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第三十八話 北方から訪れた者たちの邂逅。其の五

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 振り返った先から発せられた精霊波動に驚いている暇もなく、TURUGIに誰何されたアルス一行。

 覚悟を決めて再び振り返り、TURUGIとYASAIに向き直る。

 三人はこのTURUGIとYASAIを見て、すぐ違和感を覚えた。

 (((何者だ、この男は?)))

 アルス、アカバナム、リュウが三人揃って注目したのは、眼前の男の格好であった。

 一見、脱走奴隷に見えるシンプルな格好の長身の男。

 しかし、ただの脱走奴隷が知性を持つ怪物を連れて呑気に天下の大道を歩いているはずもない。しっかりと観察してみれば、身体は筋骨隆々。手足の鉄製の拘束具も鋭利な刃物で切断された跡がある。
 身の熟しといえば一見隙だらけ。
 だが、そこに社会的弱者の格好、同行する怪物などといった違和感が上乗せされると、男に対する判断が困難なものとなる。
 この違和感ばかりのちぐはぐさが、三人の警戒感を酷く刺激するのだ。

 (あれ等の服装は、意図的なものだ。自分で望んで身に付けているな)

 (擬態だな。ほぼ間違いなく)

 (((首の後ろがチリチリする………早く逃げ出さないといけない相手。とはいえ、今さら逃げ出せる相手とも思えない)))

 (よくよく考えてみれば、あの鋼鉄の拘束具も、防具と打撃用の武器を兼ねている)

 (この男、自ら望んで囚人スタイルをしている)

 (囚人と侮ったら逆にやられる。こいつ、初見殺しってやつだな)

 何者なのかは分からないが、とにかく下手に戦いを挑んではいけない相手。

 三人は同様にそう判断した。

 それ故、三人を代表するアルスが真っ先に同行者に話掛けた。

 「爺、私が交渉役を引き受ける。リュウ殿もよろしいか?」

 「ああ。俺に異存はない」

 「若…お頼み申す」

 「うむ」

 仲間内で話がまとまると、若侍アルスは草叢を切り分け、囚人服姿のTURUGIの待つ天下の王道へと進み出た。
 そして、天下の王道で、とくにアルスたちを警戒する態でもなく自然体のままのTURUGIと向かい合った。

 「私は北方諸国連合の侍、アルス・トロメリアと申す者。貴殿こそ何者だ? 怪物を連れ歩く有様、只者とは思えませぬ」
 
 TURUGIに臆せず、凛々しく質問するアルス。

 その有様を見て取り、TURUGIはヒュー♪と口笛を吹く。しかし、すぐに真面目な表情となって口を開く。

 「失礼。北方諸国の御侍か。と、言うことは、攫われた娘たちを救いに来たか。その僅かな戦力で」

 「!? その事情を知る貴殿は何者だ? 事と場合によっては捨て置けぬぞ!」

 「侮る気はない。俺はその攫われた娘達が、今、どこでどうしているか知る者だ。少ない戦力でよくぞあの娘たちを助けにきた。そう感心しているところだ。その決意、じつに見事だぞアルスとやら!」

 笑みを浮かべてそう言い切ったTURUGIに、アルス、傍で会話を聞いていたアカバナム、リュウが困惑の表情を浮かべる。

 まさか、こんな場所で自分たちがこの地に来た理由を知る者がいるとは思わなかったのだ。それも、攫われた娘たちの所在も知っている言うのである。
 そんな幸運があるのか?と疑うのも当然であった。

 「俺の名はTURUGI。こっちはYASAIだ。お前たちの探している娘たちは、ほら。向こうの土塁に囲まれた村の中に居るぞ!」

 しかし、アルスたちの困惑、不信感などお構いなしに、TURUGIは嬉しそうにIKUMIと攫われていた娘たちが居る村の方向を指差すのだった。 
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