31 / 159
破滅回避工作編
031-アリッサの協力要請
しおりを挟む
そういえば、ラーバルのルームメイトは誰なんだろ? そんな事を思いながら、入室の許可を得た私は、はじめてラーバルの部屋に入る。
「ルームメイトは里帰りしています。私だけですのでごゆっくり」
いつも、おさげに結われている緑の髪は、結ばれていなかった。クセがついているためか、ゆるいパーマがかけられたようにふわふわとしている。服装は控えめなフリルが付いたワンピース姿だった。いつものような凛とした姿はなく、まるでおとぎの国の森の精が目の前にいるような感じがした。
「それでご用件はなんでしょうか?」
そう声をかけられると私は、おとぎの国から意識を引き戻し、現在直面している問題に向き合う。
「実はマルレの夢についてです」
「そうですか……マルレがすすめていた計画が分かった、といったところですか?」
「話が早くて助かります。」
私は、マルレが考えている追放処分を得るための計画について話した。
「ふむ、はっきり申し上げますと、その計画は無理ですね。きっと誰も信じないでしょう。自白をしたとしても、誰をかばっているの? となるだけでしょうね」
たしかにそのとおりです。しかしそこは王族の権限を使う他に、マルレを自由にする方法が思いつかない。
「しかしアークの力を使う他に、良い選択肢もなさそうですね……」
「そうなんです! それと、これはちょっと信じられない話かもしれませんが……」
そう切り出すと私は、ゲーム内の知識を入学式前に見た予知夢として話した。マルレに変装したトゲ牡丹の話や、冤罪で追放されること。そして、マルレが死にドレストレイル家が奮起することを話した。するとラーバルは黙って考え込んでしまった。
信じてもらえなかった……。それはそうだよね、そう思いながらラーバールが口を開くのをまった。
「ドレスを脱ぐとは、ドレストレイル家の誰かが言っているのを聞いたのですか?」
「いえ……。だから夢で未来を見たといいますか……予知したというか……」
やはり信じろというのは、無理があるよね……。
「現実で誰かが言っていたのを聞いたのではないのですね?」
「はいそうです……」
「それは良かった。「ドレストレイル家の者が[ドレスを脱ぐ]と言ったら、荷物を持たずに早急に国外へ逃亡しろ」と父から言い聞かされて育ちました。何かの危機を知らせる合図かと思っていましたが、まさか宣戦布告などとは思いもしませんでした。」
「信じてくれるの?」
「いえ、完全に信じたわけではありません。ですが、あなたが人の気を引いたるするために妙なことを言うような人ではない。それに、魔法実技前にマルレの能力について、説明に来れなかったという事実もあります。1年生の終りに国境を接する小国が同盟を組み挙兵すると、うわさがありました。それをドレストレイル家が対処していたのでしょう。それがあなたの見た未来で、裁判に間に合わなかった理由だろうというのも納得できる。状況証拠に[ドレスを脱ぐ]という言葉が出た以上、未来が見えたとのことは信用できるが……」
私はゴクリとつばを飲み込む。未来の話をしたことで逆に不信感を与えてしまったかな? との思いが浮かんだがもう手遅れである。静かにラーバルが語るのを待つしかない。
「マルレが死ぬ未来は起きない!」
「え?」
私はラーバルの出した答えに、あぜんとする……。
「1つ目の理由は、ファーダくんが任務から外れマルレに付いてる事。2つ目はマルレが傷を負うところを想像できない。3つ目は私が住民の先導と衛兵の配置を請け負うからね!」
「それって! 協力してくれるってこと?」
「ええ! もちろん!」
「ありがとう、ラーバル!」
「ふふっ、それにしてもマルレとアリッサは面白いわね」
面白い? どういうことだろう?
「アリッサが言った未来は二人で全部つぶしているのよ」
「どういう事?」
「まず、アリッサがトゲ牡丹の変装を見破ってそれをマルレが断罪したことで1つ目がつぶれたでしょ? そして2つ目の[冷血マルレ]の評判も」
1つ目はともかく2つ目は関係ない……。と思うというか、いろいろやってどうにもならなかったことだ……。
「実は初め、私のルームメイトはマルレの予定だったんだ」
「それと評判の話になんの関係が?」
「マルレがアリッサとルームメイトになったから、私は違う人物と一緒になった。それがトリリア・リウスだ」
トリリア・リウス……トゲ牡丹! ラーバルのルームメイトは、トゲ牡丹だったの!?
「やはり驚いているわね。マルレの悪評が広まったあとのことです。落ち込んでたトリリアに罪を認め、うわさを消せば心が晴れると、私が進言したのですよ」
「それって……」
「そう、アリッサがマルレをルームメイトに誘った事で変わった未来だ」
知らず識らずのうちに、すべてが変わっていた……。
「そして無事に一年を乗り越えたことで、ファーダくんが側に付き2年生でマルレは死ぬのが想像できないほど強くなった」
「やっぱり、もう終わってたんだ……」
「そうだな、だから追放だけをうまく考えればいいよ、その時は協力を惜しまない卒業式の後マルレが自由になるところを楽しみにしているよ」
「そうね、ありがとう気が楽になったわ。準備もほどほどに、学生生活を楽しむことにするわ」
「ああ、それがいい」
思いつめていた私は、すべてのことが余計な心配に終わり肩透かしを食らったような、うれしいような複雑な気分で自室に戻った。
「ルームメイトは里帰りしています。私だけですのでごゆっくり」
いつも、おさげに結われている緑の髪は、結ばれていなかった。クセがついているためか、ゆるいパーマがかけられたようにふわふわとしている。服装は控えめなフリルが付いたワンピース姿だった。いつものような凛とした姿はなく、まるでおとぎの国の森の精が目の前にいるような感じがした。
「それでご用件はなんでしょうか?」
そう声をかけられると私は、おとぎの国から意識を引き戻し、現在直面している問題に向き合う。
「実はマルレの夢についてです」
「そうですか……マルレがすすめていた計画が分かった、といったところですか?」
「話が早くて助かります。」
私は、マルレが考えている追放処分を得るための計画について話した。
「ふむ、はっきり申し上げますと、その計画は無理ですね。きっと誰も信じないでしょう。自白をしたとしても、誰をかばっているの? となるだけでしょうね」
たしかにそのとおりです。しかしそこは王族の権限を使う他に、マルレを自由にする方法が思いつかない。
「しかしアークの力を使う他に、良い選択肢もなさそうですね……」
「そうなんです! それと、これはちょっと信じられない話かもしれませんが……」
そう切り出すと私は、ゲーム内の知識を入学式前に見た予知夢として話した。マルレに変装したトゲ牡丹の話や、冤罪で追放されること。そして、マルレが死にドレストレイル家が奮起することを話した。するとラーバルは黙って考え込んでしまった。
信じてもらえなかった……。それはそうだよね、そう思いながらラーバールが口を開くのをまった。
「ドレスを脱ぐとは、ドレストレイル家の誰かが言っているのを聞いたのですか?」
「いえ……。だから夢で未来を見たといいますか……予知したというか……」
やはり信じろというのは、無理があるよね……。
「現実で誰かが言っていたのを聞いたのではないのですね?」
「はいそうです……」
「それは良かった。「ドレストレイル家の者が[ドレスを脱ぐ]と言ったら、荷物を持たずに早急に国外へ逃亡しろ」と父から言い聞かされて育ちました。何かの危機を知らせる合図かと思っていましたが、まさか宣戦布告などとは思いもしませんでした。」
「信じてくれるの?」
「いえ、完全に信じたわけではありません。ですが、あなたが人の気を引いたるするために妙なことを言うような人ではない。それに、魔法実技前にマルレの能力について、説明に来れなかったという事実もあります。1年生の終りに国境を接する小国が同盟を組み挙兵すると、うわさがありました。それをドレストレイル家が対処していたのでしょう。それがあなたの見た未来で、裁判に間に合わなかった理由だろうというのも納得できる。状況証拠に[ドレスを脱ぐ]という言葉が出た以上、未来が見えたとのことは信用できるが……」
私はゴクリとつばを飲み込む。未来の話をしたことで逆に不信感を与えてしまったかな? との思いが浮かんだがもう手遅れである。静かにラーバルが語るのを待つしかない。
「マルレが死ぬ未来は起きない!」
「え?」
私はラーバルの出した答えに、あぜんとする……。
「1つ目の理由は、ファーダくんが任務から外れマルレに付いてる事。2つ目はマルレが傷を負うところを想像できない。3つ目は私が住民の先導と衛兵の配置を請け負うからね!」
「それって! 協力してくれるってこと?」
「ええ! もちろん!」
「ありがとう、ラーバル!」
「ふふっ、それにしてもマルレとアリッサは面白いわね」
面白い? どういうことだろう?
「アリッサが言った未来は二人で全部つぶしているのよ」
「どういう事?」
「まず、アリッサがトゲ牡丹の変装を見破ってそれをマルレが断罪したことで1つ目がつぶれたでしょ? そして2つ目の[冷血マルレ]の評判も」
1つ目はともかく2つ目は関係ない……。と思うというか、いろいろやってどうにもならなかったことだ……。
「実は初め、私のルームメイトはマルレの予定だったんだ」
「それと評判の話になんの関係が?」
「マルレがアリッサとルームメイトになったから、私は違う人物と一緒になった。それがトリリア・リウスだ」
トリリア・リウス……トゲ牡丹! ラーバルのルームメイトは、トゲ牡丹だったの!?
「やはり驚いているわね。マルレの悪評が広まったあとのことです。落ち込んでたトリリアに罪を認め、うわさを消せば心が晴れると、私が進言したのですよ」
「それって……」
「そう、アリッサがマルレをルームメイトに誘った事で変わった未来だ」
知らず識らずのうちに、すべてが変わっていた……。
「そして無事に一年を乗り越えたことで、ファーダくんが側に付き2年生でマルレは死ぬのが想像できないほど強くなった」
「やっぱり、もう終わってたんだ……」
「そうだな、だから追放だけをうまく考えればいいよ、その時は協力を惜しまない卒業式の後マルレが自由になるところを楽しみにしているよ」
「そうね、ありがとう気が楽になったわ。準備もほどほどに、学生生活を楽しむことにするわ」
「ああ、それがいい」
思いつめていた私は、すべてのことが余計な心配に終わり肩透かしを食らったような、うれしいような複雑な気分で自室に戻った。
0
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる