4 / 38
洞窟 第一階層
第4話 メタルリザード
しおりを挟む
ホーンラビットの講座を終えた二人は、そのままダンジョンの中をさまよっていた。度々でてくるゴブリンやホーンラビットを蹴散らして進んでいく。
リアーロは、簡単に取れるホーンラビットの角だけを回収し後は手をつけていない。
「そう言えば、外だと倒した魔物は、他の魔物に食べられちゃうけど、ダンジョンは、どうなってるんですか?」
「誰も見たこと無いが、ダンジョンが吸収すると言われてるぞ」
リアーロは、ポラの質問に通説を話せて聞かせる。するとポラは、「もったいないな。次は、あの子も連れてこようかな」リアーロはに届かないほど小さくつぶやいた。
「一階はあとメタルリザードだけなんだけどな」
そう言いながら細い通路を抜けて、広い部屋に入る。
この[全種の洞窟]は階層ごとに生まれる魔物が変わる。だいたい平均3種の魔物がいる。この第一階層で残るは、メタルリザードだけになっていた。
「あの全然メタルっぽくない赤茶色のトカゲですか?」
ポラは、部屋のすみの暗がりを指差しながらそういった。
リアーロは暗がりに目を凝らすと薄っすらと1mほどのお大きさで赤茶色をしたトカゲが見えた。
「おっ、あいつがメタルリザードだ。素材は、皮と銀脂肪だな。頭付きの皮は気味悪がられるから首をはねるのが一番良いかな」
ポラは早速メタルリザードを攻撃した。
ゴブリンと同様のいつ攻撃したかもわからない切断型の魔法で首がズルリとずれて地面に落ちた。
その切り口は驚くことに、銀色に光り輝いている部分がある。それは、ちょうど肉と皮膚の間にある脂肪の部分だった。
ポラは、切り開いたことにより赤茶色のトカゲの名前が何故メタルなのかを理解した。
「よし、今回の講座は、メタルリザードの皮と銀脂肪の採取方法だ」
リアーロは、荷物を下ろすと、下処理袋を開けて色々と取り出す。
まずはナイフ、クーパー、岩塩、まな板の皮取り4点セット。
そして、次に取り出したのは、空きビンと、乳棒と乳鉢だ。
「まずは皮からいくぞ。こいつはウサギとは違い使える皮は、ゴツゴツとした背中の一部だけだ」
メタルリザードは、背中と腹で色と材質が異なる。背中の赤茶色が濃い部分が素材として使える皮で、腹側は、どう加工してもグニャグニャで使い物にならない。
「このゴツゴツがついている部分は、うまく加工すれば良い鎧になる」
そう言いながら、切断された首のところから、色が変わる腹と背のラインに沿ってナイフで切込みを入れていく。
尻尾の先まで切込みを入れると、逆側も同じ事をする。
「切込みを入れたらこうやって剥がす!」
メタルリザードの前足を両足で踏んづけて固定し、背中の皮を掴むと背筋力を使って一気に引き剥がす。
「力が入りにくくなったところで後ろ足へ移動する」
今度は、後ろ足を踏みつけ思い切り引くと、尻尾の先まできれいに革が剥がれた。
「うわーすごい綺麗ですね」
皮が剥がされたメタルリザードは、銀脂肪と呼ばれるメタルの名の由来である銀色の脂肪の部分があらわになった。
皮をむかれた生き物というのは総じて気味が悪いものだ。しかし、このトカゲは、宝飾品のようにきれいに輝いていた。
「この銀脂肪が、良い値で売れるし、他の素材加工にも使えるから重宝するんだ」
そう言いながら、皮をまな板に載せ、クーパーで皮から銀色の脂肪をこそぎ落とし始めた。
ポラは、慌ててきれいな剥き身のトカゲから、皮の下処理に目線を移した。
「この脂肪も素材だから、こそぎ取ったらこっちの乳鉢に入れておく」
クーパーについた脂肪を指でぬぐって乳鉢へと落とす。
ゴリッ! ゴリッ! ペタン。こそぎ落として乳鉢へと黙々と作業は、続く。
「こいつの皮の色は緑だからテカリが無くなって緑になるまでしっかりとこそぎ落とすように」
そんなアドバイスをはさみつつ、しっぽの先まで作業を終え、皮の内側に岩塩を擦り付けて丸めるとカバンにしまい込んだ。
「よし、皮はこんなものだな。次は、銀脂肪だ。」
そう言って乳鉢を持ち上げポラに見せる。
「このまま切り剥がして持って帰るのもいいが、ひと手間かければ他の素材の下処理に使えるし、買取価格が少し上がる」
そう言いながら、乳鉢の銀脂肪を乳棒でゴリゴリと擦り始めた。
「こうやって細かくすりながら練り込むと、空気と混じってどんどん乳白色に変わる」
ネリネリネリ。光を反射していたギンギラの脂肪は、どんどん色を変えていぶし銀のような落ち着いた色へと変わっていった。
「色が変わってきましたね」
じっと作業を見ていたポラがそうつぶやくと、リアーロはフーと息を吐き手を止めた。
「よし、このぐらいの色になれば下処理は終わりだ。こいつは保湿効果が高くて色々使える」
練り終わった銀脂肪を空きビンへと流し込むとコルクで蓋をした。その後もトカゲ本体の方から銀脂肪を取っては、練り込み瓶へと入れる。この作業は、トカゲから銀色がなくなるまで続いた。
「おっと、ちょっと時間をくっちまったかな。この作業はダンジョンを出てからでも良いかもな……。いや、でも持ち運びやすさが段違いか? 難しいところだな」
ポラは、悩むリアーロを見て、初級中級上級の分け方を考えていた。
「よし! これでメタルリザードの素材は終わりだ。こいつの骨は意外と脆いし、肉は微毒があるから食ったら腹を壊すぞ。だから他は捨てていく」
リアーロは、ゴブリンの他の部位を取らないのかと聞かれたことを思い出し、他の部位についても補足した。
「ふむふむ、取らないには訳があるのですね」
納得したポラを見てリアーロは、満足そうに、大きくうなずいた。
「それにしても、この洞窟は珍しい魔物がいるんですね」
そう言うポラに対して、頭をポリポリとかきながらリアーロは、答えを返した。
「珍しいと言うか、地域の独自の魔物だね。原産地にいけば、いっぱい居るような魔物だよ。メタルリザードは、砂漠原産の魔物で、あの銀脂肪も水分を逃さないために変化した結果だって言われてる」
リアーロは、何処かから仕入れた、魔物についての知識をポラへと披露した。
「へぇ~。それで保湿効果が高いってわけですか」
「そう言うことだ」
教育欲を存分に満たしたリアーロと、見事な下処理を満喫したポラは、機嫌よく次の目標へと進みだす。
第一階層の魔物をすべて記録した二人は、階段を降りて第二階層へと下っていった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第1巻
著者ポラ、監修リアーロ
目次
第3項 メタルリザードの背皮と銀脂肪 ……12
初級 背皮と銀脂肪の剥ぎ取り ……13
中級 背皮の下処理 ……14
上級 銀脂肪の加工 ……15
リアーロは、簡単に取れるホーンラビットの角だけを回収し後は手をつけていない。
「そう言えば、外だと倒した魔物は、他の魔物に食べられちゃうけど、ダンジョンは、どうなってるんですか?」
「誰も見たこと無いが、ダンジョンが吸収すると言われてるぞ」
リアーロは、ポラの質問に通説を話せて聞かせる。するとポラは、「もったいないな。次は、あの子も連れてこようかな」リアーロはに届かないほど小さくつぶやいた。
「一階はあとメタルリザードだけなんだけどな」
そう言いながら細い通路を抜けて、広い部屋に入る。
この[全種の洞窟]は階層ごとに生まれる魔物が変わる。だいたい平均3種の魔物がいる。この第一階層で残るは、メタルリザードだけになっていた。
「あの全然メタルっぽくない赤茶色のトカゲですか?」
ポラは、部屋のすみの暗がりを指差しながらそういった。
リアーロは暗がりに目を凝らすと薄っすらと1mほどのお大きさで赤茶色をしたトカゲが見えた。
「おっ、あいつがメタルリザードだ。素材は、皮と銀脂肪だな。頭付きの皮は気味悪がられるから首をはねるのが一番良いかな」
ポラは早速メタルリザードを攻撃した。
ゴブリンと同様のいつ攻撃したかもわからない切断型の魔法で首がズルリとずれて地面に落ちた。
その切り口は驚くことに、銀色に光り輝いている部分がある。それは、ちょうど肉と皮膚の間にある脂肪の部分だった。
ポラは、切り開いたことにより赤茶色のトカゲの名前が何故メタルなのかを理解した。
「よし、今回の講座は、メタルリザードの皮と銀脂肪の採取方法だ」
リアーロは、荷物を下ろすと、下処理袋を開けて色々と取り出す。
まずはナイフ、クーパー、岩塩、まな板の皮取り4点セット。
そして、次に取り出したのは、空きビンと、乳棒と乳鉢だ。
「まずは皮からいくぞ。こいつはウサギとは違い使える皮は、ゴツゴツとした背中の一部だけだ」
メタルリザードは、背中と腹で色と材質が異なる。背中の赤茶色が濃い部分が素材として使える皮で、腹側は、どう加工してもグニャグニャで使い物にならない。
「このゴツゴツがついている部分は、うまく加工すれば良い鎧になる」
そう言いながら、切断された首のところから、色が変わる腹と背のラインに沿ってナイフで切込みを入れていく。
尻尾の先まで切込みを入れると、逆側も同じ事をする。
「切込みを入れたらこうやって剥がす!」
メタルリザードの前足を両足で踏んづけて固定し、背中の皮を掴むと背筋力を使って一気に引き剥がす。
「力が入りにくくなったところで後ろ足へ移動する」
今度は、後ろ足を踏みつけ思い切り引くと、尻尾の先まできれいに革が剥がれた。
「うわーすごい綺麗ですね」
皮が剥がされたメタルリザードは、銀脂肪と呼ばれるメタルの名の由来である銀色の脂肪の部分があらわになった。
皮をむかれた生き物というのは総じて気味が悪いものだ。しかし、このトカゲは、宝飾品のようにきれいに輝いていた。
「この銀脂肪が、良い値で売れるし、他の素材加工にも使えるから重宝するんだ」
そう言いながら、皮をまな板に載せ、クーパーで皮から銀色の脂肪をこそぎ落とし始めた。
ポラは、慌ててきれいな剥き身のトカゲから、皮の下処理に目線を移した。
「この脂肪も素材だから、こそぎ取ったらこっちの乳鉢に入れておく」
クーパーについた脂肪を指でぬぐって乳鉢へと落とす。
ゴリッ! ゴリッ! ペタン。こそぎ落として乳鉢へと黙々と作業は、続く。
「こいつの皮の色は緑だからテカリが無くなって緑になるまでしっかりとこそぎ落とすように」
そんなアドバイスをはさみつつ、しっぽの先まで作業を終え、皮の内側に岩塩を擦り付けて丸めるとカバンにしまい込んだ。
「よし、皮はこんなものだな。次は、銀脂肪だ。」
そう言って乳鉢を持ち上げポラに見せる。
「このまま切り剥がして持って帰るのもいいが、ひと手間かければ他の素材の下処理に使えるし、買取価格が少し上がる」
そう言いながら、乳鉢の銀脂肪を乳棒でゴリゴリと擦り始めた。
「こうやって細かくすりながら練り込むと、空気と混じってどんどん乳白色に変わる」
ネリネリネリ。光を反射していたギンギラの脂肪は、どんどん色を変えていぶし銀のような落ち着いた色へと変わっていった。
「色が変わってきましたね」
じっと作業を見ていたポラがそうつぶやくと、リアーロはフーと息を吐き手を止めた。
「よし、このぐらいの色になれば下処理は終わりだ。こいつは保湿効果が高くて色々使える」
練り終わった銀脂肪を空きビンへと流し込むとコルクで蓋をした。その後もトカゲ本体の方から銀脂肪を取っては、練り込み瓶へと入れる。この作業は、トカゲから銀色がなくなるまで続いた。
「おっと、ちょっと時間をくっちまったかな。この作業はダンジョンを出てからでも良いかもな……。いや、でも持ち運びやすさが段違いか? 難しいところだな」
ポラは、悩むリアーロを見て、初級中級上級の分け方を考えていた。
「よし! これでメタルリザードの素材は終わりだ。こいつの骨は意外と脆いし、肉は微毒があるから食ったら腹を壊すぞ。だから他は捨てていく」
リアーロは、ゴブリンの他の部位を取らないのかと聞かれたことを思い出し、他の部位についても補足した。
「ふむふむ、取らないには訳があるのですね」
納得したポラを見てリアーロは、満足そうに、大きくうなずいた。
「それにしても、この洞窟は珍しい魔物がいるんですね」
そう言うポラに対して、頭をポリポリとかきながらリアーロは、答えを返した。
「珍しいと言うか、地域の独自の魔物だね。原産地にいけば、いっぱい居るような魔物だよ。メタルリザードは、砂漠原産の魔物で、あの銀脂肪も水分を逃さないために変化した結果だって言われてる」
リアーロは、何処かから仕入れた、魔物についての知識をポラへと披露した。
「へぇ~。それで保湿効果が高いってわけですか」
「そう言うことだ」
教育欲を存分に満たしたリアーロと、見事な下処理を満喫したポラは、機嫌よく次の目標へと進みだす。
第一階層の魔物をすべて記録した二人は、階段を降りて第二階層へと下っていった。
◆
ダンジョン素材採取教本 第1巻
著者ポラ、監修リアーロ
目次
第3項 メタルリザードの背皮と銀脂肪 ……12
初級 背皮と銀脂肪の剥ぎ取り ……13
中級 背皮の下処理 ……14
上級 銀脂肪の加工 ……15
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる