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第四十話 村の内部へと。 其の二
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「…よっと。もう気絶したふりは必要ない。起きても大丈夫だぞ」
村の敷地内の木陰に入り、外部の山間部からも見通せない場所に辿り着いたYASAI。その上で身を起こしたTURUGIが呟く。
脱力状態からむくりと身体を起こし、次々に地面へと降り立つ、アルス、アカバナム、リュウの三人。その作業をYASAIの触手が助ける。
「ほれ、得物と荷物を渡してやれ」
「うむ。世話になった」
「すまん」
「かたじけない」
大地へと降り立つ三人、そこに、TURUGIの指示を受けたYASAIが、持っていた得物と荷物を投げ渡すのだった。
三人は、それぞれに得物を腰帯に挿すなどし、立派な侍と狩人としての身なりを整えた。
「御苦労だったな、TURUGI」
その時、木陰に立つ四人と一体の前に、様々な体術と術法を体得した黒装束の男が現れた。言わずと知れたこの村の現在の指導者IKUMIである。
じつはと言えば、IKUMIは自力で北方からやって来た異邦人たちと接触し、彼等を村へ迎い入れようとしていた。しかし、たまたま村へと物資を運んできたTURUGIが彼等と接触し、代わりにその役目をやりとげたのであった。
「ああ。通話符が役に立った。やはり文明の利器の力は偉大だな」
ウィンクしたTURUGIがそう言った通りである。
村からそこそこ離れた地点でアルスらと知り合ったTURUGIは、文明の利器たる精霊術文明の通話符を用いてIKUMIのいる村側と連絡を取った。
その話し合いで、パートナーである植物の怪物YASAIに捕らえられた獲物を装い、四人で村へと入る算段を取り付け、早々に実行したのである。
計画は見事に成功。
アルス一行は、ホーリーズ・クランの間者の目を盗み、土塁の囲いを抜けて村の敷地内へと上手く入り込んだのだった。
「ん?」
と、そこでアルスがあることに気付き、そちらの方向に双眸を向ける。
見れば、少し離れた場所の別の木陰には、複数人の娘子等が集まり、アルスたちを見詰めていた。北方諸国連合からわざわざ、自分たち攫われた娘たちを取り返しに侍がやって来たと聞き、それを確かめに来ていたのであった。
「!? おっ、お兄ちゃん!」
と、そこで一人の娘がリュウの姿を見止めて驚愕の叫びを上げた。
「!? その声はニオ! お前! 無事だったか!」
お兄ちゃんと呼ばれたリュウも、親戚の侍の家に、幼女として引き取られた血のつながった妹の声を聞き、そう返答するのであった。
実に、三カ月ぶりの兄妹の再開であった。
村の敷地内の木陰に入り、外部の山間部からも見通せない場所に辿り着いたYASAI。その上で身を起こしたTURUGIが呟く。
脱力状態からむくりと身体を起こし、次々に地面へと降り立つ、アルス、アカバナム、リュウの三人。その作業をYASAIの触手が助ける。
「ほれ、得物と荷物を渡してやれ」
「うむ。世話になった」
「すまん」
「かたじけない」
大地へと降り立つ三人、そこに、TURUGIの指示を受けたYASAIが、持っていた得物と荷物を投げ渡すのだった。
三人は、それぞれに得物を腰帯に挿すなどし、立派な侍と狩人としての身なりを整えた。
「御苦労だったな、TURUGI」
その時、木陰に立つ四人と一体の前に、様々な体術と術法を体得した黒装束の男が現れた。言わずと知れたこの村の現在の指導者IKUMIである。
じつはと言えば、IKUMIは自力で北方からやって来た異邦人たちと接触し、彼等を村へ迎い入れようとしていた。しかし、たまたま村へと物資を運んできたTURUGIが彼等と接触し、代わりにその役目をやりとげたのであった。
「ああ。通話符が役に立った。やはり文明の利器の力は偉大だな」
ウィンクしたTURUGIがそう言った通りである。
村からそこそこ離れた地点でアルスらと知り合ったTURUGIは、文明の利器たる精霊術文明の通話符を用いてIKUMIのいる村側と連絡を取った。
その話し合いで、パートナーである植物の怪物YASAIに捕らえられた獲物を装い、四人で村へと入る算段を取り付け、早々に実行したのである。
計画は見事に成功。
アルス一行は、ホーリーズ・クランの間者の目を盗み、土塁の囲いを抜けて村の敷地内へと上手く入り込んだのだった。
「ん?」
と、そこでアルスがあることに気付き、そちらの方向に双眸を向ける。
見れば、少し離れた場所の別の木陰には、複数人の娘子等が集まり、アルスたちを見詰めていた。北方諸国連合からわざわざ、自分たち攫われた娘たちを取り返しに侍がやって来たと聞き、それを確かめに来ていたのであった。
「!? おっ、お兄ちゃん!」
と、そこで一人の娘がリュウの姿を見止めて驚愕の叫びを上げた。
「!? その声はニオ! お前! 無事だったか!」
お兄ちゃんと呼ばれたリュウも、親戚の侍の家に、幼女として引き取られた血のつながった妹の声を聞き、そう返答するのであった。
実に、三カ月ぶりの兄妹の再開であった。
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