成長記録

娘の感想

私の記憶

　アルバムをめくると、誕生日ごとに撮った写真が目に付く。

　一枚目は私が生まれた日からではない。生まれる前に母のおなかに入っている時のもの。私が中に入っている、確かな証拠。

　物心がついたとき、両親はその時の写真、私が生まれた時の写真、誕生日を迎えた時の写真を見せてくれた。いずれも一糸まとわぬ文字通り「生まれたままの姿」。

　誕生日には裸の写真を撮るもの。それが私にとって毎年の「記念行事」。恥ずかしいと思ったことなど無い。

　記憶には無いけど、初めて私が脱いでカメラの前に立った誕生日を両親ははっきり憶えているそうだ。それまで脱がせていたのが嫌がることなく自分から脱いで被写体になってくれた。これで毎年撮る覚悟を決めたらしい。

　嫌がるわけがない。私の成長の確かな記録。着ているものは変わっても、私のからだは入れ替わらない。それでも私のからだは変わっていく。その記録なのだから。他の人みたいに服を着た成長記録なんて何の意味があるのか分からない。

　中学生の時、家に来た友人に見せたことがある。びっくりした顔をしていたけど、しばらくすると羨ましそうな顔に変わっていった。彼女のアルバムも見せてもらったことがあるけど、赤ちゃんの時からかわいい服を着たものばかり。私に言わせればこれは成長記録とは言えない。

　父は止めようと思ったことがあるみたい。私が恥ずかしがるような年齢になったからと思っていたみたいだけど、そんなことを思ったことは一度も無い。私にとって誕生日とは生まれたままの姿の写真を撮る日なのだから。

　誕生日に父のところに行くことができなくなるまで、それは続けていく。誰のためでもない、私自身のため。