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実家に向かう
朝寝坊
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「ふぅ~、ありがとう、二人共。按摩がこんなに上手くなっているとは思わなかったよ」
「ニクスに揉まれて疲れが取れたところとか、気持ちよかったところを覚えてたの。同じ場所をグイグイって押してただけだよ」
ルパは照れくさそうに言う。
「ニクスさんが疲れていそうな部分を揉んでいました。喜んでくれると私も頑張った甲斐があります」
両者はストレスから解放されていい笑顔を作っていた。今朝とは別人だ。
「じゃあ、明日から飛行船に乗るから、体調管理のためにしっかりと寝るよ」
「は~い!」
二人は僕に飛びついてきて定位置に移動する。夏は過ぎているが、くっ付いて寝ると暑い。まぁ、暑さに強い僕なら問題ない。
「はぁ~、悔しいけどニクスの近くにいると安心して眠たくなってくる~」
ルパは僕に抱き着いて尻尾を揺らしながら呟いた。嬉しいこと言ってくれちゃって。
「ニクスさんは優しすぎるから、女の子を惑わしちゃうんですよ~」
ミアは僕に抱き着いて頬を擦りつけてくる。どちらも子供のような動きで愛らしい。
プルスは僕のお腹に乗り、眠っていた。
今晩もぐっすりと眠れそうだ。最近は性欲うんぬんで辛い思いをしていたが、気持ちを切り替えるだけでここまで楽になるとは……。
――二人は子供、二人は子供、二人は子供。
僕はルパとミアが子供だと暗示をかけていく。そうすれば、可愛い子達がくっ付いてきているだけだと頭が誤認するのだ。
自分で自分の脳を騙し、制御する。
七日目の朝。またしても僕が一番早く起きた。体を起こすとプルスが落石のように転がり、ベッドの上で潰れたトマトのようになる。
僕は潰れたベスパを救い上げて頭に乗せ、起き上がる。外を見ると、快晴だ。
見渡す限り真っ青の空。雲一つない。昨日の大雨が嘘かのような晴れ具合で僕たちの願いが届いていた。
現在の時刻、午前八時。
「ん? 午前八時?」
僕は飛行船の切符を見た。
「午前八時一〇分プルウィウス領発、王都行き……。八時一〇分!」
どうやら僕たちは昨日疲れすぎてぐっすり眠りすぎたらしい。残り一〇分で飛行船が出発してしまう。僕は最速で着替えた。
「ルパ! ミア! 起きて!」
僕は涎を垂らしながら眠りこくっている二人の肩をゆすりながら起こす。
「うぅん~。ニクス~、もうこんなにおっきなソーセージ食べられないよぉ~」
「ニクスさんの持ってるソーセージ、すごくおっきいです~。口に入り切りませ~ん」
ルパとミアは寝ぼけており、ソーセージを食べている夢を見ているようだ。
「もう、二人共寝ぼけている場合じゃない!」
僕は二人の耳に、優しく息を吹きかける。
「ぎゃわあああ~っ!」
ルパとミアは飛び起きて、臨戦態勢に入った。相当嫌だったようだ。
「二人共おはよう。最悪の目覚めかもしれないけど、時間が無いんだ。あと、八分で飛行船が飛びたっちゃう」
「え?」
二人は時計の方を見て、長い針が一度カチッと動いた瞬間を確認した。もう、七分しかない。
「最悪、炎の翼を使わないと間に合わないな。とりあえず、二人共下着姿だから、服を早く着て。もう、適当に選んだやつでいいよね」
僕は革袋から適当に服を引っ張りだし、二人に投げる。
出発の準備は昨日の夜にしてあったので、忘れ物はないはずだ。最悪、ガイアス兄さんに渡す結婚祝いの指輪だけでも入っているか確認しておく。あとはどうにでもなる。
「よし、しっかりと入ってる。二人共、着替えた?」
「き、着替えたけど、これ、恥ずかしいよ……」
ルパはミアが買ったふわふわなワンピースを着ており、いつもと印象が大分違う。
「わ、私も着ましたけど、胸が苦しくて……」
ミアは逆にルパが着ている小さ目の上着とショートパンツを着ており、露出度高めだ。だが、今さら着替え直している場合ではない。
「飛行船の中でも着替えられるからそこまで我慢して」
「は、はい……」
ルパとミアは小さくうなづいた。
僕たちは残り五分と言う時間で部屋を出て屋敷を飛び出す。飛行場まで走って五分ほど。まにあうかわからない。
「ここで乗り過ごすわけにはいかない。二人共、捕まって」
僕は腕を伸ばし、ルパとミアを抱き寄せる。
「プルス、炎の翼」
「ふわぁ~い」
プルスはあくびをしながら後方に転がり、背中にくっ付く。そのまま翼が広がり、僕は飛べるようになった。
周りに人がいたので、見られたかもしれない。と言うか、周りで飛んでいる人だらけなので翼を生やして飛んでいる僕は異常に見えるかもしれない。
「って! 危ない!」
目の前に空を飛んでいる人が通り掛かった。今までは誰もいない空を飛ぶことが簡単だったのだが、今は通勤時間と被ってしまったため、そこら中に人がいる。
「もっと上に行くしかない。二人共、喰いしばって」
「ふぐぐぐぐっ!」
ルパとミアは空を高速で飛ぶなんて久しぶりだ。結構な重さが体にのしかかる。
誰もいないほど高く上昇し、一気に下降しながら飛行場まで向かう。
「み、見えた! あれだ」
僕の視界は大きな大きな飛行船を目撃した。搭乗口付近に人がいなくなり、閉じられそうになっている。
僕は安全かつ最速に動き、ほぼ瞬間移動と言っても過言じゃないほどの見栄えで飛行場に着地する。
「はぁ、はぁ、はぁ……。すみません! 乗ります! 乗ります!」
僕は多くの人を待たせてしまって申し訳ないと思いながら、荷物検査を受け、問題ないということで飛行船に搭乗する。
乗ると搭乗口が閉まり、巨大な四枚のプロペラが回る。前に進み出し、ふわっと浮いた。そのまま、上空まで移動し、静かな時間が訪れる。
「はぁ~、危なかった……。何とか間に合ったよ……」
「もう、ニクスの飛び方荒い! 今日の飛び方は特にひどかった!」
ルパは牙を向けながら怒る。ただ、服装が可愛いので、あまり怖くない。
「ニクスに揉まれて疲れが取れたところとか、気持ちよかったところを覚えてたの。同じ場所をグイグイって押してただけだよ」
ルパは照れくさそうに言う。
「ニクスさんが疲れていそうな部分を揉んでいました。喜んでくれると私も頑張った甲斐があります」
両者はストレスから解放されていい笑顔を作っていた。今朝とは別人だ。
「じゃあ、明日から飛行船に乗るから、体調管理のためにしっかりと寝るよ」
「は~い!」
二人は僕に飛びついてきて定位置に移動する。夏は過ぎているが、くっ付いて寝ると暑い。まぁ、暑さに強い僕なら問題ない。
「はぁ~、悔しいけどニクスの近くにいると安心して眠たくなってくる~」
ルパは僕に抱き着いて尻尾を揺らしながら呟いた。嬉しいこと言ってくれちゃって。
「ニクスさんは優しすぎるから、女の子を惑わしちゃうんですよ~」
ミアは僕に抱き着いて頬を擦りつけてくる。どちらも子供のような動きで愛らしい。
プルスは僕のお腹に乗り、眠っていた。
今晩もぐっすりと眠れそうだ。最近は性欲うんぬんで辛い思いをしていたが、気持ちを切り替えるだけでここまで楽になるとは……。
――二人は子供、二人は子供、二人は子供。
僕はルパとミアが子供だと暗示をかけていく。そうすれば、可愛い子達がくっ付いてきているだけだと頭が誤認するのだ。
自分で自分の脳を騙し、制御する。
七日目の朝。またしても僕が一番早く起きた。体を起こすとプルスが落石のように転がり、ベッドの上で潰れたトマトのようになる。
僕は潰れたベスパを救い上げて頭に乗せ、起き上がる。外を見ると、快晴だ。
見渡す限り真っ青の空。雲一つない。昨日の大雨が嘘かのような晴れ具合で僕たちの願いが届いていた。
現在の時刻、午前八時。
「ん? 午前八時?」
僕は飛行船の切符を見た。
「午前八時一〇分プルウィウス領発、王都行き……。八時一〇分!」
どうやら僕たちは昨日疲れすぎてぐっすり眠りすぎたらしい。残り一〇分で飛行船が出発してしまう。僕は最速で着替えた。
「ルパ! ミア! 起きて!」
僕は涎を垂らしながら眠りこくっている二人の肩をゆすりながら起こす。
「うぅん~。ニクス~、もうこんなにおっきなソーセージ食べられないよぉ~」
「ニクスさんの持ってるソーセージ、すごくおっきいです~。口に入り切りませ~ん」
ルパとミアは寝ぼけており、ソーセージを食べている夢を見ているようだ。
「もう、二人共寝ぼけている場合じゃない!」
僕は二人の耳に、優しく息を吹きかける。
「ぎゃわあああ~っ!」
ルパとミアは飛び起きて、臨戦態勢に入った。相当嫌だったようだ。
「二人共おはよう。最悪の目覚めかもしれないけど、時間が無いんだ。あと、八分で飛行船が飛びたっちゃう」
「え?」
二人は時計の方を見て、長い針が一度カチッと動いた瞬間を確認した。もう、七分しかない。
「最悪、炎の翼を使わないと間に合わないな。とりあえず、二人共下着姿だから、服を早く着て。もう、適当に選んだやつでいいよね」
僕は革袋から適当に服を引っ張りだし、二人に投げる。
出発の準備は昨日の夜にしてあったので、忘れ物はないはずだ。最悪、ガイアス兄さんに渡す結婚祝いの指輪だけでも入っているか確認しておく。あとはどうにでもなる。
「よし、しっかりと入ってる。二人共、着替えた?」
「き、着替えたけど、これ、恥ずかしいよ……」
ルパはミアが買ったふわふわなワンピースを着ており、いつもと印象が大分違う。
「わ、私も着ましたけど、胸が苦しくて……」
ミアは逆にルパが着ている小さ目の上着とショートパンツを着ており、露出度高めだ。だが、今さら着替え直している場合ではない。
「飛行船の中でも着替えられるからそこまで我慢して」
「は、はい……」
ルパとミアは小さくうなづいた。
僕たちは残り五分と言う時間で部屋を出て屋敷を飛び出す。飛行場まで走って五分ほど。まにあうかわからない。
「ここで乗り過ごすわけにはいかない。二人共、捕まって」
僕は腕を伸ばし、ルパとミアを抱き寄せる。
「プルス、炎の翼」
「ふわぁ~い」
プルスはあくびをしながら後方に転がり、背中にくっ付く。そのまま翼が広がり、僕は飛べるようになった。
周りに人がいたので、見られたかもしれない。と言うか、周りで飛んでいる人だらけなので翼を生やして飛んでいる僕は異常に見えるかもしれない。
「って! 危ない!」
目の前に空を飛んでいる人が通り掛かった。今までは誰もいない空を飛ぶことが簡単だったのだが、今は通勤時間と被ってしまったため、そこら中に人がいる。
「もっと上に行くしかない。二人共、喰いしばって」
「ふぐぐぐぐっ!」
ルパとミアは空を高速で飛ぶなんて久しぶりだ。結構な重さが体にのしかかる。
誰もいないほど高く上昇し、一気に下降しながら飛行場まで向かう。
「み、見えた! あれだ」
僕の視界は大きな大きな飛行船を目撃した。搭乗口付近に人がいなくなり、閉じられそうになっている。
僕は安全かつ最速に動き、ほぼ瞬間移動と言っても過言じゃないほどの見栄えで飛行場に着地する。
「はぁ、はぁ、はぁ……。すみません! 乗ります! 乗ります!」
僕は多くの人を待たせてしまって申し訳ないと思いながら、荷物検査を受け、問題ないということで飛行船に搭乗する。
乗ると搭乗口が閉まり、巨大な四枚のプロペラが回る。前に進み出し、ふわっと浮いた。そのまま、上空まで移動し、静かな時間が訪れる。
「はぁ~、危なかった……。何とか間に合ったよ……」
「もう、ニクスの飛び方荒い! 今日の飛び方は特にひどかった!」
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