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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

弄り合い

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「主、だいぶ変態味が増してきましたね」

 プルスは僕の頭の上で呟いた。

「そ、そうかな。治そうと思ってもルパが可愛すぎてさ~。弄りたくなっちゃうんだよね。兄さんたちが僕を弄ってきた理由がわかった気がするよ。下の兄弟に悪戯したくなるってほんとなんだなってさ」

「つまり主とルパは兄妹だと言いたいのですか?」

「ほぼそうだと思うよ。体を洗う時とか普通に裸体を曝してるし、恥ずかしさよりも一緒にいて楽しい、って感じ。まぁルパはどう思ってるか知らないけど」

 僕はプルスを持ち、体を指先で摩る。頭、くちばしの下、腹。すると、プルスはゴロンと倒れ、されるがままの状態になった。

「うりうり、ここが気持ちいいんだろ~」

「あぁぁ、すごい体が溶けそうぅになりますぅ~」

 プルスは翼をはためかせ、震えていた。体を摩られて気持ちよくなってしまったみたいだ。プルスを弄っていると、外から戻ってきたルパが家に入ってきた。

 そのまま僕の前に来てぶん殴ってくるのかという剣幕で見てくる。このまま蹴りつけてやろうと思っているのかもしれない。だが、ルパは静かに座り、仰向けに寝転んだ。

「はい! さっさと触りたいところ触って!」

 どうやら先ほどの報酬は覚えていたらしい。なら遠慮なくと言った感じで僕はルパの近くに座る。

 未発達の胸か、むっちりし始めた太ももか、はたまたふっくらとしているお尻か……。そんな変態貴族のような思考は途中で破棄し、ルパの頭に手を置いて撫でる。

「さっきはお願いできて偉かったね。僕は凄く嬉しかったよ。ルパがちゃんと生きて行けるようにこれからも頑張っていこうね」

 僕はルパの頭から手を退かす。

「え……? もう、おしまいなの?」

「ん……、そうだけど、まだ触ってほしかったの?」

「そ、そんな訳ない! 終わったのならそう言って! はぁ~、ドキドキして損した!」

 ルパは上半身を起こし、ため息をついた。

「ルパの嫌がることはしないって言ったでしょ。僕はルパとの約束をちゃんと守っただけだよ。それとも何、恥ずかしいところ触られるとでも思ってたのかな~。それでドキドキしちゃうなんてルパも変態なんじゃないの~」

 僕は面白半分で言うと、ルパは目をかっぴらき、頬を赤らめさせたのちに僕の顔面を思いっきり蹴り飛ばしてきた。

 僕は壁に勢いよくぶつかり、視界に星が舞う。

 ルパに直してほしいところその二……、頭に血が上るとすぐに手足が出る……。これも人の前でやったらすぐに嫌われるので直してもらわなければ。

「ば、ば、馬鹿じゃないの! 私がそんなこと思う訳ないでしょ! ニクスと一緒にするな!」

「ルパ、そう思っても手足は出したらいけないよ。戦い以外では先に攻撃した方が負けなんだからさ。もう少し落ち着いて相手を考えた行動をとらないと、すぐに捕まっちゃうよ。冒険者同士の喧嘩ならいいかもしれないけど……」

「だ、だってニクスが変なこと言うから……。私は変態じゃないのに、変態はニクスなのに、何で私が怒られないといけないの!」

 ルパは自己中心的な考えを持っているので、自分基準で話しをする。

 相手を思いやろうと言う気持ちがないのだろうか。いや、ない訳ではない。この前もステーキが良く焼けた方を僕にくれた。

 僕が作った物なら間違いなく美味しい方をルパは選ぶはずだ。なのにあの時は失敗した料理を食べていた。きっと僕に美味しい料理を食べてもらいたいと言う可愛い言い訳ではない。

 ルパの自尊心(プライド)が高いせいで自分の失敗した料理を僕に見せたくなかっただけだ。その心理の裏には自分が優れていると僕に伝えたいがための行動にも思える。

 自尊心が高いのはいいが高すぎるのも問題である。そのため、少しおちょくっただけで攻撃してくるのだ。

 きっと自分が本当におちょくられている気分になっているのだろう。この場合、僕が言わなければ解決するのだが、社会に出て年下を弄る人間は大量にいるはずだ。加えて、自分より格下のように言ってくる奴が一定数いる……。

 もしルパがそんな人間と対等したら、首根っこを噛み千切って殺害してしまうかもしれない。

 僕はルパの自尊心を気づ付けず、もう少し穏やかな性格になってもらうために何が出来るだろうか。難しい問題だ。すでに一三歳という年齢になっているため、簡単に性格を変えるのは不可能。少しずつ着実にいい方向に持っていかなければならない。

「えっとね、別に怒っている訳じゃないよ。今のままだとルパは捕まっちゃうかもしれないから、いったん考えて行動してみたらという、提案をしたんだよ。ルパは賢いから獣族が人族を思いっきり蹴ったらどうなるのかわかるでしょ」

「私、ニクスしか蹴った覚えないから、他の人を蹴ったらどうなるのかわからない。ニクスみたく上手く受け身取れる人なら大丈夫なんじゃないの」

「普通の人は防御も受け身もそこまで知らないから、ルパの蹴りを顔面に食らったら頭が飛んで行くんじゃないかな。身体強化の魔法を使っていたらわからないけど」

「へぇ。でも私はニクスしか蹴る気ない。他の人間には足先ですら触れたくない。他の人間に触れる気なんてさらさらないから。他の人間なんて剣で十分」

「え……。じゃあ、僕だけ特別ってこと!」

「何で嬉しそうなの……。蹴られて嬉しそうにするとか気持ち悪いよ」

 ルパは眼を細め、僕から遠ざかる。

「別に蹴られて嬉しがっている訳じゃないよ。そうか、僕はルパにとって特別な人間なんだ、嬉しいな~、って感じ。確かにルパは僕に触れようとしてくるし、僕のこと、少しは好きになってくれたかな?」

「は……。ぜ、全然、好きになってないけど。私はニクスを利用してるだけだって言った。それだけ。ニクスに利用価値がなかったら私はとっくに出ていってる。勘違いしないで、私がニクスと一緒にいたいんじゃなくて、ニクスが私といたそうにしているから仕方なく利用しているついでにここにいるだけだから!」

「はいはい。わかってますよ。そんなに言わなくてもわかってるのにさ。いちいち大声で吠えなくても聞こえてるから。ルパの天使みたく可愛らしい声がね」

「だーかーらー! そういうのやめろって!」

 ルパの美声が大声で叫ばれるも耳が心地いいので何ら構わない。逆に荒ぶる尻尾を一生懸命に抑え込もうとする彼女の焦った顔が可愛いと叫びたいくらいだ。

 僕とルパは仲直りして勉強を始める。互いに炎の衣をまとい、体の体温を保っているので火を焚いていなくても生活できる。煙臭くならないのでありがたい。
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