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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
ずっと嗅いでいたくなる匂い
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「あ~ん」
「な、なんか……食べづらい。その掛け声止めて」
「あ、ごめん……。はい、どうぞ」
ルパは角ウサギの肉を食べる。
「やっぱり、食べさせてもらったほうが美味しく感じる……。同じ角ウサギのはずなのに、変な感じ」
「そうなの? じゃあ、僕にもやってよ」
「えー、ニクスに肉を食べさせるのー。なんかもったいないな」
ルパはあからさまに嫌そうな顔をした。
「一口だけだから。ね」
「一口だけ」
ルパは角ウサギの肉を一口大に割き、僕に食べさせてくれた。
「ん……。うん……。確かに美味しく感じるかも。ルパが僕のために千切って、口に運んでくれたと言う工程が凄く嬉しいから美味しく感じるんだ。きっとそうだよ」
「私はそんな嬉しさを感じない。でも、人が私に使えているみたいで優越感が凄い。これ、癖になりそう」
「ルパ、今のまま行ったら人と同じだよ。自分の状態を俯瞰して考えてみて」
「俯瞰?」
「自分の姿を上の方から覗き見る感覚を俯瞰と言うんだ」
「なるほど。じゃあ、一回やってみる」
ルパはぽけーッと上を向き、俯瞰し始めた。
「はっ! 人間と同じだ!」
ルパは人が奴隷を使う状況を思い出したのか、ばっと立ち上がった。
「どうだった、ルパ。それが人の得ている感覚だよ」
「こ、怖い……。さっきの優越感が支配欲」
ルパは頭を振り、先ほどの快感を振り払う。
「私は人間みたいにはならない」
「まぁ、普通の人は支配欲なんてそう簡単に持たないけど、他にもいろんな快感があるから取りつかれないように気をつけないとね」
「そんなこと言われなくてもわかってる。私は獣族の誇りを忘れない。たとえ奴隷になっていたとしても、人のように快楽を追いかける生き物にはならない」
「いい方向の快楽ならいいと思うけど、悪い方向の快楽は断罪しないと危険なんだよね」
「ニクスは欲求強すぎ。でも、悪い欲求じゃないからまし」
「それを言ったら、ルパだって食欲強すぎるでしょ。どれだけ食べる気なの」
「今まで全然食べられなかったからその分いっぱい食べて強くなるの。強くなって、ニクスを倒す。そのまま、人の街に行って私の村を襲った犯人を殺す。その後、人を殺しまくって最後に私も死ぬ」
「そんなこと、僕は死んでも絶対にさせないからね。もしやろうとしたら、耳と尻尾をさっき以上に弄るから」
「へ、変態!」
ルパは耳を両手で隠すように折りたたみ、尻尾を丸める。
「耳と尻尾は隠そうとするんだね……」
僕はルパに残り九羽の角ウサギを食べさせてあげた。と言うよりも、僕が手渡している状況の方が近い。綺麗に千切ってルパに手渡す。この工程を一〇羽繰り返した。
「ふ~。お腹いっぱい。大満足……」
僕はルパが満腹になり上機嫌な時を狙って、大きめの服を渡した。
「ルパ、その上着を脱いでこの新しい服を着て。ずっと臭いにおいを嗅いでるのは嫌でしょ」
「む~。まぁ仕方ない。じゃあ、ニクス。その新しい服を着て思いっきり走ってきて。その後、私が着るから」
「変わった注文だな。いったいなんの意味があるの?」
「いいから。早く行って」
「わ、わかった」
僕はルパの命令に従った。今、機嫌を損ねられたらまたしても信頼度がゼロに戻ってしまうと考えたのだ。
僕は新しい服を着て思いっきり走った。とりあえず、森まで走り、家に戻ってくる。
「ふぅー。これでいい?」
「ん」
ルパは右手を差し出してきた。
僕は何をして欲しいかわからず、手を握る。
「違う。服、貸して」
「ああ、そっちね」
僕は服を脱ぎ、ルパに手渡した。
ルパは僕の貸した紳士服を脱ぎ捨てて新しく渡した大きめのシャツを着る。
「スンスン……。スンスン……。わふ……。はっ!」
ルパはシャツの匂いを嗅いでほわほわとした表情になったあと、眼を一瞬で見開いて頭を振っていた。その工程を永遠と繰り返している。
「ルパ。本当に何やってるの?」
「ニクスの匂い、変……。私の鼓動が勝手に速くなる。知らない感覚。なんか癖になる」
「獣族の特性でもあるのかな。相手の体調を知る時はよく嗅いでたんでしょ」
「うん。においでだいたいわかる。病気とか眠たそうとか、楽しいとかだいたいわかる。でも、ニクスの匂い、よくわからない。ずっと嗅いでいたくなるような感じなのに、何か苛立ちを覚える。もう嗅がないようにしようと思ってもいつの間にか、嗅いでる。だから変……」
ルパは真っ裸なのに未だにシャツを着ず、鼻に当てていた。
「ルパが嫌じゃなければいいんだ。さ、ルパ。昼からの鍛錬を始めよう」
「う、今……お腹いっぱいで動けない。また後で」
「ルパ、さっき自分で人間みたいにはならないって言ったよね。食っちゃねしてたら人になるよ。それでもいいの?」
「い、嫌だ」
ルパは人になるのが嫌と言う理由で立ち上がった。そのまま手に持っているシャツを着る。
――この方法なら、ルパを動かせそうだ。身を守る防御策にもなるぞ。もしルパが僕を殺しそうになったら。僕を殺したら人みたいになるぞ。と言えばルパは一瞬固まる。その瞬間に倒せばいい。
「主、だいぶ姑息な作戦ですね。でも、有効そうですよ。獣族は信念が強いですからね。人になりたくないと言うルパの気持ちが強ければ強いほど、効果は高まりそうです。さすが人族、考える作戦があくどいですね」
プルスは僕の頭の中に話かけて来た。
――あくどくないよ。僕はルパを殺人犯にしたくないだけだ。愛らしいルパを人殺しの罪で斬首刑に何かさせない。
僕とルパは昼から日が赤くなるまで鍛錬を続けた。ルパは終始僕を殺そうとしてきたが、僕は自分の命を守り続けた。
「もーだめー。うごけなーい!」
「お疲れさま。よく頑張ったね」
「強くなりたい。だから、頑張るのは当たり前」
「凄い、偉いじゃないか。そんなふうに思えるなんてルパは凄いよ」
「強くなって人をいっぱい殺すの。お父さん、お母さんを殺した報いを受けさせる」
「同機は相当怖いけど、強くなろうとする心意気は大切だからね。じゃあ、今からはお勉強だよ。ルパは家の前に戻っていて。僕は角ウサギを狩ってから戻るから」
「わかった」
ルパは家のある方向に歩いて行った。
「な、なんか……食べづらい。その掛け声止めて」
「あ、ごめん……。はい、どうぞ」
ルパは角ウサギの肉を食べる。
「やっぱり、食べさせてもらったほうが美味しく感じる……。同じ角ウサギのはずなのに、変な感じ」
「そうなの? じゃあ、僕にもやってよ」
「えー、ニクスに肉を食べさせるのー。なんかもったいないな」
ルパはあからさまに嫌そうな顔をした。
「一口だけだから。ね」
「一口だけ」
ルパは角ウサギの肉を一口大に割き、僕に食べさせてくれた。
「ん……。うん……。確かに美味しく感じるかも。ルパが僕のために千切って、口に運んでくれたと言う工程が凄く嬉しいから美味しく感じるんだ。きっとそうだよ」
「私はそんな嬉しさを感じない。でも、人が私に使えているみたいで優越感が凄い。これ、癖になりそう」
「ルパ、今のまま行ったら人と同じだよ。自分の状態を俯瞰して考えてみて」
「俯瞰?」
「自分の姿を上の方から覗き見る感覚を俯瞰と言うんだ」
「なるほど。じゃあ、一回やってみる」
ルパはぽけーッと上を向き、俯瞰し始めた。
「はっ! 人間と同じだ!」
ルパは人が奴隷を使う状況を思い出したのか、ばっと立ち上がった。
「どうだった、ルパ。それが人の得ている感覚だよ」
「こ、怖い……。さっきの優越感が支配欲」
ルパは頭を振り、先ほどの快感を振り払う。
「私は人間みたいにはならない」
「まぁ、普通の人は支配欲なんてそう簡単に持たないけど、他にもいろんな快感があるから取りつかれないように気をつけないとね」
「そんなこと言われなくてもわかってる。私は獣族の誇りを忘れない。たとえ奴隷になっていたとしても、人のように快楽を追いかける生き物にはならない」
「いい方向の快楽ならいいと思うけど、悪い方向の快楽は断罪しないと危険なんだよね」
「ニクスは欲求強すぎ。でも、悪い欲求じゃないからまし」
「それを言ったら、ルパだって食欲強すぎるでしょ。どれだけ食べる気なの」
「今まで全然食べられなかったからその分いっぱい食べて強くなるの。強くなって、ニクスを倒す。そのまま、人の街に行って私の村を襲った犯人を殺す。その後、人を殺しまくって最後に私も死ぬ」
「そんなこと、僕は死んでも絶対にさせないからね。もしやろうとしたら、耳と尻尾をさっき以上に弄るから」
「へ、変態!」
ルパは耳を両手で隠すように折りたたみ、尻尾を丸める。
「耳と尻尾は隠そうとするんだね……」
僕はルパに残り九羽の角ウサギを食べさせてあげた。と言うよりも、僕が手渡している状況の方が近い。綺麗に千切ってルパに手渡す。この工程を一〇羽繰り返した。
「ふ~。お腹いっぱい。大満足……」
僕はルパが満腹になり上機嫌な時を狙って、大きめの服を渡した。
「ルパ、その上着を脱いでこの新しい服を着て。ずっと臭いにおいを嗅いでるのは嫌でしょ」
「む~。まぁ仕方ない。じゃあ、ニクス。その新しい服を着て思いっきり走ってきて。その後、私が着るから」
「変わった注文だな。いったいなんの意味があるの?」
「いいから。早く行って」
「わ、わかった」
僕はルパの命令に従った。今、機嫌を損ねられたらまたしても信頼度がゼロに戻ってしまうと考えたのだ。
僕は新しい服を着て思いっきり走った。とりあえず、森まで走り、家に戻ってくる。
「ふぅー。これでいい?」
「ん」
ルパは右手を差し出してきた。
僕は何をして欲しいかわからず、手を握る。
「違う。服、貸して」
「ああ、そっちね」
僕は服を脱ぎ、ルパに手渡した。
ルパは僕の貸した紳士服を脱ぎ捨てて新しく渡した大きめのシャツを着る。
「スンスン……。スンスン……。わふ……。はっ!」
ルパはシャツの匂いを嗅いでほわほわとした表情になったあと、眼を一瞬で見開いて頭を振っていた。その工程を永遠と繰り返している。
「ルパ。本当に何やってるの?」
「ニクスの匂い、変……。私の鼓動が勝手に速くなる。知らない感覚。なんか癖になる」
「獣族の特性でもあるのかな。相手の体調を知る時はよく嗅いでたんでしょ」
「うん。においでだいたいわかる。病気とか眠たそうとか、楽しいとかだいたいわかる。でも、ニクスの匂い、よくわからない。ずっと嗅いでいたくなるような感じなのに、何か苛立ちを覚える。もう嗅がないようにしようと思ってもいつの間にか、嗅いでる。だから変……」
ルパは真っ裸なのに未だにシャツを着ず、鼻に当てていた。
「ルパが嫌じゃなければいいんだ。さ、ルパ。昼からの鍛錬を始めよう」
「う、今……お腹いっぱいで動けない。また後で」
「ルパ、さっき自分で人間みたいにはならないって言ったよね。食っちゃねしてたら人になるよ。それでもいいの?」
「い、嫌だ」
ルパは人になるのが嫌と言う理由で立ち上がった。そのまま手に持っているシャツを着る。
――この方法なら、ルパを動かせそうだ。身を守る防御策にもなるぞ。もしルパが僕を殺しそうになったら。僕を殺したら人みたいになるぞ。と言えばルパは一瞬固まる。その瞬間に倒せばいい。
「主、だいぶ姑息な作戦ですね。でも、有効そうですよ。獣族は信念が強いですからね。人になりたくないと言うルパの気持ちが強ければ強いほど、効果は高まりそうです。さすが人族、考える作戦があくどいですね」
プルスは僕の頭の中に話かけて来た。
――あくどくないよ。僕はルパを殺人犯にしたくないだけだ。愛らしいルパを人殺しの罪で斬首刑に何かさせない。
僕とルパは昼から日が赤くなるまで鍛錬を続けた。ルパは終始僕を殺そうとしてきたが、僕は自分の命を守り続けた。
「もーだめー。うごけなーい!」
「お疲れさま。よく頑張ったね」
「強くなりたい。だから、頑張るのは当たり前」
「凄い、偉いじゃないか。そんなふうに思えるなんてルパは凄いよ」
「強くなって人をいっぱい殺すの。お父さん、お母さんを殺した報いを受けさせる」
「同機は相当怖いけど、強くなろうとする心意気は大切だからね。じゃあ、今からはお勉強だよ。ルパは家の前に戻っていて。僕は角ウサギを狩ってから戻るから」
「わかった」
ルパは家のある方向に歩いて行った。
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