65 / 159
古霊の尖兵編
065-王都へ帰還!
しおりを挟む
「帰るなら影転移で送ろうか?」
話がまとまったところで帰り支度を始めたところ、お兄様から部隊ごと全員闇魔法の影転移で王都に送り届けてくれるとの申し出を受けて二日酔いの騎士と魔術師を叩き起こして影転移で移動することになった。
私を帰らせまいと「ずっといてくださいぃぃ」と脚にすがりつくニーニャさんを「学園に通うために王都に来るのでしょ?」と言って引き剥がしアロイーンさんとリーシャーさんに預けて、別れの言葉を交わし街の広場に集められた部隊へと合流した。
「うわー転移初めてだー」
「楽しみですね」
ラーバルとアリッサはすでに到着していて初めての転移に浮かれている様子だった。私は転移を何度も経験しているというか、お兄様の実験に付き合っていたのでなれている。はじめの頃は座標の縦軸を間違えて2メートルほど落下したこともあったなと懐かしい思い出が蘇った。
「それでは転移をするぞ……恐怖を取り除くためにこれから原理を説明する」
お兄様はそういって闇魔法の影転移について説明しだした。
影転移は基本次元リュックなどの魔道具と同じ異空間を使った転移術だ。内部の空間の時間は完全に停止していて普通は自由に動けないが闇属性を使えば自由に動ける。亜空間中では全員精神ごと停止するので体感は一瞬だ。
「影が体を包み込むが……消して暴れないこと……首を残して転移してしまったら……どうなるかは想像つくだろう」
恐怖を取り除くと言いつつ恐怖を与えるお兄様はさすがとしか言えないわね……
「では転移するぞ……」
足元の影が普通の影とは違う漆黒の闇に変わると、ゆっくりと足先からヒヤッとした漆黒が体を包み込んでいく。暴れて首が残ったらと先程言われたことをつい想像してしまう。頭の先まで包まれた感触がすると同時にそれがすっと降りてきて足元の影へと消えていった。
「無事到着だ……」
あたりを見回すと景色が街の広場からロックタートルがうろつく王都の城門前に変わっていた。昼頃だったはずなのに日も傾きはじめていて感覚は一瞬だったが確かに時間は経過しているとわかる。ざわざわする部隊員たちと一緒に親友の2人も驚いている。
「うわー!すごい5日もかかった行軍が一瞬だ~」
「これはすごいですね……闇属性の方がもっといれば素晴らしいのに」
「うーん!久しぶりの王都ですわ!」
私はふと思い出した。日帰りのつもりだったので、定宿の[うさぎ亭]の皆に何も言わず出てきてしまっていたことを……
「すいません皆様!急用お思い出しました!お先に失礼します!」
「わかったよーじゃまたね~」
「はい、またお会いしましょう!」
「マルレ……たまには家に顔を出せよ……」
「はい!何かありましたら定宿にしている[うさぎ亭]かギルドにご連絡くださいね!」
私は皆に連絡先を伝えると心配しているかもしれない人が待ってる[うさぎ亭]へと急いだ。辺りは暗くなり始めランプライターが火の魔石を使った街頭に魔力を補充しながら点灯している風景の中を風が巻き起こらない程度の早足で宿に向かう。冒険者になってからは我が家の扉と認識し始めたウサギのシルエットが描かれたかわいい扉を開けた。
「ただいま戻りました!」
そこには驚いた顔で仕事の手を止めた女将さんとペトラちゃんがいました。
「あー!マルレさん!やっと帰ってきた!」
「おや!やっぱり無事だったね!」
やはり心配していたみたいですね。ちょっと遠征するつもりが聖剣やら魔王やらに巻き込まれてずいぶんと留守にしてしまいましたからね。そのかわり土産話はたくさんあるのでゆっくりお話しましょう。
「ちょっとおもしろいことに巻き込まれましてね!」
私は夕食をいただきながら今回の遠征のことを話して聞かせた。もちろん牛男を倒したことや聖剣を振り回したこと勇者一行に魔王城に置き去りにされそうになった事は伏せました。
「ええ……魔王が攻めてきて攫われた大事件を面白いことで片付けちゃうなんてマルレさんやっぱりずれてるわ~」
「はは!だから心配いらないって言ったじゃないかい!」
「そうですわ、私はそこそこ強いのでご心配には及びません!」
私がドヤ顔でそう言い放つと自然と笑いが起こり久しぶりに和やかな気分で床につきました。
ベッドに寝転がりこれからのことを考える。拳法の事を調べにクロービに入国するためにはガオゴウレンさんに推薦してもらう必要がある。しかし私はガオゴウレンさんについて何も知らない住所はもちろん出入りしている店や普段いる場所など何も知らないので連絡の取りようがないのである……
「学園に行くしかないのかしら……」
唯一の接点である学園で聞き込みしなくてはいけない……しかしすでに卒業している私が入っても良いのか悩むところですね。
私は散々悩んだ結果何も決まらずそのまま眠ってしまった。
話がまとまったところで帰り支度を始めたところ、お兄様から部隊ごと全員闇魔法の影転移で王都に送り届けてくれるとの申し出を受けて二日酔いの騎士と魔術師を叩き起こして影転移で移動することになった。
私を帰らせまいと「ずっといてくださいぃぃ」と脚にすがりつくニーニャさんを「学園に通うために王都に来るのでしょ?」と言って引き剥がしアロイーンさんとリーシャーさんに預けて、別れの言葉を交わし街の広場に集められた部隊へと合流した。
「うわー転移初めてだー」
「楽しみですね」
ラーバルとアリッサはすでに到着していて初めての転移に浮かれている様子だった。私は転移を何度も経験しているというか、お兄様の実験に付き合っていたのでなれている。はじめの頃は座標の縦軸を間違えて2メートルほど落下したこともあったなと懐かしい思い出が蘇った。
「それでは転移をするぞ……恐怖を取り除くためにこれから原理を説明する」
お兄様はそういって闇魔法の影転移について説明しだした。
影転移は基本次元リュックなどの魔道具と同じ異空間を使った転移術だ。内部の空間の時間は完全に停止していて普通は自由に動けないが闇属性を使えば自由に動ける。亜空間中では全員精神ごと停止するので体感は一瞬だ。
「影が体を包み込むが……消して暴れないこと……首を残して転移してしまったら……どうなるかは想像つくだろう」
恐怖を取り除くと言いつつ恐怖を与えるお兄様はさすがとしか言えないわね……
「では転移するぞ……」
足元の影が普通の影とは違う漆黒の闇に変わると、ゆっくりと足先からヒヤッとした漆黒が体を包み込んでいく。暴れて首が残ったらと先程言われたことをつい想像してしまう。頭の先まで包まれた感触がすると同時にそれがすっと降りてきて足元の影へと消えていった。
「無事到着だ……」
あたりを見回すと景色が街の広場からロックタートルがうろつく王都の城門前に変わっていた。昼頃だったはずなのに日も傾きはじめていて感覚は一瞬だったが確かに時間は経過しているとわかる。ざわざわする部隊員たちと一緒に親友の2人も驚いている。
「うわー!すごい5日もかかった行軍が一瞬だ~」
「これはすごいですね……闇属性の方がもっといれば素晴らしいのに」
「うーん!久しぶりの王都ですわ!」
私はふと思い出した。日帰りのつもりだったので、定宿の[うさぎ亭]の皆に何も言わず出てきてしまっていたことを……
「すいません皆様!急用お思い出しました!お先に失礼します!」
「わかったよーじゃまたね~」
「はい、またお会いしましょう!」
「マルレ……たまには家に顔を出せよ……」
「はい!何かありましたら定宿にしている[うさぎ亭]かギルドにご連絡くださいね!」
私は皆に連絡先を伝えると心配しているかもしれない人が待ってる[うさぎ亭]へと急いだ。辺りは暗くなり始めランプライターが火の魔石を使った街頭に魔力を補充しながら点灯している風景の中を風が巻き起こらない程度の早足で宿に向かう。冒険者になってからは我が家の扉と認識し始めたウサギのシルエットが描かれたかわいい扉を開けた。
「ただいま戻りました!」
そこには驚いた顔で仕事の手を止めた女将さんとペトラちゃんがいました。
「あー!マルレさん!やっと帰ってきた!」
「おや!やっぱり無事だったね!」
やはり心配していたみたいですね。ちょっと遠征するつもりが聖剣やら魔王やらに巻き込まれてずいぶんと留守にしてしまいましたからね。そのかわり土産話はたくさんあるのでゆっくりお話しましょう。
「ちょっとおもしろいことに巻き込まれましてね!」
私は夕食をいただきながら今回の遠征のことを話して聞かせた。もちろん牛男を倒したことや聖剣を振り回したこと勇者一行に魔王城に置き去りにされそうになった事は伏せました。
「ええ……魔王が攻めてきて攫われた大事件を面白いことで片付けちゃうなんてマルレさんやっぱりずれてるわ~」
「はは!だから心配いらないって言ったじゃないかい!」
「そうですわ、私はそこそこ強いのでご心配には及びません!」
私がドヤ顔でそう言い放つと自然と笑いが起こり久しぶりに和やかな気分で床につきました。
ベッドに寝転がりこれからのことを考える。拳法の事を調べにクロービに入国するためにはガオゴウレンさんに推薦してもらう必要がある。しかし私はガオゴウレンさんについて何も知らない住所はもちろん出入りしている店や普段いる場所など何も知らないので連絡の取りようがないのである……
「学園に行くしかないのかしら……」
唯一の接点である学園で聞き込みしなくてはいけない……しかしすでに卒業している私が入っても良いのか悩むところですね。
私は散々悩んだ結果何も決まらずそのまま眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる