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42話:戦いの後で
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翌朝、帝国軍は痕跡だけを残して完全に撤退をしていた。
痕跡と言っても野営時に設置したと思われる器具などが散乱しているという感じだ。
「きれいな畑が台無しね…」
帝国軍に遠慮なく踏まれた畑は完全に踏み荒らされていた。
農閑期だったのが救いだが、耕しなおすのは容易とは言えない。
15,000もの兵がいたのだから当然と言えば当然か…
「周辺に帝国兵の痕跡無しですね」
塔の上から観測した限り、陣地跡以外に敵兵の痕跡はない。
仮にあれば私が狙撃する。
「お父様たちは午後までに橋を応急修理して周辺の探索に出ると言っていたわね」
「はい、ニホニまではさすがにいきませんが、砦周辺に残党が残っていないかの警邏ですね」
しばらく砦で警戒は必要だろうけれど、ようやく私も一息つくことができるだろう。
交代の兵士が来たので私とルーナは持ち場を交代して砦の一室に移動した。
「一度中のメンテナンスをしないとダメね」
「ずいぶん撃ちましたからね」
この戦いだけで200発以上は撃っている。
残念ながら何発かは外してしまった。
動く目標に百発百中はやはり難しかったが、おかげで修理された銃にはだいぶ慣れた。
距離500mならアイアンサイトだけで何とかなる。
300m以内なら確実だ。
*****
私は簡単な銃のメンテナンスを始める。
まずレシーバーを外して布の上に置く。
流石に全ばらしはしない。
そんなことするとまた精度がリセットされてしまう。
あくまでこれからやるのは日常メンテナンスだ。
布にガンオイルをしみこませてクリーニングロッドに巻き付ける。
実はこれ一本だと長さが足らない。
最低でも2本つなげる必要があるので、予備の棒を接続して銃口から砲身の中に突っ込っみ引き抜く。
やっぱり煤まみれだ。
かなり撃ったもんなぁ。
砲身を清掃したら今度は外側を清掃する。
次は弾倉の蓋を外す。
それほど汚れるものではないが中に泥などが入っていると動作不良の原因になるので清掃してオイルを塗布する。
最後にボルト部、レシーバーのボルトスリーブプランジャーを押し込んでボルトを外す。
本当はさらに分解できるけれど、今回はここまで。
というより、私の力だとこれ以上分解できない。
ゴミを取ってオイルを塗布するだけならここまででもある程度十分だと聞いている。
ブラシを用いて清掃してからオイルを塗布する。
後は再度組み立てて終わりだ。
「結構汚れていたわ」
「お疲れ様ですミリア様」
私の作業が終わったのを見てルーナがお茶を入れてくれる。
「一日であんなに射撃したのなんてお母様の訓練以来ね…」
「その成果が出たのではないでしょうか?タリム軍団内でスコア1位はミリア様だそうです」
結局そういうことになったらしい。
夜間の狙撃も合わせると、あの日だけで59人をあの世に送ったわけだ。
今回の戦いで私の戦果は162人となった。
20年前の戦争なら英雄として凱旋してるわね。
1人で100人を倒したなんてなれば一騎当千の活躍なんて言われただろう。
私の成績はあくまでも狙撃によるものだ。
剣での一騎打ちや乱戦で勝ったわけではないけれど、きっとまたアヤタルの活躍として喧伝されるんだろう。
でも、きっと私が死んだとき、天国には行けないわね…
痕跡と言っても野営時に設置したと思われる器具などが散乱しているという感じだ。
「きれいな畑が台無しね…」
帝国軍に遠慮なく踏まれた畑は完全に踏み荒らされていた。
農閑期だったのが救いだが、耕しなおすのは容易とは言えない。
15,000もの兵がいたのだから当然と言えば当然か…
「周辺に帝国兵の痕跡無しですね」
塔の上から観測した限り、陣地跡以外に敵兵の痕跡はない。
仮にあれば私が狙撃する。
「お父様たちは午後までに橋を応急修理して周辺の探索に出ると言っていたわね」
「はい、ニホニまではさすがにいきませんが、砦周辺に残党が残っていないかの警邏ですね」
しばらく砦で警戒は必要だろうけれど、ようやく私も一息つくことができるだろう。
交代の兵士が来たので私とルーナは持ち場を交代して砦の一室に移動した。
「一度中のメンテナンスをしないとダメね」
「ずいぶん撃ちましたからね」
この戦いだけで200発以上は撃っている。
残念ながら何発かは外してしまった。
動く目標に百発百中はやはり難しかったが、おかげで修理された銃にはだいぶ慣れた。
距離500mならアイアンサイトだけで何とかなる。
300m以内なら確実だ。
*****
私は簡単な銃のメンテナンスを始める。
まずレシーバーを外して布の上に置く。
流石に全ばらしはしない。
そんなことするとまた精度がリセットされてしまう。
あくまでこれからやるのは日常メンテナンスだ。
布にガンオイルをしみこませてクリーニングロッドに巻き付ける。
実はこれ一本だと長さが足らない。
最低でも2本つなげる必要があるので、予備の棒を接続して銃口から砲身の中に突っ込っみ引き抜く。
やっぱり煤まみれだ。
かなり撃ったもんなぁ。
砲身を清掃したら今度は外側を清掃する。
次は弾倉の蓋を外す。
それほど汚れるものではないが中に泥などが入っていると動作不良の原因になるので清掃してオイルを塗布する。
最後にボルト部、レシーバーのボルトスリーブプランジャーを押し込んでボルトを外す。
本当はさらに分解できるけれど、今回はここまで。
というより、私の力だとこれ以上分解できない。
ゴミを取ってオイルを塗布するだけならここまででもある程度十分だと聞いている。
ブラシを用いて清掃してからオイルを塗布する。
後は再度組み立てて終わりだ。
「結構汚れていたわ」
「お疲れ様ですミリア様」
私の作業が終わったのを見てルーナがお茶を入れてくれる。
「一日であんなに射撃したのなんてお母様の訓練以来ね…」
「その成果が出たのではないでしょうか?タリム軍団内でスコア1位はミリア様だそうです」
結局そういうことになったらしい。
夜間の狙撃も合わせると、あの日だけで59人をあの世に送ったわけだ。
今回の戦いで私の戦果は162人となった。
20年前の戦争なら英雄として凱旋してるわね。
1人で100人を倒したなんてなれば一騎当千の活躍なんて言われただろう。
私の成績はあくまでも狙撃によるものだ。
剣での一騎打ちや乱戦で勝ったわけではないけれど、きっとまたアヤタルの活躍として喧伝されるんだろう。
でも、きっと私が死んだとき、天国には行けないわね…
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