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仲間が増えた生活

依存されている

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「主、良かったのですか?」

 プルスは僕のお腹の上で足踏みしながら座る。

「なにが?」

「ルパとミアさんを別部屋にしたことですよ」

「最近、僕とルパ、ミルの距離が近すぎると思ってさ。少し距離を置いたほうが最悪の事態が起きた時でも対処しやすいと思ったんだ」

「最悪な事態とは主が死んだときですか?」

「そうだね……。いつ何があるかわからないからさ。二人に僕がいない時を慣れてもらおうと思って。そうすれば、毎回毎回気を遣わないで済むでしょ」

「なるほど。依存させないように仕向けているわけですね」

「そう言うこと。二人だけでも生きていけるようになる。また、一人だけでも生きていけるようになってくれれば、嬉しい。いつもみんな一緒でいられる訳じゃないから、まずはこれくらいの距離間で試していこうと思う」

 僕は布団を肩までかぶり、眠りについた。
 プルスがいなくても部屋の中は温かく、快適に眠れた。まあ、いつもいるルパとミアが隣にいないのは少々寂しかったが、昔はこんな生活だったなと思い出せる良い機会となった。

 次の日、目覚めはよく、誰もいない状況に一瞬恐怖したが、隣の部屋にいるんだと思い出し、胸をなでおろす。僕の方もルパとミアに依存気味なので、ここらで依存しないよう、対策を取らなくては、ずるずると関係が続いてしまう」

 僕は朝起きて窓を開けると日差しが差し込んできていた。
 時刻は午前六時三〇分。いつも通りの時間帯だ。今日の天気は雪。空から白い結晶がはらりはらりと舞っている。

 入口の扉を開けてルパとミアがいる部屋を三回叩き、開けてもらうようにお願いする。

 鍵がガチャリと開くと、僕の体が突き飛ばされる。後方の壁に背中から直撃し、激痛が走る。僕の胸には二名の獣族がおり、目の下を黒くしながら泣きまくっていた。

「うわあああああああああん。ニクスぅ……。やっぱりニクスがいなきゃ生きていけない……。一睡もできなかったよぉ……」

「うぅ……。私、ニクスさんがいないと眠れない体質になってしまいました……。こんな経験初めてです。もう、風で動く窓の音でも怖くなっちゃって……。全然寝られませんでした」

 ルパとミアは昨晩、一睡もできなかったらしく、顔色が悪かった。悪いことをしたと思い、今日は移動するのを止め、二名の体調を回復させることにする。

「ごめん。まさか寝られなくなるとは思わなかった。今日は雪だし、もう一泊しよう」

「うん……」
「はい……」

 ルパとミアは僕が寝ていた部屋に移動し、同じベッドでギュッと抱き合いながら寝ころぶ。

「ああ……。す、すごい……。やっぱりニクス、あったかすぎる……。こんなに暖かくて安心できる場所だったんだ……」

 ルパは僕に抱き着きながら尻尾を揺らし、目をしょぼしょぼさせた。
 僕はルパの頭を優しく撫でながら、安心させる。

「うぅ……。私、ニクスさん無しじゃ、生きていけない体になってしまいました。匂い、声、体の暖かさ、何もかも心に響いちゃいます……」

 ミアは僕の体に抱き着き、顔を擦りつけてくる。

「二人には僕に依存しすぎないようにしてもらいたいだけど、今のところ難しそうだね」

「もう、ニクスに依存してもいい……。ニクスさえいれば、私は十分幸せ……」

「ニクスさんの赤ちゃん……、いっぱい産んで幸せな家庭を……」

 ルパとミアはか細い声で呟きながら、眠ってしまった。
 僕が頭を撫でだしてほんの数秒のことだ。安心感が無いと、全然眠れないんだな……。逆に安心感があれば、こんなにあっさりと眠ってしまうんだ。

 僕はルパとミアが眠ってから、ベッドから出ようとするも、腕と足をしっかりと絡まされ、逃げ出せなかった。すでに依存されてしまっている状態に、嬉しさと問題の大きさを知った。

 二名は次の日の朝まで、ずっと寝続けた。よくそこまで寝られるなと思いながら、部屋の中で素振りをする。二名が七時間ほど眠ったあとから、腕の拘束が緩み、抜け出せたのだ。
 夜、僕は隣のベッドでねむる。すると、次の日、目を覚ました時には二名の体が両脇に合った。僕が移動したのかと思いきやルパとミアが勝手に移動したらしい。いつの間に……。

「んん……。おはようございます、ニクスさん……。んー、良く寝ましたー」

 ミアはルパよりも先に目を覚まし、大きく伸びをして呟いた。そのまま僕の両頬に冷たい手を当て、微笑む。

「最近、ニクスさんと全然キスできません……。鳥籠にいたころは私の方が早く起きれていたのに、仕事状態が抜けちゃうと全然起きられません……」

「今は別に仕事をしているわけじゃないんだから、キスしなくてもいいんだよ」

「仕事じゃなくてもしたいんですー。もう、ニクスさんとキスしないと、一日が始まった気がしません」

「そう言われてもな、もう起きちゃったわけだし、僕からキスできないよ。代わりに抱きしめるくらいなら出来るけど、心の方は大丈夫?」

「大丈夫です。抱きしめられるくらい、何ともありません」

 ミアは僕の手を握り、震えていないと言う証拠を見せて来た。
 僕はミアの体にぎゅっと抱き着き、これでもかと言うほど撫でる。愛情表現は欠かさず、子供に接するように……。

「よしよし、おはよう、ミア。今日も一日、頑張って生きようね」

「は、はいぃ……」

 ミアは蕩けるような声を出し、尻尾を大きく振って嬉しがった。

「わ、私。ちょっとトイレに行ってきます」

 ミアはトイレに大急ぎで駆け込んだ。そのまま、おーんっと言う野太い声を出し、閉じこもる。

「ニクス……。おはよう……」

「おはよう。よく眠れた?」

「うん……。もう、眠りすぎちゃったくらい寝た……」

「それなら良かった。顔色もいいし、今日も朝から別嬪だね」

 僕はルパの前髪を掻き揚げ、起き明けの琥珀色の瞳を覗き込む。涙で潤い、とても綺麗だった。もう、本物の宝石のようでどれだけ眺めていても飽きなそうだ。
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