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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

長所を伸ばす

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「ふぐぐ……。こ、ここが限界かも……」

 ルパはもう少しで全開できそうなほど脚を広げられていた。そのまま前に手を付けていくと、お尻が地面に少し浮いてしまうくらいに開脚できており、初めてにしては物凄い柔らかさであるとわかった。

「はじめてやったのにそこまで開けるなんて凄いね。やっぱりルパの股関節は柔らかいんだ。ここをもっと解せば攻撃範囲が各段に広がるし、運動機能も向上するはずだよ。少し痛いかもしれないけど、伸ばしていこう」

「う、うん。強くなれるなら痛くても我慢する」

 僕は浮いているルパのお尻を地面の方にググっと押す。

「うぐぐぐぐ……。さ、裂けるぅう!!」

「大丈夫。ルパの股関節は柔らかいから、そんな簡単に筋肉の断裂は起こらないよ。伸ばせるところは沢山伸ばして、戦闘の質を上げて行こう」

 ――ルパのお尻、やっぱり柔らかい……。ふかふかだぁ。枕にしたいなぁ……。

「主、考えが不純すぎますよ」

 僕の考えはプルスに筒抜けなのか、少し思ってしまったことを突いてきた。

 ――ちょ、ちょっと思っただけだよ。僕がルパのお尻を押さないと伸ばせないし。仕方ないじゃん。足裏で踏みつける訳にもいかないし。これは不可抗力だよ。

「まぁ、そうですけど、未成年兼獣族のお尻をにやついた顔で触るのはご法度なのでは?」

 ――ぼ、僕、にやけてるの? そ、そうか。それくらい柔らかいのか。うん。それも不可抗力だよ。

 数分間、僕はルパのお尻を押し続けた。すると、ルパの股は全開し、地面に胸をベターっと着けていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……。や、やったぁ。全部ついたよl。でも、お股がジンジンするぅ」

「そ、それは仕方ないよ。筋肉を伸ばしているんだから。今日だけやってもすぐに元に戻るから、なるべく毎日やるようにしよう。ルパの体は凄く柔らかいから、柔軟な動きがいくつも出来るはずだよ。体を柔らかくすれば、その分、戦でも優位になれる」

「わかった。じゃあ、ニクスの知っている柔軟を教えて」

「そうだね。沢山知っていた方が全身をくまなく解せるか」

 僕はルパにいろんな柔軟を教えた。

「何か、この格好恥ずかしいんだけど……」

「そう言われても、効果があるんだから仕方ないよ。でも、やっぱりルパは体が柔らかいね。これで柔軟をしてこなかったなんて思えないよ」

 僕が教えた柔軟をルパは全てやり遂げた。やはり体の筋肉がしなやかなのだろう。しなやかな筋肉はとても重要だ。脚の速さ、持続力、攻撃範囲。どれをとってもしなやかな筋肉が必要不可欠だ。その点、ルパは全身がしなやかな筋肉なのではないかと思うほどよく動く。獣族がそう言う種族なのかもしれない。

「じゃあ、次は初速だね」

「初速……、走り出しのこと?」

「それもある。あと、攻撃を繰り出してくるときの速度も言える」

「なるほど。でも、戦の始めを鍛えて何か意味あるの?」

「大ありだよ。だって、そこで決着を着ければ無駄な体力を使わなくて済むし、相手をひるませることも出来る。一撃目で戦いの流れを掴めばそのまま押し切ってしまえるかもしれない。つまり、戦の勝率をあげるのが初速なんだよ」

「おぉー。私、それが長所なの!」

 ルパは両手を握り、胡坐をかいて大きな声を出す。

「そうだよ。だって、ルパは僕と戦うとき、いつも先手を取るでしょ」

「え? あれって、ニクスが先手を譲ってくれていたんじゃないの」

「初めはそうだったけど、途中から僕も先手を取ろうとした。でも、ルパの初速が早すぎて僕の方から攻撃に移れなかったんだ。まぁ、あの独特な構えのせいかもしれないけど、それにしても早い。一撃目をかわして反撃しないと、そのまま流れを持っていかれてしまうくらい厄介な攻撃だよ」

「私、ニクスに勝ってる部分あったんだ……」

「そうだよ、でも逆を言えば、初速さえ回避するかカウンターを決めればルパは止められる。今のところはだけどね」

「長所が短所にもなってるんだ」

「そう言うこと。だから、長所を伸ばして短所を少なくしていく。練習法として、初速の制度をあげる方法と攻撃をかわされた時の対処方を鍛えていく」

「は、はい! 頑張る!」

「最後は踏み込みだね。ルパが前足を捻挫したのは無理な踏み込みをしたから。でも、無理が出来るくらい踏み込みが強いんだよ。相手の懐に入る力は戦闘で必ず役に立つ。ここを伸ばさない手はないよね」

「ニクスって私のことをそんなによく見ながら戦ってるの?」

「もちろん。だって、その方が後々有利になるでしょ。動きの癖とか、力を入れる瞬間とか、それがわかっていれば同じ行動になった時、先を読めると思わない?」

「た、確かに……。だから、私の攻撃がニクスに全然当たらなかったのか」

「そう言うこと。ルパの動きは始め凄く分かりにくいけど、特徴的だからこそ癖が凄い出てるんだよ。毎回、右足で蹴って来たり、利き手で着地したりね」

「そ、そうなの? 全然意識してなかった……」

「まぁ、ルパは無意識で戦っているみたいだから、わからなくても無理はないよ。でも、意識して戦えば今以上に戦況を操れる。自分の思い通りに体が動くようになるよ。どう? 楽しそうじゃない?」

「う、うん。もし、そんな戦いが出来るのなら、私、いっぱいいっぱい鍛錬する!」

 ルパは両手を握りしめて空に突き出し、凛々しい顏をした。

「よし。それじゃあ、鍛錬を始めようか。ルパはまず、体力を取り戻さないとね」

「わかってる! 走り込みでしょ」

「うん。それじゃあ、一緒に走ろうか。先に森の木に触れて、家まで戻ってきた方の勝ちね」

「ふっ!」

 ルパは僕が合図を出す前に森に向かって走り出した。

「あ! まだ合図をしてないのに……。ほんと、負けず嫌いなんだから」

 僕も追いかけるように走り、途中で追い抜いて僕が勝利した。

「ふぅ……。僕の勝ちだね」

「はぁ、はぁ、はぁ。も、もう一回!」

 ルパは息を切らしながら両膝に手をつき、今にも嘔吐してしまいそうだ。だが、少し笑っているので気分は上がっているらしい。

「わかった。次はなるべく歩数を少なくして走ろう。大股で走るようにしようか」

「うん。次は負けない!」

 僕とルパは家から同時に走り出し、途中までは並んでいたものの、中盤からルパが失速し、またもや僕が勝利した。
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