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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

綺麗な朝の景色

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 死にかけた次の日の朝。

「う……ぅん。ふぁ~~」

「ぴよ……」

 僕が目を覚まし、上半身を起こすとプルスが膝に落ちてきた。どうやら寝ている間に頭の方へ移動していたらしい。

 丸い窓の隙間から日差しが入り家の中を明るくしていた。

「おはよう、プルス。いい朝だね……」

「おはようございます。主……ぴよ」

 プルスは体を震わして眠気を覚ます。僕も大きく伸びをして目を覚ました。

「はぁ~、目が覚めたらお腹がすきました」

「なら、灰の山に行こう」

 僕はプルスを掌ですくい、移動させる。

「主、頭の上に乗せてください」

「頭……? まぁ、いいけど」

 僕はプルスを頭の上に持っていく。

「ふぅ~。ここが一番落ちつきます」

「そうなんだ。僕からはプルスの姿が全く見えないんだけど」

 僕は視線を上に向けるも、見えるのはまつ毛と前髪だけでプルスの姿は見えない。

「あまり頭を動かされると、落ちてしまうので動かさないようにしてください」

 プルスはおでこ辺りにまで這って来て僕に伝える。

「いちいち注文が多いな……」

 僕は背筋を伸ばし、頭を振らないよう心掛ける。

 家に出ると、昨日の雨が嘘かのように雲一つない快晴だった。

「ぴよ~。空が青いですね~、主」

「そうだね。まさか昨日、死にかけたとは思えないほど、景色が綺麗だよ」

 雨水によって濡れた荒野と雑草に雫がのり、日の光を屈折させてキラキラと輝いていた。地面に大量の宝石が落ちているかのようで心が現れる。

「あ、あれが私のいた火山ですね」

 僕は火山の方を向いていたのでプルスにも見えたようだ。

「そうだと思う。火山の噴火が起きて家のすぐそばの鶏小屋にプルスの卵が落ちていたんだ」

「へぇ~。鶏小屋とは運命を感じますね」

「そうだね。まぁ、火山のせいで僕の買った物は全て丸焦げになっちゃったから、凄く苦労したよ」

「そうでしたね、色々と私に向って愚痴っていたのを聞きましたよ。ですが主は凄いですね。一人で家を建て、二カ月ほど生き残るなんて……。ここまで出来る人は中々いませんよ」

「僕の愚痴がプルスには聞こえてたんだ……。なんか恥ずかしいな」

「元から友達のいない主にとっては私が初めてのお友達みたいな存在ですね。いや、お友達以上の存在、一心同体の夫婦ですよ」

「飛躍しすぎな、気もするけど……。でも、友達か、なんかうれしいな。そう言えばちゃんと話せてる。凄い、僕は人と話すの苦手なのに、プルスが相手だと普通に話せているよ」

「私が人ではないからじゃないですか?」

「それもあるかも。でも、動物と喋ってる気もしないんだよな。まぁ、気にしなくていいか。話し相手ができて僕は嬉しいよ」

「友達のいない主の話を聞くのも召喚神獣の役目ですからね。友達のいない主の話は何でも聞いてあげますよ。友達のいない主は私に何でも話してください」

「友達がいないはもう言わなくていいから……」

「そうですか。友達のいない主を友達のいない主と言うのはもう止めますね」

「ふっ!」

 僕は頭に乗っているプルスを握りしめ、灰の山に投げ込んだ。

「ぴよ!」

 プルスは灰の山に埋もれ、お尻を振り振りと動かし、抜け出す。

「悪かったね、僕に友達がいなくて」

「主、何を怒っているんですか? 私にも友達なんていませんよ。何なら、主が初めてのお友達なんですが……」

 プルスは灰の山で真っ赤な体をさらに赤くさせてモジモジとしている。

「そ、そっか……。そうだよね、ごめん」

「ふっ、ちょろいっすね」

 プルスはヒヨコとはあるまじき悪人顔を曝してきた。

「もしかして、プルスって……、面倒くさい?」

「どうでしょうか、この悪戯っ子っぽい個性わ。取ってつけた個性ですけど、なかなか面白くないですか?」

「あ……それも、個性探しだったのね……。面倒くさいからやめてほしい」

「了解しました。とりあえず新しい個性が見つかるまで、ヒヨコで行こうと思います。ぴよ」

「いや……。個性なんて付けなくていいから」

「ですが……。このままではただの赤いヒヨコになってしまいます」

「それで十分個性だから。それ以上付け足したら色々と瞑想するから止めときなよ」

「そうですか……。分かりました。私の個性探しの旅はまだまだ始まったばかりですね」

「何も始まってないからね」

「ぴよ?」

 プルスはフクロウのように首を傾げた。

「はぁ……。お腹が空いているんでしょ。灰を早く食べちゃいなよ」

「あ、そうでした。何か忘れていると思ったら、お腹が空いているんでした。では、いただきます!」

 プルスは灰を啄んでいく。

 僕はプルスの食事が終わるまで昨夜、ブラックベアーの脳を破壊した石槍を探しに行く。

「えっと……。どこまで飛んでいったんだ。確かこっちの方角に投げた気がするんだけど……」

 昨晩は大雨に暗夜ということもあり、僕はどの方向に石槍を投げたか記憶があいまいだった。

「クワルツ兄さんの剣は昨晩、ブラックベアーと一緒に燃えちゃったし、武器と呼べる道具が石槍と石斧くらいになってしまった。あまりにも不安すぎる……」

 僕は森の方に歩いていき、森の入口付近の木に石槍が突き刺さった跡を見つけた。木の後ろを見ると石槍が地面に埋もれている。

「あったあった。まさかこんな所まで飛んでいるとは思わなかったよ。途中走ったから分からないけど、石槍が三キロメートルは飛んだのか。ブラックベアーの頭蓋骨を破壊した後にここまで飛んでくるなんて相当追い風だったんだな」

 僕は地面に突き刺さっている石槍を引き抜き、再度走って家に戻った。

「ふぅ……。朝にしては良い運動をしたな。って、あれ……。プルス、何この紫色の石?」

 僕は灰の山に転がっていた紫色に輝く石を手に取り、灰の山でお腹を膨らませたまま、天を向いて寝ているプルスに聞く。

「あ、それは私の糞ですよ」

「糞……。糞ってこんなに綺麗なの……?」

「昨日食べたのがブラックベアーの灰なので、そんな色になったんじゃないですか」

「そうなんだ。灰を食べて出てくるものが石なんて……。本当にただのヒヨコじゃないんだね」

「ま、石槍を三キロメートル先まで投げる主も普通じゃないと思いますけどね」

「ん? あれは追い風で飛んで行っただけでしょ。と言うか、何で分かったの?」

「自覚無いんですね。まぁ良いです。さて主、今日は何をするんでしたっけ?」

 プルスは僕の質問を無視して質問してきた。

「今日は天気がいいから森を突っ切って、一〇〇〇キロメートル先にある、辺境の街に向おうと思う」

「すごく遠くに行こうとしているんですね。目的は動物を買うことでしたっけ?」

「そう、さすがにこの場所で僕とプルスで一生を過ごすのは虚しいでしょ」

「確かに、主と一緒に一生を生きるのは無理ですね。あれ、私、今上手いことを言いました~!」

 プルスは灰の山で体を起こし、体を震わして灰を落とす。

「いや、今のはただの駄洒落だね。と言うか、何気に酷いことを言われた気がする……」

「主、冗談ですよ~、ほん気にしないでください。あと、私に一生なんてありませんから。終わりなき命。それが私です」

 プルスは胸を張って、堂々としている。
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