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ビースト共和国

新居

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「してないよ。僕の信念が勝った。褒めてくれると嬉しいんだけど……」

「ば、馬鹿じゃないの、何が信念なの。褒めるって何を!」

 ルパは少々怒っていた。

「僕はミアを撫でていただけだよ……。何度も理性を失いかけたけど、ルパのおかげで耐えられた」

「わけわかんない。でもミアが嫌そうな顔で寝てないから辛いことはされてないっぽい。何なら、幸せそう。私も起きてたら……、どうなってたのか……。で! 何したの! 細かく言ってもらおうか! 言わないなら、噛みちぎってやる」

 ルパは僕に覆いかぶさり、あまりにも怖いことを言って来た。

「ルパにとっては刺激が強いかも……」

 僕は事細かに説明せず、ほんわかと説明した。

「か、体を舐め合ったり、撫で合ったり……。時に敏感な部分まで……。そ、そんなのもうほぼ交尾じゃん……」

「ルパ、違うよ。僕はミアを可愛がっていただけだ」

 僕は恥ずかしげもなく堂々と言う。

「ぐぬぬ……。ミアだけ可愛がってもらったのか……、なんか仲間外れされたみたい……」

「別にルパを仲間外れにしていたわけじゃないよ。ルパを可愛がることができるのなら、僕はとことん可愛がる。もう、ルパの体がトロトロに溶けちゃうくらいにね!」

「ふ、不愉快なのに……。不愉快なのに……、み、ミアが羨ましい……」

 ルパはすやすやと眠るミアの方を見ながら呟いた。

「ニクス、キスっ!」

 ルパは勢いよく早朝の口づけをしてきた。口づけは仲を深め、幸せ度合を高める。加えて、幸福になりやすく病気にまでかかりにくくなると言う。キスしない方がもったいないくらい、多くの効果を持っている。まあ、僕とルパの関係も二年ほど経っているわけで仲が大分よくなった証拠とでも言おうか。肩を噛みちぎられたころとほんと一変した。これだけ仲良くなれるとは思っていなかったし、恋心に変わるなんて想像もしていなかった。透明な糸が伸びると、ルパが瞳をとろかしながら呟く。

「うう……、な、なんか、今日の口づけ、いつもと違う気がするんだけど……」

「さあ、どうだろうね。さ、服を着替えて家づくりの続きをするよ」

「ええ、も、もう、終わり……」

「どうしたの。一ヶ月前は相当嫌がってたのに、ルパも口づけが好きになったのかな?」

「うぐぐ……」

 ルパは口をつぐみ、黙ってしまった。

 僕達は服を着替え、朝食となる角ウサギを捕獲し、焼いて食す。
 家を組むところまで来ているので、一気にやってしまおう。
 建物を組みたて、外装を作り内装以外綺麗に作ることができた。以前乗った豪華客船の部屋で見かけた魔石コンロや魔石冷蔵庫など必要だと思い、貯めた資金で購入し、内装を施していく。

 僕の手先が器用だったことと、ルパとミアの手助けの結果、今風でしゃれている内装に仕上がった。今まで見てきた美術館や泊って来た使い勝手のいい部屋の内装を沢山見てきただけあり、どこの宿にも負けないくらい綺麗に仕上がっている。僕たちが鳥籠に返って来た日は七月二五日。内装を作るために掛かった日付は二カ月。もう、九月の終わりかけだ。

「ほ、本当に出来ちゃった……」

 ルパは広間で立ち尽くしていた。天井が高く、開放感のある間取りだ。
 玄関から入って、高級な六人用の食卓テーブルが置かれ、落ち着きのある質素な木製椅子。奥に薪兼魔石暖炉があり、冬はあそこに薪か魔石を入れて火を付ければ、暖かい空気が部屋中に広がる。
 左端に広い料理場があり、大量の食材を置いても作業ができる。魔石コンロと魔石冷蔵庫はミアの要望で大きめの品にした。今まで竈で料理を作っていたのでとても面倒臭かったが、今度からは火の調節などつまみを捻ることで簡単に着火や火消しが行える優れものだ。ミアは泣いて喜んでいた。加えて常に冷えている部屋こと魔石冷蔵庫。たくさんの肉を買ってもある程度保存できる。ルパとミアがお腹を壊さないよう、美味しい素材を沢山保存しておいておけるのだ。

 広間の四方向の壁に一つずつ扉があり、南に付いているのが玄関に繋がる扉。北、西、東に付いている扉は通路に繋がっている。
 客間が必要あるのかわからなかったが、一応作っておいた。お風呂とトイレが完備されており、水洗式じゃないがプルスの発生させた炎が燃えており、何でも灰に変えてくれる。溜まった灰はプルスが食すので、衛生的。
 ルパとミアは何とも言い難い表情をしていた。いずれ水洗式にすることも可能だと思うので、我慢してもらおう。お風呂も広すぎず、狭すぎない広さにした。
 広すぎても掃除やお湯を溜める行為が面倒なので、三人で入っても脚が悠々と伸ばせるくらいの浴槽にしてある。シャワーが無いのが残念だが、お湯につかれるようになっただけでもいいだろう。

「じゃあ、一人一人、部屋の紹介でもしてもらおうか」

「はーい」

 ルパとミアは手を上げ、返事をした。僕は内装を手掛けたが、その後、両者がどんな物や品を置いたのかは知らない。僕も教えていないし、お金は出すと言ってから、両者が何を買ったのかすら知らない。

「じゃあ、ミアの部屋から見せてもらおうかな」

「はい。私の部屋にご案内しまーす!」

 ミアは一人の部屋を持つのが子供のころの夢に含まれていた。なので、もう張りきって作ったようだ。
 ミアのヘアは広間の東の扉から入り、向かう。扉の前に到着し、取っ手を下ろして引いた。

「私の部屋です!」

 ミアは満面の笑みを浮かべながら嬉しそうに言う。

 部屋に入ると真正面に大きな窓があり、朝の陽ざしを目一杯部屋に入れられる間取りだ。白いカーテンが付けられ、清潔感満載。床に高級な敷物を広げ、更にお嬢様感が出ている。左奥に勉強机と高い位置に階段で上がるベッドが置かれていた。ミアは硬い場所の方がよく眠れるので、ベッドに敷物と毛布が置かれている。
 右奥に服類を入れる棚が二列あり、大量の服を収納できるようになっていた。左奥に大きな本棚が置いてあり、料理本や勉強に必要な本をしまうようだ。どれも高級な木材を使っており、香りがとてもいい。
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