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邪竜物語に首を突っ込む編
108-カクドウセイの手記
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私はグロで精神的に削られてはいるが体は元気なので、休むことなく魔法ギルドへ奥義習得をしに行った。
「あら?ごめんなさいね無属性拳法だけは奥義書に所有者が居るのよ」
魔法ギルドのマスターに奥義試験をお願いすると、無属性拳法だけは、奥義書の原書に所有者がいるらしく試験をしてくれる場所が別なのでその場所を教えてもらった。
教えてもらった場所は立派なお屋敷で門の表札にはカクドウと書いてあった。門番の方に奥義試験だと伝えると少々待たされた後に家の敷地内へ案内された。
大きな滝のある見事な日本庭園を通り抜け屋敷の中へ入る。外廊下を通り池の上を通る橋は屋根がついていて渡り廊下になっている。そこを通り抜け離れへと案内された。
「カクドウ様、奥義試験の受験者の方をお連れしました。」
「どうぞお入りなさい」
離れの中から聞こえたのはホッと安心するような雰囲気がある声でした。
「失礼します」
私は一言ことわりを入れて中へと入った。
こじんまりとした和室の中央に机が置いてありその向こう側には、長く白い撫で付け髪姿の老人がいた。眼光は鋭く眉まで全て白髪になっている。落ち着いた茶色である光悦茶色の着物がすごく似合っていた。いかにも重鎮といった佇まいだ。
「カクドウ家の当主カクドウゼンじゃよろしくのぉ」
「レイクランド王国からやってまいりましたマルレリンドですよろしくお願いしますわ」
自己紹介を済ませると机の向かい側に座るようにと進められた。机の上にはカットされた桃が二皿と綺麗な切子のグラスが2つ置いてある。後で飲み物を持ってくるのかグラスは空だった。
「ふむ……そなたがガオゴウの坊主か連れてきた娘か、セイ様が使う拳法に興味があると聞いておったのでいつかは来ると思ったが、ずいぶん早いのぉ」
「はい、幸運にも成長速度が超越者並でしたので、難なく技を習得することが出来ました」
「そうか、才に恵まれたか……よろしい!では試験を始める」
いったいどんな試験なのか気になるところですね……やはり隔壁乱舞で赤いブロックを作らなくてはいけないのかしら?
「ワシが見本を見せるから同じようにやってみせるのじゃ……」
カクドウゼンさんは桃の入った皿を取と切子のグラス手に取りグラスの上に桃の皿をかざした。
「隔壁乱舞!」
彼が発動した小さな隔壁の中にはカットされた桃が入っていた。
「え?桃に?」
思わず声が漏れた私に彼は優しく微笑んだ。そして皿を置くと桃の入った隔壁を何度か殴りつけると切子のグラスの上で「解!」と唱えギュッと縮んだ桃をグラスで受け止めた。
唖然としている私をよそにグラスに入った桃のジュースを飲み干した。
「どうじゃ?できるかな?」
「やってみますわ」
私の中の隔壁乱舞のイメージが一気に変わり嫌悪感はすっかりと消えた。彼がしたように同じく桃の皿とグラスを持ち隔壁乱舞を使い桃のジュースを作って飲んだ。
「ふむ……小さな目標にも的確に出来ておるのぉ免許皆伝じゃな」
「あの……この技は攻撃に使うものでは……?」
「ふむ元々はそうじゃ、だが技は使いようだということを知ってほしかったのじゃ」
きっと目の前に居る老人もあのグロ祭りを経験したのね……
「わかります私は先程までこの技は使わないと心がけていましたが考えが変わりましたわ」
「それは良かった。これから授ける奥義はきっと役に立つじゃろう」
奥義[激流飛壁]は目に見えぬほど小さく鋭利な壁を無数に作り激流として相手に向かって飛ばす技のようです。聞いただけではよくわからないが無数の壁が当たることにより少しずつ削れていき最終的にはすべてなくなるらしい。
「忠告しておくが激流飛壁は強力な技じゃ……手加減などという次元の技ではないので注意するのじゃ」
差し出され奥義書を受け取り、手の中の奥義書を見ながら考える。技の詳細をきいてグロくはないけど、えげつない技には変わりないと悟った。一度だけ試して封印したほうが良い類の技だろうか?
「そして、これも差し上げよう」
そう言うとゼンさんは、[魔法と拳法]と題名がついた一冊の和綴じの本を私にくれた。
「これはセイ様が無属性拳法を生み出してから世界にスキルと認められるまでを綴った手記のようなものじゃ」
スキルと認められる?それはいったいどういうことだろう?
「すべての疑問はその手記にある。以上で奥義試験はすべて終わりじゃ正しきことに力が使われることを祈っておるよ……」
最後の妙な言い回しが気になったけど自分がカクドウセイが恐れた赤鬼だということを思い出し納得した。何にせよ試験が終わり無事に奥義も授かりましたので全て順調です。でもこの本[魔法と拳法]の中身が気になってしょうがないので、急いでガオゴウ家の部屋に戻りました。
和綴じにされた本は、そんなに古くないので原本の写しなのでしょうね。きっと無属性拳法を極めた人全員に送られる物なのね。私はカクドウセイの手記と呼ばれるこの本を一気に読み進めた。
内容は驚くべきものだった。
無属性拳法は唯一始祖がわかっているスキルで、世界に新たなスキルと認識されれば技書と奥義書が生まれる事を証明したそうです。
始まりはカクドウセイさんが戦闘で抱えた悩みだったようです。彼はやはり転生ではなく転移だということがわかりました。それ故に地球産の肉体には魔力変換機能がなく私と同じく魔力は豊富だが属性魔法が一切使えなかったそうです。
そこで考えたのが地球で気と呼ばれる無属性魔力の利用でした。同じことを考えた私は水に反応することから道具方面へ進みセイさんはなんとしてでも魔法としての利用にこだわり研究を続けたようでした。
彼が旅を終えてクロービに落ち着き文化を広めているときに余暇を魔力をどうにか使えるようにすることに注いだようです。
数年後ついに彼は無属性魔力を空中にとどめて壁を作り出すことに成功した。しかしそれはだから何?と言うレベルのものだった。結界師の結界より範囲は狭くさらに魔法は素通りするので、周囲からは劣化結界として認識されて歯牙にも掛けられませんでした。
どうにか利用できないかと思った彼は物理攻撃である自身の拳法と組み合わせることにした。どうやら彼もなかなかの怪力だったようで足場の脆さと相手が吹っ飛んでしまうことが気にかかってきたようです。そして生まれたのが[脚壁]と[挟掌壁]だったようです。
そしてどんどん技を開発していき実戦使用に耐えうる技が10種類に達したときに、頭の中に声が響いたそうです。
<システム邪竜伝:スキルアップデート、無属性拳法が追加されました。技書および奥義書を世界に配置します>
カクドウセイさんはそれを神の声だとしてクロービの住民に伝えると、実際に妖魔が無属性拳法の技書を落とし初めたのが確認されて声が真実だと広まったようです。
「うーん……この世界っていったい何なのかしら?」
さらにページをめくる……[私の同郷のものに私の検証結果を残す]そこに現れたのは懐かしい文字だった。
日本語だ……記憶の奥から日本語の知識を引っ張り出しながらなんとか読み進める。
『いくつかの国をめぐりこの世界についてわかたことがある。この世界は日本に存在する物語や伝説などに似た現象が起こるとその物語に引っ張られるようにして世界が動いていく事がわかった。』
どういうこと?……
『私が行った実験は2つだ、1つ目は蟹におにぎりを渡してみたところ猿が柿の種を持って近づき交換した。柿の種を蟹が埋めると異常な速度で立派な木に育ちすぐに実をつけた……何かの力が働いていると確信した瞬間だった。』
物語に近い現象が起こればそれに沿って世界が誘導されるということ?
『次に行った実験は子供に菓子を渡し海岸にいる亀をいじめるようにと頼んだところ漁師の青年が亀に乗って海に沈んでいった……』
もしかして私の国もなにか小さなきっかけから乙女ゲームの「終末の楽園」に向けて誘導されて出来上がったのかもしれない……
『この世界はたしかに誘導されている……目的も誘導している者も不明だが……同じ日本から来たあなた達に向けてこの事実を残す』
『追伸:日本食と文化も簡単に誘導できたのでぜひ故郷に似た文化を楽しんでください』
このクロービはカクドウセイさんが残してくれた同郷の人々へのもてなしだったのね……アリッサが言っていたことは正解だったみたいね。
私は本をそっと閉じた。
<電報が届きました>
「え?なに!ああ電報ね!存在忘れててびっくりしちゃったわ!」
電報を開くとアリッサからメッセージが届いていた。
「マルレ!召喚魔法の奥義試験ヤバイ!転移門広場まで来て!」
ふふふ……やっぱり一人では無理だったみたいね!
私はアリッサを助けるために魔法ギルドへと向かった。
「あら?ごめんなさいね無属性拳法だけは奥義書に所有者が居るのよ」
魔法ギルドのマスターに奥義試験をお願いすると、無属性拳法だけは、奥義書の原書に所有者がいるらしく試験をしてくれる場所が別なのでその場所を教えてもらった。
教えてもらった場所は立派なお屋敷で門の表札にはカクドウと書いてあった。門番の方に奥義試験だと伝えると少々待たされた後に家の敷地内へ案内された。
大きな滝のある見事な日本庭園を通り抜け屋敷の中へ入る。外廊下を通り池の上を通る橋は屋根がついていて渡り廊下になっている。そこを通り抜け離れへと案内された。
「カクドウ様、奥義試験の受験者の方をお連れしました。」
「どうぞお入りなさい」
離れの中から聞こえたのはホッと安心するような雰囲気がある声でした。
「失礼します」
私は一言ことわりを入れて中へと入った。
こじんまりとした和室の中央に机が置いてありその向こう側には、長く白い撫で付け髪姿の老人がいた。眼光は鋭く眉まで全て白髪になっている。落ち着いた茶色である光悦茶色の着物がすごく似合っていた。いかにも重鎮といった佇まいだ。
「カクドウ家の当主カクドウゼンじゃよろしくのぉ」
「レイクランド王国からやってまいりましたマルレリンドですよろしくお願いしますわ」
自己紹介を済ませると机の向かい側に座るようにと進められた。机の上にはカットされた桃が二皿と綺麗な切子のグラスが2つ置いてある。後で飲み物を持ってくるのかグラスは空だった。
「ふむ……そなたがガオゴウの坊主か連れてきた娘か、セイ様が使う拳法に興味があると聞いておったのでいつかは来ると思ったが、ずいぶん早いのぉ」
「はい、幸運にも成長速度が超越者並でしたので、難なく技を習得することが出来ました」
「そうか、才に恵まれたか……よろしい!では試験を始める」
いったいどんな試験なのか気になるところですね……やはり隔壁乱舞で赤いブロックを作らなくてはいけないのかしら?
「ワシが見本を見せるから同じようにやってみせるのじゃ……」
カクドウゼンさんは桃の入った皿を取と切子のグラス手に取りグラスの上に桃の皿をかざした。
「隔壁乱舞!」
彼が発動した小さな隔壁の中にはカットされた桃が入っていた。
「え?桃に?」
思わず声が漏れた私に彼は優しく微笑んだ。そして皿を置くと桃の入った隔壁を何度か殴りつけると切子のグラスの上で「解!」と唱えギュッと縮んだ桃をグラスで受け止めた。
唖然としている私をよそにグラスに入った桃のジュースを飲み干した。
「どうじゃ?できるかな?」
「やってみますわ」
私の中の隔壁乱舞のイメージが一気に変わり嫌悪感はすっかりと消えた。彼がしたように同じく桃の皿とグラスを持ち隔壁乱舞を使い桃のジュースを作って飲んだ。
「ふむ……小さな目標にも的確に出来ておるのぉ免許皆伝じゃな」
「あの……この技は攻撃に使うものでは……?」
「ふむ元々はそうじゃ、だが技は使いようだということを知ってほしかったのじゃ」
きっと目の前に居る老人もあのグロ祭りを経験したのね……
「わかります私は先程までこの技は使わないと心がけていましたが考えが変わりましたわ」
「それは良かった。これから授ける奥義はきっと役に立つじゃろう」
奥義[激流飛壁]は目に見えぬほど小さく鋭利な壁を無数に作り激流として相手に向かって飛ばす技のようです。聞いただけではよくわからないが無数の壁が当たることにより少しずつ削れていき最終的にはすべてなくなるらしい。
「忠告しておくが激流飛壁は強力な技じゃ……手加減などという次元の技ではないので注意するのじゃ」
差し出され奥義書を受け取り、手の中の奥義書を見ながら考える。技の詳細をきいてグロくはないけど、えげつない技には変わりないと悟った。一度だけ試して封印したほうが良い類の技だろうか?
「そして、これも差し上げよう」
そう言うとゼンさんは、[魔法と拳法]と題名がついた一冊の和綴じの本を私にくれた。
「これはセイ様が無属性拳法を生み出してから世界にスキルと認められるまでを綴った手記のようなものじゃ」
スキルと認められる?それはいったいどういうことだろう?
「すべての疑問はその手記にある。以上で奥義試験はすべて終わりじゃ正しきことに力が使われることを祈っておるよ……」
最後の妙な言い回しが気になったけど自分がカクドウセイが恐れた赤鬼だということを思い出し納得した。何にせよ試験が終わり無事に奥義も授かりましたので全て順調です。でもこの本[魔法と拳法]の中身が気になってしょうがないので、急いでガオゴウ家の部屋に戻りました。
和綴じにされた本は、そんなに古くないので原本の写しなのでしょうね。きっと無属性拳法を極めた人全員に送られる物なのね。私はカクドウセイの手記と呼ばれるこの本を一気に読み進めた。
内容は驚くべきものだった。
無属性拳法は唯一始祖がわかっているスキルで、世界に新たなスキルと認識されれば技書と奥義書が生まれる事を証明したそうです。
始まりはカクドウセイさんが戦闘で抱えた悩みだったようです。彼はやはり転生ではなく転移だということがわかりました。それ故に地球産の肉体には魔力変換機能がなく私と同じく魔力は豊富だが属性魔法が一切使えなかったそうです。
そこで考えたのが地球で気と呼ばれる無属性魔力の利用でした。同じことを考えた私は水に反応することから道具方面へ進みセイさんはなんとしてでも魔法としての利用にこだわり研究を続けたようでした。
彼が旅を終えてクロービに落ち着き文化を広めているときに余暇を魔力をどうにか使えるようにすることに注いだようです。
数年後ついに彼は無属性魔力を空中にとどめて壁を作り出すことに成功した。しかしそれはだから何?と言うレベルのものだった。結界師の結界より範囲は狭くさらに魔法は素通りするので、周囲からは劣化結界として認識されて歯牙にも掛けられませんでした。
どうにか利用できないかと思った彼は物理攻撃である自身の拳法と組み合わせることにした。どうやら彼もなかなかの怪力だったようで足場の脆さと相手が吹っ飛んでしまうことが気にかかってきたようです。そして生まれたのが[脚壁]と[挟掌壁]だったようです。
そしてどんどん技を開発していき実戦使用に耐えうる技が10種類に達したときに、頭の中に声が響いたそうです。
<システム邪竜伝:スキルアップデート、無属性拳法が追加されました。技書および奥義書を世界に配置します>
カクドウセイさんはそれを神の声だとしてクロービの住民に伝えると、実際に妖魔が無属性拳法の技書を落とし初めたのが確認されて声が真実だと広まったようです。
「うーん……この世界っていったい何なのかしら?」
さらにページをめくる……[私の同郷のものに私の検証結果を残す]そこに現れたのは懐かしい文字だった。
日本語だ……記憶の奥から日本語の知識を引っ張り出しながらなんとか読み進める。
『いくつかの国をめぐりこの世界についてわかたことがある。この世界は日本に存在する物語や伝説などに似た現象が起こるとその物語に引っ張られるようにして世界が動いていく事がわかった。』
どういうこと?……
『私が行った実験は2つだ、1つ目は蟹におにぎりを渡してみたところ猿が柿の種を持って近づき交換した。柿の種を蟹が埋めると異常な速度で立派な木に育ちすぐに実をつけた……何かの力が働いていると確信した瞬間だった。』
物語に近い現象が起こればそれに沿って世界が誘導されるということ?
『次に行った実験は子供に菓子を渡し海岸にいる亀をいじめるようにと頼んだところ漁師の青年が亀に乗って海に沈んでいった……』
もしかして私の国もなにか小さなきっかけから乙女ゲームの「終末の楽園」に向けて誘導されて出来上がったのかもしれない……
『この世界はたしかに誘導されている……目的も誘導している者も不明だが……同じ日本から来たあなた達に向けてこの事実を残す』
『追伸:日本食と文化も簡単に誘導できたのでぜひ故郷に似た文化を楽しんでください』
このクロービはカクドウセイさんが残してくれた同郷の人々へのもてなしだったのね……アリッサが言っていたことは正解だったみたいね。
私は本をそっと閉じた。
<電報が届きました>
「え?なに!ああ電報ね!存在忘れててびっくりしちゃったわ!」
電報を開くとアリッサからメッセージが届いていた。
「マルレ!召喚魔法の奥義試験ヤバイ!転移門広場まで来て!」
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私はアリッサを助けるために魔法ギルドへと向かった。
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