87 / 392
鶏を買ったら……知り合いが増えた。
二人が出来ることをやる
しおりを挟む
「ふっ……。って、笑っちゃう味がする」
「それは美味しいのか、不味いのかどっち?」
「んー。一人で食べたら美味しくないけど、ニクスに食べさせて貰ったら美味しいかも」
「じゃあ、美味しいんじゃん。はっきりそう言いなよ。もう一口食べる?」
「食べる」
僕はルパにスープを与え、ゆっくりと食べさせた。
僕も少しずつ食べてみたが、なかなか食べられる味だった。
美味しくはないけど、不味くもない。そんな感じの味だった。
でも、初めての料理にしては上出来だ。何度も思考錯誤すれば、美味しい料理が作れるかもしれない。
「ルパ、食べてる最中ずっと尻尾振ってたね。そんなに美味しかった?」
「別に、いつもと違った感じだったから面白かっただけ。美味しかったわけじゃない」
「そうなんだ。まぁ、もっと美味しく作れるように努力するよ。ルパも料理をしてみたら楽しいかもしれないよ」
「料理……。は、くだらない。焼いて食べるだけで充分だと思う」
「またそんなやせ我慢して……。でも、料理が出来るようになったらきっと生活は楽しくなるよ」
「……」
ルパは少し考えているのか、黙った。
「僕は料理が苦手だからルパに教えてあげられないけど、本とか買って作り方を覚えれば、ルパにも作れるようになるよ」
「料理が作れて何になるって言うの。別に出来なくても困らない。生きていく中で食事は手段でしかないんだから」
「そうだね。ただ、人は料理を娯楽の一つに数えている。僕は貧乏すぎて料理どころじゃなかったけど、今ならちょっとした料理は作れるんじゃないかな。ルパも一緒に料理を作れるようになろうね」
「まさか強制なの……」
「強制するわけじゃないけど、一緒に作った方が完成したときに美味しいよ。多分、食べさせてもらうより美味しく感じると思う」
「うぅー、なら、ちょっとやってみるしかないじゃん……」
「よし。今日は安静にして、ルパが元気になったら必要な道具を買いに行こう」
「ニクス、やる気満々……。何でやった覚えもないことをそんなにやる気を出してやろうと思えるの?」
「だって、ルパといるだけで楽しいんだもん。僕はルパと何か出来るだけで充分なんだ。それが何だろうが僕は一人じゃないって思えるから、楽しくない訳ないでしょ」
「うぅ、何か恥ずかしい……。ニクスが纏わり付いてくる感じが気持ち悪い……」
ルパは引き気味に言ってくる。でも、僕は彼女の毒舌にも慣れた。逆に僕を意識してくれているようでうれしい。
「じゃあルパは今日も縄を作ってくれるかな。僕は鍛錬をして体を酷使する。ルパは絶対安静だからね。動きたくなっても激しい運動は絶対に駄目だから」
「わかってる。動こうとしなければいいんでしょ。つまり、待てと一緒か……」
ルパは立ち上がろうとするもふら付き、立ち上がれない。
僕は薪と木の皮をルパのもとに持ってきた。
「これで一日過ごせるかな?」
「ん……。薪は足りるけど、縄作りは飽きるかも」
「それなら石削りも追加しようか。同じことをするんじゃなくて、交互にやれば効率よく出来る気がするんだけど、やってみる?」
「石削りって何するの?」
「綺麗な石の周りに付いた柔らかくて見かけの悪い石を取っていくんだ。この前拾った石に綺麗な石が沢山あったから拾っておいたんだ。ちょっとお手本を見せるよ」
僕は綺麗な石に岩が付着している原石を籠から取り出した。
「今からこの石を、綺麗な石だけにしていくんだ」
僕は黒く硬い石で柔らかい岩を砕いていく。コンコンと叩けば、綺麗な石の周りの岩は簡単に砕けて行った。ものの数分でルパすら瞳を輝かせている宝石が現れる。
「よし、これで綺麗な石だけの状態になったでしょ。まずはこれをやって行こうか。この後の工程はまだやらなくていいから、岩を取り除いたら何も入っていない籠の方にそっと入れて行ってね。割れやすい石もあるかもしれないから気をつけて」
「わ、わかった! ちょっとやってみる!」
ルパはおもむろに原石を取り出し、硬く割れない黒い石で岩を叩いていく。柔らかい岩は簡単に剥がれていくものの、硬い岩は中々剥がれない。
「むぅ……。あとちょっとなのに……。こうなったら思いっきり叩いて砕いたほうが早い」
ルパは思いっきり叩きつけようとしたのか腕を高く上げた。僕は咄嗟に止めて、コツを教える。
「ルパ、ずっと同じところを叩くんじゃなくて、円をかきながら少しずつ叩くって言う方法もあるから、着実にしていこう。そうしていれば、いつの間にか壊れていくからさ」
僕はルパの手を持ち、原石の岩を優しく叩いていく。すると、張り付いていた岩が周りから崩れ始め、簡単にポロっと取れた。
「あ、取れた……。こんなに呆気なく……」
「どう、気持ちいいでしょ。汚かった原石が綺麗な石だけになると面白いよね」
「まぁ、ちょっと楽しい」
「よかった。こまごまとした作業が好きなルパに気に入ってもらえて。じゃあ、プルスはルパの取り除いた岩石を処理してくれるかな」
「了解です。岩は焼却します」
僕はプルスをルパの足下に置く。
プルスは地面に落ちた岩を燃やし、消し炭にした。
ルパは作業をもくもくと進め始めたので僕も剣の鍛錬と槍の鍛錬を開始した。
朝食後の三時間ほど剣を振り続け、いい汗を掻いた。お腹が空いたがルパと同じ食事生活をしている僕は何も食べず、槍の鍛錬を開始した。
槍の動きは騎士養成学校の首席であるディアさんの動きを真似して練習していく。
そうした方が本番さながらの練習が出来ると思ったのだ。
僕は武器の鍛錬を終え、身体の鍛錬を行う。
武器が無くなったとしても基礎体力さえあれば生き残れる可能性が上がる。なら、自分の体を鍛えないと言う選択肢はない。
「はっ、はっ、はっ……。よし、これで今日の鍛錬は終了だ。水浴びをして汗を流さないと、ルパにまた、くさいって言われるからな」
僕は川の水で体を綺麗に洗い、乾いた布で体を拭き、新しい服に着替える。
現在の時刻は日の位置からして午後三時。僕のやりたいことが出来る時間が沢山作り出せた。
僕はいい気分になりながらルパのいる焚火場に向う。
「それは美味しいのか、不味いのかどっち?」
「んー。一人で食べたら美味しくないけど、ニクスに食べさせて貰ったら美味しいかも」
「じゃあ、美味しいんじゃん。はっきりそう言いなよ。もう一口食べる?」
「食べる」
僕はルパにスープを与え、ゆっくりと食べさせた。
僕も少しずつ食べてみたが、なかなか食べられる味だった。
美味しくはないけど、不味くもない。そんな感じの味だった。
でも、初めての料理にしては上出来だ。何度も思考錯誤すれば、美味しい料理が作れるかもしれない。
「ルパ、食べてる最中ずっと尻尾振ってたね。そんなに美味しかった?」
「別に、いつもと違った感じだったから面白かっただけ。美味しかったわけじゃない」
「そうなんだ。まぁ、もっと美味しく作れるように努力するよ。ルパも料理をしてみたら楽しいかもしれないよ」
「料理……。は、くだらない。焼いて食べるだけで充分だと思う」
「またそんなやせ我慢して……。でも、料理が出来るようになったらきっと生活は楽しくなるよ」
「……」
ルパは少し考えているのか、黙った。
「僕は料理が苦手だからルパに教えてあげられないけど、本とか買って作り方を覚えれば、ルパにも作れるようになるよ」
「料理が作れて何になるって言うの。別に出来なくても困らない。生きていく中で食事は手段でしかないんだから」
「そうだね。ただ、人は料理を娯楽の一つに数えている。僕は貧乏すぎて料理どころじゃなかったけど、今ならちょっとした料理は作れるんじゃないかな。ルパも一緒に料理を作れるようになろうね」
「まさか強制なの……」
「強制するわけじゃないけど、一緒に作った方が完成したときに美味しいよ。多分、食べさせてもらうより美味しく感じると思う」
「うぅー、なら、ちょっとやってみるしかないじゃん……」
「よし。今日は安静にして、ルパが元気になったら必要な道具を買いに行こう」
「ニクス、やる気満々……。何でやった覚えもないことをそんなにやる気を出してやろうと思えるの?」
「だって、ルパといるだけで楽しいんだもん。僕はルパと何か出来るだけで充分なんだ。それが何だろうが僕は一人じゃないって思えるから、楽しくない訳ないでしょ」
「うぅ、何か恥ずかしい……。ニクスが纏わり付いてくる感じが気持ち悪い……」
ルパは引き気味に言ってくる。でも、僕は彼女の毒舌にも慣れた。逆に僕を意識してくれているようでうれしい。
「じゃあルパは今日も縄を作ってくれるかな。僕は鍛錬をして体を酷使する。ルパは絶対安静だからね。動きたくなっても激しい運動は絶対に駄目だから」
「わかってる。動こうとしなければいいんでしょ。つまり、待てと一緒か……」
ルパは立ち上がろうとするもふら付き、立ち上がれない。
僕は薪と木の皮をルパのもとに持ってきた。
「これで一日過ごせるかな?」
「ん……。薪は足りるけど、縄作りは飽きるかも」
「それなら石削りも追加しようか。同じことをするんじゃなくて、交互にやれば効率よく出来る気がするんだけど、やってみる?」
「石削りって何するの?」
「綺麗な石の周りに付いた柔らかくて見かけの悪い石を取っていくんだ。この前拾った石に綺麗な石が沢山あったから拾っておいたんだ。ちょっとお手本を見せるよ」
僕は綺麗な石に岩が付着している原石を籠から取り出した。
「今からこの石を、綺麗な石だけにしていくんだ」
僕は黒く硬い石で柔らかい岩を砕いていく。コンコンと叩けば、綺麗な石の周りの岩は簡単に砕けて行った。ものの数分でルパすら瞳を輝かせている宝石が現れる。
「よし、これで綺麗な石だけの状態になったでしょ。まずはこれをやって行こうか。この後の工程はまだやらなくていいから、岩を取り除いたら何も入っていない籠の方にそっと入れて行ってね。割れやすい石もあるかもしれないから気をつけて」
「わ、わかった! ちょっとやってみる!」
ルパはおもむろに原石を取り出し、硬く割れない黒い石で岩を叩いていく。柔らかい岩は簡単に剥がれていくものの、硬い岩は中々剥がれない。
「むぅ……。あとちょっとなのに……。こうなったら思いっきり叩いて砕いたほうが早い」
ルパは思いっきり叩きつけようとしたのか腕を高く上げた。僕は咄嗟に止めて、コツを教える。
「ルパ、ずっと同じところを叩くんじゃなくて、円をかきながら少しずつ叩くって言う方法もあるから、着実にしていこう。そうしていれば、いつの間にか壊れていくからさ」
僕はルパの手を持ち、原石の岩を優しく叩いていく。すると、張り付いていた岩が周りから崩れ始め、簡単にポロっと取れた。
「あ、取れた……。こんなに呆気なく……」
「どう、気持ちいいでしょ。汚かった原石が綺麗な石だけになると面白いよね」
「まぁ、ちょっと楽しい」
「よかった。こまごまとした作業が好きなルパに気に入ってもらえて。じゃあ、プルスはルパの取り除いた岩石を処理してくれるかな」
「了解です。岩は焼却します」
僕はプルスをルパの足下に置く。
プルスは地面に落ちた岩を燃やし、消し炭にした。
ルパは作業をもくもくと進め始めたので僕も剣の鍛錬と槍の鍛錬を開始した。
朝食後の三時間ほど剣を振り続け、いい汗を掻いた。お腹が空いたがルパと同じ食事生活をしている僕は何も食べず、槍の鍛錬を開始した。
槍の動きは騎士養成学校の首席であるディアさんの動きを真似して練習していく。
そうした方が本番さながらの練習が出来ると思ったのだ。
僕は武器の鍛錬を終え、身体の鍛錬を行う。
武器が無くなったとしても基礎体力さえあれば生き残れる可能性が上がる。なら、自分の体を鍛えないと言う選択肢はない。
「はっ、はっ、はっ……。よし、これで今日の鍛錬は終了だ。水浴びをして汗を流さないと、ルパにまた、くさいって言われるからな」
僕は川の水で体を綺麗に洗い、乾いた布で体を拭き、新しい服に着替える。
現在の時刻は日の位置からして午後三時。僕のやりたいことが出来る時間が沢山作り出せた。
僕はいい気分になりながらルパのいる焚火場に向う。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる