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ビースト共和国

お別れ

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「どうしたの、ミア。もうちょっとでお兄ちゃんにお仕置きされちゃうところだったのに」

「ルパちゃん、酔っぱらい過ぎだよ。頭を少し冷やして酔った勢いで良いの?」

「…………」

 ルパは少し考えたのち僕から離れた。そのまま僕の顔に拳を打ち込んでくる。

 ――なんで……。

「お、お兄ちゃんのバカ! お酒に酔った妹を襲うなんて最低!」

「り、理不尽……」

 僕は顔面が割れたかと思うほどの衝撃を受け、目を回しながらお風呂に浸かっていた。

 お風呂から出た後、ルパとミアの髪を乾かし、ブラッシングをする。

「うう、お酒のせいでお兄ちゃんがいつもの二倍カッコよく見える……」

「ありがとうね。全く、色々と殴られ損なんだよな……」

 ルパの髪を解き終えた後、歯を磨き、寝る準備をする。その前に送りものを渡さないと。

「ルパ、誕生日おめでとう」

 僕は質が良い短剣を送った。

「短剣……。ありがとうお兄ちゃんっ! 大切にするよ!」

 大きなベッドで三名並び、眠りにつくわけだがミアは唇にキスしてきた。ルパは……。

「うう、ううう……」

 ルパは口を尖らせながらキスしようとしているが、なかなか動かない。

「ルパ、無理しなくてもいいんだよ。頬にすれば構わないから」

「でも、私も成人になったわけだし、一応養ってもらってるわけだし……、日ごろの感謝と誠意とか……、色々あるわけで……」

 ルパは耳をヘたらせながら呟く。彼女も一応感謝の気持ちがあるようだ。
 なら、僕は待つのみ。自分からするのは用意だが、ずっと僕の方から動くのは違う気がする。ルパの誠意と言うのなら、しっかりと受け取らなければ。

「う、ううう……、うううう……」

 ルパは顔を赤くしながら近づいてくる。先ほどは完璧に出来ていたのに、お酒が少し抜けると一気にいじらしくなってしまった。

 八分ほど待った後、唇に湿った触感が伝わる。ほんの一瞬で終わり、ルパはすぐに離れた。

「うわあああああっ! 出来た!」

 ルパは自身でキスできたことにすこぶる驚いていた。人嫌いなルパが人にキスをするなんて思ってもみなかったのだろう。そりゃあ驚くか。

「ありがとう、ルパ。僕達、だいぶ仲良くなれたみたいだね」

「うう……、まあ、そうなのかな……」

 ルパは指を突きながら、寝転がる。僕の体に背を付けた。そのまま、眠りに降りるのかと思いきや、寝返りをうち、僕の体に抱き着いてくる。

「よしよし。もう、後三時間しかルパの誕生日が無いけど、やり残したことはない?」

「お兄ちゃん、私は大人になりました……。あの日から一〇年。いつ死ぬかもわからない中、素敵な人に出会いました。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、今、私は幸せです。今日まで見守ってくれてありがとう。私はもう大丈夫だから、安心してください……。村の皆の仇はまだ許せないけど、いつか必ず見つけて捕まえるから、私が寿命で死ぬ時まで、空で見守っていてください。お兄ちゃん、お別れのチュウ……」

 ルパは僕の方を向きながら目を瞑る。

「ああ、さようならだ。ルパ。残りの一生。幸せに生きなさい」

 僕はルパに口づけをする。

「ああ……、行っちゃった……。茶番だけど、お兄ちゃんにとどいているかな?」

「きっと届いてるよ。そう思ったほうが嬉しいでしょ」

「うん……。あーあ、お兄ちゃんだと思ってたらニクスだった。もう、さいあくー」

 ルパは暴言を吐きながら僕に抱き着いてくる。彼女の頭を撫でながら抱きしめかえす。

「ひっぐ、うっぐぅ……。ううう……、ううう……」

 ルパは僕に抱き着きながら声を震わせる。こらえきれなくなったようだ。
 家族を亡くす悲しみは一度だけ味わった。でも、全ての家族を奪われた、ルパになんと声を掛けていいのかわからなかった。でも、ルパの悲しみを少しでも和らげてあげるために、優しく撫でる。それだけでも効果があると信じて……。

「ルパ、大丈夫、大丈夫……。僕が傍にいるよ。ミアもプルスもいる。ルパは一人じゃない」

「ううう……、にくすぅ……、ニクスぅ……」

 ルパはざっと三時間くらい泣き続けていた。すごい体力だ。でも、さすがに疲れたのか、ぐっすりと眠る。ミアは途中から床で眠り、僕はルパを抱きしめながら眠った。

 七月二日の朝。

「ん……、んん……」

「ん……、ンん……。んはぁ……。えっと、こんなんで良いのかな……」

 ルパは僕にキスをして起こしてきた。可愛すぎる彼女の頭を撫で、ギュッと抱きしめる。

「な、なにするの。いきなり抱きしめないでよ……。心臓に悪い……」

「いやあー、ルパが可愛すぎてさ。キスしながら起こしてくれるなんて、いきなり大人になりすぎじゃない?」

「み、ミアがしてたし、発情しなくなるって言うのなら、するしかないじゃん……。あれになるのは最悪だから……、まだニクスとキスする方がまし」

「そうなんだ。ま、ルパの初々しい顏が見れて僕は凄く嬉しいよ。ありがとうね」

「うう……、恥ずかしい……」

「まあ、そのうち慣れちゃうよ。ルパの初々しい姿を見れるのは最初の一ヶ月くらいかな」

「一ヶ月で慣れるのかな……」

 ルパは顔を赤らめながら呟く。

「ふわぁー、良い目覚め。起きたあとはー、ニクスさーんとちゅーっ」

 ミアは目を覚まし、起き明けに僕に飛びついて来て口づけをして来た。勢いが強い……。

「はぁー、やっぱり朝一番にキスすると気分が良いですね。今日も元気一杯です!」

 ミアは両手を握りしめ、活力を見せる。やはり、元気が良い。

「確かに、元気一杯な気がする……」

 ルパも両手を握りしめ、笑顔を見せた。

「ほんと、朝から気分が良いと元気になれるってことだね」

 僕も両手を握りしめ、笑った。
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