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ビースト共和国

我慢

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 僕たちは魔物園を見て回り、多くの魔物を知った。
 普段滅多に見られない魔物の勉強になり、良い場所だった。
 ただ、魔物が暴走しそうで恐ろしい場所でもある。そのため、なるべく早く場を離れた。魔物園を回ったころには午後五時三〇分ほどになっており、丘を降りたら丁度夕食時になる。
 ザンティアコ街の料理店に入るわけだが、やはりどこも魔物の肉料理が多い。ルパとミアは嬉しそうだから良いものの、肉ばかりの食事をしていたら偏りが出てしまうなと容易に想像できる。

ルパとミアはヌータウロスの肉、僕はブラッディバードの肉を注文した。ブラッディバードの肉はヌータウロスと同じくらい魔物の肉の中で美味しく、脂身が少ないのでさっぱり食べられるのが特徴だ。先ほど、魔物園で見かけたが、体長は二メートル以上、見かけは赤黒く、鶏なんて比じゃないくらい恐ろしい表情をしていた。

 見かけは大きくなった鶏なのだが、貫禄が違い過ぎた。見ている時は怖かったが、料理になって出てきた時、さっぱりしてとても美味しい肉になっていることに感動と、虚しさを得る。

 僕とルパ、ミア、プルスは肉料理を食し、借りた宿に帰る。服から香辛料の匂いがして鼻がツンとする。プルスに匂いのもとを燃やしてもらい、汗の臭いも消してもらった。洗濯する手間が省け、僕達はお風呂に入る。

「はぁー、なんか地面が揺れてないだけで凄く気分が良かった。船もよかったけど、長すぎるのは駄目だった」

 ルパは伸びをしながら言う。

「そうだね。地面がしっかりとしているだけで安心感が全然違うよね。あと、生き物が見えるから海の上よりもにぎやかだった。音楽の演奏を聞いているだけで心が穏やかになった」

 僕はルパの体に背後から抱き着き、温もりを得る。

「今日はビースト共和国に無事到着出来て良かったです。海の上で船が沈没したなんて言う事態になったら、どうしようかと思っていました」

「まあ、そうなったらそうなったでいい思い出になったと思うけどね」

 僕はミアの肩を抱き、近づける。皆で体を洗い、楽しい思い出を語りながら、お風呂の時間を終える。寝る準備を整えたら、ベッドに倒れ込み、

「お休み」

 ルパは僕の唇にキスをしてきてすぐに離れた。

「おやすみなさい」

 ミアは僕に長い間キスした後、離れた。どちらもキスをすることにためらいがなくなってきており、仲が深まっていると実感できる。
 二名は僕から離れたベッドで眠るようだ。少しでも離れた場所の方が依存性が弱まると思った。ミアは床、ルパはベッド、僕は別のベッドで寝ころび、三名別々の場所で就寝する。始めは良いのだが……。

「ニクス、やっぱり無理……。我慢できない」

 ルパは僕のもとに戻って来てしまった。僕に抱き着き、唇を合わせてくる。
 愛情がいつも不足しているルパはキスで補充するようになってしまった。と言うか、キスをすることが好きになってしまったらしく、隙あらばキスしてくる。
 僕は一向にかまわないが、こんな状態でも嫌いと言われたら頭がこんがらがりそうだ。

 僕が眠っていると思い込んでいるルパはこれでもかとキスしてきた。僕が眠っているのをいいことに、好き放題している。全く、悪い子だ。反応したら僕がルパに殴られるので、じっと耐える。ほんと生殺しもいい所だ……。なので僕も少々反撃に出る。

 ルパの体を抱きしめ、逃げられないようにするのだ。
 僕も心地いいのでいつの間にか寝落ちしてしまうのだが、起きたころにはルパの眼が周り、心が爆発している時が増えた。
 もっとわかりやすく甘えてくれれば、僕も甘えられるのだが、隠れて甘えてくるので手を出しづらい。性欲がきつい時はプルスに燃やしてもらい、平常心を保って厭らしく育っていくルパを襲わないようにしていた。
 誕生日に食べておけば辛い思いをせずに済んだのにと思いながらも、愛を知らない彼女が、心を少しずつ成長させ、いつか心の整理が付いたら何かしらの合図を出してくれるだろうと考える。了承さえもらえれば、僕は彼女を死ぬまで愛するのに。

「はぁ、はぁ、はぁ……。ニクスに大好きって言われたら心臓がギュってして苦しくなっちゃった。キスも簡単にできるようになっちゃったし、ニクスが寝てるのに抱き着いてキスするとか昔の私じゃあり得ないのに……。でも、不思議と嫌じゃないのがわけわからない」

 ルパは僕に抱き着きながら眠りについた。

 次の日の朝。

「…………」

 早朝、生理現象で下半身が臨戦状態になっており、ルパのお腹に当たっていた。

「…………ニクスのニクスが大きくなってる。熱くて脈打ってる」

「生理現象だから仕方ない。嫌なら離れて」

 僕は平常心を装い、恥ずかしい気持ちを堪える。

「寒いから離れられない……。あと、なんかドキドキする」

 ルパは離れるどころか、おはようとキスしてくる。積極的になったルパは恐ろしく可愛い。今にでも食べてやりたいが、狼になる気はないので、我慢だ。

「さてと、ニクス。勉強をするよ」

「そうだね。ビースト語を話して聴けるようにならないと、うだうだしちゃう」

「部屋にあった子供の読み聞かせ絵本で勉強しよう」

 ルパは本棚に置かれていた品を手に取り、僕の近くにやって来た。そのまま、絵本を開き読み聞かせてくる。何と言っているのか全くわからないが、絵が描いてあるおかげでそこはかとなくわかった気になれた。これで、ビースト語を習得できるようになるのだろうか。ルパはいったん読み終えた後、読んだ文をルークス語に翻訳して話してきた。この歳になって新しい言語を覚えようとしてもなかなか難しい。なので、勉強する必要があった。
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