36 / 45
第三十六話 北方から訪れた者たちの邂逅。其の三
しおりを挟む
「良し。成功だ………みんな、先に食事に行ってくれ。俺も下準備を済ませたら、お前たちが用意した朝食を頂こう」
IKUMIの言った通りに複合精霊術は成功した。
SANSAIが掘り出してきた粘土は、土と水の術法によって程よく練り上げられ、簡易的な岩の台座に置かれている。検めながら四方を囲み、水分が気化しないように密封すれば、取り敢えずハニワ作成の準備は完了だ。
また、土と木の術法を組み合わせる精霊術も成功だった。
小山の横穴全体へと大中の大きさの石、炭、石と下側から大量に敷き詰め、湿気を炭に吸わせて底にある横穴から気化させる。
そんな仕組みの土台を造り上げた。
その水捌けの良くなった土台の上に、後々、新窯(登り窯)を整備するのである。
今はここまでしか造成していないが、朝食後に再びIKUMIが中心となって術法を使用し、立派な窯と、窯を覆う屋根を造成する予定だ。
その後に、粘土を捏ねてイメージ通りにハニワや陶器の武具を形作り、焼き入れをする予定だ。
その工程と言えば、数日を使う大仕事になるだろう。
しかし、後のことを考えると必要な事前準備であった。
その後は、精霊術によって作業を大幅に短縮することが可能だ。
登り窯の火力調整や周囲の建物の造成は、精霊術で代替が可能なのだ。
その準備が終わった上で、IKUMIは出来上ったハニワを着込み、外部の侍たちに接触する予定だった。
それで北方諸国連合からやって来た侍を村に迎い入れるという、目的の一つは完了する。
(良し。工程の第一段階は終了。こうやって一つ一つ問題を片付けていこう。物事の継続が目的への一番の近道だからな)
そう考え、ホッと一息吐くIKUMIであった。
一方、IKUMIの導きによって始めて精霊術を使用した面々の多くは、一様に自分たちがやり遂げた成果に感動していた。
中でも精霊術の素養が高い者は、リューコ、アマナ、ノアが見たヴィジョンと同じ光景を観てIKUMIへの信頼を高めていた。
選ばれし者。その意味を少なからず理解したのだ
「………ストライダーさま、私たちだけでなく、多くの物を、この世界を狙うモノから守っていてくださるのね」
「………私も、何となく理解したよ」
「………あれが、選ばれし者なんだね」
目の前にいるお伽噺の登場人物のような存在。そんなIKUMIが、この世、この地になぜ居るのか?
それが理解できた気になった、ニコ、スズ、リチアといった幼女たち。
そんな存在に私たちは助けられたんだ。
何時か、その恩返しをきっちりとしなくっちゃ。
たとえ、この命を賭けてでも。
彼女たちは、そう心に決めるのだった。
「みんな。先に朝食を食べに帰っていてくれ。俺は細々とした準備を終えてから帰る」
「了解しましたの。料理を温めて待っています。さあ、みんな行くわよ!」
「うん!」
「了解だよ、頭領」
「そうする」
「ごはん! ごはん!」
「お腹ペコペコだよ!」
「IKUMIさんの御飯も温めておきます!」
「頼む」
「ご安心くださいませ。それが私たち良き妻の務めです!」
「? ああ。宜しく」
IKUMIがなんだ?と困惑している間にも、幼女たち一行は意味深かな言葉を残し、リーダーであるマリティアに従って家屋敷へと帰っていく。
「俺も後始末を手早く済まして飯にするか」
一人残り、小山へと振り返ったIKUMIは、そう言って手足を動かすのだった。
IKUMIの言った通りに複合精霊術は成功した。
SANSAIが掘り出してきた粘土は、土と水の術法によって程よく練り上げられ、簡易的な岩の台座に置かれている。検めながら四方を囲み、水分が気化しないように密封すれば、取り敢えずハニワ作成の準備は完了だ。
また、土と木の術法を組み合わせる精霊術も成功だった。
小山の横穴全体へと大中の大きさの石、炭、石と下側から大量に敷き詰め、湿気を炭に吸わせて底にある横穴から気化させる。
そんな仕組みの土台を造り上げた。
その水捌けの良くなった土台の上に、後々、新窯(登り窯)を整備するのである。
今はここまでしか造成していないが、朝食後に再びIKUMIが中心となって術法を使用し、立派な窯と、窯を覆う屋根を造成する予定だ。
その後に、粘土を捏ねてイメージ通りにハニワや陶器の武具を形作り、焼き入れをする予定だ。
その工程と言えば、数日を使う大仕事になるだろう。
しかし、後のことを考えると必要な事前準備であった。
その後は、精霊術によって作業を大幅に短縮することが可能だ。
登り窯の火力調整や周囲の建物の造成は、精霊術で代替が可能なのだ。
その準備が終わった上で、IKUMIは出来上ったハニワを着込み、外部の侍たちに接触する予定だった。
それで北方諸国連合からやって来た侍を村に迎い入れるという、目的の一つは完了する。
(良し。工程の第一段階は終了。こうやって一つ一つ問題を片付けていこう。物事の継続が目的への一番の近道だからな)
そう考え、ホッと一息吐くIKUMIであった。
一方、IKUMIの導きによって始めて精霊術を使用した面々の多くは、一様に自分たちがやり遂げた成果に感動していた。
中でも精霊術の素養が高い者は、リューコ、アマナ、ノアが見たヴィジョンと同じ光景を観てIKUMIへの信頼を高めていた。
選ばれし者。その意味を少なからず理解したのだ
「………ストライダーさま、私たちだけでなく、多くの物を、この世界を狙うモノから守っていてくださるのね」
「………私も、何となく理解したよ」
「………あれが、選ばれし者なんだね」
目の前にいるお伽噺の登場人物のような存在。そんなIKUMIが、この世、この地になぜ居るのか?
それが理解できた気になった、ニコ、スズ、リチアといった幼女たち。
そんな存在に私たちは助けられたんだ。
何時か、その恩返しをきっちりとしなくっちゃ。
たとえ、この命を賭けてでも。
彼女たちは、そう心に決めるのだった。
「みんな。先に朝食を食べに帰っていてくれ。俺は細々とした準備を終えてから帰る」
「了解しましたの。料理を温めて待っています。さあ、みんな行くわよ!」
「うん!」
「了解だよ、頭領」
「そうする」
「ごはん! ごはん!」
「お腹ペコペコだよ!」
「IKUMIさんの御飯も温めておきます!」
「頼む」
「ご安心くださいませ。それが私たち良き妻の務めです!」
「? ああ。宜しく」
IKUMIがなんだ?と困惑している間にも、幼女たち一行は意味深かな言葉を残し、リーダーであるマリティアに従って家屋敷へと帰っていく。
「俺も後始末を手早く済まして飯にするか」
一人残り、小山へと振り返ったIKUMIは、そう言って手足を動かすのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる