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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
危機感
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「はぁ、はぁ、はぁ……。もぅ、ニクス、はやいぃ~! 手加減してよぉ~」
ルパは僕に抱き着かれながら叫ぶ。
「さっきと発言が全然違うじゃん……。絶対に手加減するなとか、しろとか、僕にはわからないよ。にしても、ルパは汗をかき過ぎだよ。もう、ベタベタじゃないか」
「本気で走ったら、汗くらい掻くでしょ。汗に触れるのが嫌なら近づくなよ」
「全然嫌じゃないよ。ルパの香りがして凄く癒される。特に髪とか、首筋とかから、芳しい匂いがすごい漂ってくる。ルパは汗を掻いていても香りが良い。もはや香水だよ」
「ちょ……、気持ち悪いからやめろ……。抱き着いて匂いを嗅ぐなよ……」
ルパは口で抵抗しているものの、体の方は逃げず、尻尾が振られているのでそこまで嫌ではないと思われる。本当に嫌なら、突き飛ばすはずなのでギリギリ殴られない。
僕はルパの汗を拭き、革製の水筒に入れてある水を飲んでもらう。
「ふぅ……。ここ、どこら辺なんだろう」
「多分街から一〇キロメートル地点辺りかな。村巡りでもして、いこうか」
「うん」
僕とルパは通り道の村に立ち寄った。野菜や果物、総菜などが売られており、大して他の村と変わったところはない。
でも、その地域ならではの風習というべきか、喋り方や遊びなどは他の村と違っており、面白い。
獣族を怖がるのはどこの村でも同じだ。ただ、僕と一緒にいるおかげでルパはそこまで恐怖されていない。冒険者の獣族は珍しいがいないわけではないらしく、見た覚えがあるのかもしれない。
「ニクス、野菜しか売ってない。前々肉がないよ……」
ルパは村の市場を見て顔をしょんばぼりと下げ、悲しそうな顔をしている。どうやら、全力で走ったためお腹が空いてしまったようだ。僕は干し肉をルパに渡し、食べてもらう。
「はい、ルパ。干し肉」
「もぅ……。干し肉を渡しておけばいいって思ってるでしょ」
ルパは僕から干し肉を受け取り、ガジガジと噛みつく。結局受け取るのは同じなので、文句は言わないでほしい。
「じゃあ、その干し肉を食べたらまた走ろうか」
「わかった」
僕達は村を観光したあと、次の街に続く道を走る。
二カ所目、三カ所目の村を回り、四カ所目に向っていたところ、馬車が走っていた。まさか追いついてしまうとは……。
日の傾きからして、三時間くらいか。村で観光して回っているから、走っている時間は短いんだけどな。脚も溜めてるし、本気はまだ出してないんだけど……。
「ニクス、馬車に追いついちゃったけど、乗ってく?」
「ここまで来たら走っていこう。少しでも観光する時間が欲しいからさ。馬車よりも僕達が走った方が早いみたいだ。ルパも半年前より、脚が早くなったね」
「毎日走ってたら脚も早くなるよ。まぁ、ニクスにはまだ一度も勝っていないけど……」
ルパは少々落ち込み、耳をヘたらせる。
「いつか僕に勝つんでしょ。まだ一年もたっていないんだから諦めるのは早いよ。少しでも力が付けられるように努力しないと、いつまでたっても僕に勝てるようにならないよ」
「それくらいわかってる……。でも、私がニクスに勝てる気が一切しないんだもん。いったいいつ勝てるようになるんだろう……」
「ルパ、勝つまでやれば絶対に勝てるよ」
「え……。何言ってるの、当たり前じゃん……」
「当たり前だけど、ルパはそんな当たり前のことを見失っているんだ。僕に勝つまで戦い続ければ、必ず勝てる。例え相手がすごく強くても、勝てるまで戦えば勝てるんだ。もちろん力の差はあるけれど、死ななければ、何度でも挑戦できる」
「ふん……。私は諦める気なんてないから、ニクスは私に絶対倒される。その時、私はニクスにお願いするの。私はニクスを倒し、家族を襲った敵も倒す」
ルパは僕の横を走り、馬車を追いぬかしていった。馬車の周りにいる馬に乗った冒険者達もおどろいており、御者や馬車を利用している人達も僕達を見ていた気がする。
僕達は気まずかったが、さっさと追い抜かして四カ所目の村に到着した。
街が近いからか少々大きな家が多く、人も多い。街に住むよりも村に済んだほうが家賃が少なく済むと言った感じだろう。
僕達は干し肉を見つけ、買い溜めた。ルパはステーキを食べ、幸せそうにしている。
僕が一口ちょうだいというとルパは少々考えてから、僕の口に小さく切った肉を入れてきた。もう少しくれてもいいのではないかと思ったが、肉が好きなルパにとっては精一杯だったのだ。くれるだけでもありがたいと思い、いただく。やはり肉は美味しい。いつも食べているが、人が焼いてくれた肉は格別に美味しい。
僕が一番好きな肉はルパの焼いてくれた肉だ。なんなら、ルパの作ってくれた肉料理ならなんだって好きだ。
「ん~。肉うまぁ~。肉肉~、にくぅ~」
「ほんとルパは肉が好きだよね。毎日肉ばかり食べていたら体を壊すよ」
「壊さないよ。だって私は獣族だもん。主食は肉なの。だから、そう簡単に体は壊さないよ。はぁ~、肉うまぁ~」
ルパは少々生焼けの肉を食べていき、美味しそうな表情をしている。何もなければいいのだけれど……。僕はお腹が空いていなかったので何も食べなかった。
僕とルパは村を観光し、三つ目の街に向かおうとしていた。だが、ルパの様子が何やらおかしい。
「う……。き、気持ち悪い……。なにこれ……。何かの状態異常……」
ルパの表情はすぐれず、お腹の調子が悪いようだ。もしかしたら食中毒にでも当たったのかもしれない。毒らしい品は食べていないはずなので、原因は肉だと思われる。
「うぅ……。ニクス、気持ち悪いぃ……。お腹痛いよぉ……」
ルパは村に設置されている共用のトイレに駆け込みは出てきて、駆け込みは出てくる。顔がやつれていくのを見るのは辛かったが、自分の行動が安直過ぎたという経験になってもらえると嬉しい。
「ううぅ……、ニクスぅ……、助けてぇ……」
「はぁ、じゃあ、ルパ。もう少し危機感を持ってね」
「わかったぁ……。危機感って言う感覚も養うよぉ……」
ルパは僕にくっ付いてくる。トイレ自体が衛生的に良くないと思うので、ルパの手を燃やし、殺菌する。
ルパは僕に抱き着かれながら叫ぶ。
「さっきと発言が全然違うじゃん……。絶対に手加減するなとか、しろとか、僕にはわからないよ。にしても、ルパは汗をかき過ぎだよ。もう、ベタベタじゃないか」
「本気で走ったら、汗くらい掻くでしょ。汗に触れるのが嫌なら近づくなよ」
「全然嫌じゃないよ。ルパの香りがして凄く癒される。特に髪とか、首筋とかから、芳しい匂いがすごい漂ってくる。ルパは汗を掻いていても香りが良い。もはや香水だよ」
「ちょ……、気持ち悪いからやめろ……。抱き着いて匂いを嗅ぐなよ……」
ルパは口で抵抗しているものの、体の方は逃げず、尻尾が振られているのでそこまで嫌ではないと思われる。本当に嫌なら、突き飛ばすはずなのでギリギリ殴られない。
僕はルパの汗を拭き、革製の水筒に入れてある水を飲んでもらう。
「ふぅ……。ここ、どこら辺なんだろう」
「多分街から一〇キロメートル地点辺りかな。村巡りでもして、いこうか」
「うん」
僕とルパは通り道の村に立ち寄った。野菜や果物、総菜などが売られており、大して他の村と変わったところはない。
でも、その地域ならではの風習というべきか、喋り方や遊びなどは他の村と違っており、面白い。
獣族を怖がるのはどこの村でも同じだ。ただ、僕と一緒にいるおかげでルパはそこまで恐怖されていない。冒険者の獣族は珍しいがいないわけではないらしく、見た覚えがあるのかもしれない。
「ニクス、野菜しか売ってない。前々肉がないよ……」
ルパは村の市場を見て顔をしょんばぼりと下げ、悲しそうな顔をしている。どうやら、全力で走ったためお腹が空いてしまったようだ。僕は干し肉をルパに渡し、食べてもらう。
「はい、ルパ。干し肉」
「もぅ……。干し肉を渡しておけばいいって思ってるでしょ」
ルパは僕から干し肉を受け取り、ガジガジと噛みつく。結局受け取るのは同じなので、文句は言わないでほしい。
「じゃあ、その干し肉を食べたらまた走ろうか」
「わかった」
僕達は村を観光したあと、次の街に続く道を走る。
二カ所目、三カ所目の村を回り、四カ所目に向っていたところ、馬車が走っていた。まさか追いついてしまうとは……。
日の傾きからして、三時間くらいか。村で観光して回っているから、走っている時間は短いんだけどな。脚も溜めてるし、本気はまだ出してないんだけど……。
「ニクス、馬車に追いついちゃったけど、乗ってく?」
「ここまで来たら走っていこう。少しでも観光する時間が欲しいからさ。馬車よりも僕達が走った方が早いみたいだ。ルパも半年前より、脚が早くなったね」
「毎日走ってたら脚も早くなるよ。まぁ、ニクスにはまだ一度も勝っていないけど……」
ルパは少々落ち込み、耳をヘたらせる。
「いつか僕に勝つんでしょ。まだ一年もたっていないんだから諦めるのは早いよ。少しでも力が付けられるように努力しないと、いつまでたっても僕に勝てるようにならないよ」
「それくらいわかってる……。でも、私がニクスに勝てる気が一切しないんだもん。いったいいつ勝てるようになるんだろう……」
「ルパ、勝つまでやれば絶対に勝てるよ」
「え……。何言ってるの、当たり前じゃん……」
「当たり前だけど、ルパはそんな当たり前のことを見失っているんだ。僕に勝つまで戦い続ければ、必ず勝てる。例え相手がすごく強くても、勝てるまで戦えば勝てるんだ。もちろん力の差はあるけれど、死ななければ、何度でも挑戦できる」
「ふん……。私は諦める気なんてないから、ニクスは私に絶対倒される。その時、私はニクスにお願いするの。私はニクスを倒し、家族を襲った敵も倒す」
ルパは僕の横を走り、馬車を追いぬかしていった。馬車の周りにいる馬に乗った冒険者達もおどろいており、御者や馬車を利用している人達も僕達を見ていた気がする。
僕達は気まずかったが、さっさと追い抜かして四カ所目の村に到着した。
街が近いからか少々大きな家が多く、人も多い。街に住むよりも村に済んだほうが家賃が少なく済むと言った感じだろう。
僕達は干し肉を見つけ、買い溜めた。ルパはステーキを食べ、幸せそうにしている。
僕が一口ちょうだいというとルパは少々考えてから、僕の口に小さく切った肉を入れてきた。もう少しくれてもいいのではないかと思ったが、肉が好きなルパにとっては精一杯だったのだ。くれるだけでもありがたいと思い、いただく。やはり肉は美味しい。いつも食べているが、人が焼いてくれた肉は格別に美味しい。
僕が一番好きな肉はルパの焼いてくれた肉だ。なんなら、ルパの作ってくれた肉料理ならなんだって好きだ。
「ん~。肉うまぁ~。肉肉~、にくぅ~」
「ほんとルパは肉が好きだよね。毎日肉ばかり食べていたら体を壊すよ」
「壊さないよ。だって私は獣族だもん。主食は肉なの。だから、そう簡単に体は壊さないよ。はぁ~、肉うまぁ~」
ルパは少々生焼けの肉を食べていき、美味しそうな表情をしている。何もなければいいのだけれど……。僕はお腹が空いていなかったので何も食べなかった。
僕とルパは村を観光し、三つ目の街に向かおうとしていた。だが、ルパの様子が何やらおかしい。
「う……。き、気持ち悪い……。なにこれ……。何かの状態異常……」
ルパの表情はすぐれず、お腹の調子が悪いようだ。もしかしたら食中毒にでも当たったのかもしれない。毒らしい品は食べていないはずなので、原因は肉だと思われる。
「うぅ……。ニクス、気持ち悪いぃ……。お腹痛いよぉ……」
ルパは村に設置されている共用のトイレに駆け込みは出てきて、駆け込みは出てくる。顔がやつれていくのを見るのは辛かったが、自分の行動が安直過ぎたという経験になってもらえると嬉しい。
「ううぅ……、ニクスぅ……、助けてぇ……」
「はぁ、じゃあ、ルパ。もう少し危機感を持ってね」
「わかったぁ……。危機感って言う感覚も養うよぉ……」
ルパは僕にくっ付いてくる。トイレ自体が衛生的に良くないと思うので、ルパの手を燃やし、殺菌する。
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