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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

ルパの草鞋

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「傷口くらい……。舐めとけば治るでしょ。」

「珍しい。ルパがこんなに積極的になるなんて、どういった風の吹き回し?」

「友達……にはならない。家族にももちろんならない。でも、知り合いくらいにならなってあげる。話をするくらいの仲なら別に悲しくならない」

「はは……。知り合いくらいの人の傷を舐めるんだ。じゃあ、家族になったらチュウくらいしてくれるのかな」

「バカなこと言っているとまた噛む……。今度は指を噛み千切る」

「ご、ごめんって。冗談だよ。冗談」

「ニクスが言うと冗談に聞こえない。いったい何人の人にそんなこと言ってきたの」

「僕がルパ以外にそんなこといえる訳ないでしょ。そもそも、そんなことを言う機会は訪れなかったよ」

「ニクスはやっぱりへたれ。そもそも子供の私とキスなんてしたかったの? うわぁ……、可愛そう。大人と出来ないからって奴隷の私を使ってあんなことやそんなことをしようとしているの? 情けないなー。可愛そうな人、私しかニクスと話せる相手がいないなんて」

「あんなことやそんなことってなんだよ。そもそも、僕はルパ以外の人とも話せるよ。友達じゃないけど……」

「ふーん。でも、ニクスと今いるのは私。ニクスと話しているのも私。知り合い度合は私の方が上」

「そうだね。ルパとは一緒に寝たり、ご飯を食べたりしているから、普通の知り合い以上の関係になっていると思うよ」

「ならいい。それで何で街に行くの? 重症な知り合いを置いて……」

「お金と貰いに行かないといけない。あと、様子を見てこないといけないんだ。ルパも来る? 人を襲ったらダメだけど」

「うぐぐ……。人がいるところに行くのは気が引ける……、でも行かないとまた死にかけるかもしれない。今は攻撃出来ないから人に出会っても襲えない。だからついていっても無害」

「そう。じゃあ、僕と街に行こうか。そうなると、服を着てもらわないといけないな。今は戦う必要がないから服をちゃんと着てくれるよね?」

「わ、わかった……」

 僕はルパを抱き上げて家の中に向う。僕の買った下着とズボンを履かせた。そのあと、上側着させる。

「う、こんなに動きにくいのか……。人間はほんとに面倒な種族だな」

「ルパ達は自由過ぎるよ。よし、ルパ用の草鞋を作ったし、これで裸足にならないで済む。さ、履いてみて」

 僕は縄で簡単な草鞋ををつくり

「草鞋なんて久々に見た……。よくこんな面倒な物を作れるな」

「僕の得意分野だからね。どう、着け心地は?」

「悪くない」

「そう、なら良かった」

 僕達は出発の準備を整えて外に出た。

「ここから街までどれだけあるの?」

「ざっと一◯◯◯キロメートルくらいかな」

「一◯◯◯キロメートル? どれだけ離れているかわからない」

「まぁ、普通に歩いて行ったら凄い時間が掛かっちゃう距離だよ」

「じゃあどうやって行くの?」

「空を飛んで行くんだ。あっという間についちゃうよ」

「空を飛ぶ……?」

 どうやらルパには僕が何を言っているのかよくわかっていないみたいだった。

「ま、実際に見てもらったほうが早いかな。『炎の翼』」

 僕は『炎の翼』を発動する。プルスは僕の背中に移動し、燃え盛る翼になった。

「うわ……。熱い、でも燃えない……。ニクス、いったい何が起きてるの?」

「これはプルスが僕にくれた『炎の翼』という能力だよ。これで空を飛ぶんだ」

「炎の翼で空を飛ぶなんて……。出来るの?」

「まぁ見てなよ。さ、街に行くよ」

 僕はルパに近づく。ルパも僕に近づいてきた。

「さあ、僕の胸に飛び込んでおいで。僕ならルパの寂しさを打ち消してあげられるよ」

「む……」

 ルパは僕のお腹に拳を入れて来た。

「う、うぉ……。重い一撃……」

 体が吹き飛びそうなほどの威力で、僕は何が起こったのか一瞬わからなかった。

「勘違いするな。別に寂しいから傍にいる訳じゃない。今の私じゃ、戦えないから仕方なくここにいる」

「わ、わかった。調子に乗ってごめん」

「わかればいい。じゃあ……」

 ルパは僕の体に抱きつく。腕を回し落ちないようにしていた。

 僕は縄でルパが落ちないように体に縛りつける。

「ちょ、きつく縛りすぎなんじゃないか……。こんなに縛る必要あるの?」

「落ちたら死んじゃうから、しっかり縛り付けておかないと。何が起こっても大丈夫なようにしておくのが必要なんだよ」

「そうかもしれないけど、顔がちょっと近い……」

「ルパの背が低いから仕方ないでしょ。上に持って来ないと飛び辛いからさ」

「うぅ……。じゃぁ、我慢する」

「ありがとう、やっぱりルパはいい子だね」

「うるさい……。別にいい子じゃない。人を何人も殺そうとしている獣族だ」

「そうだね。でも、僕にはそう見えない。あと、人殺しは絶対にさせないから」

「ふん……。今は力が出ないから人は襲わない。おとなしくしてる」

 ルパは視線をそらし、呟いた。

「さっき思いっきりお腹を殴られたんだけどな……。あれで本気じゃないのか」

 僕は内臓が潰れているのではないかと言う痛みを感じながらも、エナの素直に慣れていないかんじに微笑んでしまう。

「主。内臓がいくつか破裂しているので、治しますか?」

――や、やっぱりそうだったんだ。あまりにも痛いからさ、おかしいと思ったんだよ。

「それにしては薄い反応でしたね」

――あんなところで痛がったらルパに悪いでしょ。少し懲らしめるつもりが致命傷を与えていたなんて知ったらルパが申し訳なさそうな顔をしちゃうよ。

「そうですかね……。でもまぁ、主じゃなかったら相当危険な状態なので、悲しむかもしれませんね」

――でしょ。というか、早く治して。口から血を吐きそうになっているのを何とか堪えているんだから。これ以上は我慢できないよ。

「わかりました。治しますね」

 プルスの火が僕のお腹の辺りに向う。すると、痛みが引いていき、吐き気も止まった。

「ふぅ……。危なかった」

「なにが?」

「い、いや。何でもないんだ。ルパは気にしないで」

「わ、わかった」

 僕はルパに気を使って死にかけていた事実を隠した。あのまま追撃されていたら僕は死んでいた。何とか隠し通せてよかった。
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