スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ

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30話:戦果報告と渾名

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私が王国軍陣地にもどると、すでに迎撃部隊が出発の準備を完了していた。
「敵奇襲隊は撃退しました。すでに撤退しています」
「そ、それはまことか!?」
「はい、ここから30分も林を進めば帝国兵が多数倒れているかと」
私の報告を聞いたその部隊の隊長はすぐに出発した。
きっと私の戦果報告を持ってきてくれるに違いない。

*****
私は先ほどの部隊長と共に司令部に来ていた。
戦果報告をするためだ。
「タリム子爵令嬢の報告通り敵将兵25名の死体を確認しました」
「私も彼女が嘘をついているとは思っていないが、まさか本当に一人で撃滅するとはな…」
ベアロン伯爵は部隊長の報告を聞いて深く頷く。
もともと王国軍としても東側にある林からの奇襲については警戒していたそうだが、互に斥候が偵察に来る程度で、今まで大規模な軍事衝突はなかった地域だそうだ。
林という環境のため弓や銃による遠距離攻撃が上手くいかないことと、長い槍などがつかえないことから、林の中での戦闘はしたくないという両軍の考えがあったのだろう。
それが今回、帝国側はその林にある程度の兵力を潜伏させ、陣地横からの攻撃をしようと考えていた。
横からの攻撃開始を合図に正面から全軍で戦線を押し上げることを画策していたのだろうか?
「ともかく、全軍に警戒態勢の命令をだす。ミリア嬢少し残ってくれ」
伯爵の指示で伝令兵たちが一斉にかけていく。
天幕には司令官3名と私だけが残った。
「ミリア嬢、君の活躍に感謝申し上げる」
「ありがたきお言葉です」
「そして、申し訳ないがこの戦果を大々的に公表したい」
「軍の士気を挙げるためには必要なことだと思いますが…私は見つからないことが第一義ではないですか?」
「戦場ではその通りだが、戦果は別だ。タリム子爵夫人がアルミナ王国の魔女と恐れられていることは知っているか?」
「いえ、初耳です」
うん、そんなの聞いたこともない。
何それお母様魔女なんて呼ばれてるの?
「同じような”称号”が其方にも必要だと思うのだ」
ロベルト子爵が声をかけてくれる。
最初は思いっきり突っかかってきたけれど、今はそうでもない。
むしろ戦果については正当に評価してくれる方のようだ。
「母と同じで私も魔女でしょうか?」
「其方の見た目なら森の妖精のほうが妥当だろう」
まぁちっちゃいからね。
でもそんな可愛い感じでよいのかね?
「ロベルト殿、妖精は可愛すぎやしないか?」
「ではなにか、悪魔とでも呼ぶか?その服と装備を考えれば緑の悪魔だな」
うん、そっちの方が妥当な気がする。
妖精だと可憐な女の子だと思われちゃうもの。
私だって特定してくれって言っているようなものだから、悪魔ぐらいにしておいたほうが良いと思う。
「では、アルミナ王国の緑の悪魔…”アヤタル”と命名して王国へ報告しよう。各部隊へもそのように通達を行う」
アヤタルとはずいぶんな名前を付けられてしまったかもしれない。
アルミナ王国北部に伝わる伝承の森の悪魔の名だ。
でもあながち間違っていないかもしれない…邪悪な女性の悪魔だと言われていて人前に出るときは蛇や竜の姿で現れると言われている。
蛇ならともかく、竜なんて伝説の生き物の前で人は無力。
いい宣伝材料になるかもしれないわよね。
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