"Tacki" for prudish Meg

森斗メメ

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Discipline6 南の島での聖淫なる婚姻儀式

第三話 二人だけの結婚式

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 時刻は夕方5時。いよいよ二人だけの“結婚式”の時が来た。水上コテージで白いタキシードに着替えた拓海は、スパに併設する花嫁控え室にドキドキしながら芽美を歩いて迎えにいく。

―芽美の心を完全に奪うための“仕込みイベント”に過ぎないというのに、俺が浮かれてどうする―

 苦笑いをしながら扉をノックして芽美に声をかける。
「俺のかわいいフィアンセさん、準備は終わってるかい?開けていいかな?」
「はい・・・拓海ごしゅ・・・・拓海さん」

 挙式から初夜まではご主人様と呼ぶ必要はないと言われている芽美だが、習慣でつい呼ぼうとしてしまう。そのことにほくそ笑む拓海だが、扉を開けてウェディングドレス姿の芽美を目にすると、純粋な驚嘆の笑顔を浮かべて呆然と立ち尽くす。

「とっても綺麗で愛らしいよ、メグ!予想以上だ!衝撃的すぎて声が出なかった!」
「うふふ、ありがとうございます、拓海さん」
「リゾート地だからミニと悩んだが正統派にして正解だったな!芽美王女様」
「ふふふ、ご主人様ったら、王女様なんて褒めすぎですよ~、もう」

 褒められて嬉しくなり、思わず“ご主人様”と言ってしまう芽美。幸い先ほどまでお世話になっていた日本語がわかるメイクスタッフは空気を読んでこっそり姿を消していた。


 芽美が着ているのは正統派プリンセスラインのウェディングドレス。色は純白で模様のないとてもシンプルなデザイン。その代わり、スカートはパニエでふわりと柔らかく広がり、ベアトップで大胆に露出しているデコルテには銀の首飾りが上品に輝いている。

 髪はアップにまとめられてショートベールで隠され、銀色のティアラが王女の雰囲気を演出している。両耳では、小さな白い真珠のイヤリングが揺れている。

 両腕には白いレースの指ぬきロンググローブが嵌められ、指先を透明感のあるピンクのマニキュアが彩っている。

 全体としてシンプルで上品にまとまっている中で、口紅のみは強い日差しにも負けないレッドの強い色。と言ってもオレンジの混じった若々しい色で、ちょうど良いアクセントとなっている。

 そんな美しく愛らしい芽美を言葉を尽くしてひとしきり褒めちぎったあと、拓海はその手を引いて海上のチャペルへ続く石畳の上をゆっくりと歩きだす。まだ暑いが、日差しはだいぶ弱まり風も穏やかで歩きやすい。スカートに隠れて見えないが、芽美は白い10センチのヒールを履いていて、身長差がいつもより小さくなっている。

 あくまで“リハーサル”という位置づけだから特別な演出はない。しかし通りすがりの観光客が歩みを止めて、木製の桟橋をわたり海上チャペルに赴く二人の姿を微笑ましく見守っている。
 


 チャペルには陽気そうな西洋人の神父が夕日を背に二人を待っていた。二人が前に立つと、片言の日本語で式を進行する。

 まず、二人に向かいニッコリと微笑んで式の開始を宣言。
「これよりキリハラタクミ、ウガキメグミ、両名の結婚式をとりおこないマス」

 拓海のほうを向き、「新郎タクミ、あなたは新婦メグミが病めるときも健やかなるときも、愛を持って、生涯支えあう事を誓いマスカ?」と問い、拓海が真剣な表情と声で「はい、誓います」と返答。

 芽美のほうを向き、「新婦メグミ、あなたは新郎タクミが病めるときも健やかなるときも、愛を持って、生涯支えあう事を誓いマスカ? 」と問い、芽美が緊張した顔と口調で「はい、誓います!」と答える。 

「では、お互いの愛の証として、指輪の交換ヲ」

 芽美が驚いたことに、神父がポケットから指輪ケースを取り出して開いてみせる。そこには銀色の大小二つの指輪が入っている。そのうち小さいほうを拓海が手にとって芽美の左手薬指に嵌める。続いて芽美も大きいほうを手にとって拓海の左手薬指に嵌める。

「ではベールをあげ、誓いのキスヲ」

 神父の声を合図に向き合う二人。拓海がベールを上げる。芽美が潤んだ目をつむって軽く口を開いて上を向く。拓海が顔を斜めにして自分の口を合わせる。神父様の前にもかかわらず、芽美はいつもの癖で拓海の口腔内に舌を差し入れディープキスをしてしまう。拓海が軽く肩に手をやると、ハッとして口を離し、澄ました表情をとりつくろう。

「この結婚証明書に署名ヲ」

 拓海、芽美の順でフルネームで署名。日本で法的拘束力を持たない書類だとわかっていても、芽美の文字は緊張で震える。

 署名が終わると神父はその紙を海に掲げ、荘厳に結婚の成立を宣言する。

「この清らかな母なる海を証人として、本日ここに新郎キリハラタクミと新婦ヨシノメグミの結婚が成立イタシマシタ!」

 最後に笑顔でこう言って、二人よりも先に桟橋を歩いて去っていった。 
「それでは、この美しい島にて、楽しいハネムーンをお過ごしくださいネ。」



 拓海は片手に結婚証明書を持ち、もう片手で芽美の手を握ると自分達の水上コテージへ向かって歩きだす。芽美の目は少々赤い。神父が海を証人として結婚の成立を宣言したときに感極まって涙ぐんでいた痕跡だ。

 二人が海沿いのバーを近くを通りすぎようとすると、そこから二人の式の様子を笑顔で眺めていた欧米人達が手拍子をとって騒ぎ立てる。東洋人の声が聞こえないのは国民性の違いだろう。
「Congratulations!」
「Felicitations !」
「Viva gli sposi! 」
「горько!горько!горько!」
「Bacio! Bacio! Bacio! 」

「みんな、なんて言っているのかしら?『おめでとう』と言っているのは何となくわかるけど、他にも何か・・・もしかして・・・?」
 芽美がその意味に気づきかけたところで、陽気なざわめきに惹かれて近寄ってきた日本人の女子大生風グループが、外国人に合わせて日本語でこうはやし立てる。
 3人とも美人でセクシーだが、どこかしら淫らな雰囲気をまとっている。

「「「キッス!キッス!キッス!キッス!」」」

「やっぱり!」
 その意味を理解した芽美が顔を赤らめてオロオロしていると。

「“新婚”の俺達を祝福してくれている皆さんの期待に応えてあげないとな、愛しの“新妻”メグ!」
 “夫”となった拓海にそう言って抱きしめられ、公衆の面前で唇を奪われる。

「「「キャーーーーーッ!」」」
「「「Wowーーーーーーー!」」」
 女子大生や外国人の歓声が響く中、芽美は“夫”との愛の深さを見せつけるかのように夢中で唇を吸う。恥ずかしい、でもみんなに見てもらいたい、見せつけたい、そんなアンビバレントな感情が芽美を昂ぶらせる。

 その手が無意識に拓海の下半身へ伸びようとしたところで手をつかまれ顔が離される。

「それはあとでゆっくりな。さ、皆さんにお礼の挨拶をして帰ろう」
「え?あ、うん!」

 堂々としている新郎と、対照的に恥ずかしげにモジモジしている新婦は並んでお辞儀をすると、拍手の中、にこやかに手を振って去っていった。

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