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離れた生活

賭博

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「あそこは娯楽場だ。王都にもあるが、あそこは貴族の遊び場で、こっちはどんな手を使って金持ちになったのかは知らないが、とりあえず超金持ちが集まる場所だ」

「えっと、なんでそんなところに行こうとしているんですか……。お金は誰が出すと……」

「まあまあ、硬いこと言うなよー。ニクスは俺が思っていたより金持ちだったらしいからな。潜伏調査をしに行くだけだ。とりあえず、金貨一〇〇〇枚下ろしてきてくれ。オリハルコンを手に入れたら、返すからよ」

 ゲンジさんは僕の肩に腕を乗せ、お願いしてきた。

「返してくれなかったら怒りますからね」

 僕は腕を払い、手を柄に当てる。

「おー、こわ、おー、こわ。俺は元刑事だぜ。嘘はつかねえよ」

 ゲンジさんは手を上げ、呟いた。

 僕は潜入調査と言う言葉を信じ、ルークス銀行から大金貨一〇枚を下ろした。

「とりあえず、大金貨五枚ずつだ。シャ、遊ぶぞ!」

 ゲンジさんは巨大な遊技場に足を運ぶ。

 ――今、遊ぶって言わなかったか?

「主、あの男、普通にダメ人間ですよ……」

 プルスは僕の頭上で呟いた。

 闘技場より大きいんじゃないかと思われる遊技場は劇場のような見た目でとても煌びやかだ。出たり入ったりするものは顔がいかつく、貴族と言う感じはしない。でも、服装はとてもお金を持っている者が付けそうな装飾品塗れで、自分の地位を表しているように見えた。
 僕のような青年はおらず、葉巻をふかしたおっさんや、美女を連れたいかつい男性、ゴツイ体をした護衛を付けている老人などなど、裏社会を牛耳ってそうな者ばかりが去年手入っていく。ゲンジさんは我先にと入っていき、姿を消した。
 僕も遊技場の入り口に並び、黒服を着た男性に話しかけられる。

「入場料、金貨一〇〇枚です」

「金貨一〇〇枚……。たっか……」

 ――ビースト共和国の美術館なんて無料な場所もあったんだぞ、どれだけ金にがめついんだ。

 僕は渋々大金貨一枚を支払った。

「遊技場内での乱闘、又は殺人は犯罪です。いかなることが起ころうとも処罰の対象となりますので、節度を守りお楽しみください」

 黒服の男性は扉を開ける。

 僕は遊技場の中に入った。サイコロやトランプ、ルーレットなどが至る所に見える。ゲームの親(ディーラー)と遊んでいる者達が笑顔になったり悔し泣きしている。
 とりあえず、広すぎて息をのんだ。

「一杯、いかがですかー。入場者は無料です」

 水着のような薄い服でお酒が入ったお盆を持った美女がお酒を進めてきた。

「い、いただきます」

 僕は小さなグラスを受け取り、飲む。蒸留酒でアルコール度数が高いが、僕はお酒をいくら飲もうがただの麦水にしか感じないので、進められたから飲んだに過ぎない。

「あら、お強いのね。じゃあ、頑張ってくださいね」

 美女は他の者のもとに向かい、お酒を進めていた。

「こんな世界もあるんだな……」

 僕はお金をチップに交換した。手数料は無く、大金貨四枚から中金貨四〇枚分のチップを受け取る。

「博打なんてしたことが無いからな……。学生時代に遊んでいた者達の言葉くらいしか記憶が無いぞ」

 僕は多くのテーブルが置かれている遊技場の中を歩いた。どのゲームにするか品定めをしている。最低掛け金と最高掛け金が設定されており、金貨一枚や金貨一〇枚、一〇〇枚、何なら、金貨一〇〇〇枚なんて言う価格もあった。勝負に勝てはお金が増え、負ければ無くなる。学校に通っていたころ、騎士の皆が普段は遊べないから今のうちに遊んで行くんだと言う名目で沢山遊び、沢山泣いていたのを見ている。始めは勝たされ、自分は勝てると思っていたら、大敗するなて言う定番があるので、お金が無くなってしまったら潔く負けを認めよう。それまで普通に楽しもうか。
 僕は最低掛け金が金貨一〇枚のトランプゲームのテーブルに座った。ブラックジャックで親と勝負し、数字が二一に近い方が勝ちと言うゲーム。僕以外にもおじさんやおばさん、若い男性など、結構人気な席だ。

「では、皆さん、チップを前に」

 親が言うと僕達は金貨一〇枚相当のチップを前に出す。僕は一枚出した。周りは五枚とか八枚とか出している。
 親がトランプを皆に二枚配っていった。僕はキングと八を引いた。もう、二一だ。周りはトランプを交換したり、増やしたりして二一に近づける。

 皆が納得したころ、一斉に出した。親がひっくり返すと二〇。僕だけ掛けたお金が二倍になった。親からチップを一枚貰う。周りは親にチップを取られる。

「これが遊戯……」

 僕は特段面白味を感じず、チップを一枚ずつかけて行く。一〇回くらいやって八回勝った。
 その後、掛け金が一〇倍のテーブルに座る。金貨一〇〇枚相当のチップを一枚出し、親と勝負する。こちらも一〇回やって八回勝った。すでに、元の二倍になっている。

 そのまま、更に上のテーブルに移動すると、ゲンジさんが座っていた。

 元手が金貨四〇〇枚だったのに、いつの間にか物凄い量のチップが積み上がっている。

「ふっ、ハートのキングとスペードの七」
「うぅ……。スペードのキングとハートの六」

「またまた、俺の勝ちだな」

 ゲンジさんは藍牛の効果で数秒後の未来が見える。未来を見て親の数字を読み、確実に勝っているようだ。

 ――いや、普通にいかさまじゃん。

 ゲンジさんはいかさま紛いなことをしていると思ったら、親も普通にいかさまをしていた。だが、事前に仕込んでいるいかさまをしても未来を見られたらどうしようもない。

「えっと、ゲンジさん……」

「ああ、ニクス。めっちゃ勝ったから、もう、返すぜ」

 ドルトさんはチップの山から金貨一〇〇枚相当のチップを四枚手に取り、僕に返してきた。

「ありがとうございます……」

 僕は怒ろうと思ったが、ここで怒っても周りから目を引くだけだと思い、止めた。今はメリー団の者の情報やオリハルコンと貴族の少女の方が大切だ。
 遊び疲れたので酒場のある場所に移動した。そこらじゅういかがわしい恰好をした美女だらけ。チップを渡せばお触りしても良いようだ。
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