213 / 392
新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
禁止
しおりを挟む
「ルパの笑顔、もの凄く可愛いよ。もっと早くから見せてくれていればよかったのに……」
「ど、どうしよう……。か、顔が戻らないよぉ……。こ、こんな緩んだ顔、恥ずかしすぎる」
ルパは顔を手で隠した。尻尾がブンブンとあらぶっており、今にも千切れそうだ。
「何言ってるの、全然恥ずかしくないよ。物凄く元気を貰えるいい笑顔だ。どんな絵画や宝石だって今のルパの前に置いたら掠んじゃうよ」
「うぅ、何か言い方が気持ち悪い……。でも、ニクスに可愛いって言われて……嬉しい。嬉しい時に笑えるってすごく気持ちがいいね」
ルパの満面の笑みが薄暗い中でも光って見えた。ほんと、宝石以上の輝きで、眼が奪われる。
綺麗な銀髪と琥珀色の瞳がカンデラの明りを反射させて自らの色を誇張させていた。
僕も満面の笑みを返し、余っているケーキを一緒に食べる。さっきよりもほんのり甘い。そんな気がした。
僕とルパ、プルスは横並びで眠る。まぁ、プルスは対外、僕かルパの体にくっ付いて眠っている。
朝になると灰になっている時があるが、潰されて死んでいるのだ。寝方を見直した方がいいと思うのだが……、プルスが構わないと言うので、それ以上口出しはしなかった。
「ニクスは結婚ってどう思う……」
「結婚? そうだな……。一緒にいたい相手と一生いることを誓うこと、かな。ルパは」
「私は……、家族を守れるくらい強い雄の下で働いて子供を産んで育てることって思ってた。でも、それは獣族の結婚であって人族の結婚じゃない。そんな気がする……」
「ん~、違うとは言い切れない気もする……。結婚に定義はない。何が正解で不正解かなんて言う問題の答えはないんだよ。もし、ガイアス兄さんの結婚式に行けたら見てみるといいよ。人の結婚をさ」
「うん……」
ルパは僕の胸に抱き着いてきた。微笑み、尻尾を振っているのを見ると、安心してくれているのだなとわかる。
――結婚が必ずしもいいこととは限らない。なんせ、破局する者がいるのだから。加えて、政略結婚なども人の世界では多い。
何なら、人の世界の方が愛による結婚は少ないだろう。獣族の結婚は匂いや体格、強さなど、厳しい自然の中、子どもが守れるかどうかと言うのが最重要であって人族は相手から何か利益を得られるときに結婚する。
僕は勝手に解釈している訳だが、もちろん僕が思っている通りの結婚ばかりではない。幸せな結婚もたくさんあるだろうし、考えている以上にひどい結婚もあるはずだ。答えがないからこそ自分で見つけるしかない。
次の日からルパは少し変わった。いや、どうだろう。変わってないのかもしれないが、距離感が近い気がする。
ルパも僕と同様に怖がりなので近づいているという可能性が高い。まぁ、距離感が近くなったのなら仲が深まったおかげだと考えて喜ぼう。
「ニクス、おはよう。朝だよ」
「う、うん……。って、近い……」
ルパは僕の顔の真前に来て起こしてきた。鼻と鼻がくっ付く距離なので今にも唇がくっ付きそうなわけだが、平常心を保つ。
僕はルパをそっと退かし、起き上がる。
最近は夜も暑くなってきたが、僕は暑さに耐性があるのであまり気にしていない。ルパもプルスの影響を受けているからか、気温の暑さに耐性が出来ていた。
水分補給をしっかりしておかないと脱水症状になりかねないので水溜から水を汲み、体を潤わせる。ルパも同じように水を飲んだ。
朝食を得てから鍛錬をして昼食を得たあと、昼寝をする。
「うぅん……、ニクス……」
「凄いくっ付いてくるな……。懐かれてるのだろうか。別に悪い気はしないから、いいけど」
ルパは僕の体に抱き着いて昼寝をしていた。腕枕をしている訳だが、そのまま僕に抱き着かれると言うのがお気に入りの体勢らしい。
尻尾がブンブン振れて風を起こし、少し涼しく感じる。離れる時間もあり、トイレの時は流石に離れてくれた。
隙があれば抱き着いてくる抱き着き魔になってしまったのかと言うくらい、距離が近かった。
昔は離れている時間の方が長かったのに、最近ではくっ付いている時間の方が多くなった気がする。
ルパは満足しているようだが、たまにだから嬉しくなるのであって毎回毎回くっ付いていたらありがたみが無くなってしまう。そう考えた僕は抱き着くの禁止令を出した。
「ルパ、寝る時以外、抱き着いてくるのは禁止」
「えぇえ! な、何で!」
「何でって……。鍛錬が真面に出来ないし、ご褒美に抱き着くからうれしいのであってずっとくっ付いていたらありがたみが無くなるでしょ」
「そ、そんな……」
ルパは物凄く暗い顔をしていた。そんなに抱き着くのが好きだったのかと思ったが、別の行動で抱き着くのを制限しようと考えた。
「ルパ、これから僕は頭、頬、顎下と言った部分を撫でるようにするよ。抱き着きたくなったら言って。その代りに撫でてあげるから」
「そ、それなら……、我慢できそう」
ルパの顔がパーッと明るくなり、元気を取り戻した。
新しい試みを行っていた当初は無意識に抱き着いてきたが自分の心の変化を感じ取りやすくなってくると抱き着いてくる回数は減っていった。
どうやら、ルパなりの愛情表現だったらしく自分のありがとうの気持ちを伝えたかったらしい。心がグッとした時に抱き着きたくなるそうだ。
「に、ニクス。撫でてくれてありがとう……」
「どういたしまして。ルパも愛情表現に少しずつなれて来たかな?」
「は、恥ずかしい。グってなっていた心が、なんかすっとする」
「自分の心に正直になっている証拠なんじゃないかな。胸の突っかかりが無くなるほど、気分がよくなるでしょ。だから、人は感謝し合うんだよ」
ルパが頭を撫でてほしいとお願いしてくる。僕がルパの頭を撫でてあげる。その行動をルパが感謝する。僕も感謝する。
こういった循環過程が起こると両者共に心が軽くなるのだ。頻度が多くても互いに嬉しい。そう、心から思える。
「なんか、主とルパが無性に仲良くなっている気がするんですけど……」
プルスは僕の頭から呟いた。
「ど、どうしよう……。か、顔が戻らないよぉ……。こ、こんな緩んだ顔、恥ずかしすぎる」
ルパは顔を手で隠した。尻尾がブンブンとあらぶっており、今にも千切れそうだ。
「何言ってるの、全然恥ずかしくないよ。物凄く元気を貰えるいい笑顔だ。どんな絵画や宝石だって今のルパの前に置いたら掠んじゃうよ」
「うぅ、何か言い方が気持ち悪い……。でも、ニクスに可愛いって言われて……嬉しい。嬉しい時に笑えるってすごく気持ちがいいね」
ルパの満面の笑みが薄暗い中でも光って見えた。ほんと、宝石以上の輝きで、眼が奪われる。
綺麗な銀髪と琥珀色の瞳がカンデラの明りを反射させて自らの色を誇張させていた。
僕も満面の笑みを返し、余っているケーキを一緒に食べる。さっきよりもほんのり甘い。そんな気がした。
僕とルパ、プルスは横並びで眠る。まぁ、プルスは対外、僕かルパの体にくっ付いて眠っている。
朝になると灰になっている時があるが、潰されて死んでいるのだ。寝方を見直した方がいいと思うのだが……、プルスが構わないと言うので、それ以上口出しはしなかった。
「ニクスは結婚ってどう思う……」
「結婚? そうだな……。一緒にいたい相手と一生いることを誓うこと、かな。ルパは」
「私は……、家族を守れるくらい強い雄の下で働いて子供を産んで育てることって思ってた。でも、それは獣族の結婚であって人族の結婚じゃない。そんな気がする……」
「ん~、違うとは言い切れない気もする……。結婚に定義はない。何が正解で不正解かなんて言う問題の答えはないんだよ。もし、ガイアス兄さんの結婚式に行けたら見てみるといいよ。人の結婚をさ」
「うん……」
ルパは僕の胸に抱き着いてきた。微笑み、尻尾を振っているのを見ると、安心してくれているのだなとわかる。
――結婚が必ずしもいいこととは限らない。なんせ、破局する者がいるのだから。加えて、政略結婚なども人の世界では多い。
何なら、人の世界の方が愛による結婚は少ないだろう。獣族の結婚は匂いや体格、強さなど、厳しい自然の中、子どもが守れるかどうかと言うのが最重要であって人族は相手から何か利益を得られるときに結婚する。
僕は勝手に解釈している訳だが、もちろん僕が思っている通りの結婚ばかりではない。幸せな結婚もたくさんあるだろうし、考えている以上にひどい結婚もあるはずだ。答えがないからこそ自分で見つけるしかない。
次の日からルパは少し変わった。いや、どうだろう。変わってないのかもしれないが、距離感が近い気がする。
ルパも僕と同様に怖がりなので近づいているという可能性が高い。まぁ、距離感が近くなったのなら仲が深まったおかげだと考えて喜ぼう。
「ニクス、おはよう。朝だよ」
「う、うん……。って、近い……」
ルパは僕の顔の真前に来て起こしてきた。鼻と鼻がくっ付く距離なので今にも唇がくっ付きそうなわけだが、平常心を保つ。
僕はルパをそっと退かし、起き上がる。
最近は夜も暑くなってきたが、僕は暑さに耐性があるのであまり気にしていない。ルパもプルスの影響を受けているからか、気温の暑さに耐性が出来ていた。
水分補給をしっかりしておかないと脱水症状になりかねないので水溜から水を汲み、体を潤わせる。ルパも同じように水を飲んだ。
朝食を得てから鍛錬をして昼食を得たあと、昼寝をする。
「うぅん……、ニクス……」
「凄いくっ付いてくるな……。懐かれてるのだろうか。別に悪い気はしないから、いいけど」
ルパは僕の体に抱き着いて昼寝をしていた。腕枕をしている訳だが、そのまま僕に抱き着かれると言うのがお気に入りの体勢らしい。
尻尾がブンブン振れて風を起こし、少し涼しく感じる。離れる時間もあり、トイレの時は流石に離れてくれた。
隙があれば抱き着いてくる抱き着き魔になってしまったのかと言うくらい、距離が近かった。
昔は離れている時間の方が長かったのに、最近ではくっ付いている時間の方が多くなった気がする。
ルパは満足しているようだが、たまにだから嬉しくなるのであって毎回毎回くっ付いていたらありがたみが無くなってしまう。そう考えた僕は抱き着くの禁止令を出した。
「ルパ、寝る時以外、抱き着いてくるのは禁止」
「えぇえ! な、何で!」
「何でって……。鍛錬が真面に出来ないし、ご褒美に抱き着くからうれしいのであってずっとくっ付いていたらありがたみが無くなるでしょ」
「そ、そんな……」
ルパは物凄く暗い顔をしていた。そんなに抱き着くのが好きだったのかと思ったが、別の行動で抱き着くのを制限しようと考えた。
「ルパ、これから僕は頭、頬、顎下と言った部分を撫でるようにするよ。抱き着きたくなったら言って。その代りに撫でてあげるから」
「そ、それなら……、我慢できそう」
ルパの顔がパーッと明るくなり、元気を取り戻した。
新しい試みを行っていた当初は無意識に抱き着いてきたが自分の心の変化を感じ取りやすくなってくると抱き着いてくる回数は減っていった。
どうやら、ルパなりの愛情表現だったらしく自分のありがとうの気持ちを伝えたかったらしい。心がグッとした時に抱き着きたくなるそうだ。
「に、ニクス。撫でてくれてありがとう……」
「どういたしまして。ルパも愛情表現に少しずつなれて来たかな?」
「は、恥ずかしい。グってなっていた心が、なんかすっとする」
「自分の心に正直になっている証拠なんじゃないかな。胸の突っかかりが無くなるほど、気分がよくなるでしょ。だから、人は感謝し合うんだよ」
ルパが頭を撫でてほしいとお願いしてくる。僕がルパの頭を撫でてあげる。その行動をルパが感謝する。僕も感謝する。
こういった循環過程が起こると両者共に心が軽くなるのだ。頻度が多くても互いに嬉しい。そう、心から思える。
「なんか、主とルパが無性に仲良くなっている気がするんですけど……」
プルスは僕の頭から呟いた。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
罪人として生まれた私が女侯爵となる日
迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。
母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。
魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。
私達の心は、王族よりも気高い。
そう生まれ育った私は罪人の子だった。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる