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35話:母のぬくもりと銃の修理
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久々にタリム子爵家に帰ってきた。
屋敷の様子は変わらなかったが、町の様子は変わったように思う。
お菓子の町タリムは今や戦争のための後方支援の地となっているようだった。
食料や武器弾薬などの集積場が広場にできており、活気ある市場の雰囲気は失われていた。
「お帰りミリア」
「お帰りなさいませお姉様」
お母様と妹のアイシャに出迎えてもらいながら屋敷に入る。
「ただいま戻りました…お母様ライフルなのですが」
そういって母にライフルを渡す。
既にスコープが外されている銃を見ただけでお母様の顔が険しくなる。
「潜伏中に帝国の暗殺者に襲われました。退けることは出来ましたがミリア様が銃を構えたところを蹴り上げられスコープ等にダメージが入ってしまったようです」
ルーナの説明を聞きながら歪んでいる後部アイアンサイトを確認したり構えてみたりしているお母様の顔がどんどん歪んでいく。
構えた銃を下ろしたあとお母様がフゥと息を吐く。
「ミリアが無事でよかったわ。まさか蹴りでライフルを破壊するような暗殺者が本当にいるとは思わなかったわね」
「壊れたのはスコープとアイアンサイトだけではなかったですか?」
「えぇ、ミリアよく見てみなさい。ストックにもひびが入っているわ、銃身は大丈夫そうだけれど組み直しが必要ね」
「そんなにダメージがあったの…」
「撃てるとは思うけど、長距離で当てることは難しいでしょうね…
問題はスコープ、あれは替えがないのよ」
やっぱり替えはないらしい。
「修理は全くできないのでしょうか?」
「修理はできるでしょうけど、スコープとして使うとなるとすぐには無理ね」
「どうしてですの?」
「望遠鏡としての能力はレンズを直して焦点を合わせればできるわ。でもあのスコープには目盛りが付いていたでしょ?」
確かにレンズには十字の各線に目盛りが付いていた。
距離や風速に合わせてその目盛りをもとに狙いをつけることで必中をだせたわけだけど…
「あの目盛りの調整が大変ってこと?」
「そういうことよ。残念ながらあのライフルに合わせられるスコープはあれしかないの…ウィルお願い」
「かしこまりました、早速修理いたしましょう」
「まずは分解しておいて、本当に銃身にゆがみが無いか確認するわ」
お母様が執事のウィルに私のライフルを渡すと彼はさっそうとロビーを出ていった。
「ミリアは一度しっかり休みなさい。顔色がよくないわ…死線を潜り抜けた影響もあるでしょけれど」
そういってお母様が私を抱きしめてくれる。
その温かさにほっとしたのか思わず涙がこぼれる。
アイシャがそっと涙を拭いてくれた。
「お姉様、大変おつらい経験をされたのですね…」
「アイシャ、領地を守るのが貴族の役目とはいえ、人を殺すというのは並大抵の覚悟ではないのよ」
「お姉様はご立派です」
妹の言葉に何とか頷く。
ご立派なもんか…戦争じゃなければ私は只の人殺しだ。
領の為、市民の為と言ったってやったことには変わりはない…人の作った法の下で罪に問われないだけだ。
*****
一度部屋に戻って、お風呂をいただいて部屋着に着替えた。
久々に家のお風呂に入ったおかげか気持ちが少しだけ楽になった。
「お嬢様、奥様がお呼びです。ライフルの修理がひとまず終わったそうですよ」
「そう、ずいぶん早かったわね…」
そんなに簡単に直るものだったのだろうか?
ストックにヒビがあったということだけれど、予備があったのかな?
とにかく、お母様の部屋へ向かった。
屋敷の様子は変わらなかったが、町の様子は変わったように思う。
お菓子の町タリムは今や戦争のための後方支援の地となっているようだった。
食料や武器弾薬などの集積場が広場にできており、活気ある市場の雰囲気は失われていた。
「お帰りミリア」
「お帰りなさいませお姉様」
お母様と妹のアイシャに出迎えてもらいながら屋敷に入る。
「ただいま戻りました…お母様ライフルなのですが」
そういって母にライフルを渡す。
既にスコープが外されている銃を見ただけでお母様の顔が険しくなる。
「潜伏中に帝国の暗殺者に襲われました。退けることは出来ましたがミリア様が銃を構えたところを蹴り上げられスコープ等にダメージが入ってしまったようです」
ルーナの説明を聞きながら歪んでいる後部アイアンサイトを確認したり構えてみたりしているお母様の顔がどんどん歪んでいく。
構えた銃を下ろしたあとお母様がフゥと息を吐く。
「ミリアが無事でよかったわ。まさか蹴りでライフルを破壊するような暗殺者が本当にいるとは思わなかったわね」
「壊れたのはスコープとアイアンサイトだけではなかったですか?」
「えぇ、ミリアよく見てみなさい。ストックにもひびが入っているわ、銃身は大丈夫そうだけれど組み直しが必要ね」
「そんなにダメージがあったの…」
「撃てるとは思うけど、長距離で当てることは難しいでしょうね…
問題はスコープ、あれは替えがないのよ」
やっぱり替えはないらしい。
「修理は全くできないのでしょうか?」
「修理はできるでしょうけど、スコープとして使うとなるとすぐには無理ね」
「どうしてですの?」
「望遠鏡としての能力はレンズを直して焦点を合わせればできるわ。でもあのスコープには目盛りが付いていたでしょ?」
確かにレンズには十字の各線に目盛りが付いていた。
距離や風速に合わせてその目盛りをもとに狙いをつけることで必中をだせたわけだけど…
「あの目盛りの調整が大変ってこと?」
「そういうことよ。残念ながらあのライフルに合わせられるスコープはあれしかないの…ウィルお願い」
「かしこまりました、早速修理いたしましょう」
「まずは分解しておいて、本当に銃身にゆがみが無いか確認するわ」
お母様が執事のウィルに私のライフルを渡すと彼はさっそうとロビーを出ていった。
「ミリアは一度しっかり休みなさい。顔色がよくないわ…死線を潜り抜けた影響もあるでしょけれど」
そういってお母様が私を抱きしめてくれる。
その温かさにほっとしたのか思わず涙がこぼれる。
アイシャがそっと涙を拭いてくれた。
「お姉様、大変おつらい経験をされたのですね…」
「アイシャ、領地を守るのが貴族の役目とはいえ、人を殺すというのは並大抵の覚悟ではないのよ」
「お姉様はご立派です」
妹の言葉に何とか頷く。
ご立派なもんか…戦争じゃなければ私は只の人殺しだ。
領の為、市民の為と言ったってやったことには変わりはない…人の作った法の下で罪に問われないだけだ。
*****
一度部屋に戻って、お風呂をいただいて部屋着に着替えた。
久々に家のお風呂に入ったおかげか気持ちが少しだけ楽になった。
「お嬢様、奥様がお呼びです。ライフルの修理がひとまず終わったそうですよ」
「そう、ずいぶん早かったわね…」
そんなに簡単に直るものだったのだろうか?
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とにかく、お母様の部屋へ向かった。
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