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仲間が増えた生活

魚料理

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 魚を三枚におろし、焼く、あげる、蒸す、燃やすの料理を作った。
 料理と言っても、難しい品は作れない。

 僕はフライパンにバターと塩を入れ、魚の切り身を入れる。白身魚なので、柔らかく、口の中でほろほろと崩れるだろう。火がしっかりと通ったら、完成。僕はただ焼くだけの料理なら、作れるようになった。

 ミアはフライパンに薄く油を敷き、卵とパン粉をまぶした魚の切り身を油の中に入れる。衣がキツネ色になったら、金網に乗せ、荒熱を取る。中まで熱が通ったら、完成だ。
 ミアの手際が良く、料理が得意だとすぐにわかった。

 ルパも負けじと、料理を作る。大きな葉を使って包を作り、酒、塩、砂糖、胡椒、魚の切り身を入れ、包を閉じる。そのまま、フライパンの上で焼き、包から水蒸気が出るほど熱した後、放置。包を開けると、良い香りがたち昇る。

 プルスは炎を吐き、魚を燃やした。魚の面影はなく、灰になっている。これは料理と言うのだろうか。

「皆の料理が出そろったね。じゃあ、いただきます!」

「いただきます!」

 ルパとミア、プルスは大きな声を出した。

 僕達はまず、自分が作った料理を食べる。普通に美味しくて感動した。自分にもこのような料理が作れたのかと……。

 その後、プルス以外の料理を回し、食す。
 僕はミアの魚フライを貰う。ミアの視線が熱く、どうも食べづらい。フォークとナイフで魚を切り、食べる。衣がざくざくで触感は完璧。味付けは塩胡椒だけながら、魚のうま味のおかげで問題なく、お店で出せるくらい美味しかった。

「うん、美味しい。ミア、お店を出せるよ」

「あ、ありがとうございます! 喜んでもらえて良かったです!」

 ミアは胸をなでおろし、安堵していた。僕の舌に料理が合わなかったらどうしようかと考えていたのだろうか。残念ながら僕の舌は馬鹿なので、大抵美味しく感じてしまう。

「ニクスの焼き魚も普通に美味い……。昔に比べて上達してる」

 ルパは僕の作った焼き魚を食べ、感想を言ってくれた。なかなかいい反応で、僕も一安心。

「ルパちゃんの酒蒸しも美味しいよ。こんな料理をよく思いついたね」

「昔、水を取りに行くのが面倒くさくて、酒でいいやってやったらめっちゃおいしくなった」

「なるほどなるほど、面白いね。今度、料理に取り入れてみようかな」

 ミルは料理を作るのが好きなのか、笑顔が納まらない。

 僕達はもう一度回し、僕はルパの酒蒸しを食べる。酒のアルコールは抜け、うま味だけが、凝縮されており、魚の甘味を存分に感じられる。
 脂がのっているため、口の中に入れた途端に身が解れ、とてもしっとりとしており柔らかい。味付けの具合も丁度よく、パンが進む。

「いやあ、美味しい。ルパも料理が上手になったね。昔は獣族に料理なんてさせるなって言うくらい嫌がってたのに、ここまで美味しい料理を作れるようになるなんて。これで、遡行さえ直せば、どこにお嫁に出しても恥ずかしくないよ」

「そ、そんなの料理の内に入らない。調味料を入れて蒸し焼きにしただけ。誰にでも作れる」

「そう? でもこの味はルパにしか出せないよ。皆のために料理を作ってくれてありがとうね。そもそも、ルパが沢山の魚を釣って来てくれたから、美味しい料理が作れてるんだ。本当にありがとう」

「べ、別に……、感謝されても嬉しくないし」

 ルパの尻尾は言葉と裏腹に、振れまくっていた。

 僕達は残りの魚をすべて炭火焼きにして食べた。一番楽で、大量消費しやすい。

 夕食を得た僕達はお湯の出る泉に向かった。

「ふぅ……。いいなぁ……。やっぱりいい……」

「はい……。蕩けちゃいますね……」

「はわわ……。お湯が体に沁み込んでくる……」

 お湯につかり、体の疲労を解す。その後、ミアにはまだ使ってもらっていない小屋にむかった。
 小屋の中に積み上がっている石ころを燃やし、熱する。すると、小屋の中が一気に熱くなる。僕とルパは全裸、ミアは体に布を巻き、小屋の段差に座る。

「はぁ、はぁ、はぁ……。あ、暑すぎます……。な、なんですか、この小屋……」

「えっと、ルパがいた村の風習で熱せられた部屋の中に入り、体から汗を出して限界寸前まで追い込む。その後、水に入って体を一気に冷やす。と言う正月の行事なんだけど、思ったよりも疲れが取れるんだ。だから、僕とルパも癖になっちゃってさ」

「ニクス、うるさい……。静かにして……」

 ルパは胡坐をかき、集中しながら汗を掻きまくっている。

「ごめん……、そうだね。集中したいよね。えっと、八分くらい我慢したら、小屋を出て川の近くにある水風呂に入って」

「わ、わかりました」

 僕とルパ、ミアは熱さに耐え、プルスはアロマ水を焼き石にぶっかけ、大量の水蒸気を発生させたあと、僕達を翼で仰いできた。結構風が来るのだが、熱せられた水蒸気が体に当たり、焼けそうになる。

「もう無理です!」

 ミアは体に纏っていた布を捨て、扉の外に出て行った。ミアの捨てた布はビチャビチャで、大量の汗と水蒸気を吸い、熱湯と同じ熱さになっている。そりゃあ、耐えられないだろう。

 僕とルパは互いに限界まで耐える。

「ふグググ……。あぁ……、頭、燃えそう……」

「ルパ、限界を超えすぎだよ……。もうそろそろ出ないと、死んじゃうよ……」

 ルパは僕が出ない限り無理しながら残るので、肩を組みながら一緒に出る。そのままふら付きながら、ミアが気を失い、浮かんでいる水風呂に入る。

「はぁ……。き、気持ちいい……」

「生き返るぅ……」

 僕とルパは頭以外全てを水につけ、体を一気に冷やした。体の中の血管が収縮し、心臓の鼓動までしっかりと聞こえる。もう、頭が熱くて仕方がない。だが、失神しているミアを水風呂から上げなくては……。

 ミアは仰向けで気絶していた。どうやら、顔がふやけ切っているのを見るに、相当気持ちよかったのだろう。プルスに表面の水分を飛ばしてもらい、絞った布を淫らな体に巻き付けておく。そのまま、脚が伸ばせる椅子に乗せて休ませる。一応水も口に流し込んでおいた。
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