます。
ジョーの真っ直ぐな愛情表現もグラムさん譲りなんだろうなぁ。ジョーと結婚する女の子は幸せ者ですね。

「一途にチャコを想ってくれてありがとうな。でも、約束は約束だ。私も、ジョーを応援しているよ。でも、今は渡さないよ。」

お父様がニコニコと私の事をヒョイっと抱き上げてしまいました。
手が離れて残念そうにするジョーに小声で謝ります。
お父様は手を繋がらせたくないのか、抱き上げたままパーティー会場である庭へ向かうようです。

「お父様、私、ちゃんと歩けます。‥‥少し恥ずかしいです。」

「あぁ、照れてるチャコもとっても可愛いよ。」

「あの、そう言うことではなくて、下ろしてください。」

「いいのいいの。すぐ着くから。」

お父様は私の苦情を無視することに決めたようです。

「ははは。クロードの親バカもここまで来ると困ったものだな、頑張れ、チャコちゃん!」

そう言ってグラムさんは楽しそうに笑っています。
私はお父様の腕の中でハァと1つ溜息をついてしまいました。

会場に着くと、そこには父兄の姿はなくて子供だけのパーティーのようです。
初めて会う子達ばかりで少し緊張がぶり返して来ました。

「チャコ、終わる頃迎えに来るから走り回ったり、木に登ったりしてはダメだよ?大人しく、特に男の子には近づかないようにね?」

「はい、わかりました。ちゃんと良い子にしてます。」

少し不安が残るのか、お父様はグリムさんに引っ張られながら会場を後にしました。
お父様達を見送った後、またジョーが手を取って歩き出しました。

「‥‥今日のチャコ、本当に可愛くて綺麗だ。」

「ふふ。ありがとう。ジョーも、いつもの何倍も格好よくて最初、見惚れちゃった。」

「本当?」

「そんな事で嘘つかない。本当に決まってるでしょ?」

「うん、嬉しい。」

ジョーが頬を染めてハニカムのが可愛すぎてたまりません。
会場に入るととても美味しそうなケーキやお菓子、食事が並んでいます。

好きな物を取ってテーブルで食べるようです。

「ジョー、ケーキがこんなに一杯あるよ!あ、あっちのお肉も美味しそうだねぇ」

「そうだね、お腹減ったね、早速取りに行こう!」

そう言ってジョーと二人でご飯の列に並びます。
テーブルに着いて二人で食べ出すとほっぺたがおちそうなくらい美味しくて、感動してしまいました。

「おぅ、ジョー!」

知らない男の子がジョーに話しかけて来ました。

「あぁ、エド。君も来てたんだね。」

「まぁな。あっちで、ボール蹴りしてるんだ。一緒にやろう!」

あら、サッカー?私もやりたい!‥‥でも、女の子はやっちゃダメだよね。お父様も大人しくって言ってたし‥‥

「ん~~僕は良いや。チャコと一緒にいる。」

「チャコ?」

断られるとは思ってなかったのか男の子の眉にシワが出来ます。

「はじめまして。私はエヴァンス伯爵家の長女、ティナ・エヴァンスと申します。」

椅子から降りて、貴族の礼をするとエドと呼ばれた子も挨拶を返してくれました。

「あ、あぁ。私はブラウン公爵家三男のエド・ブラインだ。」

挨拶が終わって私がニッコリと笑いかけるとエドは頬を染めてシドロモドロになって何か言っていますが声が小さくて聞き取れません。

「チャコ、そんなに簡単に愛想を振り向かないで。ココにいる中で断トツに可愛くて綺麗なんだからもっと自覚を持って。‥‥とりあえずエド。僕は今日はいけないから。また今度な。」

そう言ってまだ食べかけだったのに手を引かれて移動させられてしまいました。

「ジョー?私は1人でも大丈夫だったのに。」

「いや、チャコを1人にするとか絶対ダメだ。」

って言ってもなぁ~さっきから女の子達の視線が痛いんだよね。
ジョーは家柄も容姿も良いし、物腰柔らかいから話しやすいし、騎士志望だから将来有望だし。女の子がお近づきになりたいのに、近くに私がいて近づけないって感じで‥‥なんだか私、悪役令嬢みたい!?え、やだ!!

「あ、私、ちょっとお手洗いに行きたくなっちゃった!ジョー、ちょっと待ってて!」

そう早口で言って、ジョーが止めに入る前に少し小走りでお手洗いに向かいます。
少し離れると、ほら、私が離れるタイミングを狙ってた女の子が何人もジョーに話しかけています。やっぱり、何処の世界でも何歳だとしても女は女って事ですね。怖い怖い。ジョーは選り取り見取りね。

「は~~これから何しよ~・・・」

シルバーのストレートヘアの薄いラベンダーの瞳をしたものすごく可愛い女の子と目が合いました。うわぁ、とっても可愛いよ、美少女だよ。こんなにお人形みたいな女の子初めて見た。うわぁ~~‥‥

「あ、あの、なにか‥‥?」

うわぁ‥‥声まで可愛い。すんごく可愛い。鈴がなるような声ってこんな感じね。あれ?赤くなって来てない?なにそれ、可愛すぎるっ!きゃーっ恥ずかしがってる!口元抑えて目線下げちゃって、耳まで真っ赤!首も真っ赤!きゃーーー可愛い!可愛いがすぎる!!

って、ハッ!!!!めちゃくちゃ私近づいてガン見してた。

「あ、ごめんなさい!あなたが、とても可愛くて‥‥思わず見入っちゃっていました‥‥不審者っぽかったけど、不審者じゃないんで!!ごめんなさい、怖かったですよね、すみません‥‥」

慌てて謝ると涙目の美少女はホッとしたようにヘラリと笑ってくれました。

「すごい見られてちょっと怖かったですけど‥‥もう大丈夫です。」

うわわわ!!いい子!!とても良い子見つけちゃった!!なにこの子、友達になりたい!!守りたい!!!

「あのっ!私、エヴァンス伯爵家長女、ティナ・エヴァンスと申します!あなたの可愛さに惚れました!!良かったら私と、友達になってください!」

私は勢いで人生初の告白していました。
90度に腰を曲げて手を差し出して、日本ではよくある、あの告白形式です。
普通に貴族の礼とか忘れていました。しまった!と思ったけど、やっちゃったものは仕方ない。返事を待つしかない。

ギュッと目を瞑って返事を待っていると、遠慮がちに美少女が手を取ってくれました。
嬉しくてバッと美少女を見ると戸惑いがちにニコッと笑ってくれます。はわぁ‥‥天使‥‥天使がいる‥‥。

「私は、イルハウェル公爵家長女、リリア・イルハウェルです。私で良かったら‥‥お友達になってください。」

ハニカミながら一生懸命言ってくれて感無量です。‥‥て、公爵家!!??
た、大変高貴なお家の方に不敬な事をしました‥‥。でも、友達になったんだから大丈夫よね!怒ってるなら友達なんかならないだろうし!

「うわわ。ありがとうございます。あ、私のことは、チャコって気軽に呼んでくれると嬉しくです。」

「はい。あ、私のことはリリと呼んでね。」

「リリ‥‥あぁ、とてもお似合いのお名前‥‥はわ~~‥‥可愛い。」

「ふふふ。チャコは可笑しな人ね。」

「不敬な態度をとってすみませんでした‥‥。」

「いいの。私、お友達って初めてだから嬉しい。本当は今日も来るのどうしようか迷ったんだけど‥‥チャコに会えたから来て良かったわ。」

もう、本当に可愛くて良い子すぎる。とにかく、私のどストライクな女の子。
あぁ、今日来て良かった。神様‥‥いや、ディナン、ありがとう!!

天を仰いで感謝を捧げていると、結晶石が光りました。

『チャコ、どこ?』

『あ、ジョー‥‥いま、飲み物の所らへんだよ~友達とは話せた?』

『やっぱり僕の事わざと置いて言ったんだ‥‥。ちょっと待ってて。今行く』

うわぁ、ジョー怒ってたな。でも、女の子たちに恨まれたくなかったし‥‥。
心の中で言い訳をしつつリリと話しているとすぐに、ジョーが早足で迎えに来ました。

「チャコ!いつまでも戻ってこないから心配したよ。」

「あ、ジョー!あのね、新しいお友達と話してたの。こちらは、リリ。リリ、こちらは幼馴染のジョーです。」

「お初にお目にかかります。ハート侯爵家次男、ジョー・ハートです。以後お見知り置きを。」

ジョーがキリッと貴族の礼をします。

「あ、えと‥‥私は、イルハウェル公爵家長女、リリン・イルハウェルです。」

リリはジョーを見て少し頬を染めました。おや?おやや~~??これはいい感じですか?そうなのですか??うは。

ニヨニヨしている私にジョーが恨めしそうな目線を投げて来ました。

「ほら、チャコ。そろそろ殿下がいらっしゃるみたいだから席についていよう?」

「あ、そうなんだ。‥‥リリ、また後で、お話ししに来てもいいですか?」

「もちろん、待ってるわ。あ、チャコ、折角お友達になったんですもの、普通に話して頂戴。」

「え、いいの?ありがとう!!リリ、また後でね!」

「ふふ。また後でね、チャコ」


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