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第四章 戦争争議

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テーブルゲームは続く。

火種を生み出し、武器を双方に売りさばく。
互いの国に資金が不足すれば、貸し借りをも行う。
彼らはにとっては、争いが長引くことが重要であり、それを止める素振りは微塵もなかった。

この間も人々の生活は細り、飢える者、保護者を失う者、通常であれば助かる命が消えていく。
それは殺され、犯され、奪われるばかりの地獄絵図。

武器は卓上の話し合いの元で右に左に分配され、強さの関係を調整されていた。
誰を勝者とするかさえもすべて卓上次第。

地上に血が流れ続けているというのに、砦内はいつも穏やかであり、国民から絞り上げた税を貯める国庫から武器商人へと金銭が流れていく。

感覚が麻痺しそうだった。
レイフのように怒りに任せて、自我を保とうとするほど俺は若くない。
未来を知るがゆえに、どこか一歩引いて眺めていた。

ギラギラと円卓を囲む者たちの双眸が光る、
黙して魔導士たちも同じ目をしている。
まさに欲に眩んだ目。

積み上がる数字からもたらされる高揚感と万能感。

彼らの目を通して円卓を眺める想像をする。

卓上に飾られる金貨のなんと魅惑的なことか。
それが増えていくことに心を奪われ、そこに肥大した自我を移しこむ。

この者たちに、恐れを抱くことはないのだろう。
今しか見えないとしたら、恐れることはないだろう。

この瞬間も歴史は連綿と続いていく。
血は流れ、地は踏み荒らされ、無辜の命が散っていくというのに。

地上で生きていた前前世の記憶を持つ俺でさえ、実感がなくなっていきそうだった。

この円卓では、一滴の血も流れない。
一滴も血を流さない、安全な場所で、地上の不幸が差配されて行く。

俺はそのやりとりを冷然と眺めていた。




さらに混乱は続く。

かねてよりミデオ国では、短慮で腕力ばかり持て余し、人を恨みがちな者たちに武器を横流しされていた。それは不要になった旧式も旧式の武器であったが、人々の日常を壊すには十分なおもちゃだ。

略奪や暴力が許された世界は、無用な武器をさばく者たちの私服の一部となる。

そうして多発する犯罪はさばききれなくなり、この世界でいうところの警察機構である騎士団や自警団は徐々に感覚を麻痺させ、このぐらいならと放置するようになる。金を手にした犯罪者が彼らを買収することもあった。

大きな荒事の前には、小さな荒事は捨て置かれていく。
治安はどんどんと悪くなるばかりだ。

それと同じことが各国でも行われた。



もうすぐ、三年を迎える。
歴史を知っている俺は、この後、彼らがどうなるのか、その行く末が見えていた。




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