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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。

手紙の内容

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「よし! 出来た! イエローダイヤモンドのペンダント。暗い色の木を使ってイエローダイヤモンドの綺麗さを存分に出した一品。ルパの琥珀色の瞳と同系色だから、絶対に似合うよ」

「ほんと、ニクスって手先が器用なんだな。裁縫とかも得意そう」

「まぁね。何かを作るのは好きなんだ。気に入ってくれるかわからないけど、ルパのために一生懸命作ったから、付けてくれると嬉しいな……」

「まぁ、プルスがどうしても付けてほしいって言うなら付けなくもない……」

 ルパは僕からブレスレットを受け取ると帽子をかぶるように、紐を後頭部の方に持って行き、ペンダントを着けた。紐の長さは完璧で僕の付けているプラチナのペンダントと作りがそっくりなのでお揃いになった。

 木の板がルパの白い肌と馴染み、イエローダイヤモンドを綺麗に見せている。ルパの雰囲気とペンダントの雰囲気が合わさり、彼女の全体の印象を大きく変える。

「ルパ、すごい素敵だ。かわいい、最高。超絶にあってる。お姫様みたいだ~!」

「ちょ、そんな訳ない。ニクスはいつも言い過ぎ。私がお姫様とかあり得ないし。お世辞なんていらない。そんなの不愉快なだけだから……」

 ルパは僕に背を向け、ペンダントを掌に載せて見ている。尻尾がブンブンと振れ、鞭のように撓っていた。

「うぅ……。嬉しくない、嬉しくない……」

 ルパは掌に雫を落としていた。何が起こっているのかわからず、ルパの顔を覗き込もうとするも、彼女は一向に顔を見せてくれず、僕に背を向け続けた。だが、こらえきれなくなったのか、僕の方を向いて涙と鼻水たらたらの汚い顏を見せてきた。そのまま、僕に抱き着いてきて、尻尾を振る。

「うわぁ~ん。嬉しくないよぉ。嬉しくないのに、涙が止まらないのぉ」

「ルパ、どうしたの。この前もボトルホルダーをあげたでしょ。今回も同じ感じであげたんだけど。どうしてそんなに泣いてるの……」

「お母さんが言っていた言葉を思い出したの。お父さんから首飾りを貰った時が一番うれしかったって……。たかが首に掛ける飾り物を貰って嬉しいのかって思ってたけど……、思っていた以上に綺麗で心がざわついちゃったの。何でこんな首飾りを作ったの!」

 ルパは挙句の果てに逆切れしてきた。僕は単刀直入に言う。

「ルパに着けてもらいたかったから。それだけだよ。ルパに絶対に似合うと思ったらいてもたってもいられなくなっちゃった。実際、すごくよく似合っているから僕の目に狂いはなかったね。あと、今のルパは縁起物だらけだよ。狼に宝石、金色。全部縁起物だから、ルパは凄く縁起がいい存在になってるんだよ」

「何それ……。わけわかんない。でも、この首飾り、返せって言われても絶対に返さないからね」

 ルパはペンダントを握り、大切そうに体に付着させていた。

「わかってるよ。そのペンダントはルパにあげたから、もうルパの物だ。同じ物を作るのは難しいからなくさないでね」

「絶対になくさない。なくしたらニクスの言うことなんでも聞く。好きな所を一晩中でも触らせてあげるよ」

「はは……。それだけ大切にしてくれると僕も嬉しいよ。ありがとうね」

 僕はルパをぎゅっと抱き寄せ、後頭部を撫でた。ルパの顔は見えなかったが言葉よりも正直な尻尾はブンブンと振れている。

「ふわぁ~。あれ? 私、どれだけ寝てましたか……。え、あれ、あれれ?」

 プルスはようやく起きて、ルパの首に掛かっているペンダントの先に自分の糞が使われている状況を見て困惑していた。だが、僕たちの仲を見てまぁ良いかといった表情で僕の頭に飛び乗ってくる。

 ――縁起物満載のルパと一緒にいれば僕にもいいことがあるかも。去年は辛い経験ばかりだったけど、今年はいい年にするぞ~。まずはルパともっと仲良くなれるよといいな。

 一月二日はルパとプルス、僕の二人と一匹で日々の日課を終わらせたあとお湯にゆっくりと浸かり、まったりした時間を過ごした。

 ☆☆☆☆

 未開拓の土地で過ごし始めて八カ月が過ぎ、ルパと出会ってから七カ月がたった。

 少しずつ温かくなってきた三月の中旬。家の周りの雪はすっかりと解け、森の木々も少しずつ緑を取り戻しつつある。去年の一二月にフランツ街にある実家に送った手紙の返答が冒険者ギルドにようやく届き、僕の手に渡った。

 今、手紙は家の中のローテーブルに置いてあり、僕と睨めっこしている。僕のすぐ隣には少し大きくなったルパの姿があった。七カ月前に購入したルパの服ではもう小さいため、新しい服を買うかどうか迷っている。胸は少し大きくなり、お尻は元からプリプリなのだが、この数ヶ月で成長の兆しが見える。なんせ、ショートパンツの裾から、お尻の肉が見えそうなのだ……。

「ニクス、読まないの?」

「ん~。手がなかなか伸びなくて……」

 自分から実家を出てきたわけではなく追い出されたあげく、勘当されてしまったわけなのでいったいどんな返答が返ってくるのかと思うと開く気になれないのだ。

 クワルツ兄さんとガイアス兄さんの手紙は既に呼んだ。まさかガイアス兄さんの方からも手紙が届くとは思っておらず、真っ先に呼んでしまった。書いてあった内容はというと……。

「ニクス、お前が今どこで何をしているかは知らないが無事でよかった。今俺は正月休みで実家に帰省し、この手紙を書いている。ルークス王国とビースト国の紛争の鎮圧で俺は成果を上げ、初級騎士から中級騎士へと昇格した。まだまだ安泰とはいかないが、昔よりも報酬が貰えそうだ。父上も喜んでくださった」

「へぇ、ガイアス兄さん。中級騎士になったのか。相当活躍したんだなぁ」

 騎士には四階級あり、初級、中級、上級、特級の順で位分けされている。

 通常は歩兵や騎兵と言った役職が多い中、貴族や騎士養成学校を卒業している者は初級騎士の称号が与えられている。武功をあげると位が上がり、特級になると王に仕えたり、騎士団の団長になったり、貴族の階級が上がるらしい。つまり出世だ。僕も初級騎士と名乗ることが一応出来る。まぁ、武功の一つも上げていないけど……。
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