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列島 第四島 墓地島
第29話 リッチ
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二人は屋敷の中を戦いながら進み、今は三匹目の多四肢体から素材をとり終えたところだ。
「先生、湧魔心を一つもらえませんか?」
ポラは、二個目の心臓をムンナのカゴに入れるのを見て、そうお願いした。
「ああ、別に良いぞ。もう一つの方はどうする?」
「一つだけで大丈夫です。そちらを売ったのは折半しないで先生に」
リアーロは、ポラのゴーレムかオートマタを作りたいとの独り言を聞いていたため了承した。
予備にもう一つあっても良いんじゃないかとも思ったが、教本がでれば産出量が増えて、価格が落ちるかもしれないので、売るのが妥当かとの考えに至った。
クーが死体を吸収するのを待ってから移動を開始した。しばらく進むと、ついに塔への入口にたどり着く。
「よーし。最上階までずっと階段だ。ここから魔物は出ないから気楽に行こう」
「部屋が一つだけなんですか? なんだかもったいない作りの塔ですね」
塔は意外と広くて高いので、部屋を作ろうとすれば三階ぐらいに、なりそうな大きさだったので、ポラはもったいなく思った。
「屋敷が広いからもう部屋が必要なかったのかもな」
ポラは、リアーロの言葉に「そう言われればそうですね」と納得した。
二人は石造りの螺旋階段を登っていく。明かりは、最低限で薄暗い。窓もないため、どのぐらい登ったのかもよく分らなくなってくる。
ムンナは、すごく窮屈そうだけど、屈めば、なんとか通れるようで、一段ずつゆっくりと登ってくる。
二人も、ムンナを置いていかないように、ゆっくりと階段を登って行く。
「そうだ、この島最後の魔物は、最上階の扉を開けたらすぐ目の前にいる。だから先に素材部位を教えておくよ」
先程の反省を活かし、接敵する前に情報を伝えておく。
「はい、お願いします」
「これから戦うのは、リッチだ。素材部位は両手と頭だな」
ポラは、リッチと聞いて身構える。
「リッチって死の王と呼ばれる、あのアンデットですか? 楽しみですねー」
リアーロは、ポリポリと後頭部を掻きながらなにか言いにくそうにしている。そんなリアーロの態度を見たポラは「違うんですか?」と疑問を投げかけた。
「うーむ。予想はつくかもしれないが、多分ありゃゴーレムだ」
どんな素材が取れるのかと弄くり回した経験から、リアーロは、その結論に至ったようだ。
「見た目はいかにもリッチって感じなんだが、手首が取り外しできるようになってるんだ」
そう聞いたポラは、興味を持ちすぐに倒さずに様子をうかがおうと決めた。
「ちょっと、どう戦うのか見てみたいのですが、いいですか?」
「ああ、そうだな。素材の用途にも関わってくるから見たほうが良いな」
二人で、敵の戦い方を見ることを決めたところで、タイミングよく最上階の扉へと到着した。
「先生は、ムンナちゃん達をお願いします」
「解った」
リアーロは、扉の先には入らず、扉を開けたまま観戦することにした。
扉を開きポラが部屋の中へと入っていった。
塔の最上階は、屋敷とは違い廃墟のような場所だった。棚や机は朽ち果て残骸と化している、その中には試験管などの実験器具や工具のようなものも散乱していた。
そして、その奥には、管が多数接続されている玉座のような大きな椅子があり、その椅子にはこの塔の主であるリッチが鎮座していた。
黒くボロボロのローブに身を包み、顔はスケルトンと同じく完全に白骨化している。違う点といえば、その額に緑の宝石が四つ、ひし形に埋め込まれている。ローブの裾から見える手は、骨でも人の手でもなく、金属の小手のような見た目をしていた。その右の手の甲には赤い宝石があり、左の甲には青い宝石が埋め込まれていた。
リッチはポラが部屋に踏み込んだのを確認すると、すぐに立ち上がり両手を前に掲げた。
「彷徨う呪霊よ我が力を糧に、我の敵を討ち滅ぼせ……右炎左氷……幽魔召喚」
そう唱えると右手から赤い光の玉が、左手からは青い光の玉が現れた。
「舞え……幽魔炎氷乱舞」
赤と青の球体がポラヘと襲いかかる。二つの玉はそれぞれ複雑な軌道をとりながらポラへと迫る。
赤い球体は床を焦がし、青い球体は、天井を凍らせる。あれらに触れれば到底無事では済まなそうだ。
「反対属性の同時攻撃ですか。属性魔防壁が難しい攻撃ですね……」
ポラは、そう言うだけで全く動く気配がない。
「ですが……その程度でしたら」
ポラが話している途中で二つの球体がポラに叩き込まれた。爆炎と氷霧がポラの体を包む。赤は頭に青は足に、頭を焼き足を凍らせる的確な攻撃だった。
しかし、爆炎と氷霧が晴れるとポラは、変わらぬ姿でそこに立っていた。
「これでは単純な魔力の膜すら貫けません」
ポラはそう言って杖をリッチに向ける。
「軌道を呪霊にまかせる発想は、凄いですが……単純に威力が足りません!」
掲げた杖から一筋の赤い光がリッチへと放たれる。それは、凝縮された炎の線だった。リッチは、その攻撃に反応することすらできず、胸を貫かれた。
「グギギギ!」
赤の光が通り抜けた場所からは煙が上がりリッチがもがき苦しむ。ポラは光を発し続けたまま杖を動かしリッチをバラバラに焼き切った。
「うーん。後出しで簡単に勝っちゃった……」
リッチの強さが期待はずれだったようでポラは何だかしょんぼりとしている。
「おー、終わったかー。おつかれさーん」
リアーロが抜けた感じで部屋に入ってきた。緊張感のないリアーロを見たポラは、やっぱり大したこと無い魔物だったんだなと思い、解体へと意識を切り替える。
「素材と戦い方が関係あると言ってましたけど、どういうことですか?」
「んじゃ早速、説明を兼ねて講座を始めるかな」
リアーロはリッチの傍に行き、家具の残骸の中に散らばってる、リッチの頭と両腕を持ってきた。
「今回の講座は、リッチの幽魔手と指令頭だ」
リアーロは、リッチの体を床に置くと、処理袋から道具を出していく。
今回の使用する道具は、金槌、平タガネ、ペンチ、アイスピックだ。
アイスピックは、氷を砕くために使う金属製の棘で、先端が鋭く尖っている道具だ。持ちては木製で柄の後ろは、平タガネと同じく金槌で叩く平らな面がある。
「まずは右手からだな。この右手には幽魔に炎属性を与えて維持する機能があるんだ」
そう言ってリッチの右腕を持ち上げる。その腕は、前腕の半ばから金属製になっており、手先は完全に金属製だ。骨から金属へと変わっているのは、とても奇妙だった。
「まずは、この穴にアイスピックを入れる」
リアーロは、手首の親指側にある小さい丸い穴を指差しポラへと見せる。ポラがしっかりと見たのを確認するとその穴に、アイスピックを差し込んでいく。
「何かにあたった手応えがあったら、そのまま強く押し込む」
アイスピックを持つ手に力を込めると、アイスピックが奥に行くにつれて、手首の小指側から金属製の棒が出っ張ってくる。
「この金属棒で手首が固定されてるんだ。だからこれをペンチで引っこ抜く」
次にとび出た金属棒をペンチで引き抜くと、ガチャと音を立て前腕から手首の先が外れた。外れた手には、骨に当たる部分なのか短剣の柄ぐらいの長さの金属製の棒がついている。手の甲に付いた赤い宝石の存在で、奇妙なデザインの短杖のようになった。
「これで右手は完了だな」
柄を持ちリッチの右手をプラプラと動かしながらそう言った。
「次は左手だな。手順は全く同じだ。親指側の穴にピックをいえれて、逆からとび出た棒を引き抜く」
そう言いながらリッチの左手を持ち、同じ手順で棒を引き抜き、手際よく終わらせた。
単杖のようになった左右の手を床に置くと、次に頭を手に持った。
「さて、次は、指令頭だな。幽魔の制御をこの頭でやっているんだ」
頭を逆さまにしてポラが切った首の断面を見る。
その中は、生物的なものがまったくなく、ゴム管や、金属棒が見えている。やはりリッチもゴーレムの一種だということが予想できる。
「この中に手を突っ込んで取れれば楽なんだが子供でもなきゃ手が入らない」
そう言いながら、首を床に置き、その隣に座り込む。
「だから、平タガネと金槌で後頭部を強引に、こじ開ける」
リアーロはリッチの頭を足のうらで挟み固定する。そして、平タガネを耳の後ろに当てその柄尻を金槌で叩き、強引に切れ込みを入れていく。この作業は結構時間がかかるようでガンガンと金属を叩く音がしばらく続いた。
耳の後ろから頭頂部を通り、逆側の耳まで切れ込みを入れると、最後は頭頂部をペンチで掴み後頭部を強引に開いた。
するとリッチの額にある緑色の宝石の裏側付近に、子供の拳ぐらいの緑色の球体があった。
「ふう、これが指令頭だ。なんか色々付いてるけど、気にせず引きちぎって大丈夫だ」
リアーロは手を突っ込み緑色の玉を引き出すと、ゴム管や金属の線を無理やり引きちぎった。そして、残った短い線を取り除いていく。
ゴミを取り終わった緑の宝石のような物は意外ときれいだった。
「よし! 今回の講座はこれで終了だ」
リアーロは、残った残骸をひとまとめにすると、他の体の部位の場所に放り投げた。
「先生、素材と戦い方が関係あると言ってましたが……」
ポラが疑問に思い質問しようとすると、リアーロが左手に幽魔手を二本持ち右手には指令頭を持っていた。
「今見せてやるよ。彷徨う呪霊よ俺の魔力で、あの玉座をぶっ壊せ右炎左氷! 幽魔召喚!」
リアーロが呪文を唱えると左手に持った幽魔手から赤と青の玉が現れた。
それはリッチのものとは比べものにならないほど小さく、小指の先ぐらいの大きさだった。
速度も遅くフラフラと動くとリッチの座っていた椅子に当たり消滅した。もちろん椅子は無傷だ。触れば多少温かいところと冷たいところがあると分かる程度であった。
「ちっさ……」
ポラは、あまりの小ささについ言ってしまった。
「しょ……しょうがないだろ俺は、魔法はからっきしなんだ。……とにかく、この三点セットを持ってれば、リッチの攻撃魔法が、そのまま使えるんだ」
ポラは、面白いものがあるものだなと思うと同時に、あることをひらめいた。
「先生、これも私に譲ってくれませんか? それと帰りにスケルトンの大腿骨も取って帰りましょう」
リアーロは、一瞬だけ金の計算をしたが、何だか面白そうなことになりそうだと思い。二つ返事で了承した。
二人は塔を降り、屋敷で多四肢体を回避し、墓地でスケルトンを一匹だけ倒し大腿骨を手に入れると、そのままダンジョンの外へと出ていった。
別れ際に転移神殿でリアーロが今後の予定をつたえる。
「明日一日休んで、明後日に列島階層のボスに行くからよろしくな」
ポラは明日ではなく明後日なことを疑問に思い、質問する。
「一日休むんですか?」
「ああ、色々と準備があるからな。なにせ列島階層のボスの素材は、今まで誰も採取できた事がないんだ。だから俺は今回でその採取方法を確立する!」
リアーロの気合の入った宣言にポラは思わず大声を上げる。
「凄いです! もしかして、教本で初披露するってことですか!」
リアーロは、ニヤリと笑いコクリとうなずいた。
「これは売れますね……」
ポラとリアーロの「グヘヘヘ」というゲスな笑い声が転移神殿に響くのであった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第2巻
著者ポラ、監修リアーロ
目次
第12項 リッチの幽魔手と指令頭……48
初級 幽魔手の取り外し………………49
上級 指令頭の取り外し………………50
「先生、湧魔心を一つもらえませんか?」
ポラは、二個目の心臓をムンナのカゴに入れるのを見て、そうお願いした。
「ああ、別に良いぞ。もう一つの方はどうする?」
「一つだけで大丈夫です。そちらを売ったのは折半しないで先生に」
リアーロは、ポラのゴーレムかオートマタを作りたいとの独り言を聞いていたため了承した。
予備にもう一つあっても良いんじゃないかとも思ったが、教本がでれば産出量が増えて、価格が落ちるかもしれないので、売るのが妥当かとの考えに至った。
クーが死体を吸収するのを待ってから移動を開始した。しばらく進むと、ついに塔への入口にたどり着く。
「よーし。最上階までずっと階段だ。ここから魔物は出ないから気楽に行こう」
「部屋が一つだけなんですか? なんだかもったいない作りの塔ですね」
塔は意外と広くて高いので、部屋を作ろうとすれば三階ぐらいに、なりそうな大きさだったので、ポラはもったいなく思った。
「屋敷が広いからもう部屋が必要なかったのかもな」
ポラは、リアーロの言葉に「そう言われればそうですね」と納得した。
二人は石造りの螺旋階段を登っていく。明かりは、最低限で薄暗い。窓もないため、どのぐらい登ったのかもよく分らなくなってくる。
ムンナは、すごく窮屈そうだけど、屈めば、なんとか通れるようで、一段ずつゆっくりと登ってくる。
二人も、ムンナを置いていかないように、ゆっくりと階段を登って行く。
「そうだ、この島最後の魔物は、最上階の扉を開けたらすぐ目の前にいる。だから先に素材部位を教えておくよ」
先程の反省を活かし、接敵する前に情報を伝えておく。
「はい、お願いします」
「これから戦うのは、リッチだ。素材部位は両手と頭だな」
ポラは、リッチと聞いて身構える。
「リッチって死の王と呼ばれる、あのアンデットですか? 楽しみですねー」
リアーロは、ポリポリと後頭部を掻きながらなにか言いにくそうにしている。そんなリアーロの態度を見たポラは「違うんですか?」と疑問を投げかけた。
「うーむ。予想はつくかもしれないが、多分ありゃゴーレムだ」
どんな素材が取れるのかと弄くり回した経験から、リアーロは、その結論に至ったようだ。
「見た目はいかにもリッチって感じなんだが、手首が取り外しできるようになってるんだ」
そう聞いたポラは、興味を持ちすぐに倒さずに様子をうかがおうと決めた。
「ちょっと、どう戦うのか見てみたいのですが、いいですか?」
「ああ、そうだな。素材の用途にも関わってくるから見たほうが良いな」
二人で、敵の戦い方を見ることを決めたところで、タイミングよく最上階の扉へと到着した。
「先生は、ムンナちゃん達をお願いします」
「解った」
リアーロは、扉の先には入らず、扉を開けたまま観戦することにした。
扉を開きポラが部屋の中へと入っていった。
塔の最上階は、屋敷とは違い廃墟のような場所だった。棚や机は朽ち果て残骸と化している、その中には試験管などの実験器具や工具のようなものも散乱していた。
そして、その奥には、管が多数接続されている玉座のような大きな椅子があり、その椅子にはこの塔の主であるリッチが鎮座していた。
黒くボロボロのローブに身を包み、顔はスケルトンと同じく完全に白骨化している。違う点といえば、その額に緑の宝石が四つ、ひし形に埋め込まれている。ローブの裾から見える手は、骨でも人の手でもなく、金属の小手のような見た目をしていた。その右の手の甲には赤い宝石があり、左の甲には青い宝石が埋め込まれていた。
リッチはポラが部屋に踏み込んだのを確認すると、すぐに立ち上がり両手を前に掲げた。
「彷徨う呪霊よ我が力を糧に、我の敵を討ち滅ぼせ……右炎左氷……幽魔召喚」
そう唱えると右手から赤い光の玉が、左手からは青い光の玉が現れた。
「舞え……幽魔炎氷乱舞」
赤と青の球体がポラヘと襲いかかる。二つの玉はそれぞれ複雑な軌道をとりながらポラへと迫る。
赤い球体は床を焦がし、青い球体は、天井を凍らせる。あれらに触れれば到底無事では済まなそうだ。
「反対属性の同時攻撃ですか。属性魔防壁が難しい攻撃ですね……」
ポラは、そう言うだけで全く動く気配がない。
「ですが……その程度でしたら」
ポラが話している途中で二つの球体がポラに叩き込まれた。爆炎と氷霧がポラの体を包む。赤は頭に青は足に、頭を焼き足を凍らせる的確な攻撃だった。
しかし、爆炎と氷霧が晴れるとポラは、変わらぬ姿でそこに立っていた。
「これでは単純な魔力の膜すら貫けません」
ポラはそう言って杖をリッチに向ける。
「軌道を呪霊にまかせる発想は、凄いですが……単純に威力が足りません!」
掲げた杖から一筋の赤い光がリッチへと放たれる。それは、凝縮された炎の線だった。リッチは、その攻撃に反応することすらできず、胸を貫かれた。
「グギギギ!」
赤の光が通り抜けた場所からは煙が上がりリッチがもがき苦しむ。ポラは光を発し続けたまま杖を動かしリッチをバラバラに焼き切った。
「うーん。後出しで簡単に勝っちゃった……」
リッチの強さが期待はずれだったようでポラは何だかしょんぼりとしている。
「おー、終わったかー。おつかれさーん」
リアーロが抜けた感じで部屋に入ってきた。緊張感のないリアーロを見たポラは、やっぱり大したこと無い魔物だったんだなと思い、解体へと意識を切り替える。
「素材と戦い方が関係あると言ってましたけど、どういうことですか?」
「んじゃ早速、説明を兼ねて講座を始めるかな」
リアーロはリッチの傍に行き、家具の残骸の中に散らばってる、リッチの頭と両腕を持ってきた。
「今回の講座は、リッチの幽魔手と指令頭だ」
リアーロは、リッチの体を床に置くと、処理袋から道具を出していく。
今回の使用する道具は、金槌、平タガネ、ペンチ、アイスピックだ。
アイスピックは、氷を砕くために使う金属製の棘で、先端が鋭く尖っている道具だ。持ちては木製で柄の後ろは、平タガネと同じく金槌で叩く平らな面がある。
「まずは右手からだな。この右手には幽魔に炎属性を与えて維持する機能があるんだ」
そう言ってリッチの右腕を持ち上げる。その腕は、前腕の半ばから金属製になっており、手先は完全に金属製だ。骨から金属へと変わっているのは、とても奇妙だった。
「まずは、この穴にアイスピックを入れる」
リアーロは、手首の親指側にある小さい丸い穴を指差しポラへと見せる。ポラがしっかりと見たのを確認するとその穴に、アイスピックを差し込んでいく。
「何かにあたった手応えがあったら、そのまま強く押し込む」
アイスピックを持つ手に力を込めると、アイスピックが奥に行くにつれて、手首の小指側から金属製の棒が出っ張ってくる。
「この金属棒で手首が固定されてるんだ。だからこれをペンチで引っこ抜く」
次にとび出た金属棒をペンチで引き抜くと、ガチャと音を立て前腕から手首の先が外れた。外れた手には、骨に当たる部分なのか短剣の柄ぐらいの長さの金属製の棒がついている。手の甲に付いた赤い宝石の存在で、奇妙なデザインの短杖のようになった。
「これで右手は完了だな」
柄を持ちリッチの右手をプラプラと動かしながらそう言った。
「次は左手だな。手順は全く同じだ。親指側の穴にピックをいえれて、逆からとび出た棒を引き抜く」
そう言いながらリッチの左手を持ち、同じ手順で棒を引き抜き、手際よく終わらせた。
単杖のようになった左右の手を床に置くと、次に頭を手に持った。
「さて、次は、指令頭だな。幽魔の制御をこの頭でやっているんだ」
頭を逆さまにしてポラが切った首の断面を見る。
その中は、生物的なものがまったくなく、ゴム管や、金属棒が見えている。やはりリッチもゴーレムの一種だということが予想できる。
「この中に手を突っ込んで取れれば楽なんだが子供でもなきゃ手が入らない」
そう言いながら、首を床に置き、その隣に座り込む。
「だから、平タガネと金槌で後頭部を強引に、こじ開ける」
リアーロはリッチの頭を足のうらで挟み固定する。そして、平タガネを耳の後ろに当てその柄尻を金槌で叩き、強引に切れ込みを入れていく。この作業は結構時間がかかるようでガンガンと金属を叩く音がしばらく続いた。
耳の後ろから頭頂部を通り、逆側の耳まで切れ込みを入れると、最後は頭頂部をペンチで掴み後頭部を強引に開いた。
するとリッチの額にある緑色の宝石の裏側付近に、子供の拳ぐらいの緑色の球体があった。
「ふう、これが指令頭だ。なんか色々付いてるけど、気にせず引きちぎって大丈夫だ」
リアーロは手を突っ込み緑色の玉を引き出すと、ゴム管や金属の線を無理やり引きちぎった。そして、残った短い線を取り除いていく。
ゴミを取り終わった緑の宝石のような物は意外ときれいだった。
「よし! 今回の講座はこれで終了だ」
リアーロは、残った残骸をひとまとめにすると、他の体の部位の場所に放り投げた。
「先生、素材と戦い方が関係あると言ってましたが……」
ポラが疑問に思い質問しようとすると、リアーロが左手に幽魔手を二本持ち右手には指令頭を持っていた。
「今見せてやるよ。彷徨う呪霊よ俺の魔力で、あの玉座をぶっ壊せ右炎左氷! 幽魔召喚!」
リアーロが呪文を唱えると左手に持った幽魔手から赤と青の玉が現れた。
それはリッチのものとは比べものにならないほど小さく、小指の先ぐらいの大きさだった。
速度も遅くフラフラと動くとリッチの座っていた椅子に当たり消滅した。もちろん椅子は無傷だ。触れば多少温かいところと冷たいところがあると分かる程度であった。
「ちっさ……」
ポラは、あまりの小ささについ言ってしまった。
「しょ……しょうがないだろ俺は、魔法はからっきしなんだ。……とにかく、この三点セットを持ってれば、リッチの攻撃魔法が、そのまま使えるんだ」
ポラは、面白いものがあるものだなと思うと同時に、あることをひらめいた。
「先生、これも私に譲ってくれませんか? それと帰りにスケルトンの大腿骨も取って帰りましょう」
リアーロは、一瞬だけ金の計算をしたが、何だか面白そうなことになりそうだと思い。二つ返事で了承した。
二人は塔を降り、屋敷で多四肢体を回避し、墓地でスケルトンを一匹だけ倒し大腿骨を手に入れると、そのままダンジョンの外へと出ていった。
別れ際に転移神殿でリアーロが今後の予定をつたえる。
「明日一日休んで、明後日に列島階層のボスに行くからよろしくな」
ポラは明日ではなく明後日なことを疑問に思い、質問する。
「一日休むんですか?」
「ああ、色々と準備があるからな。なにせ列島階層のボスの素材は、今まで誰も採取できた事がないんだ。だから俺は今回でその採取方法を確立する!」
リアーロの気合の入った宣言にポラは思わず大声を上げる。
「凄いです! もしかして、教本で初披露するってことですか!」
リアーロは、ニヤリと笑いコクリとうなずいた。
「これは売れますね……」
ポラとリアーロの「グヘヘヘ」というゲスな笑い声が転移神殿に響くのであった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第2巻
著者ポラ、監修リアーロ
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