30 / 69
30話:戦果報告と渾名
しおりを挟む
私が王国軍陣地にもどると、すでに迎撃部隊が出発の準備を完了していた。
「敵奇襲隊は撃退しました。すでに撤退しています」
「そ、それはまことか!?」
「はい、ここから30分も林を進めば帝国兵が多数倒れているかと」
私の報告を聞いたその部隊の隊長はすぐに出発した。
きっと私の戦果報告を持ってきてくれるに違いない。
*****
私は先ほどの部隊長と共に司令部に来ていた。
戦果報告をするためだ。
「タリム子爵令嬢の報告通り敵将兵25名の死体を確認しました」
「私も彼女が嘘をついているとは思っていないが、まさか本当に一人で撃滅するとはな…」
ベアロン伯爵は部隊長の報告を聞いて深く頷く。
もともと王国軍としても東側にある林からの奇襲については警戒していたそうだが、互に斥候が偵察に来る程度で、今まで大規模な軍事衝突はなかった地域だそうだ。
林という環境のため弓や銃による遠距離攻撃が上手くいかないことと、長い槍などがつかえないことから、林の中での戦闘はしたくないという両軍の考えがあったのだろう。
それが今回、帝国側はその林にある程度の兵力を潜伏させ、陣地横からの攻撃をしようと考えていた。
横からの攻撃開始を合図に正面から全軍で戦線を押し上げることを画策していたのだろうか?
「ともかく、全軍に警戒態勢の命令をだす。ミリア嬢少し残ってくれ」
伯爵の指示で伝令兵たちが一斉にかけていく。
天幕には司令官3名と私だけが残った。
「ミリア嬢、君の活躍に感謝申し上げる」
「ありがたきお言葉です」
「そして、申し訳ないがこの戦果を大々的に公表したい」
「軍の士気を挙げるためには必要なことだと思いますが…私は見つからないことが第一義ではないですか?」
「戦場ではその通りだが、戦果は別だ。タリム子爵夫人がアルミナ王国の魔女と恐れられていることは知っているか?」
「いえ、初耳です」
うん、そんなの聞いたこともない。
何それお母様魔女なんて呼ばれてるの?
「同じような”称号”が其方にも必要だと思うのだ」
ロベルト子爵が声をかけてくれる。
最初は思いっきり突っかかってきたけれど、今はそうでもない。
むしろ戦果については正当に評価してくれる方のようだ。
「母と同じで私も魔女でしょうか?」
「其方の見た目なら森の妖精のほうが妥当だろう」
まぁちっちゃいからね。
でもそんな可愛い感じでよいのかね?
「ロベルト殿、妖精は可愛すぎやしないか?」
「ではなにか、悪魔とでも呼ぶか?その服と装備を考えれば緑の悪魔だな」
うん、そっちの方が妥当な気がする。
妖精だと可憐な女の子だと思われちゃうもの。
私だって特定してくれって言っているようなものだから、悪魔ぐらいにしておいたほうが良いと思う。
「では、アルミナ王国の緑の悪魔…”アヤタル”と命名して王国へ報告しよう。各部隊へもそのように通達を行う」
アヤタルとはずいぶんな名前を付けられてしまったかもしれない。
アルミナ王国北部に伝わる伝承の森の悪魔の名だ。
でもあながち間違っていないかもしれない…邪悪な女性の悪魔だと言われていて人前に出るときは蛇や竜の姿で現れると言われている。
蛇ならともかく、竜なんて伝説の生き物の前で人は無力。
いい宣伝材料になるかもしれないわよね。
「敵奇襲隊は撃退しました。すでに撤退しています」
「そ、それはまことか!?」
「はい、ここから30分も林を進めば帝国兵が多数倒れているかと」
私の報告を聞いたその部隊の隊長はすぐに出発した。
きっと私の戦果報告を持ってきてくれるに違いない。
*****
私は先ほどの部隊長と共に司令部に来ていた。
戦果報告をするためだ。
「タリム子爵令嬢の報告通り敵将兵25名の死体を確認しました」
「私も彼女が嘘をついているとは思っていないが、まさか本当に一人で撃滅するとはな…」
ベアロン伯爵は部隊長の報告を聞いて深く頷く。
もともと王国軍としても東側にある林からの奇襲については警戒していたそうだが、互に斥候が偵察に来る程度で、今まで大規模な軍事衝突はなかった地域だそうだ。
林という環境のため弓や銃による遠距離攻撃が上手くいかないことと、長い槍などがつかえないことから、林の中での戦闘はしたくないという両軍の考えがあったのだろう。
それが今回、帝国側はその林にある程度の兵力を潜伏させ、陣地横からの攻撃をしようと考えていた。
横からの攻撃開始を合図に正面から全軍で戦線を押し上げることを画策していたのだろうか?
「ともかく、全軍に警戒態勢の命令をだす。ミリア嬢少し残ってくれ」
伯爵の指示で伝令兵たちが一斉にかけていく。
天幕には司令官3名と私だけが残った。
「ミリア嬢、君の活躍に感謝申し上げる」
「ありがたきお言葉です」
「そして、申し訳ないがこの戦果を大々的に公表したい」
「軍の士気を挙げるためには必要なことだと思いますが…私は見つからないことが第一義ではないですか?」
「戦場ではその通りだが、戦果は別だ。タリム子爵夫人がアルミナ王国の魔女と恐れられていることは知っているか?」
「いえ、初耳です」
うん、そんなの聞いたこともない。
何それお母様魔女なんて呼ばれてるの?
「同じような”称号”が其方にも必要だと思うのだ」
ロベルト子爵が声をかけてくれる。
最初は思いっきり突っかかってきたけれど、今はそうでもない。
むしろ戦果については正当に評価してくれる方のようだ。
「母と同じで私も魔女でしょうか?」
「其方の見た目なら森の妖精のほうが妥当だろう」
まぁちっちゃいからね。
でもそんな可愛い感じでよいのかね?
「ロベルト殿、妖精は可愛すぎやしないか?」
「ではなにか、悪魔とでも呼ぶか?その服と装備を考えれば緑の悪魔だな」
うん、そっちの方が妥当な気がする。
妖精だと可憐な女の子だと思われちゃうもの。
私だって特定してくれって言っているようなものだから、悪魔ぐらいにしておいたほうが良いと思う。
「では、アルミナ王国の緑の悪魔…”アヤタル”と命名して王国へ報告しよう。各部隊へもそのように通達を行う」
アヤタルとはずいぶんな名前を付けられてしまったかもしれない。
アルミナ王国北部に伝わる伝承の森の悪魔の名だ。
でもあながち間違っていないかもしれない…邪悪な女性の悪魔だと言われていて人前に出るときは蛇や竜の姿で現れると言われている。
蛇ならともかく、竜なんて伝説の生き物の前で人は無力。
いい宣伝材料になるかもしれないわよね。
0
お気に入りに追加
438
あなたにおすすめの小説

Red Assassin(完結)
まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。
活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。
村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは...
ごく普通の剣と魔法の物語。
平日:毎日18:30公開。
日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。
※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。
年末年始
12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。
※2/11 18:30完結しました。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

悪夢なのかやり直しなのか。
田中ボサ
ファンタジー
公爵家嫡男、フリッツ・マルクスは貴族学院の入学式の朝に悪夢を見た。
だが、フリッツは悪夢を真実だと思い、行動を起こす。
叔父の命を救い、病気に侵される母親を救う。
妹の学園生活を悪夢で終わらせないために奔走するフリッツ。
悪夢の中でフリッツは周囲が見えていなかったため、家族や友人を救うことができずにすべてが終わってしまい絶望する。
単なる悪夢だったのか、人生をやり直しているのか、フリッツも周囲もわからないまま、それでも現実を幸せにするように頑張るお話。
※なろう様でも公開中です(完結済み)

【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる
岡崎 剛柔
ファンタジー
【あらすじ】
「龍信、貴様は今日限りで解雇だ。この屋敷から出ていけ」
孫龍信(そん・りゅうしん)にそう告げたのは、先代当主の弟の孫笑山(そん・しょうざん)だった。
数年前に先代当主とその息子を盗賊団たちの魔の手から救った龍信は、自分の名前と道士であること以外の記憶を無くしていたにもかかわらず、大富豪の孫家の屋敷に食客として迎え入れられていた。
それは人柄だけでなく、常人をはるかに超える武術の腕前ゆえにであった。
ところが先代当主とその息子が事故で亡くなったことにより、龍信はこの屋敷に置いておく理由は無いと新たに当主となった笑山に追放されてしまう。
その後、野良道士となった龍信は異国からきた金毛剣女ことアリシアと出会うことで人生が一変する。
とある目的のためにこの華秦国へとやってきたアリシア。
そんなアリシアの道士としての試験に付き添ったりすることで、龍信はアリシアの正体やこの国に来た理由を知って感銘を受け、その目的を達成させるために龍信はアリシアと一緒に旅をすることを決意する。
またアリシアと出会ったことで龍信も自分の記憶を取り戻し、自分の長剣が普通の剣ではないことと、自分自身もまた普通の人間ではないことを思い出す。
そして龍信とアリシアは旅先で薬士の春花も仲間に加え、様々な人間に感謝されるような行動をする反面、悪意ある人間からの妨害なども受けるが、それらの人物はすべて相応の報いを受けることとなる。
笑山もまた同じだった。
それどころか自分の欲望のために龍信を屋敷から追放した笑山は、落ちぶれるどころか人間として最悪の末路を辿ることとなる。
一方の龍信はアリシアのこの国に来た目的に心から協力することで、巡り巡って皇帝にすらも認められるほど成り上がっていく。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる