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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
手紙の返事
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「ち、違うよ。僕とディアさんは友達じゃなくて、同級生なの」
「同級生? 年が同じって意味の?」
「そうそう。あと同じ学園にも通っていたんだ。だから知り合いなんだよ。ルパと出会う一ヶ月くらい前に街で偶然出会ってさ。その時のお礼だって」
「へぇ……。そうなんだ。ふぅ~ん……」
ルパはどこか疑っているようで、眼を細めながら僕の方を見てくる。加えて、鼻をスンスンと鳴らし、匂いを嗅ぐと表情がフッと軽くなる。
「うん、嘘は付いてないみたい」
「え、匂いを嗅いだだけで嘘かどうか、わかるの?」
「何となくわかるよ。嘘をつくと汗を掻くから、いつもとにおいが変わったら嘘、変わらなかったらほんとって言う風にして信じるかどうか判断するの」
「へぇ……、それで、僕の匂いは変わらなかったわけだ」
「うん、ニクスのいつもの匂いだった」
「そうなんだ。まぁ、嘘は付いてないからそうなるのは当たり前だけど、ルパに匂いを嗅がれるのはちょっと恥ずかしいな。僕ってどんな匂いなの?」
「ん~、日の匂いかな。何となくだけど、プルスの匂いが一番近い」
「じゃあ、僕もプルスの匂いを嗅げば自分の体臭がわかるのか」
僕は頭で眠るプルスを包むようにして持ち、ふさふさの体に鼻を近づける。すると、どことなく日の匂いがした。何となく安心する匂で、しっかりと嗅がないとわからない。
「ルパはこの匂いが好きなの?」
「す、好きじゃないけど、嫌いでもない。別に一緒にいても不快感がないから、まぁ、嗅いでていいならずっと嗅いでてもいいかなって思うくらい」
ルパは僕から視線をそらし、耳をパタパタさせている。
「まさかディアさんから手紙がとどくとは思わなかったな。何か返事を書いた方がいいよな。さすがに金貨二○○枚も貰っておいて返事を出さないのは印象が悪い」
僕はディアさん充てに手紙を書いた。高級な紙ではなく、安っぽい紙だ。僕が手紙を書いていると、ルパも紙に手紙を書き始めた。
「何を書いているの?」
「果たし状」
「な、なんで?」
「学園で最下位だったニクスの同級生なら、ニクスより強いはず。戦ったらいっぱい経験を積めそう。まだ、ニクスに一度も勝ててないけど……。あ、ニクスの弱点も聞こう」
「ちょ、そんなの書いても、本気にしないよ」
「いいの。文章を書くの楽しいし、勉強になる」
ルパは文法や語呂がめちゃくちゃで、単語の羅列文のような手紙を書き、最後に一番綺麗な字でルパと添えた。
僕はなるべく丁寧な言葉で手紙を書き、感謝の気持ちを記した。
「よし。こんな感じかな。あとは封筒に入れてディアさんの手紙に書いてあった住所に運んでもらおう」
僕はルークス王国王都・ルークス騎士団第一部隊・上級騎士寮○○一号室と封筒に書き記す。ディアさんの家柄は特級、加えて騎士の等級は一個下の上級。僕と同い年とは思えないほどの成績だ。部屋番号も一番だということは上級の中でも一番なのだろう。あと数年すれば特級騎士になってしまうかもしれない。
「凄いな。でも、それなりに重圧らしいし、僕には向いてないや。僕はこうやってルパに癒してもらいながら生活しているほうが性に合ってるよ」
僕はルパに擦り寄り、呟いた。加えて尻尾も少し触る。
「何が癒してもらってるだ。勝手に触ってるだけの癖に。はい、私の書いた手紙も入れておいて」
「はいはい。わかったよ」
僕はルパの書いた手紙を少し読み、読みにくさの中にちゃんと思いが詰まっているとわかって書き直さずにそのまま封筒に入れた。封筒の口を、ロウソクを溶かした蝋で止める。何かいい押印がないか探すもなかったので、眠っているプルスの足裏を使って押す。すると、蝋にプルスの足跡ができ、結構いい具合になった。
「これでギルドに出せば、送りとどけてくれるはずだ。ついでに小切手のお金も貰ってこよう。ルパ、近くの街に行くから準備してね」
「わかった。じゃあ、今日は何の素材を持っていく?」
「そうだな。いつも通り、角ウサギの角と毛皮でいいんじゃないかな。魔石も数個あるし、金属を持って行かなくても十分生活費になるよ」
「了解」
ルパは家を出て、外にある雨宿に置いてある素材を纏めながら籠に入れ、出発の準備を進めた。
「さてと、プルス。そろそろ起きてくれるかな?」
「ふわぁ~、なんでしょう、主」
プルスは僕の頭上で伸びをする。
「今日の天気は?」
「今日の天気は晴れ。雨が降る確率はゼロ。気温は二〇度ほどで過ごしやすい天気でしょう。雨具を持っていく必要はありません」
「ありがとう。というか、よくそこまでわかるようになったね」
「空の状態を見れば何となくわかります。あと湿度と体感温度など私に掛かれば天気など容易に予測できるのです」
地味なスキルだが、天候が分かるというスキルは色々と便利だ。必要な持ち物を持っていける為、無駄な考えをせずにすむ。
僕は寝間着から動きやすい長そで長ズボンを着て、黒いマントを羽織る。剣をベルトとズボンの間に挟み、ずれ落ちないよう、しっかりと固定した。柄を持って一度引き抜く。剣の状態は完璧だ。砥石を使い、刃を手入れしているので買った時よりも綺麗になっている。
「ニクス、準備出来た」
ルパは僕に声をかける。首には僕のあげたペンダントが輝き、出発を今か今かと待っていた。
まるで散歩を待つ犬のようで愛らしい。口にするとルパは怒るので言わないが、尻尾が大きく振れている。最近ではルパも街で普通に歩けるようになってきた。
周りの眼は気にしているものの、何も危害を加えられないことに気づき、少しずつだが人の生活に馴染んでいた。まぁ、ルパにちょっかいを出そうとする輩は僕が容赦なく縛りあげる予定だが、ルパの実力があれば僕が手を出す必要もないかもしれない。
僕は籠を背負い、ディアさんに書いた手紙と小切手を上着の内側にいれて保管し、近くの街まで炎の翼で飛んで行く。
街までは行きなれたおかげで一〇分足らずで到着するようになっていた。ときおり空を飛んでいる鳥にぶつかりそうになるが、プルスの炎によって一瞬で灰になるので、衝突する心配はない。
「同級生? 年が同じって意味の?」
「そうそう。あと同じ学園にも通っていたんだ。だから知り合いなんだよ。ルパと出会う一ヶ月くらい前に街で偶然出会ってさ。その時のお礼だって」
「へぇ……。そうなんだ。ふぅ~ん……」
ルパはどこか疑っているようで、眼を細めながら僕の方を見てくる。加えて、鼻をスンスンと鳴らし、匂いを嗅ぐと表情がフッと軽くなる。
「うん、嘘は付いてないみたい」
「え、匂いを嗅いだだけで嘘かどうか、わかるの?」
「何となくわかるよ。嘘をつくと汗を掻くから、いつもとにおいが変わったら嘘、変わらなかったらほんとって言う風にして信じるかどうか判断するの」
「へぇ……、それで、僕の匂いは変わらなかったわけだ」
「うん、ニクスのいつもの匂いだった」
「そうなんだ。まぁ、嘘は付いてないからそうなるのは当たり前だけど、ルパに匂いを嗅がれるのはちょっと恥ずかしいな。僕ってどんな匂いなの?」
「ん~、日の匂いかな。何となくだけど、プルスの匂いが一番近い」
「じゃあ、僕もプルスの匂いを嗅げば自分の体臭がわかるのか」
僕は頭で眠るプルスを包むようにして持ち、ふさふさの体に鼻を近づける。すると、どことなく日の匂いがした。何となく安心する匂で、しっかりと嗅がないとわからない。
「ルパはこの匂いが好きなの?」
「す、好きじゃないけど、嫌いでもない。別に一緒にいても不快感がないから、まぁ、嗅いでていいならずっと嗅いでてもいいかなって思うくらい」
ルパは僕から視線をそらし、耳をパタパタさせている。
「まさかディアさんから手紙がとどくとは思わなかったな。何か返事を書いた方がいいよな。さすがに金貨二○○枚も貰っておいて返事を出さないのは印象が悪い」
僕はディアさん充てに手紙を書いた。高級な紙ではなく、安っぽい紙だ。僕が手紙を書いていると、ルパも紙に手紙を書き始めた。
「何を書いているの?」
「果たし状」
「な、なんで?」
「学園で最下位だったニクスの同級生なら、ニクスより強いはず。戦ったらいっぱい経験を積めそう。まだ、ニクスに一度も勝ててないけど……。あ、ニクスの弱点も聞こう」
「ちょ、そんなの書いても、本気にしないよ」
「いいの。文章を書くの楽しいし、勉強になる」
ルパは文法や語呂がめちゃくちゃで、単語の羅列文のような手紙を書き、最後に一番綺麗な字でルパと添えた。
僕はなるべく丁寧な言葉で手紙を書き、感謝の気持ちを記した。
「よし。こんな感じかな。あとは封筒に入れてディアさんの手紙に書いてあった住所に運んでもらおう」
僕はルークス王国王都・ルークス騎士団第一部隊・上級騎士寮○○一号室と封筒に書き記す。ディアさんの家柄は特級、加えて騎士の等級は一個下の上級。僕と同い年とは思えないほどの成績だ。部屋番号も一番だということは上級の中でも一番なのだろう。あと数年すれば特級騎士になってしまうかもしれない。
「凄いな。でも、それなりに重圧らしいし、僕には向いてないや。僕はこうやってルパに癒してもらいながら生活しているほうが性に合ってるよ」
僕はルパに擦り寄り、呟いた。加えて尻尾も少し触る。
「何が癒してもらってるだ。勝手に触ってるだけの癖に。はい、私の書いた手紙も入れておいて」
「はいはい。わかったよ」
僕はルパの書いた手紙を少し読み、読みにくさの中にちゃんと思いが詰まっているとわかって書き直さずにそのまま封筒に入れた。封筒の口を、ロウソクを溶かした蝋で止める。何かいい押印がないか探すもなかったので、眠っているプルスの足裏を使って押す。すると、蝋にプルスの足跡ができ、結構いい具合になった。
「これでギルドに出せば、送りとどけてくれるはずだ。ついでに小切手のお金も貰ってこよう。ルパ、近くの街に行くから準備してね」
「わかった。じゃあ、今日は何の素材を持っていく?」
「そうだな。いつも通り、角ウサギの角と毛皮でいいんじゃないかな。魔石も数個あるし、金属を持って行かなくても十分生活費になるよ」
「了解」
ルパは家を出て、外にある雨宿に置いてある素材を纏めながら籠に入れ、出発の準備を進めた。
「さてと、プルス。そろそろ起きてくれるかな?」
「ふわぁ~、なんでしょう、主」
プルスは僕の頭上で伸びをする。
「今日の天気は?」
「今日の天気は晴れ。雨が降る確率はゼロ。気温は二〇度ほどで過ごしやすい天気でしょう。雨具を持っていく必要はありません」
「ありがとう。というか、よくそこまでわかるようになったね」
「空の状態を見れば何となくわかります。あと湿度と体感温度など私に掛かれば天気など容易に予測できるのです」
地味なスキルだが、天候が分かるというスキルは色々と便利だ。必要な持ち物を持っていける為、無駄な考えをせずにすむ。
僕は寝間着から動きやすい長そで長ズボンを着て、黒いマントを羽織る。剣をベルトとズボンの間に挟み、ずれ落ちないよう、しっかりと固定した。柄を持って一度引き抜く。剣の状態は完璧だ。砥石を使い、刃を手入れしているので買った時よりも綺麗になっている。
「ニクス、準備出来た」
ルパは僕に声をかける。首には僕のあげたペンダントが輝き、出発を今か今かと待っていた。
まるで散歩を待つ犬のようで愛らしい。口にするとルパは怒るので言わないが、尻尾が大きく振れている。最近ではルパも街で普通に歩けるようになってきた。
周りの眼は気にしているものの、何も危害を加えられないことに気づき、少しずつだが人の生活に馴染んでいた。まぁ、ルパにちょっかいを出そうとする輩は僕が容赦なく縛りあげる予定だが、ルパの実力があれば僕が手を出す必要もないかもしれない。
僕は籠を背負い、ディアさんに書いた手紙と小切手を上着の内側にいれて保管し、近くの街まで炎の翼で飛んで行く。
街までは行きなれたおかげで一〇分足らずで到着するようになっていた。ときおり空を飛んでいる鳥にぶつかりそうになるが、プルスの炎によって一瞬で灰になるので、衝突する心配はない。
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