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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
ちょっとした成長
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「俺の名前はゲンジだ。最近まで刑事をやってたんだが、変な牛に捕まっちまってよ~。仕事を辞めて冒険者になっちまった。んで、お前さんは何だ?」
「僕の名前はニクスです。職業は……一応冒険者ですね。よろしくお願いします」
僕はゲンジさんに頭を下げる。
「この嬢ちゃんはもらっていくぜ。丁度冒険者になろうとしていたみたいだからな。ニクスには何ら関係のない嬢ちゃんなんだろ」
「えっと……、人を攫うのは犯罪では?」
「………………」
ゲンジさんは無言になり、後ろを向いた。そのまま走る。
「逃げた……。これは捕まえた方が良いのかな」
僕は胸もとのローブに手を入れる。
「ギュウ、弾!」
「はいよっ!」
ゲンジさんはリボルバーを右手に持ち、藍牛が空中で弾を生成し、六発装填する。一瞬で弾を込めるなんて……。
「ふっ!」
「はっ!」
僕はバリスティックナイフを投げる。だが、ゲンジさんが撃った鉛弾が穂先に当たり、防がれた。こんな街中で銃を撃つなんてどうかしている。あの女性もいきなり誘拐された。不遇だ。助けてあげたいけど……、未来が見えるんじゃどうやって倒せばいいんだ。
「主、藍牛の未来視は基本的に目に見えている場合でしか発動しません。なので、死角からの攻撃には弱いです」
ベスパは僕に頭の上で言う。
「でも、今、ゲンジさんは僕が投げたナイフを正確に撃っていたよ」
「ゲンジと言う男の腕がもともと良いのでしょう。見てしまえばどこに来るかわかる。ただし、移動地点と時間のずれを把握して狙うのは至難の業のはず。相当な手練れです。さて、どうやって殺しましょうか!」
プルスは興奮して口調が悪くなっている。
「殺すなんて物騒だよ。今はあの女の人を助けないと。見ず知らずの男の人に攫われて売りに出されでもしたらここで見過ごしたのを後悔しそうだ」
「はぁ、主は勿体ないですね。せっかく勝てる戦いなのに……」
「僕は勝ち負けとかどうでもいい。ルパさえ無事ならそれで十分」
僕はルパの耳に声を掛ける。
「ルパ、僕はあの男の人から、ローブを着た女性を助けてくるよ。ルパは危ないから……」
「わ、わたしも行く。弾の速度はもう覚えた。あの速さなら躱せる……。ニクスの匂いなら、追えるから」
ルパは震えながら僕の腕を掴んだ。どうやら、変わりたいらしい。
「わかった。じゃあ、出来るだけ僕の後ろに隠れているんだよ」
「うん」
僕はゲンジさんを追いかける。相手は女性を担いで走っている。そうなると、行動は制限されるはずだ。
「おいおい、なんで追ってくるんだよ。見逃してくれよ~」
ゲンジさんは二五メートル先から、弾を二発撃ってきた。どう考えても飛距離が遠い。速度も軌道も読みやすい。
僕は剣を使って銃弾を切る。レイト領では街での発砲が許可されているのかな。そもそも、銃の所持は原則禁止のはずなのに……。
「ち、やっぱりここからじゃ当たらねえな。ギュウ、俺は逃げ切れるか?」
「無理だな。一〇〇パーセント捕まる。あいつ、ヒヨコの能力を未だに使ってないぜ。ゲンジを殺すつもりはねえひよっこらしいけどな」
「そうか、なら、能力だけも見せてもらうとするかね。おらよっ!」
ゲンジさんは肩に担いでいた女性を馬車が通り掛かる車道に投げ入れた。加えて、リボルバーの銃口を女性に向けている。
「惜しい嬢ちゃんだったが、変わりは別でいい。顔が好みだったんだがな~」
リボルバーの銃口から火が噴き、鉛弾が一発放たれた。弾の軌道からして、女性の眉間へと向かっている。走っていては間に合わない。銃弾よりも早く動くには……。
「プルス『炎の翼』」
「了解です!」
僕は背中から炎の翼を生やし、弾丸よりも早く移動して女性を抱え込み、お店の商品が入っていた大量の木箱へと突撃する。炎の翼を即座に消した。
「まじか……。はえぇ。だが、制御は出来てない感じか。ん? 獣族?」
ルパはゲンジさんのもとに走り込んでいた。ゲンジさんが僕に夢中になっている間に超加速したのだろう。相手がリボルバーを抜いている以上、ルパも両手に剣を握り閉めている。
「ニクスの愛犬か~。丁度いい、お前の血の色は何色だ!」
ゲンジさんは一丁のリボルバーで鉛弾を三発放った。ほぼ同時に三発も放てるものなのか……。
「ふっ!」
ルパは一瞬で止まり、弾丸が地面に当たった時点で急加速する。
ゲンジさんは数秒後の先を見て弾丸を放っている。その間に行動を変えられると躱せるらしい。
「まじかよっ! 普通じゃねえな!」
「はあっ!」
ルパは剣を持った両手を頭上にあげ、ゲンジさんに切り掛かった。だが、その行動はすでに知られている。
ゲンジさんはルパが飛びかかる寸前から足をあげており、完璧な一撃を繰り出す。
「よっと!」
「つっ! いつの間に!」
ルパはゲンジさんに蹴られ、僕と同様に空の木箱にぶつかる。
「んじゃ、またな、ニクス。もう出会わないことを祈るぜ~」
ゲンジさんは女性がいなくなったことで身軽になり、建物の屋根に飛び乗り、姿をくらませた。追おうと思えば追えるが、戦う理由がないのでこれ以上関わらない方がいい。
「う、うぅ……」
女性は腹部を押さえて唸っていた。お腹が痛いのか。内臓が損傷している可能性もあるので一応炎で治療はしておく。
ルパは木箱から脱出し、僕のいる反対側の歩道に移動してきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。ニクス、見てた。私、少しだけ戦えたよ。弾の位置を読んで躱したら、上手くいった。攻撃は加えられなかったけど私にしてはかんばったよ」
ルパは褒めてほしそうに尻尾を振っている。最悪、死んでいたかもしれないのに、現金な子だ。僕はルパの頭を撫でる。すると尻尾の動きが先ほど以上に強くなった。
「ここは目立つ。別の場所に移動した方がよさそうだ」
僕とルパは、木箱を出て女性を抱えながら話しが出来るような場所に向かう。
僕とルパは女性を抱えながら、借りている部屋に戻る。鍵を受け取り、ベッドに寝かせた。
「ニクス。これ」
ルパはバリスティックナイフを手渡してくれた。拳銃の弾で弾かれてから、僕は取るのを忘れていた。
「ありがとう、ゲンジさんを追うのに必死で、忘れてたよ」
僕はルパからナイフを受け取る。
「僕の名前はニクスです。職業は……一応冒険者ですね。よろしくお願いします」
僕はゲンジさんに頭を下げる。
「この嬢ちゃんはもらっていくぜ。丁度冒険者になろうとしていたみたいだからな。ニクスには何ら関係のない嬢ちゃんなんだろ」
「えっと……、人を攫うのは犯罪では?」
「………………」
ゲンジさんは無言になり、後ろを向いた。そのまま走る。
「逃げた……。これは捕まえた方が良いのかな」
僕は胸もとのローブに手を入れる。
「ギュウ、弾!」
「はいよっ!」
ゲンジさんはリボルバーを右手に持ち、藍牛が空中で弾を生成し、六発装填する。一瞬で弾を込めるなんて……。
「ふっ!」
「はっ!」
僕はバリスティックナイフを投げる。だが、ゲンジさんが撃った鉛弾が穂先に当たり、防がれた。こんな街中で銃を撃つなんてどうかしている。あの女性もいきなり誘拐された。不遇だ。助けてあげたいけど……、未来が見えるんじゃどうやって倒せばいいんだ。
「主、藍牛の未来視は基本的に目に見えている場合でしか発動しません。なので、死角からの攻撃には弱いです」
ベスパは僕に頭の上で言う。
「でも、今、ゲンジさんは僕が投げたナイフを正確に撃っていたよ」
「ゲンジと言う男の腕がもともと良いのでしょう。見てしまえばどこに来るかわかる。ただし、移動地点と時間のずれを把握して狙うのは至難の業のはず。相当な手練れです。さて、どうやって殺しましょうか!」
プルスは興奮して口調が悪くなっている。
「殺すなんて物騒だよ。今はあの女の人を助けないと。見ず知らずの男の人に攫われて売りに出されでもしたらここで見過ごしたのを後悔しそうだ」
「はぁ、主は勿体ないですね。せっかく勝てる戦いなのに……」
「僕は勝ち負けとかどうでもいい。ルパさえ無事ならそれで十分」
僕はルパの耳に声を掛ける。
「ルパ、僕はあの男の人から、ローブを着た女性を助けてくるよ。ルパは危ないから……」
「わ、わたしも行く。弾の速度はもう覚えた。あの速さなら躱せる……。ニクスの匂いなら、追えるから」
ルパは震えながら僕の腕を掴んだ。どうやら、変わりたいらしい。
「わかった。じゃあ、出来るだけ僕の後ろに隠れているんだよ」
「うん」
僕はゲンジさんを追いかける。相手は女性を担いで走っている。そうなると、行動は制限されるはずだ。
「おいおい、なんで追ってくるんだよ。見逃してくれよ~」
ゲンジさんは二五メートル先から、弾を二発撃ってきた。どう考えても飛距離が遠い。速度も軌道も読みやすい。
僕は剣を使って銃弾を切る。レイト領では街での発砲が許可されているのかな。そもそも、銃の所持は原則禁止のはずなのに……。
「ち、やっぱりここからじゃ当たらねえな。ギュウ、俺は逃げ切れるか?」
「無理だな。一〇〇パーセント捕まる。あいつ、ヒヨコの能力を未だに使ってないぜ。ゲンジを殺すつもりはねえひよっこらしいけどな」
「そうか、なら、能力だけも見せてもらうとするかね。おらよっ!」
ゲンジさんは肩に担いでいた女性を馬車が通り掛かる車道に投げ入れた。加えて、リボルバーの銃口を女性に向けている。
「惜しい嬢ちゃんだったが、変わりは別でいい。顔が好みだったんだがな~」
リボルバーの銃口から火が噴き、鉛弾が一発放たれた。弾の軌道からして、女性の眉間へと向かっている。走っていては間に合わない。銃弾よりも早く動くには……。
「プルス『炎の翼』」
「了解です!」
僕は背中から炎の翼を生やし、弾丸よりも早く移動して女性を抱え込み、お店の商品が入っていた大量の木箱へと突撃する。炎の翼を即座に消した。
「まじか……。はえぇ。だが、制御は出来てない感じか。ん? 獣族?」
ルパはゲンジさんのもとに走り込んでいた。ゲンジさんが僕に夢中になっている間に超加速したのだろう。相手がリボルバーを抜いている以上、ルパも両手に剣を握り閉めている。
「ニクスの愛犬か~。丁度いい、お前の血の色は何色だ!」
ゲンジさんは一丁のリボルバーで鉛弾を三発放った。ほぼ同時に三発も放てるものなのか……。
「ふっ!」
ルパは一瞬で止まり、弾丸が地面に当たった時点で急加速する。
ゲンジさんは数秒後の先を見て弾丸を放っている。その間に行動を変えられると躱せるらしい。
「まじかよっ! 普通じゃねえな!」
「はあっ!」
ルパは剣を持った両手を頭上にあげ、ゲンジさんに切り掛かった。だが、その行動はすでに知られている。
ゲンジさんはルパが飛びかかる寸前から足をあげており、完璧な一撃を繰り出す。
「よっと!」
「つっ! いつの間に!」
ルパはゲンジさんに蹴られ、僕と同様に空の木箱にぶつかる。
「んじゃ、またな、ニクス。もう出会わないことを祈るぜ~」
ゲンジさんは女性がいなくなったことで身軽になり、建物の屋根に飛び乗り、姿をくらませた。追おうと思えば追えるが、戦う理由がないのでこれ以上関わらない方がいい。
「う、うぅ……」
女性は腹部を押さえて唸っていた。お腹が痛いのか。内臓が損傷している可能性もあるので一応炎で治療はしておく。
ルパは木箱から脱出し、僕のいる反対側の歩道に移動してきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。ニクス、見てた。私、少しだけ戦えたよ。弾の位置を読んで躱したら、上手くいった。攻撃は加えられなかったけど私にしてはかんばったよ」
ルパは褒めてほしそうに尻尾を振っている。最悪、死んでいたかもしれないのに、現金な子だ。僕はルパの頭を撫でる。すると尻尾の動きが先ほど以上に強くなった。
「ここは目立つ。別の場所に移動した方がよさそうだ」
僕とルパは、木箱を出て女性を抱えながら話しが出来るような場所に向かう。
僕とルパは女性を抱えながら、借りている部屋に戻る。鍵を受け取り、ベッドに寝かせた。
「ニクス。これ」
ルパはバリスティックナイフを手渡してくれた。拳銃の弾で弾かれてから、僕は取るのを忘れていた。
「ありがとう、ゲンジさんを追うのに必死で、忘れてたよ」
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