息子は恋人

zebra

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外伝

私のからだ

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 ふと思った。

 私のからだは誰のためのものなんだろう。

 夫が自分の子孫を残すための物だろうか。だったら、息子を産んだ時点でその役目は終わった。少なくとも息子という形で義務は果たしたのだから。今では夫の性欲を鎮めるだけの意味しかない。

 息子を育てるためだろうか。授乳のためならその役目は終わっている。性教育も終えた。

 これからは、自分の思い通りに使ってもいいのではないだろうか。

 心は決まった。これからは、息子を愛することに使っていこう。息子の心が離れていくまで。少なくとも、今は私のからだを好きでいてくれているのだから。

 私のからだを欲しがるのはいつ頃だろう。息子の方から求めて来るか、私の方から誘ってやるか、今から楽しみになってくる。

 高学年か、中学生になれば性欲が強くなってくるだろうから、その時

 「ママが教えてあげる」

 とか、

 「ママでやっていいのよ」

 とか言えば、喜ぶだろう。例え息子の彼女ができるまでの踏み台にされるにすぎなくても、それで構わない。

 恐る恐る挿れてくるのか、性欲に任せて力づくで推し込んでくるか。

 想像しているだけで楽しくなる。

 夫への義務は一応果たしている。決して我慢して付き合ってあげているわけではない。でも、頭に浮かぶのはやはり息子の顔だ。

 夫はそんなことは知る由もないので、私の笑顔を見て満足していると思っているらしい。

 夫の固くて武骨な指先より、柔らかくて弾力のある息子の手の方がはるかに気持ちがいい。そんなことは決して口にできないけど。

 唇だって夫は木綿だとすると、息子の唇はフェルトのように柔らかい。息子の唇が私の肌に触れて来るだけで、私のからだも心も蕩けそうな心地がしてくる。

 夫と体を交えている時も、心を占めているのは息子。自分とは縁も所縁もない夫より、自分の腹を痛めて産んだ息子が愛しい。

 ジュディ・オングの「魅せられて」ではないが、「夫の胸の中でも、息子の夢を見る」。

 息子にとって、多分、私の肌など「滑らかでもなく、柔らかいわけでも無い」。それは十分分かっている。何の魅力も無いものに違いないのに、それでも喜んで慕ってくれる息子の温かさが嬉しい。

 私は別に露出狂ではない。例え女性であっても、よその人の前で裸になるなんて考えられないから温泉だって行きたくない。男の裸だって見たくない。夫のからだだって自分から見たいと思ったことは無い。セックスの時は否応無しに目に入るけど、できれば目に入れたくはない。

 息子の前なら喜んで裸になれる。息子の裸ならいつまでも見ていられる。息子になら私のからだは見て欲しい。体中を触って欲しい。今もそうだし、これからも。
 
 私は母親失格なのかもしれない。悪妻なのかもしれない。でも、自分の心に嘘はつけない。
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