スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ

文字の大きさ
上 下
40 / 69

40話:コーラシル砦攻防戦4

しおりを挟む
昼過ぎ、ルーナがクッキーをくれる。
私は何も言わずに咀嚼して飲み込む。
朝からずっと撃っている。
狙撃した兵士全員が一撃で倒れたかと言えばそうではなかった。
スコープを外したマザーKar98Kでの狙撃は中々難しい。
腕だったり、足だったりにあたることもある。
当然負傷した兵士が戦い続けることはできない。
そのため、私は殺せなくとも砲兵たちに狙撃を続けた。
まずは指揮するものを、そして移動や照準を行おうとする兵士を狙い撃ちにする。
他の狙撃兵も狙いは同じ。
なにより敵の大砲は300m以内に近づかなければ威力を発揮しない。
狙撃を避けて遠くから狙おうとしても砲撃の威力が足りず、弾が届かないか、届いても砦の城壁を揺らすだけだ。
何とか近づこうとする帝国兵たちにはタリム家の私兵たちによる容赦ない銃撃を浴びせかけた。
陽が沈む直前まで敵の攻撃は続いたが、砦に大きな被害は発生しなかった。

*****
「何とか敵の攻勢を退けられたかしら?」
「…分かりませんが、少なくともミリア様は敵兵士を121名負傷させ、54名をあの世に送りました」
後ろを見ればだいぶ弾がなくなっている。
倒した敵兵士の数は多いが弾を外した数も多い。
「明日のためにも追加の銃弾が必要ですね」
「そうね…それに流石にお腹がすいたわ」
私の答えにうなずいたルーナが持ち場を離れる。
帝国軍との距離は300~400mというところ。
こちらは無駄な松明などの明かりはつけていないが、帝国側は盛大につけている。
夜も続けて戦闘するというのは常識ではありえない。
とはいえ夜襲がないわけではないので警戒は続ける必要があるが、何分川を挟んでいるのでそれほど恐怖感とか圧迫感はない。
ふと帝国軍側の将校が目につく。
大きな羽飾りをつけた兜がやけに目を引いた。
私は銃を構え直してサイトを覗く。

パスッ

見事に頭に当たったのだろう、ぐらりと傾いて倒れた。
帝国軍が急に騒がしくなる。
そらそうよね、夜になろうというのに将校が撃たれたら誰でも反応するだろう。
状況を確認するためか別の将校が現れる。
先程より兜の派手さはない…部隊長クラスだろうか?

ガチャッ…バスッ

その男も倒れた。
急にその一帯だけ火が消された。
こちらに見えていると気がついたらしい。
「ミリア様、なにかされていましたか?」
振り向くとルーナが夕食を持ってきてくれていた。
「敵の上級将校が見えたものだから撃っちゃった」
「それで帝国側が騒いでいるのですね」
手渡された器には野菜と鶏肉の具だくさんのスープが入っていた。
そしてルーナはカバンからパンを取り出す。
「ありがとうルーナ」
「それにしてもミリア様、反撃されたらどうするおつもりですか」
「反撃してくる奴らも撃ち倒せばいいわよね」
はぁとルーナがため息をつく。
うん、私自身感覚が麻痺してきている。
帝国兵を撃つことにためらいなんてもうない。
すでに敵の砲兵は根こそぎ倒している。
帝国軍は諦めて撤退すればいいのにまだ粘るつもりなんだろうか?
食事を終えて再度外を見れば、帝国軍側の明かりはまばらになっていた。
そして弾薬の補給がされ300発届いた。
「ルーナ、あれ狙えるわ」
「あの明かりのところにいる兵士ですね」
私はためらわずトリガーを引く。
グラッと倒れ込む敵兵士。
見えるところにいるから悪いのよ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

ᚷᚺᛟᛋᛏ ᛁᚾ ᛏᚺᛖ ᚨᚢᛏᛟᛗᚨᛏᛟᚾ

ダグアウトグループ
SF
あなたが生まれる遥か未来 、人類は再建のため機械人間を新人類として宇宙へと送り込んだ。

南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語

猫村まぬる
ファンタジー
海外出張からの帰りに事故に遭い、気づいた時にはどことも知れない南の島で幽閉されていた南洋海(ミナミ ヒロミ)は、年上の少年たち相手にも決してひるまない、誇り高き少女剣士と出会う。現代文明の及ばないこの島は、いったい何なのか。たった一人の肉親である妹・茉莉のいる日本へ帰るため、道筋の見えない冒険の旅が始まる。 (全32章です)

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

ドラゴン観察日記

早瀬 竜子
ファンタジー
森で拾った子竜を育てるリゼ。ある日、やって来た竜騎士に『竜術士』の才能があると言われて……。 ☆小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...