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仲間が増えた生活
帰宅
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「なんで、私が起きる前にどっか行っちゃうの……。起きた時にニクスがいないと私、怖くて怖くて仕方ないんだから……。どこにもいかないでよ……」
「ルパ、僕はルパのために何でもしてあげたいけど、何でもしてあげられる訳じゃないんだ。ルパが起きるまで傍にいてあげたいけど、僕は人間だからトイレに行きたくなるし、寝過ぎたら眠れなくなる。僕はルパよりも早起きだから、起きる時間がずれちゃうのは仕方がない」
「うぅ……。わかってる……。言ってみただけ……。でも、本当に怖いんだから……」
ルパは僕に抱き着きながら、呟いた。
「そうだよね。怖いよね。でも、もう、大丈夫だから、怖がらないで」
「うん……」
ルパは僕に抱き着いた後、離れた。手を握り、一緒にお風呂に入る。
「朝からお湯に浸かるの、気持ちいい。ミアがいないとニクスを独り占めしているみたい」
「ルパは僕を独り占めしたかったのかなー」
僕はルパの背後から抱き着き、聞く。
「ち、違う。そんなんじゃない。でも、たまにはいいかなって思った。昔みたいにニクスと一緒にお風呂に入れてちょっと楽しい」
「確かに、最近は三人で入ることが多いもんね。今なら目一杯甘えてもいいよ」
「べ、別に甘えたいわけじゃないし……。でも、滅多にないから……、特別」
ルパは僕に抱きつき、僕の頬にキスしてくる。尻尾が振られ、心地よくなっていた。
僕はルパに頬擦りをして感謝の気持ちを表す。
お湯に浸かってただ抱き合っているだけで、心まで暖かくなり、良い時間だった。
「ルパ、そろそろ出ようか。このままでいたらのぼせて倒れちゃうよ」
「うん……」
僕とルパはお風呂から出て脱衣所で体を拭き、服を着た。そのまま寝室で眠っているミアのもとに戻る。
寝室の扉を開けると、ミアが僕の枕に抱き着き、寝間着のズボンを脱いだ状態で手を股に挟んでいた。
僕は色々な思考が脳内に巡るが、普通に寝相が悪すぎただけだと解釈し、気にせず話す。何なら、ルパは全く気にしている素振りを見せず、ミアにおはようと言って抱き着きをする。
「ル、ルパちゃん。ちょ、ちょっと離れて。パンツを履かないと……」
「ミア、珍しくお漏らししちゃったの?」
ルパは純粋無垢に聞くと、ミアは赤面し、そうだと答えた。きっとそうなのだろう。僕もそう言うことにしておいた。心とはこうやって成長していくのだろうか……。
「に、ニクスさん。本当にお漏らしですから!」
「そこは強調しなくてもいいんじゃないかな……」
僕はプルスにお願いして濡れていた部分の水分を燃やしてもらう。全て蒸発し、鼠色だった布団が真っ白に戻った。
「じゃあ、二人共。食事処に移動するよ」
「はーい」
僕達は服を着替えた後、食事処に移動し、料理が来るのを待っていた。
午前八時。扉が叩かれ、部屋に料理を運んでもらう。運ばれてきた料理は焼き魚やスープ。麦飯などの軽い品だった。でも、お替り自由なので、ルパとミアは好きなだけ食していた。そんなにたくさん食べられるのだろうかと思いながら、どんぶり三杯くらい完食し、おかみさんを驚かせていた。何なら僕が一番驚いている。
ルパとミアは今日で竜の谷から家に戻るので、最後の食事だと考え、無理やり詰め込んでいるのかもしれない。
「二人とも。そんなに焦らなくても、また来れるから、ほどほどにしておけばいいよ」
「うっぷ。もう、それならそうと、早く行ってよね。どれだけお腹に溜めこんだと思ってるの。お腹パンパンで動けないよ」
ルパは僕に怒る。
「うう……。お腹いっぱい食べ過ぎました……。こんなに食べたのは久しぶりです……」
ミアはお腹をパンパンにして摩っていた。臨月の女性のようで、変な気分になる。
僕達は朝食を平らげ、帰る準備を進めた。と言っても持って帰る品はほぼ無い。おかみさん曰く、馬を返しに行く必要もないそうだ。フランツの街に戻しておいてくれるという。
お土産屋さんで竜の形とした置物や飾りを買おうとしたら、ルパとミアに絶対にいらないと言われた。仕方なく、温泉饅頭や温泉卵を購入し、食べられる品にした。
「じゃあ、ルパ、ミア。家に帰るけど、忘れものはないね?」
「無い。ペンダントさえあれば大丈夫!」
ルパはイエローダイヤモンドのペンダントを持ち上げ、握り込む。
「私もペンダントさえ残っていれば、大丈夫です」
ミアは僕の母さんの形見を握り、何かに祈るような体勢を取る。
「じゃあ、僕にしっかりと捕まって。家まで飛んで行くから、放さないようにね」
僕はルパとミアを縄で固定する。少しでも安全な飛行が出来るように心掛けた。
「プルス、炎の翼」
「了解です」
プルスは背中にくっ付き、大きな炎の翼を出現させた。一度羽ばたくと一気に加速。地上から八〇〇〇メートル地点に到着し、西に向って飛んで行く。八時間ほどで鳥籠のもとに戻ってきた。久しぶりに感じる我が家にルパとミアは抱き着く。どうも、我が家に帰ってきた感じがして嬉しいのだそう。
手洗いうがいをした後、家の中に入る。
「すーはぁー。すーはぁー。ああー、落ちつくぅー」
ルパとミアは布団や枕に抱き着き、自分達の匂いを嗅ぎながらまったりしていた。
「やっぱり我が家に帰ってくると、落ちつくね。でも、食事を作らないと、昼食と夕食は無いよ」
「はっ!」
両者は事の重大さに気づいたのか、服を着替え、狩りに行く準備をした。家に帰ってきた瞬間、両者共に生き生きとしており、生活臭がすごい。
「よし。角ウサギを狩りに行こうか」
「うんっ!」
ルパは短剣を持ちながら、頷く。
「はいっ!」
ミアは拳を握りしめながら返事をする。
僕達は荒野に角ウサギを取りに向かい、三羽捕まえて遅めの昼食にした。その夜、プルスにフカフカにしてもらった布団にくるまり、眠りに着く。
「ルパ、僕はルパのために何でもしてあげたいけど、何でもしてあげられる訳じゃないんだ。ルパが起きるまで傍にいてあげたいけど、僕は人間だからトイレに行きたくなるし、寝過ぎたら眠れなくなる。僕はルパよりも早起きだから、起きる時間がずれちゃうのは仕方がない」
「うぅ……。わかってる……。言ってみただけ……。でも、本当に怖いんだから……」
ルパは僕に抱き着きながら、呟いた。
「そうだよね。怖いよね。でも、もう、大丈夫だから、怖がらないで」
「うん……」
ルパは僕に抱き着いた後、離れた。手を握り、一緒にお風呂に入る。
「朝からお湯に浸かるの、気持ちいい。ミアがいないとニクスを独り占めしているみたい」
「ルパは僕を独り占めしたかったのかなー」
僕はルパの背後から抱き着き、聞く。
「ち、違う。そんなんじゃない。でも、たまにはいいかなって思った。昔みたいにニクスと一緒にお風呂に入れてちょっと楽しい」
「確かに、最近は三人で入ることが多いもんね。今なら目一杯甘えてもいいよ」
「べ、別に甘えたいわけじゃないし……。でも、滅多にないから……、特別」
ルパは僕に抱きつき、僕の頬にキスしてくる。尻尾が振られ、心地よくなっていた。
僕はルパに頬擦りをして感謝の気持ちを表す。
お湯に浸かってただ抱き合っているだけで、心まで暖かくなり、良い時間だった。
「ルパ、そろそろ出ようか。このままでいたらのぼせて倒れちゃうよ」
「うん……」
僕とルパはお風呂から出て脱衣所で体を拭き、服を着た。そのまま寝室で眠っているミアのもとに戻る。
寝室の扉を開けると、ミアが僕の枕に抱き着き、寝間着のズボンを脱いだ状態で手を股に挟んでいた。
僕は色々な思考が脳内に巡るが、普通に寝相が悪すぎただけだと解釈し、気にせず話す。何なら、ルパは全く気にしている素振りを見せず、ミアにおはようと言って抱き着きをする。
「ル、ルパちゃん。ちょ、ちょっと離れて。パンツを履かないと……」
「ミア、珍しくお漏らししちゃったの?」
ルパは純粋無垢に聞くと、ミアは赤面し、そうだと答えた。きっとそうなのだろう。僕もそう言うことにしておいた。心とはこうやって成長していくのだろうか……。
「に、ニクスさん。本当にお漏らしですから!」
「そこは強調しなくてもいいんじゃないかな……」
僕はプルスにお願いして濡れていた部分の水分を燃やしてもらう。全て蒸発し、鼠色だった布団が真っ白に戻った。
「じゃあ、二人共。食事処に移動するよ」
「はーい」
僕達は服を着替えた後、食事処に移動し、料理が来るのを待っていた。
午前八時。扉が叩かれ、部屋に料理を運んでもらう。運ばれてきた料理は焼き魚やスープ。麦飯などの軽い品だった。でも、お替り自由なので、ルパとミアは好きなだけ食していた。そんなにたくさん食べられるのだろうかと思いながら、どんぶり三杯くらい完食し、おかみさんを驚かせていた。何なら僕が一番驚いている。
ルパとミアは今日で竜の谷から家に戻るので、最後の食事だと考え、無理やり詰め込んでいるのかもしれない。
「二人とも。そんなに焦らなくても、また来れるから、ほどほどにしておけばいいよ」
「うっぷ。もう、それならそうと、早く行ってよね。どれだけお腹に溜めこんだと思ってるの。お腹パンパンで動けないよ」
ルパは僕に怒る。
「うう……。お腹いっぱい食べ過ぎました……。こんなに食べたのは久しぶりです……」
ミアはお腹をパンパンにして摩っていた。臨月の女性のようで、変な気分になる。
僕達は朝食を平らげ、帰る準備を進めた。と言っても持って帰る品はほぼ無い。おかみさん曰く、馬を返しに行く必要もないそうだ。フランツの街に戻しておいてくれるという。
お土産屋さんで竜の形とした置物や飾りを買おうとしたら、ルパとミアに絶対にいらないと言われた。仕方なく、温泉饅頭や温泉卵を購入し、食べられる品にした。
「じゃあ、ルパ、ミア。家に帰るけど、忘れものはないね?」
「無い。ペンダントさえあれば大丈夫!」
ルパはイエローダイヤモンドのペンダントを持ち上げ、握り込む。
「私もペンダントさえ残っていれば、大丈夫です」
ミアは僕の母さんの形見を握り、何かに祈るような体勢を取る。
「じゃあ、僕にしっかりと捕まって。家まで飛んで行くから、放さないようにね」
僕はルパとミアを縄で固定する。少しでも安全な飛行が出来るように心掛けた。
「プルス、炎の翼」
「了解です」
プルスは背中にくっ付き、大きな炎の翼を出現させた。一度羽ばたくと一気に加速。地上から八〇〇〇メートル地点に到着し、西に向って飛んで行く。八時間ほどで鳥籠のもとに戻ってきた。久しぶりに感じる我が家にルパとミアは抱き着く。どうも、我が家に帰ってきた感じがして嬉しいのだそう。
手洗いうがいをした後、家の中に入る。
「すーはぁー。すーはぁー。ああー、落ちつくぅー」
ルパとミアは布団や枕に抱き着き、自分達の匂いを嗅ぎながらまったりしていた。
「やっぱり我が家に帰ってくると、落ちつくね。でも、食事を作らないと、昼食と夕食は無いよ」
「はっ!」
両者は事の重大さに気づいたのか、服を着替え、狩りに行く準備をした。家に帰ってきた瞬間、両者共に生き生きとしており、生活臭がすごい。
「よし。角ウサギを狩りに行こうか」
「うんっ!」
ルパは短剣を持ちながら、頷く。
「はいっ!」
ミアは拳を握りしめながら返事をする。
僕達は荒野に角ウサギを取りに向かい、三羽捕まえて遅めの昼食にした。その夜、プルスにフカフカにしてもらった布団にくるまり、眠りに着く。
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