331 / 392
ビースト共和国
お別れ
しおりを挟む
「どうしたの、ミア。もうちょっとでお兄ちゃんにお仕置きされちゃうところだったのに」
「ルパちゃん、酔っぱらい過ぎだよ。頭を少し冷やして酔った勢いで良いの?」
「…………」
ルパは少し考えたのち僕から離れた。そのまま僕の顔に拳を打ち込んでくる。
――なんで……。
「お、お兄ちゃんのバカ! お酒に酔った妹を襲うなんて最低!」
「り、理不尽……」
僕は顔面が割れたかと思うほどの衝撃を受け、目を回しながらお風呂に浸かっていた。
お風呂から出た後、ルパとミアの髪を乾かし、ブラッシングをする。
「うう、お酒のせいでお兄ちゃんがいつもの二倍カッコよく見える……」
「ありがとうね。全く、色々と殴られ損なんだよな……」
ルパの髪を解き終えた後、歯を磨き、寝る準備をする。その前に送りものを渡さないと。
「ルパ、誕生日おめでとう」
僕は質が良い短剣を送った。
「短剣……。ありがとうお兄ちゃんっ! 大切にするよ!」
大きなベッドで三名並び、眠りにつくわけだがミアは唇にキスしてきた。ルパは……。
「うう、ううう……」
ルパは口を尖らせながらキスしようとしているが、なかなか動かない。
「ルパ、無理しなくてもいいんだよ。頬にすれば構わないから」
「でも、私も成人になったわけだし、一応養ってもらってるわけだし……、日ごろの感謝と誠意とか……、色々あるわけで……」
ルパは耳をヘたらせながら呟く。彼女も一応感謝の気持ちがあるようだ。
なら、僕は待つのみ。自分からするのは用意だが、ずっと僕の方から動くのは違う気がする。ルパの誠意と言うのなら、しっかりと受け取らなければ。
「う、ううう……、うううう……」
ルパは顔を赤くしながら近づいてくる。先ほどは完璧に出来ていたのに、お酒が少し抜けると一気にいじらしくなってしまった。
八分ほど待った後、唇に湿った触感が伝わる。ほんの一瞬で終わり、ルパはすぐに離れた。
「うわあああああっ! 出来た!」
ルパは自身でキスできたことにすこぶる驚いていた。人嫌いなルパが人にキスをするなんて思ってもみなかったのだろう。そりゃあ驚くか。
「ありがとう、ルパ。僕達、だいぶ仲良くなれたみたいだね」
「うう……、まあ、そうなのかな……」
ルパは指を突きながら、寝転がる。僕の体に背を付けた。そのまま、眠りに降りるのかと思いきや、寝返りをうち、僕の体に抱き着いてくる。
「よしよし。もう、後三時間しかルパの誕生日が無いけど、やり残したことはない?」
「お兄ちゃん、私は大人になりました……。あの日から一〇年。いつ死ぬかもわからない中、素敵な人に出会いました。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、今、私は幸せです。今日まで見守ってくれてありがとう。私はもう大丈夫だから、安心してください……。村の皆の仇はまだ許せないけど、いつか必ず見つけて捕まえるから、私が寿命で死ぬ時まで、空で見守っていてください。お兄ちゃん、お別れのチュウ……」
ルパは僕の方を向きながら目を瞑る。
「ああ、さようならだ。ルパ。残りの一生。幸せに生きなさい」
僕はルパに口づけをする。
「ああ……、行っちゃった……。茶番だけど、お兄ちゃんにとどいているかな?」
「きっと届いてるよ。そう思ったほうが嬉しいでしょ」
「うん……。あーあ、お兄ちゃんだと思ってたらニクスだった。もう、さいあくー」
ルパは暴言を吐きながら僕に抱き着いてくる。彼女の頭を撫でながら抱きしめかえす。
「ひっぐ、うっぐぅ……。ううう……、ううう……」
ルパは僕に抱き着きながら声を震わせる。こらえきれなくなったようだ。
家族を亡くす悲しみは一度だけ味わった。でも、全ての家族を奪われた、ルパになんと声を掛けていいのかわからなかった。でも、ルパの悲しみを少しでも和らげてあげるために、優しく撫でる。それだけでも効果があると信じて……。
「ルパ、大丈夫、大丈夫……。僕が傍にいるよ。ミアもプルスもいる。ルパは一人じゃない」
「ううう……、にくすぅ……、ニクスぅ……」
ルパはざっと三時間くらい泣き続けていた。すごい体力だ。でも、さすがに疲れたのか、ぐっすりと眠る。ミアは途中から床で眠り、僕はルパを抱きしめながら眠った。
七月二日の朝。
「ん……、んん……」
「ん……、ンん……。んはぁ……。えっと、こんなんで良いのかな……」
ルパは僕にキスをして起こしてきた。可愛すぎる彼女の頭を撫で、ギュッと抱きしめる。
「な、なにするの。いきなり抱きしめないでよ……。心臓に悪い……」
「いやあー、ルパが可愛すぎてさ。キスしながら起こしてくれるなんて、いきなり大人になりすぎじゃない?」
「み、ミアがしてたし、発情しなくなるって言うのなら、するしかないじゃん……。あれになるのは最悪だから……、まだニクスとキスする方がまし」
「そうなんだ。ま、ルパの初々しい顏が見れて僕は凄く嬉しいよ。ありがとうね」
「うう……、恥ずかしい……」
「まあ、そのうち慣れちゃうよ。ルパの初々しい姿を見れるのは最初の一ヶ月くらいかな」
「一ヶ月で慣れるのかな……」
ルパは顔を赤らめながら呟く。
「ふわぁー、良い目覚め。起きたあとはー、ニクスさーんとちゅーっ」
ミアは目を覚まし、起き明けに僕に飛びついて来て口づけをして来た。勢いが強い……。
「はぁー、やっぱり朝一番にキスすると気分が良いですね。今日も元気一杯です!」
ミアは両手を握りしめ、活力を見せる。やはり、元気が良い。
「確かに、元気一杯な気がする……」
ルパも両手を握りしめ、笑顔を見せた。
「ほんと、朝から気分が良いと元気になれるってことだね」
僕も両手を握りしめ、笑った。
「ルパちゃん、酔っぱらい過ぎだよ。頭を少し冷やして酔った勢いで良いの?」
「…………」
ルパは少し考えたのち僕から離れた。そのまま僕の顔に拳を打ち込んでくる。
――なんで……。
「お、お兄ちゃんのバカ! お酒に酔った妹を襲うなんて最低!」
「り、理不尽……」
僕は顔面が割れたかと思うほどの衝撃を受け、目を回しながらお風呂に浸かっていた。
お風呂から出た後、ルパとミアの髪を乾かし、ブラッシングをする。
「うう、お酒のせいでお兄ちゃんがいつもの二倍カッコよく見える……」
「ありがとうね。全く、色々と殴られ損なんだよな……」
ルパの髪を解き終えた後、歯を磨き、寝る準備をする。その前に送りものを渡さないと。
「ルパ、誕生日おめでとう」
僕は質が良い短剣を送った。
「短剣……。ありがとうお兄ちゃんっ! 大切にするよ!」
大きなベッドで三名並び、眠りにつくわけだがミアは唇にキスしてきた。ルパは……。
「うう、ううう……」
ルパは口を尖らせながらキスしようとしているが、なかなか動かない。
「ルパ、無理しなくてもいいんだよ。頬にすれば構わないから」
「でも、私も成人になったわけだし、一応養ってもらってるわけだし……、日ごろの感謝と誠意とか……、色々あるわけで……」
ルパは耳をヘたらせながら呟く。彼女も一応感謝の気持ちがあるようだ。
なら、僕は待つのみ。自分からするのは用意だが、ずっと僕の方から動くのは違う気がする。ルパの誠意と言うのなら、しっかりと受け取らなければ。
「う、ううう……、うううう……」
ルパは顔を赤くしながら近づいてくる。先ほどは完璧に出来ていたのに、お酒が少し抜けると一気にいじらしくなってしまった。
八分ほど待った後、唇に湿った触感が伝わる。ほんの一瞬で終わり、ルパはすぐに離れた。
「うわあああああっ! 出来た!」
ルパは自身でキスできたことにすこぶる驚いていた。人嫌いなルパが人にキスをするなんて思ってもみなかったのだろう。そりゃあ驚くか。
「ありがとう、ルパ。僕達、だいぶ仲良くなれたみたいだね」
「うう……、まあ、そうなのかな……」
ルパは指を突きながら、寝転がる。僕の体に背を付けた。そのまま、眠りに降りるのかと思いきや、寝返りをうち、僕の体に抱き着いてくる。
「よしよし。もう、後三時間しかルパの誕生日が無いけど、やり残したことはない?」
「お兄ちゃん、私は大人になりました……。あの日から一〇年。いつ死ぬかもわからない中、素敵な人に出会いました。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、今、私は幸せです。今日まで見守ってくれてありがとう。私はもう大丈夫だから、安心してください……。村の皆の仇はまだ許せないけど、いつか必ず見つけて捕まえるから、私が寿命で死ぬ時まで、空で見守っていてください。お兄ちゃん、お別れのチュウ……」
ルパは僕の方を向きながら目を瞑る。
「ああ、さようならだ。ルパ。残りの一生。幸せに生きなさい」
僕はルパに口づけをする。
「ああ……、行っちゃった……。茶番だけど、お兄ちゃんにとどいているかな?」
「きっと届いてるよ。そう思ったほうが嬉しいでしょ」
「うん……。あーあ、お兄ちゃんだと思ってたらニクスだった。もう、さいあくー」
ルパは暴言を吐きながら僕に抱き着いてくる。彼女の頭を撫でながら抱きしめかえす。
「ひっぐ、うっぐぅ……。ううう……、ううう……」
ルパは僕に抱き着きながら声を震わせる。こらえきれなくなったようだ。
家族を亡くす悲しみは一度だけ味わった。でも、全ての家族を奪われた、ルパになんと声を掛けていいのかわからなかった。でも、ルパの悲しみを少しでも和らげてあげるために、優しく撫でる。それだけでも効果があると信じて……。
「ルパ、大丈夫、大丈夫……。僕が傍にいるよ。ミアもプルスもいる。ルパは一人じゃない」
「ううう……、にくすぅ……、ニクスぅ……」
ルパはざっと三時間くらい泣き続けていた。すごい体力だ。でも、さすがに疲れたのか、ぐっすりと眠る。ミアは途中から床で眠り、僕はルパを抱きしめながら眠った。
七月二日の朝。
「ん……、んん……」
「ん……、ンん……。んはぁ……。えっと、こんなんで良いのかな……」
ルパは僕にキスをして起こしてきた。可愛すぎる彼女の頭を撫で、ギュッと抱きしめる。
「な、なにするの。いきなり抱きしめないでよ……。心臓に悪い……」
「いやあー、ルパが可愛すぎてさ。キスしながら起こしてくれるなんて、いきなり大人になりすぎじゃない?」
「み、ミアがしてたし、発情しなくなるって言うのなら、するしかないじゃん……。あれになるのは最悪だから……、まだニクスとキスする方がまし」
「そうなんだ。ま、ルパの初々しい顏が見れて僕は凄く嬉しいよ。ありがとうね」
「うう……、恥ずかしい……」
「まあ、そのうち慣れちゃうよ。ルパの初々しい姿を見れるのは最初の一ヶ月くらいかな」
「一ヶ月で慣れるのかな……」
ルパは顔を赤らめながら呟く。
「ふわぁー、良い目覚め。起きたあとはー、ニクスさーんとちゅーっ」
ミアは目を覚まし、起き明けに僕に飛びついて来て口づけをして来た。勢いが強い……。
「はぁー、やっぱり朝一番にキスすると気分が良いですね。今日も元気一杯です!」
ミアは両手を握りしめ、活力を見せる。やはり、元気が良い。
「確かに、元気一杯な気がする……」
ルパも両手を握りしめ、笑顔を見せた。
「ほんと、朝から気分が良いと元気になれるってことだね」
僕も両手を握りしめ、笑った。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ニートだった俺が異世界転生したけどジョブがやっぱりニートだった件
滝川 海老郎
ファンタジー
ニートだった。不死じゃないけど不老だった。ずっとニート16歳。90を過ぎて旅に出る。旧知の領主と話をする。同じくエルフと話をする。そんなこんなでエルフを連れて旅に出て次の街を目指す。自分がかかわったり種を蒔いた事実があったりと、なんやかんや楽しく歩いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる