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第十九話 ストライダーと十三人の幼女は、滅びた村へと旅立つ。
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北方諸国連合の片隅で、売国組織と忍者集団が夜通し争い、一応の決着が付いたその翌日。
トーリンの地で十三人の幼女たちを保護していたストライダーIKUMIは、その日の早朝、二頭立ての牛車へと幼女たちを乗せ、目的地へと旅立った。
先頭を屋台を引く自分、中央に二台に分乗した幼女たちを乗せた二頭立ての牛車。最後に自立歩行する巨大な吸血植物SANSAIという隊列であった。
さて、彼らが向かう目的地であるが、そこは曰く付きの場所であった。
IKUMIは先日、そこを訪れて村を襲って全滅させた装甲狼の群れを退治していたのだが、それ以前にも村は、様々な理由で何度も放棄されていた。
つまり、先日の全滅した村人以外にも、多数の人々が様々な理由で入植に失敗していた訳だ。
その種明かしをしてしまうと、村が人間達の騒乱の舞台となる、国境付近にあるからだ。
元々、それを理解している入植民は騒乱が近付くと逃げ散ってしまい、結局村は放棄される。
また、他所の土地からやって来て不法に入植した移民たちは、元々国家の枠組みからはみ出していた者達のため、姿を現した野獣などから身を守って貰えないため、弱ければ狩られるしかない立場だった。
当然、他の組織に入会している訳ではなく、誰からも守って貰えないため、野党や放浪者、その他に襲われても仕方のない立場だった。
余談であるが、じつは装甲狼に襲われた先の住民達も、不法移民だったのである。
彼等はホーリーズ・クランの都市部から逃げ出してきた者達の寄せ集めで、他に行く当てもなく国境付近の村に入植した集団であった。
当然のこととして、彼らの身分は自由人ということとなる。
無論、どこかの組織に守って貰える訳もないため、装甲狼の群れに襲われた結果、全滅という事態に収束したのである。
辺境の地は、力無き者に慈悲を与えなかったのだ。
◇ ◇ ◇
「あの、ストライダーさま」
「なんだ?」
ストライダーIKUMIによって、昨日新たに救い出された元奴隷の幼女モモが、IKUMIに駆け寄って声を掛けた。
彼女を含め、数人の幼女が歩くことを選び、外敵が一行に近寄ってこないか監視役を買って出ていた。
具体的には、モモの他に、リューコ、マリティア、アマナ、そしてノアという幼女が歩きを選び、ニコ、ニオ、コーラル、スズ、ケイト、リチア、スノ、カナという幼女たちが牛車組だ。
「あの、向かっている村の防備は大丈夫か聞きたくて」
「なるほど。一度攫われた身としては当然の質問だな。そういうことで間違いないか?」
「はっ、はい。それと狼とか、怖くて…」
「どうやら俺の説明不足だったようだな。だが安心しろ。村周辺はすぐに精霊術を使って、土塁と堀で囲ってやる。ちょっとやそっとの軍隊では攻め込めない規模でな」
屋台を引きながらストライダーはそう答え、歩調を合わせて小走りになっていたモモは、吃驚した表情を浮かべた。
「そっ、そんなこともストライダーさまは可能なのですか?」
モモとしては、昨日IKUMIの地行の術と巨大水滴の術をその目にし、彼が様々な術を使えることは認識していた。
しかし、まさか一軍を相手取る術まで使用できるとは、考えてもいなかったのだ。
「それも変ではありませんわ。IKUMIさんは選ばれし者ですもの。伝説通りなら、それくらい出来ても可笑しくないですの」
驚くモモに、そう言ってマリティアが話しかけてきた。
マリティアは、モモ同様に徒歩での監視役となり、前方をIKUMIと一緒に歩いていた。
「貴族の娘である私が、監視役をするのは当然ですの!」
それが彼女がこの場にいた理由である。
なお、リューコ、アマナ、ノアの三人の幼女は、後方の牛車二台の両脇を歩いている。
「まあ、そういうことだ。村に到着したらすぐに披露してやろう。そうした方が、君も安心するのだろう、モモ?」
「はっ、はい。よろしくお願いします!」
「それにマリティア」
「はいですの! マリティアは元気ですの!」
「それは重畳。二人とも、歩くのに疲れたら他の者に代わってもらえ。自由になっても、あまりはしゃぐものじゃない。自分の身体を労われよ」
「はいですの。それは解っていますの。倒れて迷惑をお掛けすることは致しませんの」
「はい。私もそうします」
IKUMIのやさしさに触れ、そう返事をするモモとマリティアであった。
「午後には到着する。次の休憩までは頑張ってくれ」
そんなストライダーの言葉に従い、一行は国境付近の村へと向かい、歩き続けた。
◇ ◇ ◇
「ふうっ、やっと到着か」
ストライダーと幼女たちが出発した頃、一足先に国境付近の廃村へとTURUGIとYASAIは到着していた。
奴隷身分から解放した幼女たちを、これ以上危ない目には晒せないという大人の判断で、こうして先駆けとして廃村へとやって来たのである。
もちろん、お供のYASAIと共に、幼女たちが口にする充分な食料と、必要な雑貨を持ってである。
「こりゃ、心配する必要もなかったかな」
そう呟くTURUGIの愚痴は当然のことだった。廃村やその道中に潜んでいる危険を取り除こうと、勇んで先行した選ばれし者と食肉植物であったが、この廃村までの道中、彼らが戦う必要のある生物とはまったく遭遇しなかった。
「…つまらん。いや、それで良かったのかもな」
(どうやらIKUMIが退治した装甲狼の群のせいで、他の生き物は逃げちまってたようだ。そういえば、奴隷商のガードが一人、装甲猪に殺されたらしいが、そいつが群に追い出された、この辺りの主だったのかな?)
漠然とそんなことを考えるKAGAMIだった。
「まっ、今さらどうでも良いことだな。やるぞ、YASAI」
TURUGIは、そう言って自分の鍬を背負い、荒れ果てている畑付近へと向かった。その面積の一部は何とか耕した跡があったが、所々に大石小石が地面に飛び出しており、相当耕すのは難しそうな場所であった。
「まあ、この程度ならどうとでもなる。νHYAKUSYOUは伊達じゃない」
そう呟き、自分の中のパワーを増幅する内錬気法、身体の外部から様々な力を集めて増幅する外錬気法を使用するTURUGI。
すると、どういう仕掛けなのか、彼が上段に構える鍬から鈍い光が生じて、周辺の木々がその力の煽りを受けて揺れ始めた。
はらはらと木の葉も舞い落ちる。
その危険に気付き、YASAIもTURUGIから距離を取る。
「はあっ!」
ドォオオオオオオンッ!!!
ピィピィピィッ!
バササッ!
バタタタタッ!
大音響に驚き、周辺の森から鳥たちが一斉に飛び立つ羽音が響いた。小動物たちも同様に逃げ出したことだろう。
パラパラパラ………
見れば、地上に振るわれた鍬の先から爆裂波が生じ、TURUGIの前方の畑の表層が吹き飛ばされていた。その威力によって、大小様々な石も砕け散って粒状となっている。
土埃と共に、それらは舞上がった土砂と共に、畑へと降り注いだ。
先程の大音響は、その威力によるものだったのだ。
これを数回続けた後、畑の土に木の葉や雑草を混ぜて耕せば、なるほど、周辺一帯は立派な畑に生まれ変わることだろう。
「まあ、この辺一帯を食料生産用に整備しておけば、後は勝手にIKUMIの奴が色々と育てるだろう」
TURUGIの言う通りである。ストライダーIKUMIは、水と地の精霊とコネクトし、木の精霊とも良好な仲良しさんだ。
畑さえあれば、様々な植物の育成を、精霊の加護付きで十分に実行できる。
十数人の幼女たちに、食料の面でひもじい思いをさせるこなどあり得ないだろう。
「さて、もうひと頑張りといくか。YASAI、周辺の見回りは頼む」
そうパートナーに告げ、TURUGIは再び鍬を冗談に構え、内錬気法と外錬気法による爆裂波を撃ち出す態勢を整える。
一方、TURYGIのパートナーであるYASAIは、頼まれた通りに周辺一帯への見回りをすべく歩き(?)出した。
まずは、やって来た方向より、さらに遠方へと向かって行く。一定距離を進んだ後に方向転換し、ぐるりと一帯を回るのだろう。
ドォオオオオオオンッ!!!
パラパラ………パラパラパラパラ…………
その背後では、再び放たれたTURUGIの爆裂波が、先程とは別の場所の表層を吹き飛ばしていた。
トーリンの地で十三人の幼女たちを保護していたストライダーIKUMIは、その日の早朝、二頭立ての牛車へと幼女たちを乗せ、目的地へと旅立った。
先頭を屋台を引く自分、中央に二台に分乗した幼女たちを乗せた二頭立ての牛車。最後に自立歩行する巨大な吸血植物SANSAIという隊列であった。
さて、彼らが向かう目的地であるが、そこは曰く付きの場所であった。
IKUMIは先日、そこを訪れて村を襲って全滅させた装甲狼の群れを退治していたのだが、それ以前にも村は、様々な理由で何度も放棄されていた。
つまり、先日の全滅した村人以外にも、多数の人々が様々な理由で入植に失敗していた訳だ。
その種明かしをしてしまうと、村が人間達の騒乱の舞台となる、国境付近にあるからだ。
元々、それを理解している入植民は騒乱が近付くと逃げ散ってしまい、結局村は放棄される。
また、他所の土地からやって来て不法に入植した移民たちは、元々国家の枠組みからはみ出していた者達のため、姿を現した野獣などから身を守って貰えないため、弱ければ狩られるしかない立場だった。
当然、他の組織に入会している訳ではなく、誰からも守って貰えないため、野党や放浪者、その他に襲われても仕方のない立場だった。
余談であるが、じつは装甲狼に襲われた先の住民達も、不法移民だったのである。
彼等はホーリーズ・クランの都市部から逃げ出してきた者達の寄せ集めで、他に行く当てもなく国境付近の村に入植した集団であった。
当然のこととして、彼らの身分は自由人ということとなる。
無論、どこかの組織に守って貰える訳もないため、装甲狼の群れに襲われた結果、全滅という事態に収束したのである。
辺境の地は、力無き者に慈悲を与えなかったのだ。
◇ ◇ ◇
「あの、ストライダーさま」
「なんだ?」
ストライダーIKUMIによって、昨日新たに救い出された元奴隷の幼女モモが、IKUMIに駆け寄って声を掛けた。
彼女を含め、数人の幼女が歩くことを選び、外敵が一行に近寄ってこないか監視役を買って出ていた。
具体的には、モモの他に、リューコ、マリティア、アマナ、そしてノアという幼女が歩きを選び、ニコ、ニオ、コーラル、スズ、ケイト、リチア、スノ、カナという幼女たちが牛車組だ。
「あの、向かっている村の防備は大丈夫か聞きたくて」
「なるほど。一度攫われた身としては当然の質問だな。そういうことで間違いないか?」
「はっ、はい。それと狼とか、怖くて…」
「どうやら俺の説明不足だったようだな。だが安心しろ。村周辺はすぐに精霊術を使って、土塁と堀で囲ってやる。ちょっとやそっとの軍隊では攻め込めない規模でな」
屋台を引きながらストライダーはそう答え、歩調を合わせて小走りになっていたモモは、吃驚した表情を浮かべた。
「そっ、そんなこともストライダーさまは可能なのですか?」
モモとしては、昨日IKUMIの地行の術と巨大水滴の術をその目にし、彼が様々な術を使えることは認識していた。
しかし、まさか一軍を相手取る術まで使用できるとは、考えてもいなかったのだ。
「それも変ではありませんわ。IKUMIさんは選ばれし者ですもの。伝説通りなら、それくらい出来ても可笑しくないですの」
驚くモモに、そう言ってマリティアが話しかけてきた。
マリティアは、モモ同様に徒歩での監視役となり、前方をIKUMIと一緒に歩いていた。
「貴族の娘である私が、監視役をするのは当然ですの!」
それが彼女がこの場にいた理由である。
なお、リューコ、アマナ、ノアの三人の幼女は、後方の牛車二台の両脇を歩いている。
「まあ、そういうことだ。村に到着したらすぐに披露してやろう。そうした方が、君も安心するのだろう、モモ?」
「はっ、はい。よろしくお願いします!」
「それにマリティア」
「はいですの! マリティアは元気ですの!」
「それは重畳。二人とも、歩くのに疲れたら他の者に代わってもらえ。自由になっても、あまりはしゃぐものじゃない。自分の身体を労われよ」
「はいですの。それは解っていますの。倒れて迷惑をお掛けすることは致しませんの」
「はい。私もそうします」
IKUMIのやさしさに触れ、そう返事をするモモとマリティアであった。
「午後には到着する。次の休憩までは頑張ってくれ」
そんなストライダーの言葉に従い、一行は国境付近の村へと向かい、歩き続けた。
◇ ◇ ◇
「ふうっ、やっと到着か」
ストライダーと幼女たちが出発した頃、一足先に国境付近の廃村へとTURUGIとYASAIは到着していた。
奴隷身分から解放した幼女たちを、これ以上危ない目には晒せないという大人の判断で、こうして先駆けとして廃村へとやって来たのである。
もちろん、お供のYASAIと共に、幼女たちが口にする充分な食料と、必要な雑貨を持ってである。
「こりゃ、心配する必要もなかったかな」
そう呟くTURUGIの愚痴は当然のことだった。廃村やその道中に潜んでいる危険を取り除こうと、勇んで先行した選ばれし者と食肉植物であったが、この廃村までの道中、彼らが戦う必要のある生物とはまったく遭遇しなかった。
「…つまらん。いや、それで良かったのかもな」
(どうやらIKUMIが退治した装甲狼の群のせいで、他の生き物は逃げちまってたようだ。そういえば、奴隷商のガードが一人、装甲猪に殺されたらしいが、そいつが群に追い出された、この辺りの主だったのかな?)
漠然とそんなことを考えるKAGAMIだった。
「まっ、今さらどうでも良いことだな。やるぞ、YASAI」
TURUGIは、そう言って自分の鍬を背負い、荒れ果てている畑付近へと向かった。その面積の一部は何とか耕した跡があったが、所々に大石小石が地面に飛び出しており、相当耕すのは難しそうな場所であった。
「まあ、この程度ならどうとでもなる。νHYAKUSYOUは伊達じゃない」
そう呟き、自分の中のパワーを増幅する内錬気法、身体の外部から様々な力を集めて増幅する外錬気法を使用するTURUGI。
すると、どういう仕掛けなのか、彼が上段に構える鍬から鈍い光が生じて、周辺の木々がその力の煽りを受けて揺れ始めた。
はらはらと木の葉も舞い落ちる。
その危険に気付き、YASAIもTURUGIから距離を取る。
「はあっ!」
ドォオオオオオオンッ!!!
ピィピィピィッ!
バササッ!
バタタタタッ!
大音響に驚き、周辺の森から鳥たちが一斉に飛び立つ羽音が響いた。小動物たちも同様に逃げ出したことだろう。
パラパラパラ………
見れば、地上に振るわれた鍬の先から爆裂波が生じ、TURUGIの前方の畑の表層が吹き飛ばされていた。その威力によって、大小様々な石も砕け散って粒状となっている。
土埃と共に、それらは舞上がった土砂と共に、畑へと降り注いだ。
先程の大音響は、その威力によるものだったのだ。
これを数回続けた後、畑の土に木の葉や雑草を混ぜて耕せば、なるほど、周辺一帯は立派な畑に生まれ変わることだろう。
「まあ、この辺一帯を食料生産用に整備しておけば、後は勝手にIKUMIの奴が色々と育てるだろう」
TURUGIの言う通りである。ストライダーIKUMIは、水と地の精霊とコネクトし、木の精霊とも良好な仲良しさんだ。
畑さえあれば、様々な植物の育成を、精霊の加護付きで十分に実行できる。
十数人の幼女たちに、食料の面でひもじい思いをさせるこなどあり得ないだろう。
「さて、もうひと頑張りといくか。YASAI、周辺の見回りは頼む」
そうパートナーに告げ、TURUGIは再び鍬を冗談に構え、内錬気法と外錬気法による爆裂波を撃ち出す態勢を整える。
一方、TURYGIのパートナーであるYASAIは、頼まれた通りに周辺一帯への見回りをすべく歩き(?)出した。
まずは、やって来た方向より、さらに遠方へと向かって行く。一定距離を進んだ後に方向転換し、ぐるりと一帯を回るのだろう。
ドォオオオオオオンッ!!!
パラパラ………パラパラパラパラ…………
その背後では、再び放たれたTURUGIの爆裂波が、先程とは別の場所の表層を吹き飛ばしていた。
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