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鬼畜上司にトイレを使って鉄槌を下す話

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 この会社は小さい。社長の肝も小さければ社員の声も小さい。俺は中小企業の子会社で係長という役職に就いているが、別に実力でなったわけじゃない。ただ社長の親戚だったと言う理由だけでパンピー社員達の上に君臨している。

 たった今、部長から雷を落とされて気分は最悪だ。さて適当な部下を呼びつけ、適当に因縁をつけ、適当に怒鳴りつけてスカッとする事にしよう。八つ当たりってやつだ。使い古したオフィスチェアーに座り、偉そうに足を組む。


「戸井君。ちょっと来たまえ」

「はっ……はい」


 戸井はビクビクしながら俺の前に立つ。戸井は色白でやせ細った男だ。どこかエノキダケに似ている。気の弱い性格で俺の罵倒を1時間も聞かせてやった。

 その後でこないだ頼んでおいた大企業からの大事な契約書を恐々提出してきたので、分捕るように受け取とり、俺は席を立った。

 弱い者いじめはこうだからやめられない。気分がスッキリした所でこの建物に唯一あるトイレへ向かった。無論男女兼用の洋式トイレだ。ズボンを下ろし、いつも通り便座に座った。


「アツッ!」


 反射的に便座から飛び上がった。便座の温度設定が1番高くなっているではないか。もちろん火傷する程ではないのだが何も知らないで座るとビックリする。

 
「クソッ。誰だ最後に使ったやつ」


 便座の温度を1番下に下げだ。気を取り直してもう1度座り、用を足す。ホッと一息ついたところで、いつもの習慣でウォシュレットのボタンを押した。すると次の瞬間。


「痛たたたたた!!!」


 俺の悲鳴は狭い社内に響き渡っただろう。ウォシュレットの水勢が最強になっていて、痔を患っている俺の肛門に激痛が走った。

 クソッと言いながらレバーを回し、水を流すとポロッと何かがトイレの中へ落ちたのを目の隅でとらえた。


「おいっ!! ちょっと待て!! 頼む!!」


 それが先ほど受け取った契約書だと分かった時にはもう手遅れだった。完全に自分のミスである。

 俺は青ざめながらデスクに戻る。そういえば戸井は零という名前で“トイレイ”と読む。トイレの霊。まさか……。

 背中に凍りつくような視線を感じたので思わず振り返った。するとそこにはこちらを見ながら不気味に笑う戸井の姿があった。
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