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エピローグ

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”1945年5月9日、第日本帝国ついに無条件降伏す”

だいぶ黒っぽい新聞の見出しはでかでかと書かれた戦争終結の文字。
私が生き返ってから早62年、今では見事な老婦人になっていた。
「どうしました?そんなに新聞を眺めて」
私の目の前にいる旦那のニールスが声をかけてくる。
「長かった…と思っただけよ」
本来のドイツ停戦の日、最後まで戦っていた太平洋の戦争は、日本が無条件降伏に調印したことで終りを迎えました。
1945年1月8日、ミッドウェイ沖に落とされた一発の核爆弾は日本艦隊を根こそぎ撃沈。
残ったのは旧式の戦艦である金剛型2隻と呉に停泊改装中だった長門型”空母”陸奥だけ。
駆逐艦などの小規模艦艇は残っていますが、主力と呼ばれる船をことごとく失った日本は1945年1月15日、停戦を合意しました。
そこから調印までにずいぶん時間がかかったものですが、それは日本国内における混乱の影響がありました。
昭和天皇は停戦を呼びかけましたが、一部の軍部…特に陸軍が暴走。
陸軍が主体の中国戦線は押し勝っていたためなぜ降伏するのかという暴動だったようです。
東京は封鎖され、陛下は軟禁状態となり政治的に低迷。
この混乱を収めることになったのは上陸したアメリカ軍でした。
陸上戦力において、ユーディー戦車の情報から作り上げられたM1A1エイブラムス主力戦車を日本陸軍はどうすることもできず、上陸作戦が開始された1945年4月から1ヶ月でようやく混乱は収まったという状態です。
天皇陛下は無事確保され、日本陸軍は中枢を失ったことにより解体。
結果として、無条件での降伏となりました。
「陛下がご無事で良かったわ」
「テューラはずっとそれを機にしていたものね」
ニールスがそっと私の肩をさすってくれます。
ここまで長かったですね…
最愛のニールスとの間に3人も子供を作り、孫の顔も拝めました。
私も65歳、そろそろいい歳です。
「突然ボーっとして、どうしたんだい?」
「少し昔を振り返っていただけよ」
「テューラはとても働き者だったね。今も働きすぎだと思うけれど」
「ニールスから見て私は今も健康そのものでしょう?」
「そうだけど、私も君ももう歳なのだからあまり無理をしてはダメだよ」
ぽんと肩を叩かれます。
確かに、私自身マリーナやレーナとともにこの年まで政治に、技術開発に携わることになるとは思ってもいませんでした。
従軍医としても活躍した次女マリーは、いまその記録を綴り始めています。
戦争の悲惨さ、無慈悲さ、命をかける意味があるのか、それをしないためにどうすべきか、彼女なりにまとめることにしたようです。
「私も、自叙伝でも書こうかしら」
「それはきっと誰しも読みたいと思うだろうね。ダンマークを航空機大国にしたお姫様。壮大な物語はきっと人気になるよ」
「そうだといいけれど」
そして私は筆を執ります。
”やり直し王女”として世界の歴史を変えたものとして、これまでの私から見た世界の流れをまとめるのです。
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