"Tacki" for prudish Meg

森斗メメ

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Discipline7 Peripeteia(ペラパタイア)

第三話 コスプレ乱交パーティで試される貞節

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 芽美は暗く狭い箱の中で体育座りでじっとしながら、日曜日の午後、医者に行って各種の性病検査を受けさせられた間の待ち時間に話されたご主人様の説明を反芻する。
 通常の家事と仕事のお手伝いに加えて拓海ご主人様の誕生日の食事の仕度があり忙しくて今まで熟考する暇がなかったからこの時間はありがたかった。

 ご主人様へ何をプレゼントしたらよいかわからず悩みに悩んだあげく、美咲からの「わからないなら本人に聞けば?不要なものを押し付けられても迷惑なだけ」という実体験にもとづくアドバイスにしたがって尋ねてみたところ、こう言われた。

―俺のマゾ牝奴隷妻として適切な行動をとることが、最高の誕生日プレゼントだ―
 だから芽美はこの課題を絶対にクリアしなければならない。両耳に輝く誕生日プレゼントのダイヤのピアスに手をやって、自分が最高の誕生日プレゼント―愛してる―の言葉をいただいたときのことを思い返しながらもの思いにふける。

・これから参加するイベントについて

―誕生日の夜は、ハロウィンのコスプレをして秘密のパーティに参加してもらう―

―『上流階級の紳士淑女に秘密のワンナイトラブの機会を演出する大人の社交パーティ』と謳っているが、要するに大規模な乱交パーティ―

―季節ごとに1回、テーマを変えて開催されていて今回のテーマはハロウィンパーティということでコスプレ―

―参加資格は、性病とその他の感染症にかかっていない健常者で、男は国籍年齢職業を問わず月収1千万以上の金持ち、女は日本国籍の16歳から30歳までの容姿端麗で性交を愉しめる者、ただしプロの風俗嬢をのぞく―

―会場の場所は主催者以外は極秘となっていて、男は数人づつ目隠しをしてリムジンに乗せられて移動、女は箱に入れられ大きな貨物車でまとめて運ばれる―

―女がそんな形式で運ばれる理由は移動途中で帰ると騒ぐ女がいたり薬で眠らされたりした状態で無理やり参加させられる女がいるから―

―会場内では男女ともヴェネチアンマスクを着用。はずして自分や他人の素顔を明かすことは厳禁。会話するのは自由だが他人のプライバシーを細かく詮索することは厳禁―

―参加人数は、今回は男が300人、女が100人程度。男が多い理由は、男はそう何回もイケないこと、男2女1といった組み合わせが多いこと、女の価値を高め女に儲けさせることから―

―男の客に日本人は少なく最近は欧米系のIT長者やアラブ系の石油成金の二世三世、中国系の企業経営者などが多いだが、お忍びで由緒ある家柄の放蕩息子や女好きの有名俳優・プロスポーツ選手が参加することもしばしば―

―女の参加者は、そんなセレブに抱かれることを夢見る者のほか、借金の形に強制参加させられる者、短期間に大金を稼ぎたい者、芽美のようにご主人様に参加を命じられる者、普通のセックスに飽き足らず冒険をしてみたい者たちだが、やはり金に困っての参加者が最多―

―女は参加料として一晩1000ドル、7日間皆勤すれば追加で3000ドルの報酬が与えられる。1週間ずっといるだけで日本円でざっと110万円以上が手に入る―

―セックスの値段は女が自由に設定できるが、目安として1対1のセックスの場合は1時間300ドル、男女にかかわらす参加者が一人増えるごとにプラス300ドルで行為後にチップがもらえることも多い―

―またスペシャルオプションをつけることができ、芽美の場合、今回はセーラー○ーンのコスプレで参加するということで、戦士5人そろってのプレイをボーナス価格1000ドルとして設定しておいた―

―セックスパートナーを決める方法は、行くと最初に首から下げる名札・名刺・スマホサイズの携帯端末が渡される。名札にはコード番号と名前が、名刺にはさらにQRコードが印刷されている。22時にスタートすると、三々五々に参加男女が会場内をうろつき始め軽食を取りながら懇談して名刺交換。男がやりたい女のQRコードを読み取るとプロフィール、価格、NGプレイ、スケジュール表が見れる。識別コードを入力しても検索可能だ。それを見て端末からオファーを出し女が了承の返信をすれば契約成立。その時刻になったらナビ機能を使って男のいる場所へ女が赴きプレイ開始となる。プレイの報酬は翌日の夕方、主催者経由で現金で渡される。もちろん女から男のプロフィールを見ることもできて、女のほうから営業をかけることも可能―

―プロフィールには最低限これだけの情報が掲載されている。男女共通して、識別コード、名前(ニックネーム)、年齢、身長と体重、使用言語、職業、コスプレの説明、写真。写真は会場に到着したらマスクをした状態で顔と全身を撮影される。それ以外に女はスリーサイズ、魅力、プレイ価格、スケジュール表、NGプレイ。男は国籍と参加回数。ここまでが必須で、これ以上の情報を掲載することもできる。掲載言語は日本語と英語―

―相手の身体を傷つけたり暴言を吐いたりすることは厳禁、オープンな場所でのセックスだからそんなことをすればすぐにわかる―

―諸々の禁則事項を厳守できない者は退場となるだけでなく厳罰が待っていて、重大な違反者だと命が奪われることさえあるから、安心して参加しろ―

―今回はハロウインパーティ、つまりコスプレセックス好きな男達向けでSM愛好家向けのものなどと違いハードなセックス内容ではない―

―性病感染や妊娠については心配しなくて大丈夫だ。参加の条件として男女とも事前に性病チェックを受けること、セックスはゴム付きでやることが規則として定められており、念のためお前が俺と同棲を始めた10月最初の日曜日から栄養剤と一緒にピルを飲ませているから妊娠することはない―

―開催日時は11月7日(月)から13日(日)までの1週間で毎日夜10時から翌朝の6時まで開催―

―最初から最後まで参加する者もいれば一日参加者、途中参加の者などさまざま―

―会場内には無料のレストランや寝室がありずっといて困ることはない―

―今回コスプレをしてもらう理由はハロウィンパーティだから、俺もタキシード仮面のコスで参加する―

・このイベントで芽美に期待していることについて

―俺は芽美にいっさい命令しない―

―このイベントに参加するかどうかを含め、どのような行動をとることが俺のマゾ牝奴隷妻としてもっとも適切なのかを自分で判断して行動してほしい―

―俺は現場で常にお前の近くにいて行動の全てを見ている―

―俺の評価はイベントが終了して一週間後の日曜日、20日に伝える―

―評価次第では俺達の関係に大きな変化があり得る―

―お前が知りたいことはどんな評価結果であっても必ず伝える―

・芽美がマゾ牝奴隷妻として適切な行動をとるためのヒント

―俺はこれまでのお前の行動、特にあの儀式での行動を適切だったと考えている―

―俺の妻となったお前が他の男に抱かれ絶頂する姿は正直見たくはない―

―だが俺は今、実をいえば先物投機に失敗して大変、金に困っている―

―だからお前がこのイベントに参加してできるだけたくさん稼いでくれると助かる―


 時間をかけて拓海ご主人様の説明を反芻しおわって、ようやく自分がとるべき行動について考え始める芽美。

―参加するかしないか含めて判断しろという御命令だけれど、普通に考えれば参加しないっていう選択肢はないわよね、参加する必要がないならそもそも初めから提案してこないと思うし―

―でも、ご主人様以外の男の人たちにまた犯されるのか、いやだなぁ・・しかも今回はゴムなしだし・・妊娠したらどうしよう・・ピル飲んでれば本当に大丈夫なのかしら―

―ご主人様も私が他の男に犯されている姿を見たくないならどうして?―

―お金に困ってるというのは本当なのかしら?本当だとしたら私のせい?―

―素直に考えればお金のために俺も耐えるからお前も耐えてくれってことだけど、この間の誕生日の豪華さを考えたらお金に困ってるとはとても思えない―

 芽美が沈思黙考している間も、周囲からはメソメソ、グス、グスと複数の女のすすり泣きが聴こえてきて邪魔をする。暗い箱に閉じ込められて行き先もわからず見知らぬ男達に犯されに行くのだから、不安や哀しみから泣いてしまうのも仕方のないことだ。

 芽美が泣いていないのは、それよりも必死になって考えなければならないことがあったからで、またあの儀式を体験して普通の日本の若い女に比べて、精神的な強さを身につけてもいた。それにご主人様への厚い信頼から、酷いことにはならないだろうと楽観してもいたからである。

―それにしてもうるさい―
 最初の一人の泣き声に影響されて次第に泣く女が増え、考えることに集中できなくなってきてイラッとして怒鳴ろうとしたとき。

「あ~うるさいわね!イヤなら帰りなさいよ!現地についてすぐに本当に参加するのか、一人ずつ意思を最終確認されるから、その時帰りたいって言えばすぐに帰してくれるわ。朝まで長いから到着まで少しでも仮眠をとっておきたいの。だから静かにしてちょうだい!」
 聞き覚えのあるような女の声が響き、車内に静けさが戻った。

―あの声はもしかして・・・いやいや、まさか?―
 頭を振って考えを戻す。
―でも、セーラー○ーンの5人オプションがあるってことはやっぱり?!―
―それにしてもご主人様、タキシー○仮面での参加って―
―他の人たちはいったいどんなコスプレで参加するんだろ?―
 そんなことを考えているうちに会場に到着してしまい、肝心なことがまとまらずに後悔する芽美だった。


 配送ボックスの蓋が開き、「着いて来い」という声が頭上から聞こえた。
 立ち上がると目の前の男が芽美の脇の下に手をやって持ち上げ箱からでるのをアシストしてくれる。顔は隠していない。ハンサムだが体つきはがっちりしていて危険そうな雰囲気を漂わせている。

 芽美は男に続いて暗い配送車両のタラップを降りる。地下のまずます大きな駐車場のような場所だ。

 先導する男の後を早歩きでついていく。男の歩みは早くはないのだが長身で一歩の間隔が大きく、周囲をのんびり見回していると見失いそうだった。

 駐車場の隅にそれでもやや遅れて到着すると、男が開けてくれたドアをくぐる。

 白基調の壁に茶色いカーペットが敷かれ明るい照明が灯る廊下を数歩歩く。

 『受付3』と掲示された左手のドアを開けて入るよう促される。男は中に入らず他の女を連れてくるために車に戻っていった。

 室内には黒いスーツ姿の男と女が待っていて手分けして淡々と受付手続きを済ませていく。
 男が芽美とノートPCの画面と紙の書類を見くらべ「問題ありません。最後の確認ですが、このイベントに参加されるということでよろしいですね?」と芽美に念を押してくる。

 黙ったままうなづく芽美に女がヴェネチアンマスクを渡し、この場で着用するよう指示。戸惑う芽美に丁寧に付け方を指導し着用した芽美の写真を男が撮りサーバーにアップ。その間に女が芽美用の名札と名刺、携帯端末を取り出し、イベント説明書類を添えて芽美に渡す。男が自分の携帯端末に芽美のプロフィール画面を表示し確認を求める。

 芽美がうなづくと女が「これで受付は完了です。この部屋を出たら左手奥のエレベーターで1階へお上がりください。113号室があなたのお部屋となります。部屋は外側から鍵をかけることはできませんが、内側からロックすることはできます。部屋の中ではマスクをはずして構いませんが、外に出るときは必ず着用してください。室内で端末の使用法とご自分の掲載プロフィールの確認、イベントの注意事項を再確認いただき、トイレやメイクなどをお済ませになりましたら会場へお入りください。30分程度を目安にお願いいたします。それではごゆるりとお過ごしくださいませ。」と平易な声で告げ頭を下げる。
 芽美が退出するまで二人は頭を下げていて、どんな表情をしているのかはわからなかった。

 芽美は指示されたとおり113号室に向かうと室内で諸注意にさっと目を通し、自分のプロフィールをチェックする。
 一番上に識別コード。その下に名前。破線で区切られ、やや小さな字で詳細プロフが羅列されている。右上にはヴェネチアンマスク付き顔写真。顔写真の下の『その他の写真』をクリックすると、大きな顔写真・正面からの全身写真・後方からの全身写真・胸元のアップ写真・太ももを中心とした下半身のアップ写真、のサムネイル画面に切り替わる。スケジュールは一番下。○が空きで予約が入ると×になり、×クリックで別の詳細画面に切り替わり予約の詳細がわかるようになっている。

 まずそれぞれの写真をチェック。調教時に拓海ご主人様に撮影された経験が活きて、自然な笑顔とポーズを作れていたことにホッとする。

 識別コードと名前が、名札と名刺と同じであることを確かめ、詳細プロフに目を通す。
識別コード:f110315246
名前:美奈子 (MINAKO)
年齢:18
身長:152
体重:46
スリーサイズ:84C-58-92
職業:保育士
使用言語:日本語、英語(少し)
コスプレ:世界的な人気アニメ「美少女戦士セーラー○ーン」のセーラー○ィーナス
<魅力>
 ハイスクールをこの春卒業したばかりのティーンエージャー。少女のようなあどけない笑顔と可愛らしい声、瑞々しい肌が魅力です。
 ふだんは日本女性らしく慎ましやかな性格ですが、セックス時は人が変わったように乱れて騎乗位でいやらしく腰を振ります。正常位や座位では抱き心地の良い柔らかな身体であなたに抱きつき、舌足らずな声で喘ぎます。大のご奉仕好きで、ふっくらとした厚みのある唇で愛情たっぷりにおしゃぶりします。
 また今回は、お友達5人でセー○ー戦士として特別参加されています!セー○ー戦士5人が勢揃いしたときの破壊力をたくさんの殿方に味わって欲しいという戦士達の希望で、特別パックを設定しています。ファンの方はもちろん、そうでない方もこの機会に是非、戦士達にベッドでの戦いを挑んでみてはいかがでしょうか?
 ・・・内緒ですが、美奈子嬢には股間に秘密があるようですよ??

<プレイ価格>
1時間300ドル(2P)
男女の別なく3P、4Pと増えるごとにプラス100ドル(3Pになら総額400ドル、4Pなら総額500ドル~)
※セーラー戦士5人まとめてお相手パック(1対5)
(通常なら1人1時間700ドル、総額3500ドルのところを)『総額1時間3000ドル』でご案内!←オススメ
NGプレイ:精飲・飲尿、膣内射精、直腸内射精、浣腸、ムチその他のハードプレイ
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<スケジュール>
07月:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
08火:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
09水:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
10木:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
11金:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
12土:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
13日:22~○23~○24~○01~○02~○03~○04~○05~○
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 年齢の箇所を見てうわぁ、サバ読みすぎでしょう、と冷や汗がでて、魅力のアピール文を読んで恥ずかしさに顔が火照る。そこにコンコンとドアをノックする音。
 誰だろうといぶかしみながら恐る恐る開けるとタキシー○仮面のコスプレをしたご主人様が立っていた。思わず吹き出す芽美。

「ぷっ、ふふふふっ、ふふっ」
「そんなに似合ってないかのか俺のタキシー○仮面コスは・・・」
 芽美はそんな風にドアの外でいじけるご主人様を室内に招きいれお茶を出してもてなす。

「ごめんなさい、似合ってるとは思いますけど、ご主人様がコスプレしているっていうことが面白くって、ふふふ♪」
「まぁいいさ、どうせ俺のことなんて誰も注目しやしないんだから。メグミ、お前のほうはよく似あっているよ、美と愛欲の女神ヴィーナスを推薦した甲斐があったというものだ、とてもセクシーで可愛らしい。」
「ありがとうございます♪“愛欲の女神”なんてわざわざ仰るところに意地悪を感じますけれど・・・でもご主人様に褒められると嬉しいです、うふふ♡」

 ご主人様に自分のコスプレをじっくり見ていただこうと、「ヴィーナス・パワー! メイクアップ! 」と変身呪文を唱えて決めのポーズをとる。

 セーラー○ィーナスの髪型は金色ロングに赤いリボン。コスチュームはそれにあわせて額飾りと宝石が金色、チョーカー、襟、ミニスカート、ヒール、手袋留めがオレンジ色、胸のブローチと腰の大きなリボン黄色、ピアスと腰のチェーンベルトが赤と暖色系統でまとめられている。レオタードの色は白。布地はとても薄く乳首がうっすらと透けて見える。切り込みも深いハイレグだ。胸の大きなリボンだけが紺色で、ほどよいアクセントになっている。

 芽美は金色ロングのウィッグを被るなど、それを忠実に再現しているが、一点だけ違うところがある。拓海からのプレゼントのピアスをつけているから色が赤ではないことだ。

 拓海はそこにちゃんと気づきながら、上から下までしげしげと長める。襟は胸の谷間が見えるくらい深く切り込んでいて、ひらひらのミニスカートは元からデルタゾーンをぎりぎり隠す短さなのに尻の大きさのために、少しでも動くとハイレグレオタードの深い切り込みが露出する。マーキュ○ーなどロングブーツを最初から履いている戦士もいるがヴィー○スはハイヒールだから、生脚が全て露出していて悩ましい。背の低い芽美にはこのほうが魅力的に見えると内心自賛する。

「本当にセクシーだよ、メグ・・・このままここで押し倒したいくらいだ・・・」
「そうしていただいても、わたしは一向にかまいませんけれど・・・」
「ああ、そういうわけにもいくまい・・・だがお前の“任務”が終わったら・・・」
「はい!ご主人様のお望みのままに♡」

「準備はもう終わったな?」
「はい♪」
「なら急いで行くとするか、もう30分以上経っているからな、『美奈子』?」
「はい『タキシー○仮面』様♪・・あっ?」
「うん?」
「セーラー戦士5人てもしかして・・・?」
「ああ、それは全くの偶然だが、お前の想像通りだ、行けばわかる。」

 そう言って、白いヴェネチアンマスクをつけて出ていく拓海ご主人様を追って芽美も赤いマスクを被って部屋を出る。

「でも、いったいここはどこなんでしょうね、ご主人様?」
「うん?海の上さ」
「え?海の上?」
「明日の昼間になればわかることだから教えてしまうが、俺達がいる場所は豪華客船の中なのさ。
 このイベントに参加するのは初めてだから、どうしてああいった乗船方法をとっているのか不思議に思ってスタッフに質問してみたが答えてはくれなかった。それどころか、あまり詮索しないよう脅されてしまったよ。参加する女を集めるにあたって後ろ暗いことをしているからだと思うが、他にも船の名前や形状、出航する港などがわからないようにすることもあるんじゃないかな?内部のものは入れ替えられても、外側は普通の船に見せておく必要があるからな。」

 そんな拓海ご主人様の推理を聞きながらエレベーターでさらに上階へとあがり、3階で降りると正面に大きな扉がそそり立っている。その前で、拓海は芽美にこういい残して違う入り口へと廊下を曲がって姿を消した。

「しばらくお別れだメグ。明日の朝、終わったら部屋に行くから。それまで俺は遠くから、あるいは監視モニターを通してお前を見守っている。俺のマゾ牝奴隷妻として適切な行動をとることを期待している。」
 
 威圧的な意匠の施された観音開きの扉の前に一人残され緊張する芽美。タイミングが悪いのか誰もこない。落ち着こうと深呼吸したあと、思い切ってドアに手をかける。大きさと威圧的なデザインが発する重そうな印象と裏腹に、芽美を招き入れるように軽々と開いた。


 室内に入ってまず目に入ったのは、中央の天井から釣り下がる豪華なシャンデリヤ。その明かりが、テーブルとソファが余裕ある間隔で何セットも配置されている広い室内全体をぼんやりと照らしている。

 参加者の姿はまだそれほど多くはない。初めてなのか怖いのか、落ちつかずに隅でドリンク片手に所在なげに立っている女ばかりが目立つ。ソファに座っている少数の男達もそわそわしてる。1週間の長丁場だから、常連の男の上客たちはのんびりしているのだ。

 部屋の右側にはバーカウンターにビュッフェコーナー。左側にはビリヤード台が2台に3つのダーツコーナー。そのさらに奥にはポーカーなどのカードゲームを楽しむための半円のテーブルセットが見える。中央はミラーボールがあるダンススポット。その奥にはグランドピアノが設置され美しい女が生演奏している。マスクをしていないからスタッフだ。芽美が他のセーラー戦士達を探している最中に、曲は『As Time Goes By』から 『Fly Me To The Moon 』に変わった。

 そこまで捜しにきたところで室内にまだ到着していないことがわかり、脱力してふと後方を振りかえる。こちら側に大きく開いた扉の向こうから、数日前に共に行動したばかりの4人のセーラー戦士達が転げるように入室してくる姿が見えた。

「まったくもう~、あの扉ったら見栄えに反して軽く開きすぎでしょう!あやうくみんな一緒に転びそうになったわよ!」
 里奈が里奈らしいセリフを吐く。
「そうね、でも、おかげで少し緊張がほぐれたかな?ところで、いったいどうして芽美、じゃなくて美奈子さんがこんなところに一人でいるの?」

 そう芽美に問いかけてきたのは麗。美咲の友人のひとりで麗と書いて『うらら』と読む。もう一人の友人の名前は香蓮(かれん)。麗は不思議系の変わった女の子、香蓮は名前の響きどおり可憐な女の子というのが、芽美が10月最後の週末に初めて会ったときの印象だ。

 強気な美咲を先頭にバーカウンターへ向かった4人に芽美が後ろから声をかけるとひどく驚かれた。お互いに事情を知りたいのと、皆で知っていることを情報交換してこれからの作戦をねろう、ということなり、でドリンクと軽食を確保した5人は現在、美咲の主張にしたがって堂々と真ん中付近のテーブルとソファを占領し、飲み食いして一息ついているところだ。

 コスプレは、美咲がジュピター。里奈がマーズ。麗がマーキュリー。香蓮がムーン。長身モデル体型の美咲がジュピターであるなど外見からはこの組み合わせが最も似合っていると思う。しかし性格的には美咲がマーズで里奈がジュピターなんじゃないかと芽美は密かに考えていた。そんなことを言えば美咲の怒りに触れそうなので口にはしないが。芽美を含めて皆、イメージカラーに合う色のヴェネチアンマスクをしている。

 お腹も膨れてお酒の良いがまわりリラックスしてきたところで、まず、参加理由を順番に告白しようということになった。プライベートの核心を話すことになるが、まもなく恥ずかしい痴態を互いに晒しあってしまうのだから話すのが当たり前という雰囲気で、全員が躊躇いもせずペラペラと事情を暴露する。
 その結果、芽美と里奈がご主人様に命じられて。麗が大ファンのアメリカ人俳優に抱かれることを期待して。香蓮が恋人のホストの借金の形にされて。美咲が例の彼氏との結婚がとうとう現実化してきたため独身のうちに冒険をしてみたくて、ということだった。

 麗がどのようにしてその俳優が参加することを知ることができたのか疑問に思って尋ねる。
「彼のスケジュールは、彼についてのあらゆる公開情報とファン同士の非公式情報を入手・分析して詳細に把握している。そこに日本での不審な空白スケジュールがあることに気がついた。アメリカのファンから、女好きの彼がこうしたイベントに時々参加しているという噂を聞いていたので、今回日本でそうしたイベントに参加するのかと推測した。その推測に基づいて日本での乱交パーティの情報・噂を集め分析し、参加経験のある女の子を捜して次にいつそうしたパーティがあるのか聞いた。時期と内容その他から、里奈の参加するこのパーティが最も可能性が高そうと判断した。間に合わなければハッキングに再度手を染めるところだったから里奈には感謝している。」

 これが彼女の答えだった。頭の良いストーカーほど怖いものはないと芽美は思う。“再度”という言葉が気になって仕方なかったが、「好奇心は猫をも殺す」ということわざを思い出して自重した。

 里奈がこうしたイベントには何度も参加させられていると聞いても、温泉旅行で恋人との関係を詳しく聞いていた芽美と美咲に驚きはなかった。
 美咲は参加する女の子を集めるよう指示された里奈から概要を聞き、先程の理由で参加を決めたらしい。

 美咲にはこの先、家柄がよくエリートの例の彼氏と結婚し子どもを生み母となって・・という安定した幸せな人生が待っている。
 自分から彼との結婚をずっと望んでいたわけだし美咲に不満などあるわけがない、去年までの芽美なら間違いなくそう思ったはずだ。
 しかし今の芽美にはわかる、彼女がそこに幾ばくかの疑念を感じていることが。

 安定と退屈は表裏一体であり考える角度を変えれば、二つはすぐに入れ替わる。また、勝てるとわかっているゲームをやることほど面白みのないことはない。かと言ってやればほぼ必ず負けるゲームをやるのも馬鹿馬鹿しい。勝った時の喜びは極めて大きいがリスクが高すぎる。勝敗がわからないゲームに挑戦し能力を駆使して勝つ。過程も結果も楽しめるという意味でこれが最高なのではないか。
 
 美咲の人生は見えすぎてしまっているのだ。その平凡な人生がいよいよ眼前に迫ってきたときに、里奈と恋人とのドラマティックな関係を知り、芽美と拓海との奇妙な関係を知って、比較したときにそれが色褪せて見えてしまった。そこに新たな色を注入したくてもがいている、マリッジブルーならぬマリッジハイになった結果が、このイベントへの参加なのだろう。

 香蓮のような女の子が大勢いることはニュース等で知っていたが実際に会ったのは初めてだった。恋人の貞操を借金の抵当にあてるような男とは別れるべきだというのは普通に考えたらわかりそうなものだし、もう何度も言われているだろう。
 自分でそのことに気づくしかないのよね、と他人事のように思ったところで芽美ははっとする。自分も彼女と同じ境遇かもしれない。自分もまたお金に困っている恋人のためにここにいるのだから。

 ・・・いやいや、そうだろうか?香蓮と違い、恋人がここにいる。イベントに参加させたのは自分を試すためだ。お金に困っているというのがその設定くさい。香蓮はここでただひたすらお金を稼げばいいだけなのに対して、自分はお金をひたすら稼ぐことが正しいとは限らない。やはり香蓮とは違う。

 芽美がこうしたもの思いに耽っている間、他の4人はこのイベントについて知っていることを報告しあっていた。順番になっても話し出さない芽美を不審に思った美咲が肩を揺すると、4人がじっと自分を見つめていることに気がつく。

「え、どうしたのみんな?」
「やっぱり聞いてなかったのね。このイベントについてそれぞれ知っていることを順番に話していて、最後のあなたの番になったのよ。」(美咲)
「そうなんだ、ごめんなさい、ちょっと考えごとしてて・・・」

「こんなときによく他のこと考えられるわねぇ?」(里奈)
「いやいや、ものすごく関係あることだから!」

「うん?どんなふうに関係あるの?そういえばあなたがここにいる詳しい理由を聞いていない、話して欲しい」(麗)
「うん、わたしも聞きたいな♪」(香蓮)
「だから、ご主人様に命じられて・・・」

「あなたのご主人様がなぜ参加を命じたのかを知りたい」(麗)
「里奈の場合はそういう人だからっていうことで納得できるんだけど・・」(美咲)
「うんうん」(香蓮)
「でも、あなたのご主人様は、少し話を聞いただけでも、理由なく参加を命じる人には思えない」(麗)
「そうね・・・」

「さきほどから観察していると、なにかを深く悩んでいるようにみえる。このイベントにものすごく関係あることで悩んでいて、あなたのご主人様が理由なく参加を命じる人ではないのであれば、あなたの悩みは参加理由に関するものだということがわかる。知り合ったばかりなのに、すぐにこんな場所で出会ってしまうのだから私たちの絆は深い、もう親友と言っていい」(麗)
「うん、私たち5人は親友だもん」(香蓮)
「そうだな」(里奈)
「里奈と芽美と私は前から親友だけどね」(美咲)

「だから悩みがあるなら話してほしい、力になれるかもしれない」(麗)
「そうだな、水臭いぞ、め・・美奈子!」(里奈)
「また一人でウジウジ悩んでるの?時間の無駄よムダ!」(美咲)

「わたしもよくウジウジ悩んじゃうことあるけど、麗ちゃんに話すとあっという間に解決しちゃってるんだよ~、今回の彼の借金のことも、こういうイベントがあるからどうかって彼に話しているべき、ってアドバイスくれてぇ~」(香蓮)
「え?」(里奈)
「え?そうね、聞いてくれる、実は・・・」

 話が妙な方向へ進みそうになり、芽美が香蓮を遮って事情を話し始めてからも、里奈と麗は香蓮に聴こえないようにぼそぼそと話し続ける。

「それって、あんたが香蓮を引きずり込んだってことじゃあ?」(里奈)
「そういう見方もできる。知り合いがいなくて不安だった私も、借金持ちの香蓮の彼氏も、彼氏の悩みを解決できる香蓮も助かるから一石三鳥、誰も不幸にならないし」(麗)

「乱交させられる香蓮は不幸じゃないのか?」(里奈・怒り声)
「ああみえて香蓮はエッチ大好き、誘われれば誰とでも寝る」(麗)
「え、そうなんだ・・・」(里奈・声に脱力感あり)

「そうなのよ!そのせいで一緒に参加したコスプレ系サークルが全部クラッシュして!レイヤー間でも悪名が響いちゃって友達の私も同類だと思われてレイヤーを卒業せざるを得なくなったのよ!いいかげん芽美の話をちょんと聞きなさい!」(美咲)
「あ、ああ・・・二人とも苦労してきたんだな・・・」(里奈・声に憐憫の響き)


 芽美が事情を話し終わると、さっそく麗が理路整然と芽美が“妻”としてとるべき行動について話し始める。

「芽美は彼の話を整理することで自分で答えを出している。まず、実際にお金に困っているかどうかはこの場合関係がない。『金に困っていているから、このイベントに参加してたくさん金を稼いでくれると助かる』というのは前提条件だから、その通りに、すなわち不特定多数の男に抱かれてお金を稼がなければならない。」

「ではどれだけお金を稼げばいいのか?この点については『できるだけたくさん』という曖昧な表現以外の具体的な言及がない。ヒントがないのだから重要ではないと判断できる。」

「それとは対照的に、抱かれ方については二つの大きなヒントがある。したがって『どのように抱かれるのか』がポイント。」

「『俺の妻となったお前が他の男に抱かれ絶頂する姿は正直見たくはない』このヒントからは次のことが言える。
 ・まず『絶頂する姿は見たくはない』と言っているのだから、絶頂してはいけない。
 ・しかし感じてはいけないとは言っていないのだから、感じてもいい。
 ・『俺の妻となった』ということは、その前はどうだったのかを確認する必要がある。」

「それについては『俺はこれまでのお前の行動、特にあの儀式での行動を適切だったと考えている』というヒントがある。『あの儀式での行動を適切だったと考えている』のだから、今回も『あの儀式での行動』と同じ行動をすればいい。」

「心まで裏切っていないことを示すために彼を見つめ続けていたのだから、今回もそうすればいいと思われる。」

「ただし、あの儀式と今日のイベントでは決定的に違う点がある。儀式では参加した男が皆経験者だったから、そのことが許された。しかし今回は代金を払って犯す女が自分との行為で絶頂もせず感じさえもしないで他の男のほうを向いていたら普通は怒る。そんな女に金を払いたくはないだろうし、そんな悪い評判が広まれば客がつかずお金をたくさん稼ぐことは無理。この矛盾を解消するにはどうしたらいいか?それは『演技』すること。感じることは許されているのだから絶頂する演技だけでよい。」

「まとめると、つまりこういうこと。セックスで大げさに感じて絶頂するふりをして客を喜ばせ、多くの客についてもらってたくさんお金を稼ぐ。セックスを楽しむのはかまわないが夢中になりすぎて彼のことを忘れて絶頂してはいけない。これが今回の最適解。」

 ここまで黙って頼れる親友の話を聞いていた香蓮が、話が終わったと感じて口をはさむ。
「ホストクラブでよく一緒になる風俗嬢のお姉さまが彼に言われてることと似てますね~」
「ちょっと、なに言っちゃってるのよ!」

 美咲も内心そんな風に思いつつも指摘せずにいたことをお馬鹿な香蓮が口にし「私、いいこと言った!」みたいなドヤ顔をする様子を残念そうに眺め首を振る。しかし芽美が気にした様子はまるでない。

「そっか!そういうことなんだね~。ありがとう麗ちゃん♪」
 そう言って明るく笑う芽美。今大事なことはご主人様の意向に沿った適切な行動をとることであり、風俗嬢のような言動をすることがそれであるならそうするだけのことだ。自分を風俗嬢にして金を稼がせるのが意向であるなら、別にそれでもかまわない。

 ナターシャへの応対をみていればわかるが、ご主人様は風俗嬢だからといって蔑んだりしないし、付き合い方を制限したりもしない。ソープで講習を受けさせられたとき、そのままあそこで働けと命じられるのかと覚悟していたが杞憂だった。だから今度も杞憂に終わるだろう。

 芽美がそう話すと皆とりあえず納得し、それなら芽美のご主人様が確かめたいことって何なのか?という話になった。
 色々な意見が出たが皆が納得するものはなく、麗にいたってはは「ヒントがないから無理」と最初からギブアップしていた。
 景気づけに何杯も飲みながら話していたから皆かなり酔ってきていたこともあり、美咲の「自分に寝取られ属性があるのか確かめたいんじゃないの~」という適当な意見を結論として終わった。

 ようやく作戦会議にうつる5人だが、実際のところ目的はバラバラだ。芽美と香蓮は金儲け。麗はお目当ての俳優を捜して抱いてもらうこと。里奈は女の人数確保のための強制参加だから適当に男達の相手をすればよい。美咲も同じような立場だが、里奈よりは初めての乱交パーティを積極的に楽しみたい様子。

 しかも、初めてのことでこの先どうなるのかわからないのだから、作戦など立てようがなかった。ということで今夜は成り行きに任せて明日の夜また集まって話し合うことになった。

 会場を見回すと、男女とも増えて雑然とした雰囲気になっている。
 芽美が到着したときに部屋の隅でまとまって所在投げに立っていた女の子たちも、今は散ってあちらこちらで男達から声をかけられて談笑したり、ソファに座って良いムードになったりしていた。男達の声のかけ方や所作が紳士的で安心しているようだ。
 芽美達が話しこんでいる最中に視線を投げかけてくる男も多かったが、5人で熱心に話し込んでいるところを邪魔しないよう声掛けを遠慮していた感じだった。

 壁の巨大なアンティークの柱時計をみると深夜0時近い。

「話も終わったことだし、私達も参戦しましょう!危なそうな雰囲気はないし、5人もまとまっていたら声もかけずらいだろうから、情報収集のためにもバラバラでいくわよ、30分経ったら一度ここに集合すること!では解散!」

 美咲の掛け声で5人は立ち上がり、一人ひとり思い思いの方向に歩いていく。香蓮だけは美咲と一緒で、美咲も仕方なさそうに連れ歩いている。
 あの二人は昔からあんな関係なんだろうと思いながら、芽美もビリヤード台のあるほうへ歩き出す。タキシー○仮面の姿がちらりと見えたような気がしたから。


 メイン会場である大広間内は、深夜0時を過ぎて賑やかな大人の社交場と化していた。午後10時のスタートから深夜0時までは顔合わせを優先しここでのプレイは禁止されている。つまり今はOKなのだが、初日で遅れてくる客や、初日に多くの女をじっくり吟味して1週間の予定を決めようとする男が多いことから、まだプレイしている男女はいなかった。プレイルームは他にも多数の小部屋があるから、すでにそちらでセックスしているカップルもいるはずだ。

 女のコスプレの種類はさまざまだ。目立つのは女子校の制服姿やメイド服、ナース、フライトアテンダント、警官、チアガール等のリアル系。入手しやすく簡単に着れるからだろう。ただし、どれもみなスカート丈が極端に短く胸元が開いているなど実際にはあり得ないほど高い露出となっている。
 芽美達のような魔法少女、女戦士などの非リアル・ファンタジー系はそれほど多くはない。衣装の準備も着るのも大変だからだろう。その代わり、皆気合が入った衣装で目立っている。
 動物系ではバニースーツのウサギだけでなく、ねこ耳と尻尾付きの気ぐるみをきた可愛らしいメス猫や、牛柄の水着に鈴付きの首輪をつけた縛乳ウシ女もいる。
 外国人受けをねらったのか、くのいちや巫女、遊女もいる。
 ボンデージ服やラバースーツ、セクシーランジェリー、亀甲縛りにマントだけの女もいるが、あれもコスプレに入るのだろうか。

 男のほうは、吸血鬼や神父、将軍、剣士、オーク、ダース○ーダー、マ○オなどの気合の入ったコスプレも見受けられるが、ほとんどは普通のスーツ姿。男のコスプレは義務ではないようだ。
 ただし全員がしっかりとヴェネチアンマスクをしている。それは女も同様だ。

 セーラー○ィーナスのコスプレをした芽美が、そうした男女の中を、背筋を伸ばし、顔を上げて笑顔を振りまきながら堂々と歩く。すぐに若そうな男が近づいて英語で声をかけてくる。

「ハーイ、元気?」
「こんばんは、元気よ」
「僕はルーク、君は?」
「ミナコ」

「そのコスチュームいかしてるね!魔法少女?」
「ありがとう、セーラー○ーンていうの。まあそんなものね」
「ああ、妹が大好きだったアニメか!その服装、どこかで見覚えがあると思ったんだ」
「わりと有名なアニメだから。私みたいなコがあと4人いるわよ」
「それは素敵だね、5人そろったところ、見てみたいかも」
「ええ、サービスするから是非遊んでみてほしいな」

「そうだね、いつまでいるんだい?」
「たぶん最終日までいるわ」
「そうなんだ、名刺くれる?」
「はい、どうぞ。」
「ありがとう、これが僕の名刺。後で連絡するから」
「ええ、楽しみに待ってるわ」

 話しながら男は芽美の顔や体を無遠慮に眺め、身体をべたべたと触ってくる。契約前であっても軽いタッチまでは許されているからだ。
 芽美もそれを進んで受け入れ、男との距離を詰めていく。最後に男の頬に軽くキスをし、優雅にくるりとターンして尻をふって挑発しながら去る。

 すぐに次の男が声をかけてくる。同じような会話を日本語と片言の英語で繰り返し、自分の名刺が10枚ほど減ったところでタイムオーバー。
 30分以上経っていることに気づいてタキシー○仮面のいるビリヤード場へ辿りつけぬまま、仲間達と再集合するためにUターンした。

 戻るときも男達が声をかけてきて、なるべくあっさりと名刺交換して戻ると時刻は午前1時近い。個室に向かうカップルも増えてきて、ソファセットには余裕があり元の席は空いていたが、そこにいたのは美咲と麗だけだ。

「あれ、ほかの二人は?」
 美咲が黙って芽美が来たのと反対側を指差す。見ると里奈が原始人のコスプレをした野獣のような男の肩に担がれている。芽美の視線に気がつき、ごめんというように両手を合わせ、そのままドアの向こうに連れ去られていった。

「端末の使い方がわからなくて、間違ってその場で彼のオファーを承諾しちゃったみたい」
 あきれた声で説明する美咲。

「香蓮さんは?」
「香蓮は一番最初に声をかけてきた男ととっくに個室へ消えたわ、『がんばってお金を稼がなきゃ!』と言って」(美咲)
「本音は早くエッチしたかっただけ」(麗)
「ああ、そうなんだ・・・なんていうか・・・お盛んね・・・」
「ああ見えて、あの子はそういう子だから、昔から」(美咲)
「・・・」

「あの二人のことは放っておいて、これからどうする?」(美咲)
「わたしのほうは、今日はどうやらはずれっぽい。だからなんでもいい」(麗)
 そんな二人から視線を送られて戸惑う芽美。
「えっ、わたしが決めるの?」
「だって、あなたが一番切実じゃないの。あなたの彼の意向に沿うやり方でお金を稼がないといけないんだから。」
―そうだった、のんびりもしてられないわ―

 端末を取り出し、3人でオファーの状況を確かめる。芽美は10枚ほど名刺を渡したうちの3人から、美咲も同じくらい配ったうちの4人からオファーがきていた。
 たった一人の差ではあるが芽美は悔しく思う。この差は決して魅力の差ではなく単に配った枚数の差、あるいは受付嬢としての美咲の営業スマイルとコミュニケーションの差にすぎないと自分を慰める。

 麗は15枚ほど配ったうちの8人からオファー。これは明らかに語学力の差だろう。フランスからの帰国子女の麗は英語、フランス語が堪能なだけでなく、同じラテン語派生のスペイン語とイタリア語も独学で学びマスターした。さらに帰国してからは情報収集に役立つかもしれないと中国語も勉強し日常会話なら十分にかわせるレベル。

 初日だからか、ほとんどが1対1のプレイを希望していて、複数プレイのオファーはごくわずか、5人そろってのオファーはゼロだ。
 こうした状況を踏まえて芽美はこんな提案をする。

「とりあえず最初は1対1のオファーを受けてみて、ここの雰囲気に慣れて大丈夫だと思ったら複数プレイを1回くらい経験してみたらどうかしら?男1女2の。複数プレイのほうが稼ぎがいいけど、2対1とか3対1とかの男が多いプレイをいきなり経験するのは怖いし、かといって友達と一緒にセックスするのも恥ずかしいから、ちょっとづつ慣れていきましょうよ。」
「エッチして稼ぎがどうとか、複数プレイがどうとか、完全に売春婦の思考ね芽美。売春婦になったばかりの初心な女の子にアドバイスする百戦錬磨のアネゴって感じ♪」
「それ、褒めてないからね美咲!」
「でも良い案、賛成」
「私も賛成よ。あと6夜もあるのだから、だんだんと慣れて上手に楽しまないとね!」

 2時~、3時~の枠で1対1のセックスをして、4時の枠でいったん休憩したあと、気力のある二人が最後の枠で1対2を経験してみようということにして、3人は無言で端末画面をにらみながら相手を決め、「せーの」の掛け声で同時に承諾の返信。

 2時までまだ間があるので名刺を持って3人で一緒に広間内を練り歩き、ダンスやビリヤード、ブラックジャックに興じている男達に複数プレイの営業活動をする。すると2時からの3人のお相手がやってきたので、美咲は一緒にダンスを踊り、麗はブラックジャックで勝負を挑み、芽美はビリヤードを教えてもらうことになった。

 ボーン、ボーン。柱時計が午前2時を伝える。セーラー○ィーナスに後ろから覆いかぶさるようにしてキューのつき方を指導していた海賊が顎に手をやってキスを仕掛ける。ダンススペースでは吸血鬼とチークダンスを踊っているジュ〇ターの顔が男と重なる。カードテーブルでは勝利の笑顔をうかべるマ○オが隣席で悔しそうな表情のマー○ュリーの顔を股間に導く。

 海賊のキスに従順に応え胸やお尻を愛撫されるに任せている芽美はそんなシュールな風景を見て笑いがこみ上げそうになり、目を瞑りあの島での儀式を思い起こす。

 どちらも多くの男達に犯されることに変わりはない。しかし、ご主人様の妻になるための儀式には神聖さとときめきを感じたが、これには退廃と打算しか感じない。
 婉曲な表現を使えば『セレブな大人たちの秘密の社交場』、その実態は大規模な管理売春。普段、社会的地位や知名度から昼も夜も品行方正な生活を強いられている変態性癖の男達が、大金に目がくらんで素人売春婦となった浅はかな女たちを相手に後顧の憂いなく性欲を発散するためだけの低俗なイベント。
 “嬲る”という漢字の成り立ちを身を持って体感させられる芽美たちうら若き乙女。

 腰から上をビリヤード台の上にあおむけに横たえさせられる。海賊に脚を抱えられて白いハイレグレオタードの股間の布をずらしてクンニされる。作りものの喘ぎ声を出し感じている演技をしながら身を委ねていると、ドワーフがやってきて胸をまさぐり、ゾンビが台の上に乗って逸物をしゃぶらせようとする。

「ああん、ちゃんと契約してからにしてちょうだい♪」
そう言って彼らの腰の端末を指差し、己の端末に手を伸ばす。サービスに感じているふりをしながらも、お金をもらうには契約が必須であることを忘れない、プロフェッショナルの売春婦。

 芽美には、参加している男達とのセックスでは感じない自信がある。
 儀式を経てご主人様のマゾ牝奴隷妻ヘドネーとして生まれ変わって以降、その言葉だけで絶頂できそうなほどご主人様への性的な感受性が高まった一方、他の男へ性的な魅力を感じることが皆無になっていたからだ。

 感じているのは、愛するご主人様のお役に立てるという満足感と、そのために売春婦となって見知らぬ多くの男達に身体を売って金を稼ぐことへの被虐的な悦び。股間が濡れているが、身体を守る女の自然な防衛本能と初めてのシチュエーションへの興奮の結果であり、男の愛撫に感じているわけではない。

 醒めた頭のまま遠くのバーカウンターからギラつく視線でこちらを見つめるタ〇シード仮面を意識しながら、高いお金を支払ってくれる上客たちにサービスするため、蕩けたような笑顔を浮かべ、舌足らずな可愛い声で淫らに啼いて媚びるのだった。


「で、そのまま4Pに突入して、気がついたら美咲や麗達カップルも交えて大乱交した結果がこれだ、良く頑張った!引き続き今夜も頼むぞ!」
 そう言って拓海が芽美にテーブルの上の百万円の束をわたす。
 今は翌日の夕方、芽美と拓海がいる個室に黒服サングラスのスタッフがやってきて、テーブルの上に100万円の束を置いて去っていったばかりだ。

 内訳は以下のとおり。
・参加料
 1000ドル
・午前2時から3時まで:4P
 300ドル×3人+4Pボーナス200ドル×3人=1500ドル
・午前3時から4時まで:6P(美咲と吸血鬼が参戦)
 300ドル×4人+6Pボーナス400ドル×4人=2800ドル
・休憩をはさみ午前5時から6時まで:8P(麗とマ○オが参戦)
 300ドル×5人+8Pボーナス600ドル×5人=4500ドル
 合計9800ドル、これを日本円に換算し手数料を引いてちょうど100万円ということだった。

 芽美は手のひらの上の想像より小さな百万円の札束を眺め、有名人でもない普通の女の子である自分がたった一晩で100万円を稼いだことに戦慄する。しかも、その多くをたった3時間の売春で。

―これは嵌まったら抜けられなくなるわね・・・―
 悪魔の誘惑を振り払うように強く頭をふり、拓海に札束をわたしてお願いする。
「今夜も頑張りますから、終わったら今朝みたいにまた抱いてくださいね♡」

 午前6時の鐘がなり、ぼろぼろにされた衣装にザーメンまみれの身体でぐったりと床に横たわっている3人のセーラー戦士を残して男達が去ったあとも、疲れきった芽美達はしばらく動けなかった。10分経ち麗が無言で去り、その5分後に美咲が「また夜に」と一言残して立ち上がる。麗は香蓮と、美咲は里奈と同室だ。 

 一緒に歩くのがなんとなくイヤで、美咲がドアを開けて姿を消すのを見計らってから起き上がり、のろのろとした歩みでエレベーターに向かう。初めて肌を接する男と長時間感じているふりをしながらセックスするのは、予想以上に精神的にとても疲れることだった。まして、それが初の乱交となればなおさら。

 芽美が鍵のかかっていない自室のドアを開けると、ご主人様に引きずりこまれ、汚れた格好のまま荒々しく犯された。ご主人様が汚いままの自分を荒々しく犯したことに、他の男達への嫉妬と自分への執着を感じ安心し自尊心が満たされる。
 男達に穢された自分をご主人様が愛してはくださらないのではないかという不安で落ち着かなかった気分も安定し、穢れた自分をそのまま犯してくださるご主人様への愛がいっそう深まった。

 続いて拓海は熱いシャワーで芽美の身体を隅々まで丁寧に洗い、赤い首輪を嵌め、ジムノペティのBGMを流し、清潔なダブルベッドの上で香油を使ったマッサージを全身の疲れをとるようにたっぷりと施した。発情した芽美がご主人様を求めると、「愛している」とささやきながら優しく抱いた。
 汚れた芽美の身体の内外を自分の精液で消毒・マーキングするかのように、まず顔と身体にぶっかけると全身に伸ばして塗りこみ、次に口内、膣内、直腸内へと順番に射精した。芽美は大声で本物の嬌声を上げ、大きな本物の絶頂を迎えて失神した。
 
 良い香りに目を覚ますとルームサービスで朝食が届けられていた。病人のようにご主人様の手で食べさせられ、食後、ダブルベッドでご主人様に甘えながら一緒に深い眠りに落ちた。

 夕方、ようやく目が覚めて昨夜の顛末を報告しているところでインターホンが鳴って、お金と新しいコスチュームが届いた。服がないからそれまでずっと裸で過ごし、部屋の外にでることもできずにいたのだ。

 しばらく休んだところで気分転換に、コスチュームに着替えてマスクをして二人で甲板に上がってみる。
 確かに海の上だった。すでに日はすっかり落ちて青い海は見えなかったが夜空には星星が瞬いている。お茶を飲みながら雑談している人たちもいたが、風が強く冷えそうだ。部屋にもどらずそのままバイキング形式の夕食会場へと向かう。
 食事をすませて部屋にもどり一息つくと午後10時。一緒に会場へ向かい、昨日と同様に扉の前で別れる。

 芽美は他のセーラー戦士売春婦達との待ち会わせ場所である中央のソファセットに向かい、皆で昨夜の反省会。あとは昨日と一緒。違いは動きが前倒しされたくらい。
 お酒を飲みながら名刺を配り歩いて自分達を売り込み、午後11時を過ぎると再集合してオファーを確認して売春計画を練る。深夜0時の枠から売春を開始し、途中3時の枠で休憩して6時までを乗り切る。

 終わって部屋に帰るとご主人様が待っている。嫉妬から荒々しく抱かれ、熱いシャワーできれいにされ、やさしくマッサージされ、愛情を込めて身体の内外にザーメンマーキングされる。
 朝食を食べさせられて寝て起きると夕方。お金と新品のコスチュームを受け取って船内をうろうろ。ご主人様と二人でジャグジーに入ったり、他の4人と合流してカラオケをしたりタロット占いをしてもらったりして夕食まで時間をつぶす。
 芽美が4人と行動するとき拓海は別行動をとる。夕食の後、また同じ愛欲と金銭欲にまみれた夜が繰り返される。

 こうして1週間が過ぎた。


 イベントで芽美が稼いだ総額は1500万円にものぼった。それだけ稼げた理由は、麗が目的とした俳優は現れず彼女が最後まで参加していたことが大きい。
 芽美達の最初を例外として、前半は1対1かと3Pの予約ばかりだった。しかし後半になると、PR効果が出てきたためか、多人数プレイへの欲望が高まってきたのか、5人揃ってのオファーが増えた。

 欧米系・アラブ系・中華系それぞれの熱烈なファンが長時間予約をして、DVDビデオを一緒に見ながらポーズをとらせたりセリフを言わせたりして撮影する時間や、芽美たち相手にうんちくを語り麗の通訳のもとでアニメ語りをしたりするような時間が長く、セックスにかける時間は短いにも関わらず、チップを弾んでくれたのである。
 もっとも、そうした“OTAKU”達は皆アニメ愛だけでなく性欲にも溢れていて、不思議なことに皆同じような妖魔のコスプレをして、5人のセーラー戦士全員にフェラチオ奉仕させた後に5人並べて後背位で犯し、最も好きなキャラでイクことが共通していた。

 余談だが、セーラー○ーンの熱烈な崇拝者であるアメリカ男性が香蓮にボーナスチップをちらつかせ、孕んだら責任をとると断言して生のセックス&中出しを懇願し、押しに弱い彼女がOKしたところピルを飲んでいなかった彼女はばっちり妊娠。
 それを知った男は責任をとって彼女を娶り、セーラー○ーンコスでの妊婦セックスを楽しみ、生まれた女の子にちびうさのコスプレをさせて可愛がることになる。
 香蓮にとってはくだらない男と別れられてオタクだがイケメンのIT長者と結婚できてラッキーだったと言える。

 また、連夜の濃密な性体験で、性感を開発されコスプレセックスに嵌まってしまった美咲は、彼との結婚後のセックスでは満足できずに、商社マンの夫が出張で長期留守にするのをいいことに、毎年秋のこのイベントに参加するようになる。

 さらに麗は年明けのこれとは別のイベントで、念願の俳優に抱かれることに成功する。

 里奈については特筆することはない。ただ、根が純情な彼女は美咲や芽美達と会うとき、このときの痴態を思い出して赤面する癖がなかなか抜けなかった。


 期間中、拓海が芽美以外の女を犯すことはなかった、ただ一度だけを除き。
 イベント初日、芽美より1人だけ多かった美咲へのオファー。それはタキシー○仮面からもの、すなわち拓海のオファーであった。後半になればどんな男からオファーが来たのか端末画面を見せ合いながら赤裸々に語るようになったが、最初は微妙な対抗心から詳細を教えることはなく、その時の芽美にはわからなかった。

 しかし、3日目の夜、会場のひとつであるスイートルーム内のベッド脇の床に狼男に圧し掛かられて犯されているところへ、タキシー○仮面姿の拓海がジュピターに扮した美咲を連れてやってきた。
 美咲は芽美に意味ありげな視線を向けると拓海に促されるままに奥のベッドに上がった。芽美は美咲たちに拓海のことを相談したり惚気たりしていたが、写真を見せたり会わせたりしたことはない。この会場に来ていることはわかっていて、タキシー○仮面ではないかと推測されているが、ご主人様の命令に従って、そのたびにきっぱり否定している。

 芽美に近い手前のベッドの上ではバッ〇マンがくのいちを犯している。そのため芽美から二人の様子を見ることはできなかったが、すぐに美咲の喘ぎ声が芽美に聞かせるかのように響き、睦みあう二人の秘めた会話がとぎれとぎれに聞こえてくる。

「ああん、タキ〇ード仮面さまぁ、ああん♡ああん♡」
「ふふ、ぐしょ濡れだなジュピター、そんなにイイのか俺のチンポが?」
「うんっ、とってもステキ♡、でもいいの?浮気したりして?」
「ああ、ムーンは今、広間で妖魔達3人に犯されてヒィヒィ喘いでいる最中さ。その間に俺も長年の思いを遂げることにしただけだ」

「長年の思い?」
「長身でスタイルが良くポニーテールが似合うお前のことがずっと気になっていた、まこと。一途な性格も好ましい」
「嬉しい♡そんな風に言われたら、あなたのことを好きになってしまいそう・・・」
「なりゆきで仕方なく付き合っているが、本当はうさぎのような『明るいオバカキャラ』は大嫌いなんだ」

「そうだったの・・・なら、わたしと美奈子だったらどっちが好き?・・・ううんっ♡」
「言うまでもないだろう?美奈子もうさぎと同類だからな。身体の相性も良さそうだし、俺と秘密で付き合わないか?」
「そうなの?隠れて美奈子と付き合ってると思ってたけど・・・?」

「あの女から迫られて何度か寝たことはあるが遊びだよ、遊び。俺が本当に好きなのはお前だよ、まこと!」
「そうだったんだ・・・いけないひとね・・・二人に悪いわ、あんっ♡」
「素直になれないなら、こうしてやろう!」
 芽美からも美咲の両脚が拓海の肩に抱え上げられるのが見える。

「後ろの穴を責められるのが弱点なんだろう、ジュピター?」
「いやんっ!♡、どうして知ってるの・・・あーん、そっちの穴にいれちゃだめぇ~♡」
「プロフィールに書いてあるぞ、『後ろの穴が弱点のジュ○ターを責めてあなたの虜にしてみてはいかが?実は乙女ちっくな秘密の顔をあなただけに曝してくれるかもしれせん』とな。」

 おそらく里奈が書いたのだろう。他にはどんなことが書かれているのか気になるが、今はそんなことより二人のことが気になって仕方がない。会話が中断しヌプッヌプッというアヌスへの挿入音と美咲の嬌声だけが聞こえる。

「あん、あん、あん!♡あっあっあっ!♡まこと、イッチャう~!アアアアアアアンっ!♥」
 美咲が悦楽の頂上から舞い降りてくるのを待って拓海が問いかける。
「これで素直になれるだろう、まこと?」
「うん・・・こんなに気持ちよくされたの初めて・・・でもみんなには秘密にしてね?」
「俺の女になるんだな?それなら証拠としてお前の秘密の顔を見せてみろ!」
「いいわ♡・・・変態だって軽蔑しないでね・・・わたし・・・アナルセックスが終わったあと・・・コンドームに出された精液を飲むのが・・・大好きなの♡・・・」

 ジュピターコスの美咲が起き上がり、座り込んで頭を後方に傾ける。ポニーテールの尾がふわりとたなびく。長身でスタイルがよく勝気そうなルックスの美咲にはジュピターコスが悔しいほどよく似合っている。しかし今その顔は火照り弱々しい。

 ピンクのルージュが落ちかかる唇を大きく開いて舌を出す。その上にコンドームを高く掲げて袋の開いているほうを下に向ける。舌の上、口の中、唇の周囲にとろとろと滴り落ちるザーメン。味わいながらゆっくり飲み干すと、唇にかかった白濁の雫を舌を伸ばしてペロリ、ペロリと舐めとっては卑猥に微笑む。

 初めてみる美咲の下品な表情に驚かされる芽美。しかしそれはどうでもいい。
―ご主人様のザーメンミルクを受け止めるのは妻である私の役目なのにっ!―

 どこまでが事実か判断しがたい会話とその行為に芽美の心に怒りと悲しみが渦巻く。美咲を突き飛ばしてご主人様を問い詰めたいが、ヴィーナス姿の芽美は狼男に体位を正常位に変えられ、依然として犯され続けている。
 おざなりな喘ぎ声を上げながら二人が部屋をでていく後姿を呆然と見守る。振り返った美咲がフッと冷笑を浮かべた気がする。

 その後の芽美は気もそぞろで客の評判は最悪だった。そのことが4日以降の予約にも悪い影響を及ぼしたことは間違いない。6時ちょうどになると相手の男を突き飛ばすようにして追い払い、走って部屋に戻りご主人様に「美咲や香蓮と隠れて付き合ったり抱いたりしたことがあるの?」と泣きながら尋ねた。

「それは死んだ妻に誓って絶対にない」
「わかりました、ご主人様を信じます」
「ああ、俺を信じろ!」
「・・本当に美咲や(以下、略」」
というループ会話を延々繰り返したあと、
「じゃあジュピターとヴィーナスではどっちが好きなの?」と重ねて問いかける。

 しばしの沈黙。そして、こんな拓海ご主人様の解答。
「お前にはヴィーナスのほうが似合うと思うが、キャラとして好きなのはジュピターだ!」

 芽美はすぐさまスタッフに電話をかけてジュピターのコスプレ衣装を至急持ってきてもらい、一人でシャワーを浴び、届けられたサイズの合わない衣装に無理やり着替える。そしてご主人様を押し倒すと騎乗位で肉棒を肛門に咥え込み、「ご主人様なんて大嫌い」と泣き叫びながら、くたくたになって倒れこむまで腰を振った。


 14日(月)の朝、最後の夜を終えた男性客達は、三々五々、会場である豪華客船を去っていった。女達が解放されたのはその夜のことだ。行きと同じように箱詰めにされて荷物のように運ばれていくが、行きと違い泣く女はいない。

―終わってみれば楽しいイベントだった、お金もたくさん稼げたし、また参加しようかなー
というのが共通する感想だった。
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