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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
角ウサギの増殖
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『ギュ!!』
「さあ、来い!」
角ウサギたちは僕に向って一斉に襲ってくる。
――多数でも、一羽ずつ倒せばいいだけだ。
僕の持っている剣の穂先が角ウサギの喉元に突き刺さり、絶命させる。
――角ウサギの素材は皮と角。肉も新鮮なら買い取ってくれるはずだ。なら、出来るだけ外傷は少なくした方がいいか。
僕は剣をしまい、拳で戦うことにする。首の骨さえ折れば、角ウサギのような低ランクの魔物は動けない。高ランクのブラックベアーは頭を半分無くしても動いていた。あれはもう、化け物に近い。
『ドドドドドドドドドドッ!!』
一羽の首を折ったら、別の個体に手刀を加えていく。首に手刀を与えるとドッ! という音が鳴り、大量に鳴り響くので地響きが起きたのではないかと錯覚する。
角ウサギがあまりにも大量に襲ってくるので、剣では間に合わなかったのも拳に変えた理由の一つだ。
「あ、主、もの凄い体術ですね。いったいどこで……」
プルスは僕の頭の上にしっかりとしがみ付いている。
――騎士養成学校の授業で習ったんだよ。武器が壊れたり無くなったりしたら自分の身は自分で守るしかないからね。武器に頼っていたら、いつか自分が死地に立たされると思って頑張って練習したんだ。
僕は襲ってくる角ウサギを倒し続けた。そうしないと街に向えなかったからだ。あまりにも数が多く、進む道すらない。どうやらいつの間にか増え続けていたようだ。
角ウサギの死体が地面に転がってばかりで数百羽倒したあたりで角ウサギたちは退いて行った。
「ふぅ……。結構倒したな。これをいちいち処理していたら大変だぞ」
「ま、持てるだけ持っていけばいいんじゃないですか。あとは燃やして処理してしまいましょう」
「それはそれでもったいないな。せっかくお金になるんだから」
「なら、角と皮だけ残して、あとは燃やせばいいんじゃないですか」
「そんな細かいこと出来るの?」
「可能だと思いますよ」
「じゃあ、一回やってみるよ」
僕は一羽の角ウサギを掴み、燃やす。
「って、全部灰になっちゃったよ。これも加減が難しいな」
「慣れが必要な作業なのですね。では、私は灰になってしまった角ウサギを食べますね」
プルスは僕の頭から飛び降りて灰になった角ウサギを突きながら食べる。
「うーん。肉付きが良くて美味しいですー」
「どこに肉なんて付いているんだよ。ただの灰じゃないか」
「雰囲気ですよ、雰囲気。もー、主は全くわかっていませんね」
「雰囲気って……」
僕は練習をする。多くの角ウサギを燃やしては灰にして、燃やしては灰にした。三○○羽目くらいで、一回ようやく成功する。
「よし。何となくコツを掴んだぞ」
僕は一度成功したあと、連続で成功し続け二○○本の角と二○○枚の毛皮を手に入れた。中身が燃えているので、一枚一枚腹を切って中から灰を出さなければならなかったが簡単な作業なのですぐに終わる。腹を切っている最中、角ウサギの魔石が二個取れた。
「角が二○○本、毛皮が二○○枚、魔石が二個。これは大きな収穫だね、プルス」
「ゲップ……。もう、お腹いっぱいで食べられません」
プルスは僕の失敗してしまった時に出る灰を全て平らげていた。そのせいでお腹がパンパンに膨れている。
「ルパのお土産は帰りにでも捕まえよう。新鮮な方が美味しいからね」
「ゲップ、そうですね」
僕はぽっちゃり体型になったプルスを手で掬い取り、頭に乗せる。先ほどよりも格段に重くなっていた。だが、ほんの数秒で元に戻る。
「ふぅー。消化しました。最高の食事でしたよ」
「そう。よかったじゃん。さ、街に向おう」
僕達はようやく前に進める。空を見ると日が真上にあるので出発してからもう四時間以上たっていた。ルパに速く帰ると言っているので、もう帰っていたかったのだが、まだ素材の換金すらしていない。
「早くしないとルパがカンカンに怒っちゃう。もうルパに嫌われたくないから、急がないと」
「ルパに一人の寂しさを教えるいい機会です。ギリギリまで焦らしてやるのはどうですか」
ルパは掠れた悪い声を出して僕に提案してくる。
「そんなことしたら嫌われちゃうでしょ。ただでさえ嫌われているんだから、これ以上評価を落としたら、もう元に戻らないくらい地の底に落ちちゃうよ」
「主、危険は好機になり得ます。今の状況は危険ですが、ルパに主の大切さを思い知らせる好機でもあるんですよ」
「え。じゃあ、僕が少し遅れて帰るとルパはどうなるの?」
「そりゃあもう、ルパは主にベタベタの甘々になりますよ。常に尻尾を振って頬を摺り寄せてくるくらい懐かれるんじゃないですかね」
「ゴクリ……」
僕はそんな未来が訪れるのならプルスの提案に乗ってもいいかもしれないと考えた。だが、冷静に考えて約束を守れない人間にルパは懐くのかと思ってしまった。
「やっぱり、早めに帰るよ。そうした方がルパも安心できるでしょ」
「そうですか。面白い作戦だと思ったんですけどねー」
プルスは不貞腐れたらしく頭でスライムみたく潰れて座っている。
「プルス、提案してくれてありがとう。また何か面白いことを思いついたら僕に教えてよ」
「わかりました。主がいいねと言ってくださるまでいろいろ考えたいと思います」
プルスは意欲を取り戻し、何かを考えるように頭を揺らす。
僕はプルスが何か面白い案を出してくれるまで歩いていた。
その後、結局プルスは何も僕に提案することなく、僕は街の門に到着してしまった。
「zzz、zzz」
「プルス? もしかして寝てるの」
「zzz、zzz」
「寝てるのか……。まぁ、いいや」
僕は理解したプルスは思考しすぎて頭上で寝てしまったのだと。だから、提案が一度もなかったのだ。
僕はプルスが寝ているのなら寝かせてあげようと思い、起こすことなく移動し、門の前にいる傭兵のおじさんに話しかけた。
「すみません。通してもらってもいいですか」
「あ、お前、またこっちの方角から来たのか?」
「はい。そうですけど。それがどうかしましたか?」
「今、この辺りで角ウサギが大量発生しているんだ。街の周りの草木を食い散らかして大繁殖したらしい。どうも、噴火の際森の方から移動してきた個体らしいんだが天敵がいないからか数が爆発的に増加したんだ。今、討伐隊を結成して多くの冒険者達と傭兵が出撃する手はずになっているんだよ」
「へぇー。そうなんですか」
「軽いな……。まぁ、街に住んでいない奴からしたら他人事かもしれないが、俺達にとっては解消しなければならない最重要事項なんだよ」
「でも、角ウサギですよね。角ウサギが大量に増えたとしても冒険者達が集まれば簡単に倒せるんじゃないですか?」
「容易く言うな。角ウサギは群れると格段に強くなる。魔物は弱いものほどよく群れると言うが、角ウサギはまさにそれだ」
「角ウサギが群れるとどれくらい強くなるんですかね?」
「統率力が増して、烏合の衆が一気に変化するんだ。まさに騎士団のような統率をほこり、冒険者をなぶり殺しにする。もう既に多くの冒険者の被害が出ているんだ。加えて今日は満月の日、角ウサギが最も活発に動く」
「そんな特性があったんですね。えっと、まぁ、その話はもういいので僕を通してもらえますか?」
「あ、ああ。わかった。ギルドカードを見せてくれ」
「はい」
僕はおじさんにギルドカードを見せる。
「さあ、来い!」
角ウサギたちは僕に向って一斉に襲ってくる。
――多数でも、一羽ずつ倒せばいいだけだ。
僕の持っている剣の穂先が角ウサギの喉元に突き刺さり、絶命させる。
――角ウサギの素材は皮と角。肉も新鮮なら買い取ってくれるはずだ。なら、出来るだけ外傷は少なくした方がいいか。
僕は剣をしまい、拳で戦うことにする。首の骨さえ折れば、角ウサギのような低ランクの魔物は動けない。高ランクのブラックベアーは頭を半分無くしても動いていた。あれはもう、化け物に近い。
『ドドドドドドドドドドッ!!』
一羽の首を折ったら、別の個体に手刀を加えていく。首に手刀を与えるとドッ! という音が鳴り、大量に鳴り響くので地響きが起きたのではないかと錯覚する。
角ウサギがあまりにも大量に襲ってくるので、剣では間に合わなかったのも拳に変えた理由の一つだ。
「あ、主、もの凄い体術ですね。いったいどこで……」
プルスは僕の頭の上にしっかりとしがみ付いている。
――騎士養成学校の授業で習ったんだよ。武器が壊れたり無くなったりしたら自分の身は自分で守るしかないからね。武器に頼っていたら、いつか自分が死地に立たされると思って頑張って練習したんだ。
僕は襲ってくる角ウサギを倒し続けた。そうしないと街に向えなかったからだ。あまりにも数が多く、進む道すらない。どうやらいつの間にか増え続けていたようだ。
角ウサギの死体が地面に転がってばかりで数百羽倒したあたりで角ウサギたちは退いて行った。
「ふぅ……。結構倒したな。これをいちいち処理していたら大変だぞ」
「ま、持てるだけ持っていけばいいんじゃないですか。あとは燃やして処理してしまいましょう」
「それはそれでもったいないな。せっかくお金になるんだから」
「なら、角と皮だけ残して、あとは燃やせばいいんじゃないですか」
「そんな細かいこと出来るの?」
「可能だと思いますよ」
「じゃあ、一回やってみるよ」
僕は一羽の角ウサギを掴み、燃やす。
「って、全部灰になっちゃったよ。これも加減が難しいな」
「慣れが必要な作業なのですね。では、私は灰になってしまった角ウサギを食べますね」
プルスは僕の頭から飛び降りて灰になった角ウサギを突きながら食べる。
「うーん。肉付きが良くて美味しいですー」
「どこに肉なんて付いているんだよ。ただの灰じゃないか」
「雰囲気ですよ、雰囲気。もー、主は全くわかっていませんね」
「雰囲気って……」
僕は練習をする。多くの角ウサギを燃やしては灰にして、燃やしては灰にした。三○○羽目くらいで、一回ようやく成功する。
「よし。何となくコツを掴んだぞ」
僕は一度成功したあと、連続で成功し続け二○○本の角と二○○枚の毛皮を手に入れた。中身が燃えているので、一枚一枚腹を切って中から灰を出さなければならなかったが簡単な作業なのですぐに終わる。腹を切っている最中、角ウサギの魔石が二個取れた。
「角が二○○本、毛皮が二○○枚、魔石が二個。これは大きな収穫だね、プルス」
「ゲップ……。もう、お腹いっぱいで食べられません」
プルスは僕の失敗してしまった時に出る灰を全て平らげていた。そのせいでお腹がパンパンに膨れている。
「ルパのお土産は帰りにでも捕まえよう。新鮮な方が美味しいからね」
「ゲップ、そうですね」
僕はぽっちゃり体型になったプルスを手で掬い取り、頭に乗せる。先ほどよりも格段に重くなっていた。だが、ほんの数秒で元に戻る。
「ふぅー。消化しました。最高の食事でしたよ」
「そう。よかったじゃん。さ、街に向おう」
僕達はようやく前に進める。空を見ると日が真上にあるので出発してからもう四時間以上たっていた。ルパに速く帰ると言っているので、もう帰っていたかったのだが、まだ素材の換金すらしていない。
「早くしないとルパがカンカンに怒っちゃう。もうルパに嫌われたくないから、急がないと」
「ルパに一人の寂しさを教えるいい機会です。ギリギリまで焦らしてやるのはどうですか」
ルパは掠れた悪い声を出して僕に提案してくる。
「そんなことしたら嫌われちゃうでしょ。ただでさえ嫌われているんだから、これ以上評価を落としたら、もう元に戻らないくらい地の底に落ちちゃうよ」
「主、危険は好機になり得ます。今の状況は危険ですが、ルパに主の大切さを思い知らせる好機でもあるんですよ」
「え。じゃあ、僕が少し遅れて帰るとルパはどうなるの?」
「そりゃあもう、ルパは主にベタベタの甘々になりますよ。常に尻尾を振って頬を摺り寄せてくるくらい懐かれるんじゃないですかね」
「ゴクリ……」
僕はそんな未来が訪れるのならプルスの提案に乗ってもいいかもしれないと考えた。だが、冷静に考えて約束を守れない人間にルパは懐くのかと思ってしまった。
「やっぱり、早めに帰るよ。そうした方がルパも安心できるでしょ」
「そうですか。面白い作戦だと思ったんですけどねー」
プルスは不貞腐れたらしく頭でスライムみたく潰れて座っている。
「プルス、提案してくれてありがとう。また何か面白いことを思いついたら僕に教えてよ」
「わかりました。主がいいねと言ってくださるまでいろいろ考えたいと思います」
プルスは意欲を取り戻し、何かを考えるように頭を揺らす。
僕はプルスが何か面白い案を出してくれるまで歩いていた。
その後、結局プルスは何も僕に提案することなく、僕は街の門に到着してしまった。
「zzz、zzz」
「プルス? もしかして寝てるの」
「zzz、zzz」
「寝てるのか……。まぁ、いいや」
僕は理解したプルスは思考しすぎて頭上で寝てしまったのだと。だから、提案が一度もなかったのだ。
僕はプルスが寝ているのなら寝かせてあげようと思い、起こすことなく移動し、門の前にいる傭兵のおじさんに話しかけた。
「すみません。通してもらってもいいですか」
「あ、お前、またこっちの方角から来たのか?」
「はい。そうですけど。それがどうかしましたか?」
「今、この辺りで角ウサギが大量発生しているんだ。街の周りの草木を食い散らかして大繁殖したらしい。どうも、噴火の際森の方から移動してきた個体らしいんだが天敵がいないからか数が爆発的に増加したんだ。今、討伐隊を結成して多くの冒険者達と傭兵が出撃する手はずになっているんだよ」
「へぇー。そうなんですか」
「軽いな……。まぁ、街に住んでいない奴からしたら他人事かもしれないが、俺達にとっては解消しなければならない最重要事項なんだよ」
「でも、角ウサギですよね。角ウサギが大量に増えたとしても冒険者達が集まれば簡単に倒せるんじゃないですか?」
「容易く言うな。角ウサギは群れると格段に強くなる。魔物は弱いものほどよく群れると言うが、角ウサギはまさにそれだ」
「角ウサギが群れるとどれくらい強くなるんですかね?」
「統率力が増して、烏合の衆が一気に変化するんだ。まさに騎士団のような統率をほこり、冒険者をなぶり殺しにする。もう既に多くの冒険者の被害が出ているんだ。加えて今日は満月の日、角ウサギが最も活発に動く」
「そんな特性があったんですね。えっと、まぁ、その話はもういいので僕を通してもらえますか?」
「あ、ああ。わかった。ギルドカードを見せてくれ」
「はい」
僕はおじさんにギルドカードを見せる。
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