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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
料理の食べ方
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「ルパ、髪を拭くよ。頭に触るけどいいかな?」
「う、うん……」
僕は乾いた布をルパの頭に被せる。耳に注意して拭いていく。
「よし。じゃあ、次は尻尾を拭いていくからね。少しくすぐったいかもしれないけど、許してよ」
「わかったから、さっさと拭いて……」
僕はルパの尻尾に触れ、布で拭いていく。
「これでいいかな。プルス、この布の水気を切ってくれる?」
「了解です」
プルスは湿った布に炎を吐くと水分が一瞬で蒸発してしまった。水気がなくなり、乾燥し布に戻る。この布を使ってルパの体を拭いていく。背中は僕が拭き、前側はルパが自分で拭いた。同じ要領で汗まみれだった服も水で洗った後、プルスの火で瞬間に乾燥させて再度着れるようにした。僕は初めから火を体に吹きかけてもらい、水分を蒸発させる。
「それじゃあ、家に戻ろうか。って、ルパ、服を早く着ないと風邪ひいちゃうよ。ただでさえ今の季節は冷えやすいんだから、なるべく体を冷やさないようにしないと、風邪をすぐにひいちゃうよ」
「でも、ニクスが体綺麗って言うから……。もうちょっとくらい見せてあげてもいいかなって思ったんだけど……」
「すっごく嬉しいけど、今は僕の方よりも自分の方を大切にしてよ。風邪を引いたら辛いよ」
「それもそうか……」
ルパは下着と服を着た。立ち上がって歩こうとするが、すぐに転ぶ。どうやら、脚を上げる力すら残っていなかったらしい。それなのに、川に飛び込むなんて何を考えていたんだか……。
僕はルパを背負い、家の前にある焚火場におろす。
「じゃあ、僕は夕食を取ってくるから、ルパは火起こしをお願い。病み上がりだからそこまで沢山食べなくてもいいよね」
「五羽くらいでいい」
「わかった」
僕は草原で角ウサギを七羽狩り、焚火場にまで戻ってきた。
焚火はまだできていなかった。理由として薪が無かったからである。
ルパが動けないのに薪を置いておくのを忘れていた。ルパは頑張って動こうとしたという意思を僕に主張していたので、本当なのだろう。僕はすぐに薪を取りに行き、ルパに手渡す。すると、ほんの数分で焚火が完成した。真っ赤な炎が暗くなり始めた空間を彩る。
「プルスは丸まる一羽、僕も一羽、ルパは五羽」
僕はプルスの前に角ウサギを置き、僕とルパの分は革を剥いで焼いて行った。プルスは食事を始めたが、僕達は焼き上がるまでの時間、石の加工を行っていた。
「ニクス、こんな感じでいいの?」
ルパは宝石の綺麗な部分だけを残して綺麗に岩を落としていた。
「うん、それでいいよ」
「今、ニクスは何をしているの? 私とは違うことしているよね?」
「僕は宝石の綺麗な部分以外を削り取っているんだ」
「綺麗じゃない部分ってどこ? あんまりわからないんだけど……」
「ほら、例えばこことか。あと、ここにもある。なんか宝石の中に小さな気泡があるでしょ。これがあると綺麗に輝かないんだ。無駄に光が反射して濁っちゃうから、削り取っていくんだよ」
「でも、そうしたら綺麗な部分が少なくなるよ。なんか、もったいない」
「確かにそうだけど、石の中に気泡があると割れやすくなるし、綺麗に見えない。たとえ大きな宝石だとしても気泡だらけだと誰も買おうとしない。逆に小さくても気泡が一切なく、綺麗な宝石なら、いくらでも買い手が見つかるんだよ。大雑把より洗礼されている方が皆欲しがるんだ」
「なるほど……」
ルパは理解してくれたのか、原石の岩を割っていく。僕は宝石を削っていく。二人して長時間できる作業をしていると、プルスが僕に話しかけてきた。
「主、角ウサギの肉が焼けましたよ。二人とも作業に集中していたので私が綺麗に焼き上げておきました」
「え、ああ。ありがとう。すっかり忘れていたよ。ルパ、もう角ウサギの肉が焼けたみたいだ。早く食べないと焦げちゃうよ」
「え……。あ、本当だ。早く食べないと」
「でも、ルパ。あまり早く食べすぎると喉を詰まらせるからよく噛んで食べるんだよ」
「そんなこと言われなくても子供じゃないんだからわかる。私はそこまで間抜けじゃない」
ルパは角ウサギの肉を手に取り、食べ始めた。モグモグと口を動かして頬を膨らませリスのようになっている。狼には頬袋がないと思うのだが……、彼女の食い意地によって頬が膨らんでいた。
「ルパ、口の中に入れ過ぎると喉を詰まらせるよ。少しずつ食べないと……」
ルパはもごもごと何かを喋っているが、口に多くの肉が入っているため聞き取れない。
「ルパ、喋る時は口の中身を全部食べきってから放さないと行儀が悪いよ」
口の中を一杯にしているルパは全て飲み込んだあと、大きな声を出して言う。
「もう! いちいちうるさい! 食べ方くらい好きにさせてよ!」
「でもルパ、人の前で汚らしい食べ方をしたら見っともないって思われるよ。僕はルパを可愛いなと思うけど、他の人が同じように思うかはわからない。ルパは人族と共存していかないといけないんだから、料理を食べる時も気を配っておこうよ」
「うぅ……。ガツガツ食べたら駄目だっていうの?」
「冒険者さん達の前ならいいかもしれないけど、お店の中とか他のお客さんがいる場合は避けた方がいいんじゃないかな。食べ方は家柄や人柄が出るから、綺麗にしておくことに間違いはないよ」
「口いっぱいに入れて一気に食べるの好きなのに……」
「食べる量は変わらないから、食べ方だけを変えてみようよ。角ウサギの脚を食べてから次の部位を持つ。口の中に詰め込むんじゃなくて部位ごとの味や触感を楽しんで食べてみたらいいんじゃないかな。一気に満腹になるわけじゃないけど、食べる量が同じなら、お腹も膨れるし、少しずつ食べれば行儀よく見える。ね、やってみようよ」
「うぅ……。わかった……。じゃあ、ニクスが食べさせて……」
「誰かに食べさせてもらうのは凄く子供っぽいけどいいの?」
「一口の配分がわからないから、教えて」
「そういうことなら、いいか。じゃあ、まずはこれから」
僕は角ウサギの脚をルパの口に持っていく。ルパは角ウサギの肉を美味しそうに噛み、飲み込む。口の中がなくなったら、背中、また食べ終わったらお腹と言った感じでルパに部位ごとのお肉を渡していった。
ルパはおとなしく僕のいうことを聞き、肉をモグモグと食べている。今のところ不満は零していない。
僕は角ウサギをルパに一羽食べさせた。
「う、うん……」
僕は乾いた布をルパの頭に被せる。耳に注意して拭いていく。
「よし。じゃあ、次は尻尾を拭いていくからね。少しくすぐったいかもしれないけど、許してよ」
「わかったから、さっさと拭いて……」
僕はルパの尻尾に触れ、布で拭いていく。
「これでいいかな。プルス、この布の水気を切ってくれる?」
「了解です」
プルスは湿った布に炎を吐くと水分が一瞬で蒸発してしまった。水気がなくなり、乾燥し布に戻る。この布を使ってルパの体を拭いていく。背中は僕が拭き、前側はルパが自分で拭いた。同じ要領で汗まみれだった服も水で洗った後、プルスの火で瞬間に乾燥させて再度着れるようにした。僕は初めから火を体に吹きかけてもらい、水分を蒸発させる。
「それじゃあ、家に戻ろうか。って、ルパ、服を早く着ないと風邪ひいちゃうよ。ただでさえ今の季節は冷えやすいんだから、なるべく体を冷やさないようにしないと、風邪をすぐにひいちゃうよ」
「でも、ニクスが体綺麗って言うから……。もうちょっとくらい見せてあげてもいいかなって思ったんだけど……」
「すっごく嬉しいけど、今は僕の方よりも自分の方を大切にしてよ。風邪を引いたら辛いよ」
「それもそうか……」
ルパは下着と服を着た。立ち上がって歩こうとするが、すぐに転ぶ。どうやら、脚を上げる力すら残っていなかったらしい。それなのに、川に飛び込むなんて何を考えていたんだか……。
僕はルパを背負い、家の前にある焚火場におろす。
「じゃあ、僕は夕食を取ってくるから、ルパは火起こしをお願い。病み上がりだからそこまで沢山食べなくてもいいよね」
「五羽くらいでいい」
「わかった」
僕は草原で角ウサギを七羽狩り、焚火場にまで戻ってきた。
焚火はまだできていなかった。理由として薪が無かったからである。
ルパが動けないのに薪を置いておくのを忘れていた。ルパは頑張って動こうとしたという意思を僕に主張していたので、本当なのだろう。僕はすぐに薪を取りに行き、ルパに手渡す。すると、ほんの数分で焚火が完成した。真っ赤な炎が暗くなり始めた空間を彩る。
「プルスは丸まる一羽、僕も一羽、ルパは五羽」
僕はプルスの前に角ウサギを置き、僕とルパの分は革を剥いで焼いて行った。プルスは食事を始めたが、僕達は焼き上がるまでの時間、石の加工を行っていた。
「ニクス、こんな感じでいいの?」
ルパは宝石の綺麗な部分だけを残して綺麗に岩を落としていた。
「うん、それでいいよ」
「今、ニクスは何をしているの? 私とは違うことしているよね?」
「僕は宝石の綺麗な部分以外を削り取っているんだ」
「綺麗じゃない部分ってどこ? あんまりわからないんだけど……」
「ほら、例えばこことか。あと、ここにもある。なんか宝石の中に小さな気泡があるでしょ。これがあると綺麗に輝かないんだ。無駄に光が反射して濁っちゃうから、削り取っていくんだよ」
「でも、そうしたら綺麗な部分が少なくなるよ。なんか、もったいない」
「確かにそうだけど、石の中に気泡があると割れやすくなるし、綺麗に見えない。たとえ大きな宝石だとしても気泡だらけだと誰も買おうとしない。逆に小さくても気泡が一切なく、綺麗な宝石なら、いくらでも買い手が見つかるんだよ。大雑把より洗礼されている方が皆欲しがるんだ」
「なるほど……」
ルパは理解してくれたのか、原石の岩を割っていく。僕は宝石を削っていく。二人して長時間できる作業をしていると、プルスが僕に話しかけてきた。
「主、角ウサギの肉が焼けましたよ。二人とも作業に集中していたので私が綺麗に焼き上げておきました」
「え、ああ。ありがとう。すっかり忘れていたよ。ルパ、もう角ウサギの肉が焼けたみたいだ。早く食べないと焦げちゃうよ」
「え……。あ、本当だ。早く食べないと」
「でも、ルパ。あまり早く食べすぎると喉を詰まらせるからよく噛んで食べるんだよ」
「そんなこと言われなくても子供じゃないんだからわかる。私はそこまで間抜けじゃない」
ルパは角ウサギの肉を手に取り、食べ始めた。モグモグと口を動かして頬を膨らませリスのようになっている。狼には頬袋がないと思うのだが……、彼女の食い意地によって頬が膨らんでいた。
「ルパ、口の中に入れ過ぎると喉を詰まらせるよ。少しずつ食べないと……」
ルパはもごもごと何かを喋っているが、口に多くの肉が入っているため聞き取れない。
「ルパ、喋る時は口の中身を全部食べきってから放さないと行儀が悪いよ」
口の中を一杯にしているルパは全て飲み込んだあと、大きな声を出して言う。
「もう! いちいちうるさい! 食べ方くらい好きにさせてよ!」
「でもルパ、人の前で汚らしい食べ方をしたら見っともないって思われるよ。僕はルパを可愛いなと思うけど、他の人が同じように思うかはわからない。ルパは人族と共存していかないといけないんだから、料理を食べる時も気を配っておこうよ」
「うぅ……。ガツガツ食べたら駄目だっていうの?」
「冒険者さん達の前ならいいかもしれないけど、お店の中とか他のお客さんがいる場合は避けた方がいいんじゃないかな。食べ方は家柄や人柄が出るから、綺麗にしておくことに間違いはないよ」
「口いっぱいに入れて一気に食べるの好きなのに……」
「食べる量は変わらないから、食べ方だけを変えてみようよ。角ウサギの脚を食べてから次の部位を持つ。口の中に詰め込むんじゃなくて部位ごとの味や触感を楽しんで食べてみたらいいんじゃないかな。一気に満腹になるわけじゃないけど、食べる量が同じなら、お腹も膨れるし、少しずつ食べれば行儀よく見える。ね、やってみようよ」
「うぅ……。わかった……。じゃあ、ニクスが食べさせて……」
「誰かに食べさせてもらうのは凄く子供っぽいけどいいの?」
「一口の配分がわからないから、教えて」
「そういうことなら、いいか。じゃあ、まずはこれから」
僕は角ウサギの脚をルパの口に持っていく。ルパは角ウサギの肉を美味しそうに噛み、飲み込む。口の中がなくなったら、背中、また食べ終わったらお腹と言った感じでルパに部位ごとのお肉を渡していった。
ルパはおとなしく僕のいうことを聞き、肉をモグモグと食べている。今のところ不満は零していない。
僕は角ウサギをルパに一羽食べさせた。
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