記憶の片隅

はるかわ

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あの子もいない

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中学に上がった。
あの子は家も近くて、当然の様に同じ中学だった。
いじめられる人はどこに行ってもいじめられるんだね。
私はいじめを受けていた。
小五の時はまだ軽くて、暴言、ロッカーに押し込まれる位だったけれど、中学は少し、酷かった。
たのしいのかな、何しに学校に来てるんだっけな、とか思ってた。
あの子はチビの私が見上げるくらい背が伸びていた。

直接いじめは無かったけれど、私をいじめていた人と、仲が良かった。

いつからか、君から電話があった。
普段かからない、固定電話からだった。

君がいる時は、何気に電話で遊ぶ約束をしていたのに、その時は緊張しぱなっしだった。
何を話していたのかは忘れたけれど、何十分も話し込んでいた。


あの子がああなったのは何年生だっただろう。
教室を思い出すと、二年生だったかな?
背が高くなって、身体も大きくなったあの子が、私をいじめていた人の様に……『ワルがカッコイイ』と思っていたのか、やさぐれていた時があった。
今も、かは知らない。

いきなり『ドォン』と授業中に大きな音が鳴り響いて。
それはドアを蹴った音だった。
叩き付けるようにドアを横に開けて荷物を持って帰るあの子。

すごく、怖いと思った。

もう、色々と遅いんだなぁと。その時思った。
更生とかじゃない。

もう、あの頃みたいに今は三人で遊ぶことは出来なくても……あの子とだけでも遊ぶことは出来ないんだって、そう思った。


あの時。君がいなくなった後でも。
『あそぼう!』って言えばよかった。
先のことは神さまでも分からないっていうけれど。
あの子と、一緒に。傍にいれたらな、って思う。

今はもう、あの子はいない。
引っ越した。
時の流れは残酷じゃない。
時が進んで、良かったこともある。
その日が、来たらいい。


君と、あの子と、また笑顔で会える日が
『時が進んでよかった日』
すべてが清算された時。

その時がこればいいと思う。



────────
これで物語は終わりです。
これば私の実話。
脚色なしの物語です。

時が進んだ時、再会できるといいな…
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